クラスタン魔法学校
王都、ロイヤルクラウン(地名)はアストロ領から大分近く、荷馬車で移動して大体2時間くらいの距離にある。
さすが王都、と言うべきか王都に入る為の身分の審査や持ち物検査などが厳しく、荷馬車に積んでいた荷物は怪しいと断定されてほとんど処分された。
スカドゥエ曰く、様々な国から調達してきた貴重で珍しい品らしいが、それに関して詳しい者が誰1人ともいなかったので本当かどうかは定かでは無い。
手放したく無い、と駄々をこねていたスカドゥエをなんとか説得し、俺たちは無事に王都に入る事ができた。
「はぁ〜、アーシのコレクション……、アーシのお金……」
「いつまでぐずってんだよ……、良い加減諦めろって……」
今は王都の中心部にある商店街を歩いている。
俺たちの向かっている目的地はもうあと少しというところまで来ていた。
途中、チラチラと俺を訝しげな目で見る視線に気づく。
目の色と髪の色の特徴から俺がカルロス君として見られているのかどうか分からないが居心地が悪い。
だが、危害を加えられているわけでは無いので視線に気付かないフリをする。
襲われないだけマシだな。
なんて、最初のアスタ領の街で起こった襲撃を思い出して苦笑する。
王都はアスタ領の街と違ってそこら辺に警備もいるし
何かあれば警備員が動いてくれるだろう。
そうして周りの風景を楽しみながら、歩く事10分、目的地である場所へと辿り着く。
「クラスタン魔法学校、受付所……、ここか?」
「そうっす。そしてその横に建っている立派な建物がクラスタン魔法学校っすね。」
「王都1番というだけあってでっかいな……」
目の前にある受付所だけで、そこら辺の領地の学校と同じくらいの大きさがある。
2階建ての造りに白を基調とした壁色に、そこに青い鳥と金の王冠の絵が所々にバランスよく描かれている。
入学試験の受付ははそこでしてもらえるらしく、早速受付所の窓口へ向かうべく門を潜ろうと足を進めると…
「ちょちょ、ちょっと待つっす!!」
「ぐぇっ?!!」
スカドゥエに襟首を掴まれて首がしまった。
「せ、せめて1部隠さないっすか?!その髪色と目を隠すとか!!」
「それって全部隠れてね?」
「身分も貴族じゃなくて、平民にするとか!!」
「身分偽装は犯罪じゃね??」
珍しく慌てて支離滅裂な言葉を吐くスカドゥエに、疑問を抱く。
「それに、身分を平民にしたとしても俺(ロット君)の身体能力だと絶対無理だろ。ここの学校は実力主義なんだろ?魔力、身体能力雑魚雑魚の俺が平民枠で行って受かると思うか??」
「あ………」
オロオロしながら、まだ何か引き留める理由を考えているスカドゥエをギロリと睨んで威圧する。
何故かは分からない……いや、少しだけだが大体は予想はつく。
前に、ロット君はこの学校に入学試験を受けたと言っていた。
多分、それが関係しているのだろう。
「スカドゥエ、しょーーーーーーーじきに、言ってくれるか?」
「う、ぅうん……」
ギクッとしながら目を泳がせどっちつかずの返事をするスカドゥエの様子に、ますます不信感が湧く。
それと同時に、自分の予想が当たっているという嫌な予感をヒシヒシと感じる。
「ロット君は、何をやらかした?」
「ゔゔぅ〜っ!!!」
「こらっ!!全力で目を逸らすなっ!!こっちを向けっ!!!」
そんなこんなで俺の根気強い説得(?)により観念したのかスカドゥエがようやく重い口を開く。
覚悟を決めたように、フゥ、と息を吐いて語りだす。
「そう、すべての始まりは、あの時、ロットの坊ちゃんが入学試験を受けたあの日から始まったっす。」
「あ、あれ?何かすごいデジャブを感じる……?」
そこからスカドゥエが話してくれた。
なぜ、そこまでスカドゥエが学校の入学に乗り気ではないのかを。
ロット君が犯した、その罪を。
「そう、あれはアーシとロットの坊ちゃんが試験を受けていた時とその後に起こった出来事っす。」
―――――――――――――――――――
あの日、あの時
ロットの坊ちゃんは初めは裏口入学で入学をしようとしてたんす。
ロットの坊ちゃんもバカではないっすからね。
自分の能力が決してクラスタン魔法学校に入れる程の実力はない、と初めから分かっていたっす。
だから、最初は多額のお金を払って入学することを選択してここ、クラスタン魔法学校、受付所へと足を運んだんっすけど……
前にも言った通り、裏口入学する為のお金はロットの坊ちゃんの所持しているお金じゃとても払えない程の高額で……
「いやいや、親は??あの両親に言えば学校の学費くらい出させてくれただろ??」
