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拝啓、くそったれな神様へ  作者: なっなな〜
ループする世界
42/45

会合と決裂




待てど暮らせど、来る気配のないカルロス君に諦めをつけて帰ろうと荷馬車を動かしてもらった。


そして、何気なしに荷馬車から顔を出し、アストロ邸をみる。


バチッ、と窓から顔を覗かせる男と


目が、合った。



ザワザワと、心がざわつく。


あの男から、()()()の気配を感じる。



「…………イブキの坊ちゃん??どうしたんっすか?」


「…………。」


荷馬車から顔を出して固まる俺の異様な様子を察したのか、声をかけてきた。


「スカドゥエ、今すぐ引き返して乗り込むぞ。」


「えっ?!!今からっすかっ?!!強行突破は無謀だって言ったっすよね?!」


「俺をあそこに投げ飛ばしてくれればそれで良い。」



そう言って、目が合った男がいた部屋に指を刺す。



「あそこって……、3階じゃないっすか!!下手したら死ぬっすよ?!」


「どうしても確認したい事があるんだ。頼む。」


はっきりと感じた。

あの冷えた眼差しをした、あの赤目の男には確かに()()()()()()がある。


俺の真剣な眼差しを見て何かを察したのか、スカドゥエが「しょうがないっすね〜」とため息を吐きながら馬を来た道へ走らせる。


最初に停めてあった場所へ荷馬車を置き、そして何やらブツブツと唱える。


魔法の暗唱だ。


「良いっすか?今、イブキの坊ちゃんに姿隠しの魔法を施しました。なので、今坊ちゃんは魔法をかけたアーシ以外、誰にも見えてない状態っす。」


へぇ、そんな便利な魔法があるのか〜


そう言おうと、口を開けた時、慌てたようにスカドゥエが俺の口を手で抑えた。


「喋ると効果が無くなるから喋ったらダメっす!!それと、この魔法の効果時間は長くて約2分。だから急ぐっすよ!!」


そう言って自分にも同じように魔法をかける。


スカドゥエの体が光輝いたと思った、次の瞬間体が宙に浮く。


「っ?!!」


びっくりして思わず声が出そうになるのを抑えて口を塞ぐ。


今の俺は、スカドゥエの小脇に抱えられている状態だ。

そして、スカドゥエは俺を抱えながらものすごいスピードでアストロ邸へと向かっている。


ものの数秒で門へと辿り着き、高さが3メートルある門をハードル走のような要領で飛び越え、難なくアストロ邸へ侵入する。


規格外の身体能力に恐れ慄きながら、声を出すのを必死に抑えこむ。


綺麗な噴水、花壇を通り抜け、目的の部屋の真下まで行くと、スカドゥエがちょんちょんと俺をつつき、上へ指を向ける。


この場所で合っているのか、という意味だろう。

俺は頷き、肯定する。


その俺の頷きを確認したスカドゥエが、顔を上へ向け、グッと足を折り曲げる。


え?まさかここから3階の高さまで飛ぶつもり…?

俺を抱えながら??


と疑問に思った時にはもうすでに地面から数メートル離れた空中にいた。



『そこは無の空間…』


「っ?!」


飛びながらスカドゥエが何やら早口でブツブツと呟いている。何かの魔法の暗唱だろう。


スゥ、と唱え終わったのか、前を向き、手を伸ばす。(この間約0.5秒)

そこはちょうど目的の部屋の窓だった。


「そんじゃ、行くっすよ!!一応挨拶の準備をしておいた方が良いっす、よ!!!」


「え、えぇっ?!」


そう言って、窓枠に手を掴み、勢いよく足で窓を蹴り破りながら中へと侵入する。



ガシャァァッン!!!



