ロット君と商人7
あけましておめでとうございます!
これからも背景、くそったれな神様へ、をよろしくお願いします!
あぁ、言うと思った。
期待している目をしながら俺の肩を掴み、左右に揺さぶる。
そんなスカドゥエを見ながら、どう伝えようか考える。
くそったれな神が言っていた。
禁忌には気をつけろ、と。
という事は、俺にも人の生死の運命を書き換える事は可能なのだろう。
ロット君の死ぬ運命を書き換える事も。
だが、
「できない。」
「………………なんで?」
痛いくらいの威圧をスカドゥエから感じる。
掴まれている肩から骨が軋む音がきこえてくる。
「アンタがロットの坊ちゃんの体を使えなくなるからっすか??ここで運命を変えてロットの坊ちゃんが生きているって事にしたらアンタが入る器が無くなるからっすか?!!」
「そうだよ。」
「…………っ!!!」
さらに力を入れられ、痛みも感じ始めてきた。
それもそうだろう。
生き返れる命があるのに、生き返れる力を持っているのに、己のために使わないって言っているようなものだから。
それに、もう1つ、どうしても使えない理由がある。
「どんなに俺を傷つけて脅しても無駄だよ。だって俺をこの世界に送ったくそったれな神が助けたいのはロット君じゃないんだからな。」
「は?」
「世界の書き換え…運命を書き換える力はこの世界ではもう使えないんだよ。ちょっとした事象の書き換えはできるけど、人の生死の書き換えはできない。もうやっているからな。」
「もう、やってる………?」
「そう。もうやってる。人の生死に関わる事象の書き換えは1回までで、その後はもう2度と書き換える事はできない。俺をこの世界に送った神は1回、この世界を書き換えた。ロット君じゃない別の誰かの死の運命を書き換えたんだ。」
それが、悲運の子。
ループ元の子だ。
「だからスカドゥエがどんなに頼んでも、どんなに願ってももうロット君は助けてやれない。ロット君の運命を変える事はできない。ごめんな。期待させるような事言って。」
そう伝えた時に、痛いくらいの圧が消えて、スカドゥエに掴まれていた手が俺の肩から離れた。
気の毒になりそうなほど落ち込んでいて見ている俺も、落ち込んだ気分になってしまう。
やっぱり言うべきじゃなかったかな、と言った事を後悔したが、もう今更だった。
目線をスカドゥエから紙の束…多分、この世界の運命の書の1部……に移す。
くそったれな神がやっていたようにロット君の死が書かれている箇所をなぞってみたが、何も反応がしない。
それどころか、強い電流のようにバチバチと音が出て拒絶をされた。
アーカイブ(仮)が言っていた通り、2回の死の書き換えは許されないんだろう。
紙の束…運命の書を閉じると、自然と空間に消えていった。
その光景を見ていたスカドゥエが諦めた口調で口を開き、俺の方を申し訳なさげに頭を下げできた。
「…………こっちこそ…悪かったっすね。あんなに取り乱してしまって……。ロットの坊ちゃんの事は運命だって諦めた筈なんっすけどね。ハハハ………」
「スカドゥエ……。」
何て声をかけようか迷っていたところで、スカドゥエが心の整理ができたのか、深呼吸を数回繰り返した後、顔を上げて俺を見た。
「ハァ、………分かったっすよ。まだ全ては信じられないっすけど信じる事にするっす。本心で話す事を約束するっすよ。」
そう言って、俺の方に手を差し出す。
その顔は、前のような気味の悪い笑みではなくて心から笑っているような、呆れたようなそんな笑みだった。
「イブキの坊ちゃん、今度こそ本心で言うっす。これからよろしくお願いするっす。」
差し出された手を握る。
そして、スカドゥエの言葉を聞いて気づいた。
「あぁ、これからよろしく………って事は!!!」
