チート能力?を手に入れてた!!
ここは、どこだっけ?
俺は何をしていたんだっけ??
気づいたら心地よい暖かな場所に、プカプカと浮いていた。
目を開けているか閉じているか分からないほど真っ暗で不気味な空間なのにそれすらも気にならないくらい気分が休まる場所に俺は漂っていた。
―――あぁ、ずっとここにいたい。ここで、ここでずっと、ずぅっと浮いていたい――――
そうして深く、深く、暗闇に溶け込むように意識を沈ませる。
ーーーめよ…ーーーーーざめよーーーーー
……やけに懐かしくて腹の底から怒りが湧き上がってくるような不快なイケメン声に思わず眉をひそめる。
―――――――うるさい、俺は疲れたんだ。もう、寝かせてくれ―――――――――
ーーーーーめざめよ……――――――
ー――――めざめよ…我がどれ……眷属よ……
………………今奴隷って言おうとしたか??!!
暗闇に溶け込んでいた意識が一気に覚醒し、怒りで目を開ける。
「誰が奴隷じゃっ!くそったれーーーー!!!」
「わぁ〜!やっと起きたぁ!!良かったぁ〜!!!」
―――――しまった!!このまま溶け込もうとしたのについあのくそったれな神様の腹立つ声に反応してしまったぁ!!!
気づいたら先ほどの真っ暗な空間とはうって変わり、真っ白でほどよい光が降り注ぐ空間にいた。
あぁ、あのまま声を無視して暗闇に溶け込めてたら、俺という魂を終わせて新しく生まれ変わることができたかもしれないのに、と自分の気の短さに絶望しながら声の聞こえる方へ顔をむける。
やった!やった!!と無邪気な笑みを浮かべて手をぱちぱちと叩いているのは俺をこの最悪な現状に身を落とす原因となった自称下位神、アーカイブ(仮)だ。
何やらミスをしたせいで俺の寿命が1分早くなり、そのお詫びとして加護(笑)をもらったんだが、この加護(笑)とやらが、クソ オブ クソなのだ。
記憶力が異様にたかい。
魔力が他の人たちよりも多いとかでもないし、精霊や妖精に好かれるとかでもない。全種属の魔法に適性があるというわけでもない。
ただただ、記憶力だけが異様にたかくなり、見たもの、感じた事、全てが鮮明に記憶に残るだけでほかの能力は平凡か平凡以下だった。
謎 この一言にすぎる。
あれれ〜?おかしいぞぉ??と、転生初期は某名探偵の子供、コ◯ン君が頭の中でしょっちゅう首を傾けていたな。
そして、自分の加護が結局何の効果があったのか、ただ記憶力がよくなるだけの加護なのか分からないまま、今日?で数回目の転生を終えた。
そういえば、初めてアーカイブ(仮)の姿をみたのは、1回目の転生の終わりだった。
初めてその姿をみた時の衝撃を今でもわすれられない。
全体的に真っ白で、エジプト時代の人が来てそうな服を着用し、髪の毛は白くボサボサで、後ろの髪の毛は1番長くてかかとの長さまであった。右の横髪だけ三つ編みに結んでおり、顔の左半分、腕や足、頭に包帯が巻いてあった。
いかにも厨二病を患っていそうな格好をしていて、思わず、うわぁ……と、ドン引いたのも良い思い出だ。たぶん。
そう昔のことを思い出し、アーカイブ(仮)を横目に見る。
初めて会った時よりも包帯の数が増えて、ますます厨二病感がましている。
傷?が悪化したのか、厨二病が悪化したのかどっちだろうか??
というか神さまって傷付くことがあるのか??
