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第五話 自己紹介の記憶

やっと主人公の名前が出てきます。

この後、こっちに来て初めての戦いに挑むんだよなぁ…



食後にふと思い至った事を口にした。


「あ…良く考えたら…いや、考え無くてもみんなの名前聞いて無いし、オレも言って無いんぢゃないかと…」


オレの言葉にみんなポカンとしている。

オレ何かやっちまったかな?

程なくして狐人美女が口を開く。殺気を垂れ流しながら…


「ねぇあなた?」


その一言だけで、オッサンがビク付いているのが解ったが、更なる恐怖が齎された。


「あなたが、「オレに、任せとけ!!アレが信用成るか成らないか確かめて、信用ならんかったら頭カチ割る!!」とか言って彼の尋問に行ったのでは有りませんでしたか?」


狐人美女がニコやかに強烈な殺気を放つと、オッサンはガクブルで、目線一つ動かす事が出来なくなった。

パン!!っと、狐人美女が柏手を打つとオッサンの緊張も弛緩し、オッサンは深い溜息を吐いた。


「やはりあなたの様な何処か抜けている方にはまかせられませんね。

わたくしが直にお聞きします。

宜しいかしら?」


オッサンは無言で頭がモゲるのでは?ってくらいの勢いでヘッドバンキングをしだした。


「さてお客様、改めまして、お名前をお伺いしても?」

「はい、オレは、松岡鑑連まつおかあきつらと云います。名字は普通ですが名前は馴染み無いでしょ?」

「まつおかあきつら様ですか、確かに余り馴染みが有るとは言い難いお名前ですが、どの様にお呼びすれば宜しいですか?」

「[あきつら]でも[あき]でも気軽にお好きな様にお呼び下さい。」

「では、あきつら様と…」

「様とか必要ありませんよ。」

「では、あきつらさん?」

「はい。」

「わたくしは、姫島ひめしま三重みえと申します。

姫は、先祖の九尾の狐様が女性だった事に由来し、島は縄張りを意味する言葉から来ております。この辺りが九尾の狐様の縄張りだった、との事です。

三重は、産まれ付き尾が三本あったからだそぉです。」

「へぇ、九尾の狐が居たってのは事実なんですか?」

「あきつらさん、出来れば九尾の狐様にはしっかりと、[様]を付けて下さいまし。」


先程、オッサンに向けた以上の殺気がオレに向けられた。

御先祖様をソレ程大切にしている事が伺える。オレは素直に頭を下げ、謝罪をした。

解って貰えたらソレで良し、みたいに殺気も霧散した。


「そして、わたくしの旦那が鯛生たいお、娘が千代ちよです。」

「たいおさんに、ちよちゃんですか、良い響きですね。」

「あきつらお兄ぃさんよろしくなんよ!!」

「うん、ちよちゃんよろしくね。

たいおさんも。」

「おぉ、こっちもよろしくな。」

「さて…あきつらさん、式術や法力等の当たり前の事が解らないとの事ですが…」

「はい、オレの居たトコでは全く聞かない言葉であり技術なんです。」

「ソレは困りましたね、此処での生活には無くてはならない技術ですので…今から少し、お教えいたしましょうか?」

「ホントですか!?本来ならオレの方から伏してお願いしたいたと思ってたところです。」


三重さんの力添え…物理的に…手が少し光りソレを背中に当てられ、強制的に法力を流し込み、自分の中の法力を目醒めさせて貰う。

そのままだとすぐに力尽きて動けなくなるらしく、制御の仕方も、三重さんが蓋をする感じで指導してくれて、何とか法力の放出と抑止の感覚が掴めた。

法力は式に流せば式術、直接使えば法術、祈りに合わせ祝詞に混ぜ発声すると呪術、と云った具合に種類分けされているらしい。

法力は使えば使う程総量も増え、威力も上がるらしいが、ソレは微々たる量で一生を費やしても劇的な差にはならないらしい。

その後は地道な法力の放出練習をし、あっと言う間に時間は過ぎ、ある程度、自分の意思で操れる様になったつもりなのだが、

千代ちゃん曰く、今のオレの放出量では、出力不足で、どんな簡単な式でも起動出来ないんだとか…

かなり疲れたが、今後の課題だな。

しかし何もしてないにも関わらず全身がかなりの疲労感に襲われている。

三重さん曰く


「全身から少しずつ力を引き出しているから、身体が慣れてなくて吃驚びっくりしているんでしよぉね。」


だそぉだ。明日は筋肉痛かな?


そぉして穏やかな午後も過ぎ夕飯時に差し掛かった頃、事件は起きた。

何やら外が騒がしい。

どぉしたんだろぉ?

そんな風に思っていたら、誰かがこの家に慌てた様子で訪ねて来た。


「三重様ぁ!!大変だぁ!!鬼だぁ!!鬼が三匹も出た!!」

「何ですって!?お姉様がみやこに行ってる時に…

千代は早くあきつらさんと地下へ!!」

「うん!!あきつらお兄ぃさんこっち!!」


オレは流されるまま、千代ちゃんに手を引かれ、家の床の間に隠された地下への道を歩きながら千代ちゃんに聞いた。


「鬼ってのは何だい?」


千代ちゃんは、そんな事も知らないのか?と云った感じながらもしっかり教えてくれた。

要約すると、人や異人(狐人族等、獣や何かの特徴のある人種)が、悪い事を沢山繰り返していると進化する(落ちる)角の生えた、恐ろしく強いヤツで、法術や式術や呪術の強力な業でも余り効かないらしい。

刃物も余り効果が無く身動きを封じた上で専用の数人掛りで行う[集団呪術]と云う儀式的な呪術をして封印するしか無いらしい。

鬼とはかなり厄介なクソヤローと断じるのに些かの迷いも要らない。

大きさも七尺(二一二センチ)程はあるらしい。


「ねぇ千代ちゃん、そんななら一人でも戦力が多い方が良いんぢゃ無いのかなぁ?」

「弱い戦力や、覚悟の無い戦力は邪魔にしかならないから要らないんだよ?

私なんかはまだ子供で未熟だから戦力にならないから、邪魔しないのが仕事なの…

三匹も鬼が出たなら村の大人でも何人かは確実に…」


村にどれ程の戦力があるか解らないが、全員がアホみたいに強く死を恐れない狂戦士とかのワケが無い…

立ち止まり思案するオレを千代ちゃんは不安気に見上げてきた。

ソレに気付いて、彼女の頭を優しく撫でて…


「ちょっと桃太郎の真似事でもしてくるよ。

千代ちゃんは地下に居てオレやご両親を安心させてね。」


と、笑顔で言い置き、来た道を引き返した。


地上に出ると蒸せ返る死の臭い、既に何人かヤられてるのだろぉ…

気合いを入れて、血の臭いのする場所をめざした…自分に喝を入れながら。

こんな下らない読み物でも読んで下さっている方がいらっしゃるのが有難いです。

コロナ禍引き篭もりの一助になれたら幸いです。

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