そうなんっすけど、なんせアスタ領とここ、王都では距離が遠すぎる、という理由で入学する事を反対されたんっすよ。
「え?でもアストロ領の学校にも通ってたんだろ?アストロ領の学校は良くて、王都の学校はダメっておかしくないか??」
ロットの坊ちゃんはほとんどの学校を領主様達に無断で通っていたっす。
学校行きたい、と言っても家庭教師でいいじゃない、と一蹴されるだけだから言っても無駄だって言っていたっすね。
「いや、それでも通っていれば気付かれるだろう?」
領主様達にバレる前に問題起こして退学させられてたっすから、バレた事はないっすよ。
1度だけ怪しまれて詮索はされたっすけど、ロットの坊ちゃんの干渉してくるなの一言でそれ以上は追求してこなかったらしいっす。
…………どこまで話したっすかね?
あぁ、裏口入学で入学しようとしたけどお金が無くてできなかった、という所からっすね。
裏口入学ができない、と分かった時点でアーシはロットの坊ちゃんが諦めてアスタ領に帰ると思っていたっす。
だって、クラスタン魔法学校の入学方法は、莫大のお金を払って学校へ入学する裏口入学と、入学試験をちゃんと受けて合格するかのこの2つ。
裏口入学が出来ないなら、もうロットの坊ちゃんがクラスタン魔法学校へ入学する手立てはないっす。
だからアーシは諦めると思ってたんっすけど、まさかのちゃんと入学試験を受けて合格するとか言って来たんすよ!
今思えば、そこまでするほどクラスタン魔法学校に入りたい理由があったんでしょうね。
まぁ、結果はご想像の通りの惨敗っすけど。
最初の魔力量を測る時、最後に測ったロットの坊ちゃんの魔力量は入学試験を受けた者の中で1番最低値。
つまり、1番最弱だったんっす。
その結果を見た、周りの平民、貴族からは嘲笑されて教師からは、
「君、そんな実力でよくクラスタン魔法学校の入学試験を受けようと思ったな笑」
なんて鼻で笑われる始末。
バカ高い自尊心がズタズタに切り裂かれたロット坊ちゃんは、その場で復讐を誓ったそうっす。
必ず、コイツらはクラスタン魔法学校へ入学させない、と。
まず最初に、平民・平民の家族にぼったくり商売をして学校に通わせられない程の多額の借金を背負わせたっす。というか、ほとんど詐欺っすね。脅して、買わせて、借金を作らせる。あんなえげつない商売はアーシでもやらないっすよ。
そして、貴族、教師には悪行、悪事の情報を執念で入手し、貴族には入学するなら、教師には学校に居続けるならこれらをばら撒くと脅して入学を辞退、退職をさせたっす。
だから、その年の入学者はどの年よりも断然少なく、異例の年だったって騒がれたっすね。
その事態を学校長が見逃すはずもなく、調査をするとすべてロットの坊ちゃんの仕業だとバレてしまって………
「ま、まさか、それでクラスタン魔法学校を出禁とか言うんじゃ無いんだろうな??」
「いや、そこまでは………復讐相手はあくまで嘲笑した人物に限られていたっすから出禁までとはいかなかったっすけど、まぁ、睨まれはしたっすね。」
「同じじゃねぇ??」
はぁ〜、とため息を吐いて頭を抱える。
とりあえず、出禁になってなければお金を払って裏口入学はできるはずだ。
ロット君みたいにずっと通い続けるわけでは無いから2、3ヶ月くらいの期間限定の入校なら通える事は可能だろう。
「ついでにその話はいつの話??」
「え〜と、約3年前っすね。」
「3年前か〜……忘れているか、覚えているか微妙なラインだな……」
もし、覚えているなら学校側もどの面下げて来たんだって言ってくるかもしれない。
なんせ、カルロス君が犯した行為は莫大なお金を逃し有望な芽を潰し、大きな損害を与えた行為なのだから。
はぁ〜、と何度目かのため息を吐く。
胃がキリキリと痛み出した気がしたが気にしてられない。
覚悟を決めて、行くしかない。
暗い気持ちのまま受付所の門を潜る。
建物の玄関へと続く綺麗なレンガが敷かれたアプローチを歩く。
スムーズに入学試験を受けれますように、職員が俺(ロット君)を忘れてくれていますように、など願いながら歩いていると、やがて受付の玄関に着いた。
ドクドクと心臓を鳴らしながら金の取っ手を掴み、ドアを開いて中へとはいる。
中はまるで、日本の病院の待合室みたいに並行に椅子が並んでおり、椅子の前には待合室と事務室の区切りであろう仕切りがあり、その中に制服を着た身綺麗な女性が座っている。
椅子には座っている人達がちらほらおり、大体10代前半から後半の若い人たちがいた。
格好と年齢からして学校の関係者じゃなさそうだし、この人達も試験を受けに来たのだろうか??
