お金の単位と情報収集
遅くなりすみませんっ!!
少し長いです!!
9回の巻き戻りに10回目の今日
なんやかんやあり長く険しい道のりを野を越え山越え谷を越えてやっとこさ俺はスカドゥエと共に街へと入ることが出来た。
毎度ながら街に入るまでの道のりが長すぎるんだよなぁ……
と声に出そうになるのを堪えて顔を上げて前を見る。
「それじゃ、情報を集めていこうか!まずはあそこの肉屋から!!」
鼻腔をくすぐるお肉のいい匂いに口から垂れそうになる涎をなんとか飲み込み、チャキ、と伊達メガネからサングラスへと掛け直してから横にいるスカドゥエに指示を出す。
「坊ちゃん…アンタ、ただ肉を食べたいだけなのでは??なら正直にお肉食べたいって言えばいいじゃないっすか……。」
はぁぁと深すぎるため息を吐いた後に腕を組み呆れた顔を俺に向けながら苦言を言う。
心なしか何故か不機嫌になっている気がするが気のせいだろうか??
「まぁ、確かにそれもあるけど……いや、ちゃんと聞きたい事があるから聞きにいくんだぞ?!!」
「情報ならアーシが持ってるっすけど?なんでアーシに聞かないんすか??」
あぁ、それで不機嫌なのか??
自分がいるのに他のどこかの誰かも分からない一般市民の情報に頼る俺に機嫌を損ねたのか……。
スカドゥエの不機嫌の理由が判明し、少し倦厭しながら諭すように説明をする。
「あのなぁ、スカドゥエじゃお金かかるだろ。それに時間も。正確故に情報を得るのに時間もお金もかかる。今は手っ取り早く不確かでもいいから情報が欲しいんだよ。……………後、節約出来るところは節約する。」
ここまで来るのにどれだけお金を消費したのだろうと考えただけでも吐き気がする……。
まず屋敷から街を往復で5000シギー……
この服は2000シギー取るっすからねっ!!とプンスコと怒ってきたから盛られて2500シギー……
ロット君の従兄弟の情報量…… 相場が分からないけど高く見積もって10000シギー
プラスアルファ街で使うお金5000シギー
合計22500シギー……
分かりやすく日本円に直すと約37万円……
改めてかかったお金を計算して顔を青を通り越して白くなる。
たった数時間で37万……、157年間生きてきた中で初めてこんなに大金を使ったぞ……。
こんな大金、両親になんて言えば……
顔を手で覆って言い訳を考える。
だがなかなか良い言い訳が思い浮かばずに逆に考えすぎて頭が真っ白になる。
そんな俺の様子を少し困惑した顔をしてスカドゥエが口を抑えながらジロジロと顔をのぞいてきた。
「目の前にいるのがロットの坊ちゃんじゃないって分かってるんすけどその顔で節約って言葉が出てくるのにすっごく違和感を感じるっす…」
「うん、お前が正規の値段で交渉していたら節約なんて言葉は出さなかったよ??」
ギロリと指の隙間からスカドゥエを睨みつける。
運送代といえ服代といえぼったくりにも程があるだろう…!!
「ついでに聞くけど、今の所俺がスカドゥエに払う金額の総定額は??」
「ん?え〜、運送代8000シギー、服代2500シギー、情報代15000シギー、合わせて25500シギーっすね。」
「ちょちょちょっ!!ちょっと待て!?運送代上がってないか?5000シギーって言ってたよな?!」
「街に一緒に入ってあげてるじゃないっすか〜、そこも足してるっす!」
ニカッと笑い指でお金のジェスチャーをしてから俺の肩に手を置くスカドゥエに苛立ちが募る。
そんな俺の本気の苛立ちを察したのか、少し慌て出したスカドゥエが弁明をし始めた。
「そんなに怒らなくっても良いじゃないっすか!!それに、お金の事はそこまで深刻に考えなくても良いと思うっすよ??あのご両親なら何十万シギーでも出してくれるっす。」
「それでも限度があるだろ!?25500シギーだぞ?!そもそもお前はぼったくりしすぎなんだよっ!!この街でしでかした事を忘れたのかっ?!!少しは学習しろっ!!!」
怒りのまま不満を叫び散らしスカドゥエに叱るが、当の本人はキョトンと目を丸くしていまいち理解出来ていないように不思議そうに首を傾げる。
「まだ2万じゃないっすか??これでもだいぶ良心的な値段っすよ??それに、ロットの坊ちゃんは賭け事で1時間20万シギーを使い果たした事があるっすけど……。」
「さ、300万円をっ?!!1時間で?!!」
「??1時間で20万シギーっすけど??」
確かにそれを聞いたら25500シギーは安いと感じてしまう……。
ハッ!!ダメだ!!商人の術中にハマっている気がするっ!!
