レッツ・コミュニュケーション
ロビンさんとホームズさんは、ユウミさんと一緒にニコニコしながらワイワイと料理を運んでいる。
その脇で、絨毯の上に転がっている僕。腰が痛くて立てないんだよ……。
でもユウミさんを心配させたくなかったので、「どうされました?」と聞かれる前に、何とか椅子に這い上がった。はあ。
ロビンさんとホームズさんには本当に腹が立つ。けど、せっかくおさまった騒ぎを復活させたくなかったので、僕は何も言わずにただ大人しく良い子にしていた。
そして食事を始める二人に合わせて、食欲はめっきり減退していたのにスープのビーンズをつつき始めたのは、
「今の態度からして、二人はもう喧嘩する事もないかも。さっきは一時の感情で荒れ狂っただけで、ユウミさんが気分を変えてくれたから、もう大丈夫なんじゃないだろうか。うん、ユウミさんさえ居れば大丈夫だ」と何処かで油断していたからだ。
まさか、その五分後にユウミさんが「まだ、出来上がっていない料理がありますので……」とキッチンへ戻ってしまうとは思わなかった。
キッチンの扉がバタンと閉まると、部屋はまるで太陽が消えてしまったかのように温度が下がった。原因は言わずもがな……僕の両脇に座る二人の殺気だ。
無言でローストチキンにナイフを入れる、ロビンさんが怖い。鋭い目付きで飲み物用の氷をアイスピックで砕いている、ホームズさんが怖い。
このままだと、また喧嘩……というか殺し合い……が始まるんじゃないだろうか。いや、勘弁してよ。僕は今、あなた方の間に座ってるんだよ。
腰が痛いからすぐに逃げる事は出来ないし……
と、すれば……
レッツ・コミュニュケーションだ、リーハ。
僕は必死に考える。衝撃に次ぐ衝撃のせいで、すごく頭が痛いけれど、二人の気をそらさないと、きっと僕が怪我をすることになるので、必死に考える。
そうだ、「ユウミさんの料理は美味しい」ってことを話題にすれば良いかも知れない。
例えば、『ロビンさん、ホームズさん! ユウミさんが作ってくださったこのローストチキン! すっごく美味しいですね。皮はパリパリなのに中はジューシー。僕の母さんも、毎年クリスマスにはこれを作ってくれるんですけど、ユウミさんのチキンの方が百倍、いや千倍美味しいです!』とか言ったら良いんじゃないだろうか。うん、コレで行こう! 勇気を出せリーハ!!
「ええっと……ろ、ロビ……」僕はお腹に力を入れて、声を絞り出す。
しかし、二人は僕の頭ごしに睨み合ったままだ。
不気味なほど静まり返った部屋の中で、僕の声はマヌケに響いた。
なんで?! ユウミさんが来た時は仲良さそうなフリをしてた癖に!
僕には存在感が無いのかよ!!
助けてッ!
……いや、まだ諦めるなリーハ。
二人はナイフやアイスピックを手にして、ただ睨み合っているだけだ。まだ殴りかかってもいない! 料理の話がダメなら、ここは鉄板の天気の話だ!
「あの………きょうは……いい天気で、暖かくて……最近はちょっと寒かったですけど、って、えっ?!」
突然、二人の手から放たれたナイフやアイスピックが、僕の鼻先をかすめてシュッと飛んだ。しかも互いの首筋を狙って一直線に。
けれども相手に躱されてしまうと、まるで早回りする秒針のように空中で回転を始め、家具や壁に接近し、柄の方を「トン」とぶつけて、ブーメランのように二人の手の中へ戻って来た。
……いや、何それ。ありえない過ぎるだろ!!
「あ、あなた方は一体、何者なんですかーーーーっ?!」