と、ガラスの窓が割れる音が鳴り、その音に反応して中にいた男がこちら側に目を向ける。


そこにいたのは歳がまだ30半ばに見える若い男だ。

中年には見えず、青年にも見えない、黒髪赤目の背が180くらいの暗い目をした男が、目を見開いて俺を見ていた。


コイツがアストロ領、領主。


目の前の男が領主と気づき、すぐさまスカドゥエの脇から脱出し、自分の足で床に立つ。


「おっはようございま〜す。突然窓からのご訪問、申し訳ございませ〜ん!あ、俺の事、分からないといけないので、一応名乗らせていただきますね!!」


そして、ここに来るまでに散々練習した貴族の礼というものをして、自己紹介をする。


「俺の名前はロット・フォン・アスタ。アスタ領領主の息子だ。知らない訳ではないだろ?」


顔を上げた後、ニヤリと口角を上げて挑発的に言葉を放つ。


突然現れた俺に驚いたのか硬直して動かない領主を無視して話を続ける。


「さて、俺が貴方に会いにきた理由は分かるな??」


その俺の声に状況が飲み込めたのか、ハッとした後、睨みつけられた。


「あんなふざけた内容、私が本気で信じると思っているのか??」


内容、と言われて一瞬、頭に「?」が浮かぶ。

そして、それが手紙の事だと察して慌てて話を合わせる。


「あ、あぁ…!そうだ、それもある。だけど、その話の前にアンタに聞きたいことがある。」


「?」


手紙の内容のことも話し合いたい。

だが、その前に男から感じる神の気配について問いかける。


「アンタからアーカイブ(仮)()の気配を感じた。この巻き戻りは、アンタの仕業か??」


シーン、と辺りが静かになる。

領主は何も反応を示さない。


この男から感じるアーカイブ(仮)()の気配。

これは決して間違いではない。


だが、


「………なんの話だ??アストロ家没落の次は神?巻き戻り?私をバカにしているのか?!ふざけるのも大概にしろ!!」


領主の怒りの声でその言葉を本気で言っていることだと分かる。

それにこの口ぶり、これまで巻き戻った世界の記憶もなさそうだし、本当に何も分からないっぽいな。


腕を組んで、目の前の領主をジッと見つめる。


じゃあコイツは何なのだろうか?

神の気配は感じるのに、その影響を受けていない。


じゃあ、おれの感じているこの気配は勘違い??


ふぅ、と一息吐いて、一旦考えを切り替える。

本人が知らない以上、これ以上問い詰めても意味がない。記憶がないのなら、きっと巻き戻りをしているのは領主じゃない。


でも神の気配がある以上、なんらかは関わっている気がするんだけどなぁ〜


「分かった。記憶がないのなら神やら巻き戻りやらの話は忘れてもいい。だけど、もう一つ話を聞いてもらってもいいか?」


「……それは、手紙に書いてある内容か?」


なんだよ!!やっぱりちゃんと手紙は届いてんじゃねーか!!

と怒鳴りそうになったが、抑えて、コクンと頷く。


「一応、聞いておいてやる。何を根拠に??」


「これを。」


そう言って、懐から出したのは封筒。


両親の執務室から見つけた様々な資料だ。


封筒に入ってある書類をすべて見終わったのか、呆れるようにため息を吐いた。


「これは、どこで手に入れた?」


「………アスタ領領主の執務室の机の中にあった。」


「なら、その意味をわからないわけではあるまい。」


つまり、今この王都中、国中に流れているアストロ家の悪い噂と、悪評は全てアスタ家が流しており、アストロ領を陥れて没落を企てているのはアスタ家だ、という事だ。


そして、これはその決定的な証拠なのだ。


「………私達の悪い噂の出所は予想はついている。こんなくだらないことをするのはどうせあの不出来な妹だろうと思っていたがまさか本当だったとはな。身内だからって甘やかして放置していたがまさかここまでつけあがるとは思わなかった。」


差し出された封筒を、ポイッと適当に机の上に投げる。


「知っていて、放置したのか?」


「悪評や噂だけで我がアストロ家が没落するとお前は本気で思っているのか?」


「そ、それは……」


正直言ってそれだけでは没落させる事はむずかしいだろう。しかし、問題なのはその後だ。


評判が地に落ちた家で何かしら事件が起きてしまったら?

悪評はその事件の前座にすぎない。


それを言いたいが俺自身、この先どんな事件が起こるかはまだ確信持って言えない。

今俺が知っている事は、誰かがカルロス君を化け物にして何かをしようとしている事。

それだけだ。

しかし、それも確固たる証拠がないので口頭だけ伝えても信じてはもらえないだろう。


特に、この男には。


何も言えずに言葉を失う俺を見て、呆れているのか顔を手で覆ってため息を吐く。


さすが、あの不出来な両親に育てられたまではある。

考えが浅すぎる。


なんて小言が聞こえた気がした。


「要件はもうこれだけか??ならもうここから立ち去れ。そして2度と私達の前に現れるな。」


「………俺の話を最後まで聞く気は?」


「聞く必要がない。」


そう言って話を終わらせ、ドアへと向かう。


だが、いきなり領主の足がピタリと止まり、ゆっくりと俺の方へ顔だけ向けた。


訝しげな表情をして、俺を見る。


まるで何かに気づいたように。

実際、何かに気づいたんだろう。


窓のガラスが派手に割れる音と、不法侵入してきた俺の声に誰も反応していない、という事に。


外にはもちろん警備員がいるのにも関わらず、誰もこの騒動に気づかずにいる事に。


そして、先ほどまで隣にいたスカドゥエが()()()()()()()()()()


その事に気づき、警備員を呼ぼうとしたのかすぐさま扉に向かい取ってに手を伸ばす



「今更気づくなんて、アンタも大概鈍いっすね。」


領主が取ってを握るその前にスカドゥエが領主の身体を拘束し、その場から動けなくする。


「………………はぁ〜。アンタには現状のピンチを知ってもらうのと、俺たちの味方になって欲しいって事でちゃんとお行儀の良い丁寧なお話し合いがしたかったんだけど、その様子だと無理そうだな。」


