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拝啓、くそったれな神様へ  作者: なっなな〜
ループする世界
40/45

アストロ領

今回は少し長いですっ、、、





「坊ちゃん…、イブキの坊ちゃんっ!!」


スカドゥエの声に反応して閉じていた目を開ける。

安定のない所で寝たからか、身体がギシギシと痛むがもう慣れたものだ。


ボヤける視界の中、荷馬車から顔を出して外を見る。


一瞬、強い日差しに目が痛み、閉じるがすぐに開けて外を確認する。


辺りが木々で埋め尽くされ、手入れが行き届いていない獣道がいつの間にか設備がキチンとされた綺麗な道に変わっている事に気づいて目を見開く。


「もうそろそろアストロ領に入るっすよ!」


「や、やっと……??」


ゲッソリしながらも安心したようにホッと一息つく。


思えばアスタ領からアストロ領までは遠い道のりだった。


「やっとって……これでも無理してすっごく飛ばしたんっすからね!この子達にはアストロ邸に着いたらめいいっぱい休ませてやらないと。」


「すっごく飛ばして1ヶ月か〜。」


「普通はもっとかかるっすよ。」


あれから1ヶ月、俺達はやっと目的地であるアストロ領に着くことができた。


「苦節1ヶ月、よく頑張ったっ!!」


「頑張ったのはアーシと馬っすけど…。」


若干クマのあるスカドゥエの姿を見て、身体が固まる。


「夜の番、魔獣や強盗の対処、街への買い出しその他諸々、アーシはほとんど不眠不休で働いてるっすけど。」


スカドゥエの言葉と視線がグサグサと背中に刺さる。


「い、言っとくが俺は全部分担してやろうって言ったよなっ?!!」


「そうっすけど、イブキの坊ちゃんが死んだらアーシも死ぬ事を忘れてないっすか??その『運命の書』も確かに凄いっすけどアーシにとってはまだ得体の知れないものっすから……。今更っすけどいつもヒヤヒヤして見てたっすもん。」


あぁ、だから戦闘時いつも俺の方をチラチラ見てたのか〜、とその時の事を思い出す。


「いやでも少しは信用しろよ……!!!」


それにしても何でこんなに信用されないのか、全くもって疑問である。

強盗に襲われた時も、魔獣も対峙した時もこれといって足手纏いのような行動もしていないのに。


「とりあえず、アストロ領に入って最初の街に入ったら休もう。1週間くらい。」


「え、アストロ邸に行かなくても大丈夫なんすか?」


「大丈夫だ。この頃は2ヶ月くらいで巻き戻っているから多少ゆっくりしてもまだ余裕はある。」


「そうっすか。」


「だからスカドゥエはゆっくり休め。俺の事は気にするな。街の中なら命が危険に侵されることもないだろうからな。」


「……それじゃ、お言葉に甘えさせてもらうっす。」


と、珍しく俺の意見を素直に聞くスカドゥエによほど疲れている事を察して苦笑する。

原因の俺が笑うのも失礼な話だが……


そうしてアスタ邸を出て1ヶ月と3日後、俺たちは長い道のりを経てアストロ領に入り、街へと入る事ができた。



―――――――――――――――――――――






「っあ〜〜っ久しぶりの布団っす〜!!」


ここは街の中にある宿

内装はボロくて古いが、今までほぼ野宿状態で寝泊まりしていた俺たちにとっては最高の部屋だ。


久しぶりの屋根と壁のある個室で休める嬉しさからか、スカドゥエのテンションが爆上がり、ボフッと音を立てて布団に飛び込む。

が、そのままのうつ伏せの状態で、動かなくなった。


あはは〜子供かよ〜と、最初こそは笑って流していたが、動かなくなったスカドゥエを見て一瞬で血の気が引いて冷や汗が出る。


まさかのここで過労死?!

俺が側にいても「死」は免れなかったのか?!


