有益な情報
今回も長いですっ
「いらっしゃいませ〜!!空いてる席へどうぞ〜!!」
カランカランとベルの鳴る音と共に店へ入ると同時にまるでメイド服のようなフリルを沢山つけた可愛い制服を身につけた店員が明るく可愛い声を上げて、俺たちを歓迎する。
店内はまるでRPGに出てくるようなお店のまんまのイメージで木製の机や椅子が並んでおり、昼時もあってガヤガヤと賑わい、席が埋まっていた。
カウンター席ももちろんあり、その奥には料理を作っているのか、調理服を着た料理人が数人慌ただしく動いている。
「うわぁ〜、めっちゃくちゃ人がいるっすねぇ。座れる席ないんじゃないっすか??」
辺りを見渡したスカドゥエがゲンナリしながら自分の声が掻き消されないように俺の耳の方に顔を近づけて話す。
「それだけ人がいるって事は良いことだ!得られる情報もその分多くなるはずだし、これは期待できるぞっ!!」
「まぁ、それはそうっすね。」
そういってスカドゥエがもう一度背筋を伸ばして店内全体を見始めた。
俺も同じように周りを見渡す。
1人で食べているやつもいるし、団体でお酒を飲んでいるやつもいる。
数分見渡したが、空いてる席はやっぱり見当たらない。
同じようにスカドゥエも見つけられなかったのかお手上げ状態のポーズを取り、肩をすくめる。
「とりあえず店内を歩こう。その中で話しやすそうな人を見つけたら話しかけるとしよう。」
「そうっすね。このまま棒立ちしてても時間の無駄っすからね。」
スカドゥエに方針の了承を得て、俺たちは早速行動に移す事にした。
早速、行動しようと足を前に出した時、
「それじゃ、アーシはあっちの方から行くっすね。」
片手を上げて、ゴツい輩の方へ体を向けるスカドゥエに驚き声を上げる。
「えっ?!!一緒に行動しないの?!」
「それじゃあ効率悪いっすよ。ちゃっちゃと集めてちゃっちゃとここから出ましょう。席もないからご飯も食べれそうにないでしょうし。」
そういってサッと片手を上げ足を前に進めたスカドゥエはスゥ…と人ごみの中に消えていった。
え〜…とポツリと呟く。
急に1人になった孤独感と不安感が押し寄せてきて少し足が震えてしまう。
が、自身の心を奮い立たせ震える足を両手で叩き喝を入れた。
まずは今立っている場所から1番近いテーブル席に移動する。
そこで1人俯いた顔をした、いかにも気が弱そうな男がいたので警戒されないようにこれまでの街での情報収集で身につけた人当たりの良い明るい感じの声で慎重に声をかける。
「そこのお兄さんっ!そんな俯いてどうしたの??大丈夫??」
「……………ん?あぁ…大丈夫だょ…。」
「え…本当に……??」
ゆっくりと顔を上げて今にも消えそうな声でかろうじて返事をくれたお兄さんに本当に大丈夫か?と割と本気で心配する。
なんだか顔色も血が通っているとは思えないほど白くて具合も悪そうだ。
二日酔いか?と思い、お兄さんが持っているグラスの中身を見るが匂いも色もお酒ではない感じだ。
いよいよ心配になり、情報を得ている状況ではないと判断して病院に連れて行こうか問いかける。
「具合が悪いなら近くの医者まで連れて行こうか??お兄さん顔色悪いよ??」
「あぁ……。君は優しいね……。」
「………ええっ?!!お兄さんっ?!!」
お兄さんがそう言った瞬間、目から大粒の涙が流れ出てきて次第にしゃっくりをあげるほどに泣き始めた。
泣き始めてから数分目元を赤くし、しゃっくりしながらも泣き止んだお兄さんに俺は背中をトントンと規則正しく叩き慰めていた。
「久しぶりにっ、君みたいな心優しいっ青年に会ったよ……。ありがっ、とうね……」
「お、お話はしゃっくりが止まってからで良いですよ…。」
なんて律儀な人なんだろう…。
礼儀正しいお兄さんに会ってやさぐれていた心が少しほぐされる気分になる。
こんな純粋な感情を向けられたのは随分と久しぶりのように感じる……。
「でも、本当に大丈夫ですか??医者に行かなくても……」
「僕はっ、びょ、病気じゃないから大丈夫っ、だよ。ただ、最近ショックな事がおこっ、起こってね……。ここの料理を食べてっ、思い出しっ、てしまってね…。」
ハハハ、と儚げに笑うお兄さんに少し同情しながらも嫌な予感を感じる。
最近起こったショックな出来事……。
いや、まさかな〜……
「バカな噂話を流したっ、弟も悪いんだけどさ……。でも、それ如きで?って思ってっ、しまうんだよ。そんなくだらっ、ない事で処刑なんてって……」
そう呟いた後に、また涙がポロポロと流し始める。
こ、この人は善良な領民(被害者)の身内だぁっ!!!
