ロット君と商人3
アーシ(仮)さんの名前がやっと判明します!そして正体もわかります!!
「さ、最初からって、最初から?!アーシ(仮)が俺に話しかけて来たところから?!!」
最初から俺は命の危機だったって事?!
もしかして、最初に声をかけたのもロット君の体を使って好き勝手してる俺を始末するため?!
こ、こわぁ〜…………。
まだズキズキと痛むボロボロの体を手で庇いながらアーシ(仮)と距離をとる。
こいつ、この体が本物のロット君でも中身が違ったら容赦なく殺しに来るから今でもあまり信用できないんだよな……。
警戒を怠たらないようにしよう……。
さりげなく距離をとった俺の行動にアーシ(仮)が気づき、慌てて弁明をしだした。
「ちょっ!何で距離とるんスか!!もう何もしませんっスよ!!もうわかったんで!!」
「いや、そんな事言われても……」
ジッと冷めた目でアーシ(仮)をみる。
確かに今は大人しくしているけれど、いつ地雷を踏んで俺を襲ってくるか分からない。
だから警戒することに越した事はない。
コイツ、殺気だしながら威圧で人を動けなくしてそれからナイフを突き出すやべぇ奴だからな…
一定の距離を離れてからアーシ(仮)を見ると、困ったように眉を下げて頭をポリポリと掻きながら地面にあぐらをかいて座った。
何もしませんよ〜と言うように両手をあげて無害アピールをするように手をヒラヒラとさせた後、出会った時の俺の印象を話し始めた。
「最初は信じられないって思いながらも本当にアンタがロットの坊ちゃんだと思ったんす。アーシと初めて会った時と全く同じセリフをあの時言ってたので。あぁ、事故の影響で記憶がなくなってしまったのかなぁ、と。」
ああ見えても、心の中では生き返ったんだって喜んでたんスよ?と、目を伏せながら寂しそうに可笑しそうに笑いながら話す。
俺は、何も言わずにただ、黙って聞く。
「違和感を感じたはじめたのは、アンタがアーシに敬語で謝って来たところからっす。ロットの坊ちゃんは敬語のけの字も知らない坊ちゃんっすからね。事故前使えなかった敬語を、記憶をなくしたからって使えるなんておかしい話じゃないっすか?」
「あぁ、だからあの時お前は俺の周りをまわって俺が本当にロット君なのか見てたのか。」
あの時のアーシ(仮)の行動を思い出す。
謎の威圧を感じたのはそう言う事だったのか、と妙に納得した。
体はロット君であるのに中身がロット君だと感じない気味の悪い奴が目の前に出て来たらそりゃ警戒はするか。
さらには記憶喪失ときたもんだ。
疑うな、と言う方が無理な話である。
「確信したのはナイフを避けた時のアンタの動作っす。」
「?俺の動作??」
「そうっす。闘い慣れしてる動きだったすからね。温室育ちの甘ったれのロットの坊ちゃんにあんな動きは無理っす。記憶をなくしていたなら尚更っすよ!」
「いや、お前、あんな急にナイフ突きつけられたら誰でも俺みたいに避けるだろ。いくら温室育ちだからって……。」
そんな俺の意見にアーシ(仮)はいやいやいや、と手を顔の前で振り真面目な顔をして答える。
「いやいや、ロットの坊ちゃんはクソがつくほどオンチなんスよ!クソ運動オンチ!!そのせいでアーシがどれほど苦労したかっ!!!」
グッと、アーシ(仮)は拳を握り、その当時の事を思い出したのか、手を振るわせる。
「お、おぉ…そうか……大変だったな。」
若干引き気味に返事をする。
それと同時に、この2人がそれほど厚い信頼関係だったのだと知った。
…………やっていた事は多分良い事ではないのだろうが………。
遠い目をしながら2人がやっていたであろう悪行を思い浮かべる。
悪徳商業をやるくらいだ。それよりももっと悪いことも普通にやっていそうだ。
「そうなんっすよ!大変だったんっすよ!?」
聞いてくださいっす!!と興奮するように両手をブンブン縦に振りながらロット君の愚痴を話しだした。
ロット君のわがままで暗殺ギルドに目をつけられただの、ロット君の傲慢な態度で偉い偉人に怒られただの、色々なロット君の武勇伝(悪い方)が次々とアーシ(仮)の口から出てくる。
「ほんと、手に負えないわがままな坊ちゃんだったんす。……でも、楽しかった。楽しかったんすよ。」
そう、笑いながらほろりと細い目から涙が流れる。
なんだかんだ言いながら、コイツらは今まで一緒にいたんだな。と、聞いてる俺も暖かい気持ちになる。
が、
…………やっていた事は多分良い事ではないのだろう……。(2回目)
良い話に聞こえるが、いちいちこの言葉が邪魔するからいまいち感傷的にはなれない。
ん〜、と微妙な感情でいるとアーシ(仮)が俺に言ってきた。
「さて、アーシの事は話したっす。今度はアンタの番っすよ。」
「あぁ、俺?」
