21 平穏
エルサニア王都からロイさん宅への旅は、徒歩なら三ヶ月程かかる長旅。
もちろん幌馬車シブマなら、安全・快適・快速で日程大幅短縮の旅が可能。
しかしながら今回の旅は、チームモノカぶらり旅のリハビリ的行脚。
急がず焦らず、チームの今の実力などを見定めながら、慎重に進む旅。
のはずだったのですが、なんと言いますか、実に平穏。
襲撃してくる野盗・無頼漢の類いは皆無。
どうやら、幌馬車シブマの幌に描かれたネコさんマークが目印となり、不埒者共から避けられまくっている模様。
装備されているアリシエラさん作の魔物避け結界のおかげで、魔物の一匹すら姿を見せず。
つまり、道中は移動と観光のみの、のんびり旅となってしまう訳で。
途中で寄った町で受けた討伐依頼やら何やらをこなして、それなりに発散出来てはいたのですが、
ここしばらくは町も無く、山々を抜ける街道を進むのみの、正に何事も無しの呑気旅。
そしてようやく、あと数日で目的地のロイさん宅のある村、という所まで来たには来たのですが、
いかんせん、無双乙女たちはこのような平穏呑気旅には耐えられず、そろそろ我慢の限界かと。
「あー」
ノルシェさんが短剣を抱えてごろごろしております。
「うー」
アイネさんが荷台で身悶えしております。
あまりの退屈さに居住『空間』から出てきた無双乙女ふたり、幌の内の荷台でご覧のありさま。
全くもって、不憫なり。
「お母さん、なんとかならないかな」
優しいマクラさんは、心配顔。
マクラさんの最近の指定席が、御者のモノカさんと隣にいる俺のあいだなのは、お姉さんたちのアレな姿を見てられないからかも。
「シジミは、なにか良い解決策、あるかな?」
モノカさんの問いに、
『きっともうすぐチームモノカに大ピンチが襲いかかってくるのっ』
板状魔導端末から聞こえてくる、何故か自信満々のシジミさんの声に、理由を聞こうとしたその時、
ピロピロピロピロ!
広範囲探査魔導具からの緊急警報!