気づい瞬間、頭に雷が落ちたような衝撃が走った。
俺はロット君じゃないけど、弟の死に追いやった仇(体のみ)が目の前にいて更には慰めているこのカオスな現状に冷や汗が出る。
「ゆっ、許せないよ……っ!!できる事ならっ、この手でボコボコっ、にしたいっ!!!今っ、目の前に現れるのならっ、仇をっ、打ちたいっ、!!!」
「…………………………。」
今、目の前に仇がいるっ!!!
あなたの弟を処刑に追いやった仇(体)が目の前にっ!!!
これは、この人にだけは絶対に正体をバラされてはダメだな……。
バレたら即ボコボコ確定にプレッシャーがかかり、トントンと叩いている手が少し震える。
「あ、ごめんね…。怖がらっ、せちゃったかな……?」
手が震えていることに気づかれて逆に謝られる。
まずい!と思い、とっさに言葉を吐く。
「い、いえっ!!その事件の事は知ってます…!!そう思うのは当たり前の事ですよっ!!本当に許せませんよねっ!!あのクソ坊主っ!!」
俺は絶対に殴りますよっ!!もシャドーボクシングのように何もない空間に腕を伸ばして殴る動作をする。
「クソ坊主って…。君は面白いね……。」
クス、と少し顔の色を取り戻したお兄さんが笑う。
上手く誤魔化せたことに安堵してからお兄さんと話を続ける。
「弟は人と話す事が大好きな奴でね……。本当にあった事もあからさまに嘘だろってこともそれはもう楽しそうに話すんだよ。」
「…………明るい弟さんだったんですね…。」
ざ、罪悪感が半端ないっ!!
俺がやったわけじゃないけどできる事ならロット君の代わりに謝りたいっ!!
が、その衝動をグッと抑える。
「中には本当の事も話してくれるけどほとんどが嘘ばっかりさ。その事件のように最強キノコがこの街の中のどこかにあるとか、とある領主が何か画作しているとか」
「本当、信じられないお話ばかりですね……ん?」
何か最後の方に聞こえが悪い言葉に耳が引っかかった。
「とある領主が画作……?それはフォン家とかですか??」
「いや、フォン家は大地に住まう精霊の加護があるからね。その加護があるから豊かで平和だったんだよ。そんな画作なんかしなくても上手くいくし下手に何かすると精霊に見捨てられるから悪い事はできないよ。」
「えっ?!精霊の加護??そんなものがあるんですか?!それに、めちゃくちゃ悪い事してません??フォン家!!?」
「あはは、それはアスタ家でしょ?僕が言っているのはアストロ家の事だよ。」
悪行をやってるんだわ!!これがっ!!と思ったが一瞬で納得した。
そういう事だったか……。
ロット君のアスタ家ではなくて本家のアストロ家の方ね……。
それに、精霊の加護とかもあるのか……。
新しい情報量が多すぎて頭が混乱してくるがなんとか整理をする。
「あそこは7年前までは領主様も人当たりが良くて平和な領土だったんだよ。ある事件が起こるまではね。」
「事件?」
「ある時、何故か暴動が起きたんだよ。僕、その時まだその領土にいたから鮮明に覚えているんだ。」
フゥ、と一息ついてから少し寂しそうな顔をして話を続けるように口を開く。
「別に領主様が食糧とかお金を独占しているわけじゃないのにある1人の領民がそんな感じの噂を流したんだ。領主が横領しているってね。よく考えたらそんなはず無いのにみんなその考えに賛同して騒動を起こしたんだ。そしてそのせいで領主様の奥さんが亡くなったんだ。」
「そんな…っ!!」
「そこからだね。領主様が変わったのは。前まで優しく領民とも交流があったんだけどそれを一切やめて、厳しく取り締まり、税金も高く徴収するようになってしまって…。でもしょうがないよね。そこまで追い詰めたのは他でも無い僕達領民なんだから。」
「………………。」
俺は何も言えずにただ黙ってお兄さんの話を聞く。
その話が、このループに深く関わっていると直感で感じたからだ。
「僕達はその後仕事の関係でこの領土に引っ越してしまってそれからアストロ領の事は分からないけれど、時々弟から聞くんだ。その領主様のご子息のことを。」
「っ!!カルロスく…様の事ですか?」
「あぁ、そうだよ。驚いた。知っているんだね」
「な、名前とあのクソ坊主の従兄弟っていう事だけ知っています。」
思わず反応してしまい、何とか誤魔化す。
軽率な行動をしてしまった自分に殴りつけたくな