傷付くとしてもそんな重傷負うような傷をどこでつけてくるんだよ…と悶々と考える。
「ん??あぁ、包帯の数が多くなってるの、気になっちゃうかい??ちょっと禁忌を起こしちゃってねぇ〜…そのペナルティだよ。」
と、そんな俺を見て、疑問に答えるようにアーカイブ(仮)がヘラリと笑う。
なるほど、神様でもやっちゃいけないことやるとそんなふうになるんだなぁ〜と疑問が晴れて納得した。
が、何か物騒な単語が聞こえた気がし、だんだんと意味を理解し、顔が青くなる。
「ぺ、ペナルティ…?!禁忌?!!」
「そうだよ〜。君も力の使い方に気をつけてねぇ。禁忌を犯しすぎると私みたいに包帯お化けになっちゃうから!!」
と、包帯だらけの身体を俺に見せつけながらいきなり爆弾発言をしてきた。
「え何それ聞いてないんですけどぉ!!!?」
「あれぇ?!言ってなかったっけぇ〜?」
「聞いてないんですけどぉ!!!」
とりあえず、説明しろぉーーーーっ!!!と
真っ白な空間に俺の声が響いた。
えー、オホンッと咳払いをし、アーカイブ(仮)が答える。
「簡潔にいうと、私の力は運命を書き換える力だよ!過去を変え、現在を変え、未来を変える力さ!私の加護を持っている君もその力の一端を使えるんだよぉ〜。君の記憶力がよくなったのはその副産物だ。」
「え?!なにそれ!めっちゃくちゃチートやん!!!」
言うなれば事象を書き換える事ができるってことだよな?!某死に戻り主人公の小説に出てくる◯飾の魔◯の能力が使えるって事!?
「あれ、君この力のことクソ オブ クソって…」
「言ってないですけどぉーーー?!!」
ぎくっと肩が上がる。
心の中では呟いたけど、言ってはいない。…多分。
目を逸らしてどうやって誤魔化そうかと考えていたら、アーカイブ(仮)が、あぁ!!と何かに気づいたかのように手をポンッと叩いた。
「だからこの数回の転生先で力を使わなかったんだねぇ。やっと理解したよっ!」
「いや、使わなかったんじゃなくて、使い方が分からなくて使えなかったんだよ!!」
「あ、そうだったね笑」
「なに笑てんねん。お前のせいやろが。」
俺のこの数回の人生の苦労を返せっ!!!
怒りで顔が赤くなるのを感じる。
「いやぁ、君が一生懸命生き残ろうとあらがっ……ゴホンゴホン、頑張ってる姿を思い出してね…笑」
笑い顔を隠すように顔を背けるが、隠しきれていない。その声で怒りが爆発しそうになる。
「いや、何ひとつ隠せてないぞおまえぇ!!語尾が笑ってんだよ!!ふざけんなっ!!」
ふるふると怒りで震える指でアーカイブ(仮)に指刺す。
数秒、笑いがおさまった後、俺の方へ顔を向き少し眉をさげ、ごめんよぉ〜といかにも申しなさそうな顔で謝ったきたが、心の中ではまだバカされているように感じ、怒りは収まらなかった。
「いやぁ、本当にごめんってぇ〜。なんせ、説明する時間も君に会う時間もなかったんだよぉ〜。忙しくて君に説明し忘れてた事も忘れるくらい忙しくてさぁ…。他意はなかったんだよぉ〜…。」
トホホ、と肩をおとし、涙を拭うふりをする。
でも、そんな言い訳で納得できるはずがない。
「俺の異世界での人生を見る暇はあるのにか?」
冷めた目でアーカイブ(仮)をみて、腕を組む。
そんな俺の様子を見て、アワアワと手をふりながら弁明をするかのように話を続ける。
「仕事の合間に少しだけみるだけの暇はあるさ!!君とこうして対面して話す機会がなかっただけ。今も時間を無理やり作ってきたんだよ?!私みたいに下っ端の神には暇を与えられないんだ!!これで364万徹だよ?!!ほんと、上位神は人使い…いや、下位神使いが荒いんだから!!」
「いや、別にそんな事聞いてないんですけど…っていうか神様でも仕事ってものがあるんだな。そんなパワハラ上司みたいな神様もいるなんて知りたくなかった…。」
「神様が人間の人生をただ笑ってみているとでと思っていたのかい??」
「え、違うの?」
でも、さっきまであなた、俺の人生笑って見てましたよね??と、言うように半信半疑でアーカイブ(仮)を見つめる。
己の行動を思い出して、慌てはじめる。
「なんだよ!その目はぁ!!違うよぉ!!私もちゃんと仕事してるよ!!」
「ほぉ〜ん、で、そんな自称ちゃんとお仕事をしている神様はどんなことをしてんの?」
「おっ!よくぞ聞いてくれた!!!」
両手を腰に置き、フフンっ!と得意げに笑いながら胸をはる姿に若干腹が立ったが、とりあえずスルーする。
「私の仕事は数多ある世界を記憶し、記録することさっ!!」
シーンと、静寂がはしる。
周りが静かすぎて逆に耳が痛くなってきた。
「…………………で?」
「??………で?とは?」
「え、それだけ?」
「それだけ?って…これすごい重要な事なんだよ?!」
本気だ。目が本気だと訴えている。
真剣なアーカイブ(仮)の目をみて本当にやってる仕事なんだと頭を抱える。
思ってたんと違う!!!!