と慌ててスカドゥエの側に寄ると、普通に寝ていただけだった。

肩を上下に動かし、スゥスゥと微妙に呼吸音も聞こえる。

その規則正しい呼吸をしながら眠りについているスカドゥエを見て、一気に安心する。


「何だよ、紛らわしいな…。」


胸を撫で下ろしてから出かける準備を始める。


スカドゥエのこの様子だと後数時間は寝ているだろう。ついでに晩御飯も買ってくるか、と鞄に少し多めにお金を入れて書き置きを残してから宿を出る。



「さすが、王都に近いだけあって賑わっているな〜」


街に入った時にも思った事だが、ここ、アストロ領の街はアスタ領の街とは比較にならない程に大きく、賑わっている。


お店も豪華でその分身分の高そうなお貴族様もチラホラと見かける。


「さて、まずは……情報収集だ!!」


1番欲しい情報は、ロット君の居場所だ。

だけど、いきなり知らないやつから領主様のご子息の居場所を聞くなんて怪しいことこの上ない。


それとな〜く会話をして、それとな〜く聞き出すのが1番理想的で怪しまれずに済む方法だが……


う〜ん、と考えていると、お腹からギュルルルル、と大きな音が鳴る。

時計がないからわからないが、太陽の位置的にちょうどお昼ぐらいだろう。


「とりあえず、定食屋に行くか……」


お腹を抑えて、辺りを見渡す。

様々なお店の名前が目につき、どの定食屋がいいか選ぶ。


1番目に付く看板があるが、煌びやかで綺麗な看板の豪華な外装を見るに、きっと貴族御用達の食事処だ。そこは候補から外して……


「おに〜さん!!こんな所で何してるの??どこに行こうか迷ってる??」


「!!」


消去法で行く店を選んでいると、後ろから肩をたたかれ、話しかけられる。


「迷っているなら私の家族がやってるお店に行かない??お値段も安くて美味しいんだよ!!」


「え?あぁ…はい?」


「おっ!!じゃあ早速案内するね!!こっちだよ!」


「え?!今のは合意じゃなくって……ぁあ〜」


聞き返したつもりが合意とみなされて腕を強く引っ張られる。


セミロングで半袖のシャツに胸元には小さなリボン、膝丈スカートにエプロン着用していることから少女はきっとその定食屋で働いているんだろう。


外で客でも捕まえてこいって言われているのだろうか……。

それにしても多くいる人の中で何で俺??


そんな疑問を口に出す事なく、大人しく引っ張られながら少女が働いているであろう店に大人しく着いて行く。



「とうちゃ〜ん、連れてきたよ〜!!」


ガランガラン、と音を鳴らし、ドアを開ける。


店はやっているのかと思うほど空いており、部屋の雰囲気も心なしが薄暗い。

本当に定食屋……??


危ないところに来てしまった感が否めない中、辺りをキョロキョロと見渡していると、掴まれていた手をぱっと離される。


「君は特別なお客様だからね。ほら、そこのテーブルに座って。」


と、部屋のど真ん中にあるテーブルに誘導される。


「え、いや……、俺、かえ……」


「なぁに??聞こえないんだけど。」


「あ、いえ、何でもありません。」


「そ、なら早く座って。」


??俺、お客様だよね??


妙に断れない雰囲気に呑まれて大人しく指定されたテーブルに行き、椅子に座る。


ギシッと木の椅子が軋む音が鳴った時、シュッ…と長細い物が音速で動く音が聞こえた瞬間、気づいたら椅子ごと縄で括り付けられていた。


あれ、なんかデジャヴ??


「まさかこんな所でアスタ領のご子息に会えるとは思わなかったよ。()()会えて光栄です。ロット様。」


「………え?何で名前……」


自分の名前を呼ばれ、ギョッとして女の子を凝視する。

口こそ口角は上がっているものの、その目には光はなく、空虚だ。


「なんで?なんで名前を知っているかって事??あぁ……あぁ、そうか。そうだね。君は覚えてないよね。平民の私のことなんか。よく下民下民って言っていたものね。」


今度はフフフと声を出して笑い出す。

ただし、その目は空虚である。


怖い、怖すぎるっ!!!

そして、この感じ、なんか覚えがあるぞ……!!


「忘れたのなら教えてあげますよ。私はあなたのこの街1番の学校の、元同級生ですよ。まぁ、と言っても学校はあなたの醜い嫉妬によって辞めさせられましたがね。」


ロット君ーーーーーーーー!???!!?!


こんな所にまで来てロット君の弊害が出てくるとは思いもしなかったよ!!

そういえば、八つ当たりで生徒を退学にさせた事があるってスカドゥエが言っていたなっ!!?