「あぁ〜〜〜〜!!もう〜〜〜!!!本当は嫌っすけど、嫌すぎるっすけど!!その怪我を負わせたお詫びって事で街まで送ってやるっすよっ!!!」
不本意とでもいうように頭をガシガシと荒く掻きながら叫ぶ。
「ただし、街ではしゃがない!!アーシの言う事を聞く!!これが絶対条件っす!!」
「あぁ!!ありがとうな!!スカドゥエっ!!」
――――――――――――――――――――――
これが約40分前の出来事である。
そうこうして荷馬車に揺られること40分
やっと目的の街の屋根が見えたところである。
あのままスカドゥエに会わずに歩いて行っていたら街まで着くのに何時間かかっていたことやら…
己の幸運に感謝しながら大人しく揺られていると、スカドゥエが話しかけてきた。
「ところで坊ちゃん、そのままの格好で街に入るんっすか?」
「………え?」
予想外の言葉に思考が停止する。
このままの格好で街に入る気が満々だったからだ。
「え?じゃないっすよ。坊ちゃんは中身はロットの坊ちゃんじゃないっすけど、体はロットの坊ちゃんっすよ??そのまま街に入ろうとしたら石を投げられて追い出されるっすよ?」
「え、それって比喩表現じゃないの?!」
そんなわけないじゃないっすか!!と少し呆れたような声でスカドゥエが叫ぶ。
「坊ちゃん、ちゃんと話聞いてたっすか?!アーシ達があの街でしでかした事!いくら領主様の息子だからってやった事がやった事っすから街の奴らは容赦なく石を投げてくるっすよ!」
アーシが入ったらどうなる事か……、とスカドゥエがブツブツと何か言っているが、とりあえず無視をする。
スカドゥエは自業自得だ。投げられても仕方ないとして……
「お、俺は何もやってないのに……!!!」
ここまできて元の体の持ち主の弊害が出てくるとはおもわなかった。(2回目)
ゴールが目の前にあるのにその前にいきなり出てきたでかい壁にぶつかって目の前が暗くなる。
どうすればいいか……と、絶望ポーズをしながら考えていると目の端にあるものが見えた。
これは………
「………………変装すればいいんだっ!!!」
「はい?」
荷馬車に積まれてあるさまざまなアイテムを駆使して自分の姿がロット君に見えなければ良い!!
そう思い、荷馬車の中にある物をガサガサと漁る。
「ちょっ!!何してるんっすか!!?」
自分の後ろから物を漁る音にスカドゥエの焦ったような声が聞こえて、そういえばこれは商品だったな、と思い出した。
「あ、買う買う!!もちろん買うよ!!(母親と父親が)定価で!!だから使っても良いか?」
「ま、まぁ、買ってくれるなら……。」
仕方ない…みたいなイントネーションでスカドゥエから許可を貰い、商品を漁る。
良いんかい……
そう思いながら荷馬車の中にある探しているとちょうど良いカツラやら帽子やらが出てきたのでそれを身につける。
ロット君の黒い髪の毛を隠すように、暗い茶色のカツラを着用した後帽子を被り、赤い目はサングラスのようなメガネをかけた。
服はすでにスカドゥエから借りたものをそのまま着用し、靴は身長を誤魔化すように厚底のブーツを履く。
スカドゥエから借りた服はとてもじゃないが貴族が着るには地味すぎるのでよほどのことがない限り俺が貴族、ロット君だとバレる事はないだろう。
我ながら完璧な偽装工作に満足していると、荷馬車のスピードがだんだんと遅くなり、しばらくすると揺れが止まった。
「坊ちゃん、街の門に着いたっすよ。」
そう言ってスカドゥエが顔を振り向き、俺を見る。
「おぉ〜……、その格好といい、雰囲気といい、全くロットの坊ちゃんには感じないっすね。そこら辺にいる怪しいモブって感じっす。」
と、感心したように俺の変装を評価した。
最後の一言は少し余計だな、と思いつつ、止まった荷馬車から降りた。
「おぉ〜!」
これが俺が目指していた街!
