26 白状
森の中、
ひとり佇み、
うつむくモノカさん。
「皆さん、心配してます」
俺の声への返事は、ぽろぽろこぼれる涙。
「もう、リーダー、無理だよ」
肩を震わせて、絞り出すような、声。
「全力でも敵わないヤツが来ちゃったり、みんなが勝手なことしちゃったり」
「こんなんじゃ、リーダーなんてできない」
「もう、どうしたらいいのか、分かんないよっ」
激情のまま、小さな身体を震わすたびに、こぼれ落ちる涙。
その姿は、特使勇者では無く、歳相応の乙女。
俺に、何が出来る?
「えーと、まず最初に謝っておきます」
「俺には、モノカさんの涙を止めるにはどうしたら良いのか、分かりません」
「用心棒として、モノカさんたちに仇なす連中の首を落とす」
「居候として、モノカさんたちが泣いたり笑ったりしているところを、そばで見ている」
「本当に、それしか出来ないのです」
「だから、ごめんなさい、です」
「……本当に真面目なんですね」
「たぶん、わがままなだけ、なのです」
「出来る事しかやらないし、出来ない事からは逃げ出しますので」
「泣いてる暇があったらリーダーらしく頑張れとか、もっと強くなれとか、言わないんですね」
「泣いているモノカさんをなんとか出来ちゃうのは、きっとカミスさんだけだから、俺では役不足もいいところです」
「強さうんぬんは、それこそ俺なんかじゃ役不足です。 俺より強い人に強さについて語るなんて、その人が積み重ねてきた鍛錬への侮辱になりますので」
「解決策とか全然思い浮かばないけど、なんとなく気持ちが楽になったような気がする、よ」
「乙女を泣かせるなって、ずっと言われ続けてきたので、今モノカさんが泣き止んでいる事が、俺の勝利条件達成の証し、です」
「もしかしてそれを言ってたのって、幼なじみさん……」
「いかにモノカさんでも、読心術を使って人の心の内を覗くのは、反則です」
「自分から白状しちゃダメですよ」
ふたり、微笑んだ。
皆の所に戻ると、辺り一面に漂う、何とも言えぬ重い空気。
そして、メンバーの皆から、謝罪されました。
「退屈だなんてわがまま言ってごめんなさい、モノカ」
「私も、迷惑かけてごめんなさいっ、モノカッ」
「みんなは悪く無いの。 今回のことは、全部シジミひとりが悪い娘だったの」
皆の言葉を聞いてるモノカさんの、まなざしは、柔らか。
「今日はこのままここで反省会の野営をします」
「それで、今日一番迷惑をかけちゃったシナギさんを、チームモノカの総力を持っておもてなししちゃうので、全力で準備すること」
「あと、マクラはシナギさんが逃げちゃわないように、しっかりと捕まえておくこと」
「以上、それでは各自行動開始!」
えーと、皆さん凄い勢いで野営準備を始めちゃいましたが。
「シナギお兄さん、本当にありがとう」
えーと、マクラさんがぴたりと寄り添って、俺の野営準備に支障が。
俺、どうしよう。




