第三十八話 紅葉の恐怖の記憶
美少女は怖いモノです…
危機が去ったら別の危機だよなぁ…
いきなりの口付けに紅葉はキョトンとしている。少しして口を離す。
紅葉は顔を赤らめ俯き、小声で、
「いきなりなにするかや。」
見事な平仮名言葉になり、先程までの重圧感は無くなる。
「誤解で怒り狂う女の子の口を封じて、冷静にさせる方法はコレしか知らないから仕方ないだろ。」
努めて優しく抱き締める。
周りからは歓声が上がり指笛も鳴る。
隠してるつもりだったが、バレバレな関係だから今更感もあるが…娯楽の少ない所でのこの騒ぎ…格好の餌だな。
「あの…ご迷惑をお掛けしてすみませんでした。」
日本の礼法の則った綺麗なお辞儀をする弥生。手を下腹辺りに組んでの《見た目だけ上品ぽくする相手を馬鹿にしたクソ礼儀》なんかとは違う、真に綺麗な礼だ。
オレは膝を着き、にこやかに、
「大丈夫ですよお嬢さん。貴女の友達を助ける為にした行動、ソレを咎め立てする者はココには居ない…しっかり養生してください。」
彼女…弥生は顔を上げ、膝立ちのオレを見て…
「あきつ…だんなさ…あ…あぁ〜!!」
何事か呟き頭を抱え蹲る(うずくまる)。
コレは治療班の女官さんに任せた方が良いな。
「後はお願いします。」
女官さんに伝えたが、
「先程、紅葉様にした様にして頂いても宜しいのですよ?」
何をぶっ込んで、何を期待してんだよ!?この腹黒女官さんは!?
ニヤリと笑い弥生の所に行く。
何だその意味有り気なニヤリは!?
怖くなったので退散する。
しかし…かなり強くなってたなぁ…
最期にもう一度弥生を見遣り、その場を後にした。
何故オレはココに居る!?
ココは謁見殿の紅葉の執務室。その紅葉の前にオレは正座していた。
道雪は部屋の外で瞬時に動ける体勢だ。
なにがあったんだよ!?あ…余りの緊張に平仮名になってる!?
「なぁ、あきつら?あの娘とはどんな関係かや」
「ソレはさっきも言った様に…」
「そ…ソレはしょぉちしたやよ、そのどこまでのかんけーやったかや?」
ん?何だ!?妙にしおらしく、弱々しく、儚げで…言葉が平仮名で…はは〜ん。コレが世に聞く嫉妬ってヤツだな!?プロレスラーが刺された事件みたいな?間違うなよオレ!!相手は紅葉だ!!間違ったら死ぬ!!
「弥生とは…手を繋いだり…腕を組まれたり…口付けまではして無い…そんな微妙な関係だったかな?」
「なら、あきつらはどぉ呼ばれてたかや?」
来たぁ!!最大の鬼門!!だが!!
「子供の頃は、あきくんって…中学…こっちぢゃ元服か…してからは…だんなさま…と。」
「あきくん、だんなさま…どんな意味かや?」
「鑑連のあきに敬称の一つの君を付けた一般的な呼び方で…」
「だんなさまは?」
「色んな意味がある言葉で…自分がへりくだって相手を呼ぶ時とか…」
仕方ない!!ココは意を決して…
「…女性が婚姻相手を呼ぶ時に使ったりとか…ね」
恐る恐る紅葉を見遣る…怒り、困惑、悲哀、様々な感情が入り混じり、背中から紫色の般若が顔を覗かせている幻覚が…
「あきつらは、わっちとあの娘と、どっちが大事かや?」
「ソレは…大事の方向性が全く違う!!側に居て守りたい紅葉に対して、弥生は…」
弥生はどぉだ?女として見てた…いずれは結婚するんだろぉなぁと、おぼろげに思っては居たが…紅葉を大事にしたいベクトルとは、かけ離れてる。抱いたかどうかもあるだろぉが…
「…弥生は思い出として、コレからは今の彼女の意志を大事にと思ってる。」
「ソレで…今のあの娘があきつらが良いと言い出したらどぉするかや!?」
「んな!?そ…ソレは…どぉしよぉ…?紅葉?教えてくんない?」
「さっきまではカッコ良かったのに、何でソコでわっちを頼る!?わっちがそんな軟弱に育てたかや!?…アレ?わっちはあきつらを育てて無いやよ…あきつら、わっちはどぉするべきかや?」
「イヤ…ソコでオレに聞かれても…あっ!!こんな困った時の女官さん頼りってのは!?」
「ソレやよ!!でかしたあきつら!!」
そぉと決まれば行動は速い!!
例の腹黒女官さんを頼り相談したのだが…ソレは間違いだったのかも知れない…
ふん反り返る女官さんの前に正座する主上と護衛…
立場がチグハグだ。
「なるほど…よぉ〜く解りました。この甲斐性無しの穀潰しが二股しているとの事ですね!?」
「違う違う!!二股違うから!!」
「今はまだ…でしょ?」
「むぅ〜、そぉやよ!!そぉなった時の対処法やよ!!」
「何をそんな簡単な事を…紅葉様も昨日今日産まれた小娘では無いでしょうが!!」
ビクっとなる紅葉…やっぱこの女官さんはある意味最強かも…
「そもそもこの国では《男性は三人は妻を娶りましょう》と推奨されてます!!まだ二つの空きがあるのに、浮気の一つや二つで騒ぐ紅葉様がお子様なのです!!」
キッパリ言い切られた。清々しいまでの正論だ…正論か!?
暴論に聞こえるオレはやはり日本人なんだなぁ…
しかし紅葉は目から鱗を落としながら…あ…涙だった…
「おぉ〜!!わっちが間違ってたやよ!!あきつらには後二人は娶って貰わねばならないやよ!!」
何その決意?あと二人はって…何か違う方向に走りそぉなんだが…
「あきつらよ!!ヌシはあの娘を口説くのやよ!!行きずりのアバズレを連れて来るより百倍良いのやよ!!後の一人もわっちが許可した相手なら許すやよ!!その代わりちゃんと励むやよ?」
励むって何にですか!?
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お時間ありましたらもう一つの作品「忍者が異世界転移したらこぉなった!?」もお読みください。