「だからお金の事はそんな気にしなくて良いっすよ。ゲロ甘の両親っすから何百万、何十万使おうとも喜んでお金を差し出すっすから。……………………流石に5千万使った時は叱られてましたけどね………。」
「逆に何に使ったんだよ……そんな金額……。」
ロット君の規格外のお金の使い方に呆れながらも少し安心し、冷静さを取り戻した。
ロット君がそんなに使っていたのなら2万ぽっち使っても別に何ともないか……、と思いながら思考を切り替える。
「なら、お金の心配はそんなに気にしなくて良いか…。悪かったな。取り乱して。貴族に憑依したのは初めてでどれだけお金を使うかの基準が分からなかったんだ……。」
「別に良いっすよ。それが普通の人間の感覚っすから。」
アハハと笑いながら今度は俺の背中を叩き、さっきまでの俺の悪態を快く許してくれたスカドゥエに感激する。
「俺、スカドゥエに会えて良かったよ…。ありがとうな。」
「………………なんすか?急に気持ち悪い。」
ふふ、と笑いながら感極まってお礼を言うと顔を青くしながらザザザと激しく音を立てて5メートルくらいの距離を一瞬で取られ物理的にも感情的にもガチ目に引かれた。
とても失礼な奴だ。
「さて、そんじゃ目的を果たしに早く肉屋に行こう!!」
ゴホン、と気持ちを切り替えて本題に移る。
「はぁ…。ところで何を聞くんっすか??従兄弟君の情報はある程度アーシが持ってるっすけど。」
「従兄弟とロット君の情報はスカドゥエから聞く。それに関してはスカドゥエの方が詳しいだろ??俺が聞くのは街の異変だよ。」
「??それを聞いて何になるんすか??」
「あれ、そういえば言ってなかったっけ??俺の転生先…今回は憑依だけど法則があるんだよ。」
「あぁ、イブキの坊ちゃんは神の使いでしたっすね。あまりにも雰囲気が平凡で忘れてたっす。」
本気で忘れていたのか、ポカンと間抜けな顔をして俺を見つめるスカドゥエに、いちいち突っ込んでいられないから今はスルーして俺はこれまでの転生した先での出来事を簡潔にスカドゥエに説明した。
「なるほど……転生先で遅かれ早かれ災厄か大きな事件が起きる、と??」
「そう。憑依先であるロット君に1番近いこの街にも近い未来それが起きるかもしれない。そしてその事件、災厄が、もしかしたらカルロス君の死に関連する可能性がある。」
屋敷にも何かあるかもしれないが、前のループで1ヶ月何も起きなかったし、それらしい情報も得られなかったのでアスタ家は多分無関係だろう。
「確かに……ここ最近はこの街には来れなかったからそういう情報はアーシにはないっすね……。」
「だろ?だからさっさと行くぞ。今この瞬間巻き戻る可能性も無きにしも非ずだからなっ!!」
そう言って俺はスカドゥエの服を掴んで店へと向かう。
スカドゥエはしょうがないっすね、と一応は納得してくれて俺の後を着いて歩く。
数歩先にある肉の棒を売ってある肉屋に着き、前回と同じように良い匂いのする肉の棒を数本注文する。
最初、怪しげなサングラスをしている俺を見て警戒されたが、世間話をしていくうちにスカドゥエのトーク力で少しだけだが店主の雰囲気が柔らかくなる。
そして肉の棒を食べ終えてそろそろ打ち解けたであろうタイミングで本来の目的の質問をした。
「ところで、ここら辺で何か変わった事はないですか??ちょっとした事件というか……。」
「?どういう意味だ??」
質問の意図が分からなかったのかキッとキツく睨まれた。
肉屋なだけあって店主の顔はいかつく、体もゴツいので睨まれただけでも動けなくなる。
「いや、深い意味はないですよ。ただ街に入る時、門兵の反応が少し固かったというか、何か警戒していたので……。」
雰囲気が少しピリつくのを感じて、慌てて弁明をする。
「あぁ……、そりゃあの領主のクソ坊主のせいだな。アイツのせいでこの街1番な薬師が死んだんだ。」
「あ、その事件は聞きましたよ。全くひどい話ですよね…。その子のわがままのせいで善良な人が2人も……。」
「だよな!!本当、フォン家には困ったものだよ。そのクソ坊主の従兄弟も王都の学校で好き放題やっているって噂だしな。」
「え??そうなんですか??」
初めて聞く情報にチラリとスカドゥエの方へと目を向ける。
スカドゥエは知っているのか知らないのか肩をすくめて首を傾けた。
「こんな辺境な街にまで噂が流れてるんだ。有名な話だと思うぞ?同級生、上級生関わらず威張り散らして魔法で痛めつけているって。」
「フォン家ってとんでもないですね……。」
「だからアンタも気を付けろよ?目つけられたら終わりだ。」
「はい、ご忠告ありがとうございます。」
そうお礼を言ってからその場を離れる。
そしてさっき得た情報を横にいるスカドゥエに確認をする。
「スカドゥエ、さっきの話を知っていたか??」
「………まぁ、知っていたっすね。」
ブスっと不貞腐れている顔をそらしながら俺の質問にしれっと答えるスカドゥエに心の中で文句を叫ぶ。
知っていたんかいっ!!