それだけ聞くと、ただの記録係じゃないかっ!!
「え?!それだけ?!!ちょっとおかしくない??!本当にそれが仕事内容だとしてもその仕事内容と神様の事象を書き換える力との関係性が全く結びつかないんだけど?!!」
「ええっ?!何言ってるの?!関係大有りだよ!!」
なんとなく成り立たない会話に一旦1度冷静になろう、とアーカイブ(仮)がその場を鎮める。
「……ごめん。ちょっと簡潔にいいすぎた。言葉が足りなかったね。いいかい?世界が創られる時、その時にはもうすでにその世界の運命は定められているんだよ。」
そう言いながら、アーカイブ(仮)は手を広げる。
するとそこから1冊の分厚い本が現れた。
「これはどこかの上位神が創った世界の運命を書いて本にしたもの。記録書、運命の書だ。」
「……書いた?」
「うん。言ったでしょ?私の仕事は世界を記憶し、記録する事だって。世界が創世される時にその世界で起こる出来事、最後に辿る運命を観ることができるんだ。そして観えた運命を記憶して、記録して書いたものがこの本だよ。」
パラパラパラ、と本が1人でにめくられ、見ると、文字らしきものが綺麗に並べられて書かれてあった。
そこに書かれてあるものが、アーカイブ(仮)が観たというこの世界に起こる事象なのだろう。
目の前で行われている不思議で神秘的な現象に目を奪われていると、途中で黒いページに変わった。
白いページとはうってかわって、黒い紙に白い文字が乱雑にグチャグチャと書かれており、気持ちが悪い。
「原因は分からないけど、こんな風に時々本来の運命とは異なる事象が生じる事があるんだ。不具合、つまり、バグだね。そのバグを修正するために必要なのが、この運命を書き換える力さ。」
ツ…、と黒いページに書かれた白い文字を右手の人差し指でなぞった。
なぞった文字がそのままページからペリペリとはがれ、一つにまとまり、そこから丸い球体になった。
「?!なんだこれ……?人がいる……いや、これは、ビデオ??」
丸い球体の中に、たくさんの人がいた。いや、たくさんの人がうつっていた。
球体に写っている人達は何やら慌ただしくしており、何かから逃げるように走りまわっている。
「あぁ、ここだね。これがバグだ。」
そう言ってアーカイブ(仮)は丸い球体に写っているあるものを指差した。
「……なんだ?ただの子供じゃないのか??」
ボロボロの身体の子供に指差し、アーカイブ(仮)はバグだと言って球体から目を逸らす。
「この子供はね、本来ならここで死ぬはずなんだ。生きていてはいけない。」
そう言って、何やら文字を空中で書いて、ういている文字を黒いページの方へ行くように誘導した。
書いた文字が黒いページに吸収された瞬間、真っ白なページになり、浮いていた球体は弾けて消えた。
パラパラパラ、と黒い紙がだんだんと白くなり、そこから新たに文字が刻み込まれる。
黒く染まったページが全て白く綺麗になったところで、本が閉じられ、そして空気に溶けるこむようにして静かに消えた。
ふぅ、と一息ついてアーカイブ(仮)は俺を見る。
「こういう感じにバグを修正して世界を正しい運命へと正すのが私の仕事なんだよ!」
えへんっ!!と、またもや威張り、胸をはる。
「うん、確かにちゃんとした仕事だったよ。初めて本当に神様なんだなって感心したわ。」
「え?!!今まで私のことなんだと思ってたの?!!」
「確かにすごいけど……」
「え?スルーされた??……え?!ちょっと待って?!すごいけど?!けどって何?!まだ何か不満があるのかい?!!」
「いや、今更知ったところでどうでもいいかなぁって……」
「え?なんて?」
「え?いや、どうでもいいっていうか、もう加護はいらないっていうか…お返ししたいです。」
よっぽど予想外だったのか俺のその言葉を聞いてアーカイブ(仮)は目を点にして口をポカンと開けて呆然と呆けていた。
理解が追いつかないのか、時々手をおでこに当てて深く深く考え込み、目を閉じている。
そうこうして数秒がたち、ようやく言葉の意味を理解したのか目を開け、顔を青くしながらアーカイブ(仮)は叫んだ。
「えええええぇえぇぇぇえええぇえええええ?!!!」