うつ伏せで拘束されている領主に気だるそうに近づき、ダメ元で交渉する。


「最後にもう一度だけ聞く。俺に協力してくれる気は?」


「ない。」


間髪入れずに拒否されて思わず笑ってしまう。


「ダメか〜。もういいよ、スカドゥエ。カルロス君のパパと協力する線は諦めよう。」


「いいんすか??協力する方がカルロス君に会えると思うんすけど。」


「むりむり。例え協力する事になってもこの人は絶対にカルロス君に会わせてくれない。俺たちをめちゃくちゃ警戒してるからね。」


「え〜、ここまで来たのに結局こうなるんっすか?」


ブ〜ブ〜と文句垂れながら領主の拘束をとき、俺の隣へ戻る。


「仕方ないだろ?パパは協力してくれそうもないし、最終的には()()()()()()()()()()()()()()()()()。アストロ家は、カルロス君がその先、生きていくのに必要かな?って俺個人思っているだけで必ずしも必要とは限らないし。」


「ひぇ〜、それってアストロ家も、ここの領主も別に死んでも良いって聞こえるっすけど。」


「ん?そう言っているけど。」


クルッと領主に背を向けて、窓の方へと歩く。

パリパリと割れた窓のガラスを踏みながら、窓に近づき、窓枠に腰をかける。


「これだけは断言するぞ。お前じゃカルロス君は救えないし、これから起こる悲劇は避けられない。」


「なっ…!!」


「覚えていられないお前じゃ、運命から逃れられない。せいぜいここで胡座をかいて絶望しろ。」


「そんじゃ、お邪魔したっす〜」


再び、スカドゥエの小脇に抱えられる。

そして、そのまま窓から落ちるように部屋から退出してアストロ邸を出る。


途中で使用人達とすれ違い、ギョッと驚かれるが、特に止められる事もなく、難なく門も飛び越えて停めてある荷馬車の方へと向かう。


そして無事、アストロ邸を抜けて、荷馬車へと乗り込んだ。


チラリ、と先ほどまでいた3階の部屋へと目を向けると、変わらず暗い目をした赤目が俺たちを恨めがましい目で睨んでいる。


「めっちゃくちゃ睨んでるじゃないっすか。最後の言葉は余計だったんじゃないっすか?」


「……腹が立ったんだからしょうがないだろ〜。それに、事実だ。」


今回含めて14回、巻き戻っている。

それはすなわち、カルロス君の近くにいながらも14回死なせている、という意味にもなる。


「どっちみち、あの領主との協力関係は無理だよ。噂を流したのもアスタ家って事も知っていたから、尚更だろ。」


もう、誰も信じない、信じられないって目をしていたあの男を顔を思い出す。

あれはとてもじゃないが説得は無理だ。


ゴロン、と寝っ転がって目を閉じる。


「とりあえず今日は大人しく宿に帰って、また後日今日と同じ場所でカルロス君が来るまで張り込むか…」


と、言ったところでスカドゥエが言いにくそうに口を開く。


「あの、イブキの坊ちゃん……、多分あの場所で待っててもカルロス君が乗っている馬車は来ないっすよ。」


「…えっ?!なんで?!!」


衝撃的な言葉に、思わず身体を起こしてスカドゥエのいる運転席へと移動する。


スカドゥエは、若干引き気味になりながらもその理由を話す。


「なんでって……、逆に聞くっすけど、あんなにカルロス君と会わせない、という態度の領主様が、アーシ達()がいると分かってる道をカルロス君に使わせると思うっすか??」


「お、思わない……。」


よく考えなくても分かることに今更ながらに気づいてショックを受ける。

しかも、あの最後の一言を言ったせいで更にあの領主は俺達を警戒するだろう。


最後のはちょっと失敗した。


「それに、アストロ邸に入った時に気づいたんすけど、カルロス君は馬車を使って学校には行ってないっすよ。」


「え、じゃあどうやって……」


「チラッと見えただけっすけど、確かにアレは転移魔法陣だったっす。多分、それを使って移動しているから外で張ってても無駄っすよ。」


「転移…、そんな魔法まであんの?」


「かなり高度っすけどね。アストロ家の魔力だからこそ使える魔法って感じっす。」


「ほへぇ〜……」


アストロ家のあまりにものポテンシャルの高さに言葉を失い、呆けていると、横から叱責が飛んできた。


「ほへぇ〜、って感心してる場合じゃないっすよ。どうするんすか?もうカルロス君に会う手立ては無くなったも同義っすよ??」


呆れと少しの怒りが入り混じった声に、少し居た堪れない気持ちになるが、気持ちを切り替えて次の手段を決行する。


ずっと考えていた、というかこれが本命だ。


「おいおい、スカドゥエさん、そんな悲観せずともまだ手はあるじゃないか。」


「……………本気っすか??」


俺の考えている事をすぐに察知したのだろう。

顔を歪ませながら、再度確認してきた。


「一応、聞いとくっす。その手って……」


「おう!」


ニカッと笑いながら、王都の方へと指を刺して大声で、完全にスカドゥエが聞き逃さない声で叫ぶ。



「王都にあるクラスタン魔法学校に入学する!!」

 

「だと思ったっすっ!!!!」





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