ならこれも情報料として取ろうと思っていたわけか!!
抜け目ないスカドゥエの図太い商売魂に半ば呆れて唖然としたが誰が相手でもお金を取れる機会があれば虎視眈々と狙うその商売の熱意に少しだけ感心した。
ハァァ、と息を吐き気を取り直して次の情報を得られる場所へと向かおうと足を進める。
「よし、それじゃこの調子で情報を集めて行こうか。」
「アーシ必要っすか??」
「面倒くさくなってんじゃねぇ!!スカドゥエのその誰とでも話せる力が必要なんだよっ!!」
「えぇ〜……………」
そんな面倒くさそうに肩を落とすスカドゥエを無理やり連れ出し、情報を得るために俺たちは街の店という店を回り始めた。
………
……………
…………………
果物屋
「異変?ないない。あ、あのクソ野郎が死んだって噂があるけど本当か??あいつ、前に俺の売ってる果物をまずいって言って踏みつけやがったんだよな〜。噂が本当だったら良いんだが……」
八百屋
「あぁ〜、最近は平和だねぇ…。あの領主様のご子息が来なくなってから随分と被害が減った気がするよ……。………え?ご子息に不満はなかったのか?って??そうさねぇ……いや、爺さんから貰った結婚指輪をショボいって言って笑ったこと別に根に持ってる訳じゃないよ………その後、捨てられた事もねぇ…………」
雑貨屋
「変なことねぇ、あ、そういえばあのクソ坊ちゃんは最近見かけないわねぇ。死んだって噂があるけど……。前に私の店に来た時、私の商品を鼻で笑いやがったのよぉ。アイツ。しょうもないって言った後お金払わずに持っていっちゃったのよぉ?流石に殺意湧いたわぁ。」
定食屋……
の前まで来て俺はうずくまる。
「いや!!もう聞きたくないっ!!!もう止めるっ!!!」
「何言ってるんすか?!坊ちゃんが聞き込みに行こうって言ったんじゃないっすか!!言い出した本人が先に止めてどうするんすか?!」
これまで街の中にある店という店を回って情報を得ようとしたが何ひとつ異変に関する情報は得られず、聞くのはどれもロット君の悪行ばかり。
これ以上聞きたくなくて店の前で足を止め、耳を塞ぎうずくまる。
スカドゥエはそんな地面に丸まっている俺の服を掴んで無理やり立たせようと奮闘をしていた。
「い、い、か、ら!!たっ、て、く、だ、さ、いっ、す!!!」
「いやだぁぁぁ!!!どうせまたロット君の悪行を聞く羽目になるんだっ!!俺がした訳じゃないけどもう居た堪れないんだよっ!!」
「そりゃそうっすけど!!何も定食屋で止める事ないでしょっ!!」
「………………どういう事??」
スカドゥエの吐いた言葉に少しの違和感を感じ、うずくまった体制で顔を上げる。
顔を上げた俺を見たスカドゥエは掴んでいた服をパッと離して俺と目線を合わせるかのようにしゃがんでポツリと呟いた。
「定食屋はロットの坊ちゃんの被害は受けてないんすよ。平民の食事なんか口にしないっすから。」
「っ!!!確かにっ!!!!」
「それに、定食屋は他の店と違って人がうじゃうじゃいるんっすよ?新しい別の情報が得られる可能性が高いっすから行かない選択肢はないっす。」
ここまで嫌な情報(ロット君の悪行)しか耳に入らず、気が滅入っていた俺の心に光が差した。
店に入ってないなら悪さなんてしようがない!
半ば死にかけていた目に光が入り、スカドゥエを見て感謝を告げる。
「いや、ほんと、スカドゥエがいてくれて助かったよ。ありがとな!!」
「料金上乗せお願いするっす。」
「……しょうがないなぁ。」
パンパン、と砂を叩いて落としながら立ち上がり顔を上げて定食屋のドアの前まで移動をする。
少し年季の入った木造のドアの取手に手を置き、思いっきり前へと押し出す。
カランカランとベルの鳴る音と共に俺はスカドゥエと共に店へと入っていった。
ここで、有力な情報が手に入ると信じて―――
読んでいただきありがとうございました!!