「というか、入学試験ってのはいつでもやってるもんなの??」
コソッと隣にいるスカドゥエに耳打ちをする。
「まぁ、主にでっかい入学試験が四季事に1回行われるっすけど基本いつでも試験を受ける事は可能っすよ。その場合は小規模になるっすけどね。ついでに、裏口入学希望は試験をしなくていいらしいっす。」
「ふ〜ん……」
なんて考えながら自分も空いてる椅子へと座る。
それから数分、
俺がこの部屋に入った後も何人か人が来て、椅子に座る。
そして、時計の針が1番上に行き、コーンコーンと音が鳴った時、受付の女性が喋り出す。
「それでは、クラスタン魔法学校に入学希望の皆様、今から受験の手続きをいたしますのでお並びください!!」
そう、言うや否や椅子に座っていた人や立って待機していた人達が一斉に動き出す。
「えっ?!えっ……」
「驚いている場合じゃないっすよ!!早く受付済ませてくださいっす!」
そう言われて、スカドゥエにドンッと背中を押される。
しかし、完全に出遅れ、最後尾になってしまった。
1人、また1人と自分の名前を告げた後に白い紙を渡されている。
きっと渡された紙が受験票かなにかなのだろう。
チラリと見えたが、紙の1番上には名前らしき文字が書かれてあった。
ドキドキしながら、自分の番が来るのを待つ。
まずは、名前をいう。
その後に、裏口入学希望の旨を伝える。
流れは完璧だ。こう言えば大丈夫だろう。
頭の中で躓かないように何度もイメージトレーニングする。
そして、ついに俺の番が来た。
受付の女性は忙しいのか、目線をそのまましたにして、俺に問いかける。
「お待たせいたしました。貴方のお名前をお教えください。」
「…………ロット…。ロット・フォン・アスタ。」
そう言った瞬間、受付の女性の手がピタリと止まる。
そして、壊れた人形みたいにギギギ、とぎこちなく顔を上へ向けて俺の顔を見る。
「ろ、ロット・フォン・アスタ……様??」
「……………はぃ…。ロット・フォン・アスタデス。」
その瞬間、周りがざわつく。
「ロットって、まさかあの?!」
「今すごい悪い噂が流れているアストロ家の分家の子供だよね??確かそいつも悪どい事をしてるって…」
「というか、ずっとここにいたのかっ??!気づかなかった……」
「………こんなに凡庸な雰囲気の子だったの…??」
などなど、俺の存在に気づいた受験者達が騒ぎ出し、視線はすべて俺の方へと向けられる。
そんな一気に騒ついた空間の中、受付の女性が怯えたような表情で言いにくそうに話しかけて来た。
「あ、あの……、申し訳ありませんが、少し……いえ、1時間ほどここで待って頂けますか??」
そう言われて、頭に浮かんだのはつい先ほど知ったロット君の行い。
できれば俺の予想が外れて欲しいと願いながらも女性へ聞き返す。
「…………それは、3年前に俺が起こした行いに関係しますか?」
「あぁ、はい……。」
と一気に疲れた顔をした受付の女性に、申し訳ないな、と思いながらも椅子に座る。
「ほ、他の受験者の皆様は職員の案内に従って会場へと向かってくださ〜い!!」
ザワザワと、困惑した表情をしたまま他の受験者達は別の職員の誘導に従って移動する。
そして、受験者の受付をしていた女性も「呼びに行って来ますね……」と言ったっきりそのまま帰ってこなかった。
そして、1時間後
「スカドゥエ、1時間経ったけど、俺、もしかしてバックられた??」
「バックられたの意味が分からないっすけど、多分そうっじゃないっすか??」
「分からないのに適当に言うなぁ〜。」
「ならアーシの分からない単語を使わないで欲しいっす。」
なんて隣にいるスカドゥエと意味のない会話を繰り返す。
時刻は午後1時30分
受付の人が「呼びに行って来ますね〜」と消えてから1時間経った。
時々、部屋の奥から泣きながら受験の紙を持って外へ出る人達が現れるが、職員に誘導されて消えていった場所から出て来たなので、多分試験を突破できなかったのだろう。
第一関門は魔力量って言ってたっけか?
