28 けんちゃん
「こんばんは、モノカさん、シナギさん」
えーと、どなた?
「こんばんは、けんちゃん、アヤさん」
モノカさんのお知り合いですか。
「初めましてシナギさん。 僕は『鏡の賢者』と呼ばれている放浪者です。 けんちゃんと呼んでくれると嬉しいです」
「あちらのお姉さんは、『伝説のメイド』こと、アヤさんです」
「モノカさんたちには、いつもお世話になってます」
こんばんは、シナギという用心棒の居候です。
「今日は、たまたまこの近くにいたんですけど、懐かしい気配を感じたので来ちゃいました」
はあ。
「実はシナギさんの刀について、なんですけど」
『ぶなしめじ』が何か。
「今は、そういう銘で呼ばれてるんですね」
?
「実は昔は違う銘で呼ばれてたんですよ」
ほう。
「『武成銘刃』です」
……
「"武ヲ成ス銘刃"という意味で、僕が名付けたんです」
名付け?
「シナギさんのご先祖さまになるのかな、シナジさんという武芸者さんから、村の人たちが困っているから龍を斬れる刀がどうしても欲しいって頼まれちゃいまして」
ご先祖……
「シナジさんの愛刀を、僕がちょっとだけ調整したんです。 その、斬れ味を少々」
良く切れます。
「ありがとうございます。 大切に使ってくれてたんですね」
呪い、掛けられちゃってすみません。
「呪い?」
倒した龍から『首しか切れない』呪いを掛けられたそうです。
「えーと、首しか斬れないのは、僕がそういう風に調整したからなんですけど」
なぜか伝わっている話しと齟齬が。
「それってたぶんシナジさんが、僕との事を内緒にしておきたかったのかな、と」
?
「僕、普段はこの世界とあまり直接の関わりを持たないようにしているんですけど、めちゃくちゃ斬れる刀を僕から貰えるとか知れ渡っちゃうと変な追っかけとか湧いちゃうので、それでシナジさんが気を遣ってくれたのかなと」
俺も内緒にしておきます。
「ありがとうございます。 本当にシナジさんにそっくりですね」
ご先祖さま、どんな人だったのですか。
「とっても優しくて、刀の修練が大好きで、もちろん強くて、あと、きのこが大好物でした」
……
「これからも、修行、頑張ってくださいね」
モノカさんたちの用心棒として、頑張ります。
「そうだ、モノカさん」
「はい?」
「えーと、アリシエラさんに伝えてほしいことが」
「なんでしょう」
「『絶対金属』関連の技術は、これ以上発展させちゃうとこの世界的には要調整案件になっちゃいそうなので、できればほどほどにって」
「それはヤバいですね」
「さっきモノカさんが闘った絶対金属複合素材アーティファクトゴーレムくらいが、技術的には許容限度ぎりぎりくらいなんで、そう伝えてもらえれば」
「ゼファーゴーレム!」
「モノカさんのお仲間さんたちと揉め事になっちゃうのは、僕、嫌なので、よろしくお願いしますね」
「必ず、伝えます」
「あと、黒井先生にも『完全復活蘇生薬』はできればやめて欲しいなって、伝えてください」
「……そちらも必ず伝えます」
「いろいろとわがままなお願いばかりで本当にすみません」
「いえ、いつも面倒事ばかりでごめんなさい」
「それでは、失礼します」
「「さようなら」」