「へ、へぇ〜、そんな酷いことする人っているんですねぇ〜」


「何の冗談ですか??お貴族様ジョーク?何にも面白くないんだけど??」


ダ、ダメだったっ!!

しかも変に誤魔化したせいでもっと怒らせてしまったかも知れない…。

背後にドス黒いオーラを感じる……。


冷や汗を流しながら、必死にどう誤魔化そうかを考える。


いや、もうここは開き直って全力で他人のふりをするか?というか、実際中身は本当に他人なのだから知らない事を貫き倒せば良いんだ。


「あ、あの……本当にあなたの事を知らないんです。俺は別に貴族でもないし、貴方と同じ平民ですよ。」


「へぇ〜、平民がこ〜んな大金持っているんだぁ〜」


そう言って俺の持っていた鞄を手に取り、中からお金を取り出し、自身のポッケに入れる。


「ちょっ!!それは俺とツレのご飯代と予備のお金なんだけどっ!!」


「ロット様と同じ名前で、同じ黒髪、赤目。それで私と同じ平民ですって??服が変わったところで誤魔化せるとでも??もう少し頭使ったら??あぁ、使ってもその程度の誤魔化ししか思い浮かばなかったのね笑」


プププ、と少し小馬鹿にしながら俺を見下ろす。

その姿と態度に流石に腹が立ってきた。


「…………そうだな。」


「なぁに?やっと自分がロットだって認める気になった?」


「違うけど……でも、どうせ信じないだろ?」


「当たり前でしょ。」


ギッとキツイ目で睨まれる。

確かに彼女はロット君の被害者なのだろう。だが俺は全く持って無関係なのだ。制裁を受ける理由はない。


ハァ〜、と深い息を吐く。


仕方ない。こんなところで時間を食うわけには行かないし、この子に付き合ってる時間も惜しい。さっさとここから出よう。


そう決めてて椅子から立ち上がる。


「っ?!!どうして?!縄がっ……」


「縄?そんなもの、最初から無かったよ。」


何も無かったかのように手を広げて椅子とテーブルから離れる。

また何かされたらたまったもんじゃない。


「そんな?!だって、座ったら縄が出てくるように細工して……」


「壊れてたんじゃない??」


というか、そういう風に俺が書き換えた。

細工だと言うことは座った瞬間に分かったからな。

もしまた拘束される状況が起こった時の為に『運命の書』が使えるよう練習していて良かった〜!


と、心の中でガッツポーズをしてドアの方へと向かう


「君は魔法を使えないはずじゃあ……?」


呆然と俺の方へと目を向けて突っ立っている少女が信じられないものを見たような目で俺を見ている。


厳密には魔法……ではないけれどそういう事にしておこう。


「君の知るロット君は使えなかったの??」


「そんな、本当に人違い…??名前も容姿も同じなのにっ?」


「うん、そうだよ。ロット君とやらが君に何をしたのか分からないけれど、人違いで復讐されるなんてごめんだよ。」


「え……、ご、ごめんなさい……。そうよね、見た目も名前も一緒だけれどよく見たらあなた、ロットより覇気も貴族様のようなオーラも無いわ……。それに、いつも一緒のキツネ顔の従者もいないし……、そういえば敬語もきちんと使えてたわ……!!」


スカドゥエ連れて来なくて良かったーーーー!!!!