そうして、肩を落としながら部屋を出る者、怒りながら音を立てて出る者、死んだように正気が抜け、フラフラとおぼつかない足取りで出ていく者を見送ること
3 時 間
時刻は午後4時30分
「なぁ〜、スカドゥエ〜〜」
「なんっすか??」
「流石に遅すぎない??」
「いや、イブキの坊ちゃん……気づいてないんすか??」
「えぇ?何が??」
呆れた顔をしたスカドゥエが前に屈みながら俺を見る
「お相手は坊ちゃんに会う気はないんすよ。要するに、帰れって事っす。」
「な、なんだってーーー?!!!」
会う気がないなら何で時間指定して待たせたっ?!
ショックを受けて、固まっていると思いっきりため息を吐かれた。
「きっと嫌がらせっすよ。ロットの坊ちゃんはそれだけの事をしたんだって分からせるのとあともう一つ。」
「な、なに……?」
「会う価値も無いって事っす。」
ガーン、と頭をカナヅチで叩かれるような衝撃を受けて床に崩れ落ちる。
「だから言ったじゃないっすか。学校入学よりアストロ領主様と会う方がカルロス君と接触できる確率が高いって。」
こうなると思ったんすよね〜、とブツブツと言いながら体の凝りをほぐすように、背筋を伸ばして伸びをするスカドゥエをギッと睨み、椅子に座り直す。
「いや、だからカルロス君パパもダメだって。アイツは俺を信じないし、屋敷にも入れさせてくれない。今回の事が無くったって結果は同じだよ。」
「じゃあどうするんすか〜。このままここにいても同じ事だと思うっすけど〜??」
うぐっ、と言葉が詰まる。
どうする?どうしようか??
この広い学校、不法侵入したとしてカルロス君に会える確率は非常に低い。
外でチラリと見た程度だが、王侯貴族が通う学校のせいか、警備も防犯対策もガッチリとしてある。
万が一、運がよく侵入出来たとしてもすぐに捕まるのは目に見えている。
フゥ、と息を吐き、受付の女性の事を思い出す。
「…………時間はどうあれ待っていろ、と言われたんだ。限界まで待ってやる。」
「………………正気っすか??」
「スカドゥエは先に帰って良いぞ。」
「冗談言わないで欲しいっす。離れたらどうなるか分かっているくせに。」
ギロリと睨まれて、ビクッと肩が上がる。
言ってはいけない冗談だったな、と反省しながら時計を見る。
午後4時45分
最後に受験者を見てから1時間は経っている。
きっとそいつが今日の最後の受験者だ。
トボトボと肩を落として帰ったあたり、落ちたのだろう。
なら、今日の合格者は無し、ということか。
背もたれに背を預けて天井をみる。
天井にも、外装に描かれていた青い鳥と冠のイラストが描かれていた。
「もしかして、青い鳥と王冠がこの学校のシンボルなのか??」
ふと、疑問に思った事を口に出す。
すると、
「そうですよ。よくぞお気づきになられましたね。」
「っ!!」
スカドゥエでは無い、年老いた男の声が聞こえた。
視線を天井から声の聞こえた方向へと向ける。
そこに経っていたのは、白いローブを身を包んだ老人がニコリと人の良さそうな笑みをしながら立っていた。
カルロス君が通っている学校名、ド忘れしてました!!笑
なので初期の学校名に変更してまふ!!