この世界に来てから初めて訪れた街にテンションが上がる。
着いた街の外壁は、約10メートルくらいの高さのレンガの壁が街の周りを囲っていて、門には2人くらいの門番らしき兵士が立っており、つまらなそうにあくびをしながら見張りをしていた。
まぁ、辺境の街だから滅多に人がこないんだろうな、と門兵を眺めていると、後ろからスカドゥエの声が聞こえてきた。
「イブキの坊ちゃん!ちょっと待ってて欲しいっす!!アーシも見た目変えてくるんで!!」
「え?着いてきてくれんの?!」
まさかのスカドゥエの言葉に驚きながらも喜んだ。
てっきり、アーシは外で待っとくんで坊ちゃんは好きに街をぶらついてくださ〜い!とでも言ってくるものだと思っていたからそのスカドゥエの言葉を聞いて嬉しさが倍増した。
「当たり前じゃないっすか。坊ちゃん、街のこと何も知らないっすよね??それに、もしも変装がバレた時にその怪我では逃げれないっすよね?」
「…まぁ、そうだな………。」
お前がやった事だけどな!と思いながら改めて、己の怪我の酷さを実感し、同意した。
今は歩けるほどには回復したが、痛みはいまだに引いていない。
走れるか、と聞かれたらすかさずNOと答える。
スカドゥエの思いもしなかった行動に結構人情深いんだな、と感動していると門兵が俺に気づいたのか2人のうち1人が俺に近づいてきた。
「おい、そこの行商人!そこで何をしている?!」
行商人、とは多分俺のことだろう。
とりあえず、ロット君だとバレてない事にホッとしつつなんて答えようかと考える。
やはり、今の姿は行商人だから商品の確認をしていた、というべきか…
そう考えて門兵の問いに答える。
「珍しい物が手に入ったのでここの街の人達に売る前にここで商品の検品をしておりました。別に怪しいものではありません!!」
「怪しい奴かそうでないかは我々が判断する!!お前は黙って質問されたことだけ答えていろ!」
そ、それはごもっともでございます……
門兵のキツイ言葉にグッと言葉を詰まらせる。
そういえば、と今の自分の姿を思い出した。
スカドゥエが言っていた。今の俺の姿はそこら辺にいる怪しいモブ。
そんな奴がいう怪しい奴ではないという言葉ほど怪しいものはない。
もっと怪しくない自然な感じの変装にすればよかった、と後悔をしていると門兵が手を前に出してきた。
「それで、許可証は?」
「きょ、許可証??」
何のことかわからず、目を丸くしながら言葉を繰り返す。
そんな俺の言動を怪しく思ったのか、眉間に皺を寄せてさらにキツく言葉をはいてくる。
「行商人のくせに言わないとわからないのか?この街に入る為の通行許可証と、商売するために必要な商売許可証だ!お前、本当に行商人か?」
「あ、あぁ〜!!それ、それね!!ちょっと待ってて下さいねぇ!!」
そ、そんなのいるの?!と内心驚きながらもその場凌ぎの言葉を吐く。
俺のその誤魔化すような言動にますます目つきをキツくさせた門兵にこの後どう対応しようかと慌てていると聞き覚えのある安心する声が後ろから聞こえた。
「はいはい、これが通行許可証とこの街の商売許可証。すみません、この子はまだ新人でしてねぇ。今は私のところで研修しているのですよ。」
「………ふん、あるのなら別に構わない。……………よし、本物だな。良いだろう、入れ。」
「ありがとうございます。」
「それと、その、そこの奴!もうちょっと格好を考えた方が良い!お前の格好は怪しすぎる!!」
「あっ!はいっ!!申し訳ありません!!」
街へ入る許可がおりてホッとしたところでいきなりビシッと指をさされて指摘された事に驚き咄嗟に謝罪の言葉が口から出てしまった。
プッと吹き出す声に多少の不快を感じて声の主を睨む。
茶髪だった髪の色は綺麗な金の色に変わり、糸目だったはずの目は開き、綺麗な二重瞼をしていた。
変わったのはそれだけだったが、最初に会った印象とはかけ離れるほどの変貌に言葉を失った。
「何っすか?アーシのかっこよさに言葉を失っているんすか?」
ニッと口角を上げて俺をみおろす。
図星を突かれた事を誤魔化すようにその場を離れる。
「そ、…んなわけねぇだろ!!!許可入ったら早く街に入ろうぜ!!」
「はいはい。坊ちゃん、そっちは逆方面っすよ〜」
そうこうして俺たちはやっと街へ入ることができたのだった。
主人公と行商人、次回やっと街へ入れます笑