心の底から安心し、心臓の音がドクドクと鳴る。


さらっと貴族のオーラと覇気がないとか言われたが、誤魔化せた事だし今はよしとしよう。


「いいよ。お金を取られた以外、何もされてないし誤解が解けて良かった。」


「あっ!そうだ、お金っ!!ごめんなさいっ返すわ!!」


そう慌てた様子で俺の鞄から取ったお金をポケットから取り出す。

差し出されたお金は俺が持ってきた所持金、全てあった。


なんだ、ロット君に関すること以外ではとても素直でいい子じゃないか。


「いいよいいよ。あ、ちょうど昼ごはん食べたかったし、頼んでいいかな?それはそのお代にして。あ、もし良かったら持ち帰れるお弁当を作ってくれない?」


何とか納得はして信じてもらえたので、ここでの食事を決める。

根はいい子だから、別に食事に毒とかは入れないだろう…。


「え、えぇ、良いけど。逆に良いの?こんな失礼な事をしたのに……」


「間違いは誰にでもあるよ。気にしないで。」


まぁ、実際は合っているんだけど……

と、少しの罪悪感を感じて店の端にあるテーブルに行き、椅子に座る。


「ありがとう。ところでご飯は何にする??お弁当も決まったら教えてね。」


「このお店のおすすめで。お弁当もおすすめのをお願いできる?もうひとつは……野菜炒め弁当をお願い。お代は足りる?」


「全然、足りるよ!むしろ余るくらい!!注文承りまました!ちょっと待っててね!!」


そう言ってメモした紙をヒラヒラとなびかせながら厨房へと消えていった。


遠くから、「とうちゃん、人違いだった!だからその生ゴミ料理は出さなくて良いよ〜」

なんて会話が聞こえたが、聞こえないふりをしておいた。



――――――――――――――



「へぇ〜、君、異国から来たんだね。その目と髪の毛もその国の民族の特徴なんだ。」


「そうそう。ちょっと旅行でここまで来たんだ。」


出されたおすすめの料理を食べながら、目の前の少女と話す。

自分の目と髪の色の理由をいつかのスカドゥエが門番に言っていた事を思い出し、その設定を使う事にした。


「だからこんなにお金が……本当にごめんね。勘違いでこんな強盗まがいな事をして…」


「俺と同じ容姿のやつに酷いことをされたんだろ?しょうがないよ。」


「うん……。あの、こんな事言われるの、気分悪くなると思うけど……」


「……?うん?」


チラチラと、言いにくそうに眉を下げて俺の様子を伺いながら恐る恐る口を開く。


「その容姿、隠した方がいいかも……。」


そう言われた瞬間に、最後の一口のご飯が吹き出しそうになる。


何とかそれを阻止して、水を飲んで口の中にあった物を無理やり飲み込む。


「またかっ!!!」


ダンッと、コップを勢いよく置いて、思わず叫んだ。


「ま、また??」


「い、いや、こっちの話……続けて……」


「え、えっと、その、ここの領主様…アストロ領の領主様のご子息が、あなたと同じ黒髪赤目なの。知ってる??今、そのご子息の学校での悪行の噂が出回っているから評判がすこぶる悪いの…。」


「あ、あぁ…。なるほど…。」


「だから、王都に行くなら気をつけてね。もしかしたら、またこんな目に遭うかも知れないから。」


こんな目に、とは、あの縄でグルグルに拘束されて生ゴミ料理を食わされる事だろうか……

いや、もしかしたらそれ以上の酷い目に遭う可能性があるか……

むしろこの程度で済んでいるのが奇跡かもしれない



「………ん?学校??」


「……?えぇ。」


「領主様のご子息の行ってる学校を知ってるのか?」


「知ってるわよ。なんせ、ここの領主様のご子息の事だもの。領民みんな知っているわよ。確か、王都1番の学校のクラスタン魔法学校よ。」



き、来たーー!!!まさかのここでカルロス君のいる学校を特定できた!!


「王都にある、学校…クラスタン魔法学校か……」


今、そこにカルロス君がいる。

ここからその王都まであと何日、何時間かかるかわからないけれど、確実に近づいている。


「何?ご子息に何か用事があるの??」


「ん?いや、ちょっと見物したいと思って。ここに来る前にも街に寄ったんだけど、そのご子息の噂がそこまで来ていたからね。どんな悪人面してるのかな〜、と、怖いもの見たさってやつだな。」


「まぁ、ほどほどにね。」


「はい、おまちどうさま。お弁当だ。」


少女と会話をしていたら横から手が伸びてきて、テーブルの上にお弁当が2つ置かれた。


「あ、ありがとうございますっ!!料理、めちゃくちゃ美味しかったです!!」


お弁当を持ってきてくれたガタイの良いおじさんにお礼を言って弁当を手に持ち椅子から立ち上がる。


ちょうどご飯も食べ終わった事だし、1番有益な情報も手に入れたので、すぐに宿へ帰ろうと出口のドアへと進む。


「あ!まっておつり!!」


「あ〜、おつりはいらないよ!美味しい料理と、君のおかげで知りたかった事を知れたから、そのお礼。」


「え、でも……」


「それじゃ、さようなら。」


ヒラヒラと手を振り、ドアの取っ手を持って扉を開く。


ガランガランと入った時も同じ音が鳴り、俺はスカドゥエが眠る宿へと向かった。






少しは進展…したかな?!

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