「ハハっ!!そうだね。合ってるよ!でも、クソ坊主って言うのは少し控えようか??誰かの耳に入ったら君が大変だ。」
お、お兄さんっ!!こんな仇(体のみ)にそんなお優しいお言葉をっ……
コソッと俺の心配をしてくれるお兄さんに感極まり、胸を押さえる。
「そ、そうですねっ!気をつけますっ!!」
「うん、君には長生きして欲しいからね。さて、どこまで話したっけ??あぁ、そうだ。領主様のご子息の話だ。」
そう言ったお兄さんはグラスを手に取り眉を顰め険しい顔をしてクルクルと中身の飲み物が溢れないようにグラスを回す。
「彼の悪い噂が王都どころかここの領土まで広がっている。彼らを貶めるかのような、そんな噂が。」
「?悪い噂がって……悪いことをしているから流れているんじゃ無いんですか??」
「それだと矛盾が生じるんだよ。言っただろう??アストロ領の領主は精霊の加護を受けている。今のアストロ領は今の所不作もないそうだし領民との仲以外は比較的平和らしいよ。そんなここまで噂が来る程の悪さをしているなら精霊の加護が切れているはずだ。なのに切れていない、と言う事は……」
「誰かが、嘘の噂を流して貶めようとしている……」
「その通り。」
そう言ったお兄さんは、グラスの上に傾けて飲み物を一気に飲み干した。
「僕は嫌なんだよ。優しい人や何も悪い事をしていない人達が苦しんで死んじゃうのは。確かにあの事件以来確かに厳しくなったけど、僕はあの後少ししかいなかったけど、妥当な金額であって決して法外じゃなかったんだ。」
「お兄さん…。」
お兄さんはタン、と音を立ててグラスを置いた後に俺を見つめて悲しそうに微笑む。
「誰かが領主様とご子息の悪い噂を消してくれれば良いのになっていつも思っているんだよ。あの親子には良い意味でたくさんお世話になったから……。できることなら僕がしたいんだけどね、残念ながら僕じゃ役不足みたいだ。」
「…………俺が、その噂を消します。」
「………………?」
「俺がその噂を消してやりますよっ!!良い人が死んで悪い奴が生きているなんて、そんなの絶対許せない事ですからねっ!!お兄さんの望みは俺が叶えますっ!!」
ロット君(の体)をボコボコにするのは勘弁して欲しいけれど…
拳を胸の方に持っていき、お兄さんに聞こえるような大きなで叫ぶ。
お兄さんはそんな俺の叫び声のような宣言に赤く腫れた目を大きくさせた後、プッ、と吹き出し大きな声で笑い出した。
「アハハッ!!君、本当に優しくて面白い子だねっ!!うん、ありがとう。期待してるよ。」
先ほどの白い顔とは打って変わり頬を赤くさせて笑うお兄さんに少し安心した。
「そんなに笑わなくても…。でも、お兄さんのおかげで有力な情報を得られました。ありがとうございます。」
「有力な情報、ね……、なにか訳ありかい??」
フフフ、と組んだ手を顎に乗せて俺を見上げる。
「そうですね。まぁ、言っても信じてもらえないと思います。」
そう言って肩をすくめる俺を見てお兄さんは何かを察したのかそれ以上は追求をしてこなかった。
「そうかい。君がそう言うのならきっと僕じゃ想像も出来ない程の大きな役目を君は持っているんだね。」
「出来れば変わって欲しいんですけどね……」
「それはやめとくよ」
げっそりと肩を落とす俺を見てまた、ハハハと声をあげてお兄さんが笑う。
そうこうしていると後ろの方からスカドゥエの俺の名前を呼ぶ声が聞こえてきた。
「坊ちゃん!!イブキの坊ちゃんっ!!」
「おや、イブキって言うのは君の名前かい??誰かが呼んでいるよ?」
「え、もしかしてもう終わったのか?!」
スカドゥエの仕事の速さに度肝を抜かす。
「お兄さん、俺もう行くわっ!!あ、これ情報くれたお礼!!それじゃ、ありがとうっ!!!」
お兄さんに片手をあげて事前にスカドゥエに渡されたシギーを数枚置いてお礼を言い、その場から離れる。
「こちらこそ、話聞いてくれてありがとう、イブキ君。」
お兄さんと軽く目を合わせた後会釈して急いでスカドゥエの方向へと向かう。
お兄さんにもらった、有益な情報を大切に記憶しながら人混みの中へと入っていった。
イブキ君はお兄さんが話している間、座りたいなぁ、と思いながらずっと立って聞いていますwww
読んでいただきありがとうございました!