「そうっす。アンタは一体誰で、なんの目的でロットの坊ちゃんの体に入ってるんっすか??」
スゥ、と雰囲気が若干冷たくなったのを感じ、背筋が寒くなる。
死体とはいえ勝手に体を使われているのが気に食わないのだろう。
信じてくれるとは思えないが、ここは嘘偽りなく話した方が良さそうだ、と思い、口を開く。
「……ざっくり言うと、俺はこの世界を正しく正しにきた神の使いだよ。この世界に起こっている異変を治しにここへやってきたんだ。この世界には俺が存在するための体が存在しないから多分、死にたてホヤホヤのロット君の体に入っちゃったんだと思う。」
変に嘘ついても得はないし、下手に誤魔化したら殺されるかもしれないので自分の予想を混ぜながら正直に話す。
「………………………。」
何の反応もなく固まるアーシ(仮)を不審に思いズズズズ、と後退りし、距離を取る。
自分なりにわかりやすく正直に説明したつもりなのだが、相手にはどう捉えられたのか分からないからとりあえずすぐに逃げ出せるように体勢を整える。
固まったまま動かないアーシ(仮)を警戒して数分、アーシ(仮)がやっと口を開いた。
「…………………話が思ったより壮大すぎて思考が停止してたっす……………。アーシが予想してたのは悪霊かアーシ達に恨みを持った誰かがロットの坊ちゃんの体を操ってるとばかり……」
「ま、まぁ……確かにその考えが1番現実的だわな。」
信じてくれたことに、一旦ホッとして警戒していた力を解く。
「それにしても……」
そう言って俺のボロボロの姿をみる。
頬は赤い線ができそこから血が滲み出ており、髪の毛はボサボサ、服は蹴り飛ばされた際に地面に擦れたせいで泥だらけで更にところどころ穴が空いてる。
神の使いというには今のこの俺の姿は今にも死にそうな子供だ。
「神の使いって割にはボロボロっすね笑 全然見えないっす。」
「いや、お前のせいな??」
プッとバカにしたよう笑い、俺を笑うアーシ(仮)にイラっとくる。
「それに、俺の戦闘能力は体の持ち主に比例すんの!元の体の人物が運動オンチなら、今の俺も運動オンチ何だよ!!」
逆に運動オンチのロット君の反射神経を最大限に引き出した俺を褒めて欲しいくらいだよ。
「え、そうなんっすか?」
「そうなんだよ!それに、俺の専売特許は文系…というかそんなゴリゴリの戦闘系じゃねぇから。」
「え、じゃあ何ができるんすか?」
「え、何がって……」
そう言われてはたと気づく。
アーカイブ(仮)が言っていた、世界の運命を書き換える力、俺はその力の一端が使えると言っていた。
記憶能力はその力の副産物だとも。
その世界の書き換えの力はどのように使うのだろうか??
そういえば力の使い方を教えてもらってないっ!!
サァァァ、と顔が青くなるのを感じる。
その異変に気付いたのかアーシ(仮)さんが心配そうに声をかけてきてくれた。
「あ、あの…、大丈夫っすか??」
「だ、だいじょおぶっ!!!」
「?!そんな感じには聞こえないっすけど?!」
動揺しすぎて声が裏返ってしまった。
まずい、話を、話題を変えなくては!!!
「お、俺の事はもう良いっ!!もう分かっただろ??!逆にお前はどうなんだよ!!」
「えっ?!アーシっすか?!急に??!」
俺にビシッと指をさされて、急に話題を自分に変えられて動揺するアーシ(仮)を無視して話を続ける。
「そうだよっ!!何だよお前っ!ただの行商人じゃないだろ!!あの戦闘力といい、殺気といい、バケモンかと思ったわ!!」
「えぇ〜、そんな褒められると照れるっすねぇ〜。」
「いや、褒めてねぇから!!」
頬を赤く染めニヤけながらモジモジと体をくねらせるアーシ(仮)の姿を見て少し腹が立つ。
「それに、俺、お前の名前まだ知らないんだよ。改めて自己紹介してくれるか?本当の職業を含めて。」
そう言うと、モジモジさせていた体をピタリと止めて顔も真顔になり、こちらを見る。
「………そうっすね。アーシもアンタの正体を教えてもらったし、こっちだけアンタの正体を知ってるっていうのも公平じゃないっすよね。」
ゴホン、と咳払いをしピシっと真っ直ぐに姿勢を正して俺の真正面に立つ。
左手を後ろの腰にやり、右手は指を真っ直ぐに伸ばして左胸の前に置き、美しい動作で頭を下げたまま言葉を放つ。
「改めて自己紹介をいたします。初めまして。神の使いよ。アーシの名前はスカドゥエ。ただのスカドゥエと申します。表の顔はしがない行商人、裏の顔は…」
顔を上げてニヤリと笑う。
「情報屋兼暗殺業をやっております。以後、お見知り置きを。」
そう言って、気味の悪い不気味な笑顔のまま、俺の手を痛いくらい強く握りしめた。
次回はやっと街へ行けるかも知れないです笑
読んでいただきありがとうございました!!




