第五百五十四話 男子会の記憶
仲良くなってるなら良いですよね?
笑われたなぁ…
「ちょっ!?殿?今何と?」
その日の午前中、オレは、道雪と島田先生と、三吉の畑を手伝いながら、島田先生に役職を設けた事を伝えたところ、何かが気に入らなかったみたいで聞き返されていた。
「ん?だから、何の仕事も無く、人質の世話係ぢゃダメだから、島田先生に、役職をだなぁ…」
「いや!!そこぢゃ無くてですね…あ、いやそこが問題なんですが…」
「えっ?もしかして不服なの?」
「不服も何も、なんでそんな一気に出世するんですか!!」
「出世したく無いの?」
「したく無いワケは無いんですが…その…」
「ふぅ〜ん…三吉はどぉ思う?」
今の仕事の指揮を取っている三吉に話を振った。
「んだなぁ…ワイも殿様から変な役職をさせられてるだが、普段は今まで通りだで、大した差は感じ無いだよ。」
「ほら、三吉もこぉ言ってるし!なぁ、道雪はどぉ思う?」
「そぉですな…聞いた所によりますれば、島田殿は志村殿の配下で、郷元では、勘定方の同心をされていたとか?」
道雪は島田先生に訊ねた。
「確かに、勘定方に居ましたが、吹けば飛ぶ様な、最下層の木端役人ですよ!?」
「ソレがどぉしましたかな?私は、ラナーの人間ですら無く、決して表に出られない隠密仕事をしてましたし、三吉殿に至っては、役人ですら無く、百姓をしていて、有らぬ疑いをかけられ、死罪…当時は鬼にさせられておりましたよね?」
と、今度は三吉に話を振る。
「んだなぁ…たまたま殿様が仲良くしてくれて…」
「そんな経緯でラナー総大名旗下農事総長と云う役職に抜擢され、今も少しずつ成果を上げています。三吉殿の苦労を考えれば、島田殿は殿の御意向をしっかり受け止め、与えられた仕事に向き合うのが当たり前なのでは無いですかな?」
「しかしですね…」
尚も逃れ様とする島田先生に、道雪が追い討ちを仕掛ける。
「その上で、殿のお妾様の一人、アイラ殿は北あいるらんどと云う、殿と同じ所の違う国からコチラに来られている御方。そんな方をも徴用し、発展を目指す殿の腹心になれる機会等、そぉそぉ有りましませぬぞ?しかも、殿自身が島田殿を御指名しているのですぞ?断れば、国家反逆罪が適用されても文句は言えないと思いますがな…今、この場で死ぬか、殿に仕えるか、選ぶとしたらどちらが良いですかな?」
うわぁ…めっちゃ理不尽な二者択一だなぁ…いや、一者択一?
「…わ…解りましたよ…やれば良いんでしょ?やれば!!」
あ、キレてるキレてる。
「あ〜良かったぁ…都華咲さんや涼さんに恨まれなくて済んだよ…四十年以上振りに再会した、初恋相手を死なせたとかなったら、山の民達と戦になるトコだったよ!!ぢゃぁ、ラナー総大名旗下学事総長!!頼んだよ。」
ばんばん!!と、オレは島田先生の背中を叩いて喜んだ。
だってさ、技術発展は、オレとアイラと椿で何とかなるけど、文化の発展には、教育が絶対不可欠なんだもん!!
ソレに、元とは云え、山の民の代表姉妹の旦那になるんだ。一地方の木端役人がそんな場所に収まるのは良くないしね。名目上は人質で、政略婚なんだけど、実情は全く違うもんね。
「しかし…殿の奥方の椿様が、オレの生徒だったのには驚きましたよ…まさか、あの飛鳥弥生だったとは…一瞬、表情が違い過ぎて、誰だか解りませんでしたよ…」
おっと?島田先生から、弥生の話が出たぞ?アレ?そぉ云えば、空白の三年間の事はオレも知らない事だらけだよな?探りを入れとくか?
「そんなに違うの?」
「はい、あの当時から美少女だとは思ってましたが、暗く、沈んだ…一言で言えば、病んだ感じ…とでも言いましょうか…成績は悪く無かったのですが、オレの記憶には、彼女の笑顔は一つも有りませんでしたよ…親御さんも心配されてましたが、今の彼女は笑顔満点で、幸せなのが良く解りますよ。親御さんも現状を知ればお喜びになられるでしょぉな。」
「そっか…一切笑わなかったのか…ソレを考えたら、オレはホント薄情者なのかもな…さっさと気持ちを切り替えて、流されるままに生きていた気がするよ…」
と、呟いた所、道雪が声をかけて来た。
「そぉでも有りますまい。その様な事は一切存じませんでしたが、椿様を見付けた時の殿の表情は、失った半身を取り戻したかの様な、表情でしたぞ?ソレに、椿様への慈しみ様は、主上陛下すら嫉妬に狂いかけてましたからな。」
「えっ?そぉなの?」
「はい。波津がソレを表に出さない様に大層苦労してましたから、良く憶えております。「わっちと云う者が有りながら、他の女にうつつを抜かしおって…」と、最初は椿様を射殺さんばかりの目付きでしたぞ?」
うわぁ…まぢか!?気付いて無かったぞ!!
「ソレまぢ!?」
「はい…」
うわぁ…全く知らなかったよ…
「…まぁ、殿も、椿様に付きっきりでしたし、お気付きになられずとも致し方無いかと…」
「しかし…ソレでも、紅葉に悪い事したなぁ…」
「そぉお思いならば、主上陛下とのお時間をもっと設けては如何ですかな?」
「…うん…そぉする…」
ここに来て、奥さんのオレに対する愛情の深さを知った…みんなをもっと大事にしないとなぁ…
「そぉそぉ、波津情報なのですが…」
「波津殿?なんか怖そぉなのは気のせいか?」
「気のせいですな。ラナーに居られる、双葉殿と莉緒殿ですが、殿の日常をアレコレと聞いて来るそぉですよ。奥方達との馴れ初めとかも。」
「…それはそれで恥ずかしいな…」
「殿の誠実さを知り、更に殿を愛しているとの事ですぞ。」
「恥ずかし過ぎるわ!!」
オレのツッコミにその場は大爆笑に包まれた。
まったく…オレは恵まれてるなぁ…
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お時間がありましたらもう一つの作品「忍者が異世界転移したらこぉなった!?」も合わせてお読みください。




