とある悪逆貴族のやり直し2
これでプロローグおわりです!
初めて死んだ時は、化け物にされて首を切られて死んだ。
2回目に死んだ時は、心臓を刺されて死んだ。
3回目に死んだ時も、心臓を刺されて死んだ。
そして、今回で4回目の回帰。
流石に理解した。俺は死んだあと、この時間まで遡っている。
「びっくりしたぁ~」
「ついに頭おかしくなったんじゃない?」
「やっぱやばい奴だね、あいつ。」
ザワザワと騒めく教室の中、そんな声が聞こえた。
もうこれを聞くのも4回目だ。
状況を整理しよう。
今起きている現象、考えられる事は1つしかない。
誰かが時間操作の魔法を使っている。
チラリと壁についてる時計の時間とボードに書いてある日付を見る。
時計は朝の9時を指している。
日付は俺が1回目の死、初めて死んだ日よりも3ヶ月も前の日付だった。
ーーーーという事は、ソフィアとの婚約破棄も俺が奴にみっともなく完敗したこともなくなっているのか。
それはそれで良かったな、と思ったが、状況は改善してはいない。
2回目、3回目と、死んだあとも、必ずこの日付のこの時間に戻ってくる。
多分、これより後に戻る事はできないんだろう。
…………それにしても、なんで巻戻る時間が3ヶ月なのだろうか?いや、今はそんな
――過去に戻る魔法?そんな魔法存在するのか?――
確かに他人の時間やあやつる魔法は存在する、がこんなに多くの人間を巻き込みながら3ヶ月もの長い時間を巻き戻す魔法なんて聞いたことがない。
規模の大きな魔法にあらためて、恐れ慄く。
もし、そんな魔法が存在するとして、
時が戻る範囲は?
どのぐらいの時間が戻る?
ここの都市だけ?
誰が?どうして?どのように?
こんな大規模な魔法の発現にはきっと大きな代償が必要になる。
その代償はなんだ?
誰かの死?俺の死が代償?
だとしても、俺だけの命でこんな大規模な魔法の発動なんて、できるとは思えない。
そして、何のために?
「それでは、朝礼を終わります。1限目、遅れないように教室を移動してください。解散。」
教師の言葉で我にかえり、生徒がゾロゾロと動き出す。そして、俺もその後につづくように教室を出る。
確か、2、3回目の回帰の時はここで教室を飛び出した後に殺されたんだよな、と内心怯えながら、教室を出る。
周りを警戒しつつ目的の教室へ向かう。
コツコツと、自分と生徒達の靴の音が廊下に響く。
何かが起きる予感も怪しい人物の気配も感じず、特に何もおきることなく無事に教室へ辿り着く。
どうやら、今回は殺されずに済んだようだ。
ひとまず息を吐き、自分の席に座って回帰についてもう一度考える。
誰が、何の目的で時を戻す魔法を発動させてるからは分からない。
分からないがこの魔法は俺にとっては嬉しいものかもしれない。
死んでも生き返れる。失敗してもやり直せるのだ。
相手の目的は何か分からないが、この際だから利用させてもらおう。
あの、最悪な結末を変えてみせる。
そう、俺は決意を固めた。
まずは今日を生き残ろう。
ギュゥ、と無意識に手に力がこもる。
―――その日の夕方、俺は4回目の死を迎えた。
「…ん、カ…スく……ルロスくん!…カルロス君!」
「―――――――っ!!」
ハッと顔をあげると、教師が心配そうに俺の顔を見ていた。
「カルロス君、大丈夫かい?」
「だ、いじょうぶ…です……」
見覚えのある光景、聞き覚えのあるセリフ。
また、戻ってきてしまった。
どういう事だ?と眉をひそめ、頭を抱える。
昨日は、いや、4回目の回帰の時は最後まで死ぬ事なく無事家に帰れた。
だが、死んでしまった。いや、殺されてしまった。
家に着いてすぐに父にアストロ家が危機に瀕している、と報告するべく執務室へ向かったはずだった。
その、執務室へ向かう途中で何者かに後ろから襲われて俺はあっけなく死んだ。
――家に、暗殺者もしくは裏切り者がいる?―――
どちらにせよ、少しでも相手が怪しいと感じさせる行動をとると容赦なく俺を殺しにやってくる。それは、場所問わず、家でも学校でも。
どこにいるか分からない、誰か分からない裏切り者に気づかれずに父と接触…。
簡単なことのはずなのにこんなに難しい。
前回、会いに行っただけで殺された。
それだけで怪しい行動だと思われた。
なら、別の方法を模索して試す。
時間とチャンスは時間遡行の魔法のおかげで腐るほどあるはずだ。
何度でも何度でもやってやる。
5回目の回帰、言葉で伝えられないなら手紙を書こうと思いつく。
会いに行こうとする行動が怪しまれるなら、父の執務室の前を通りすがる時にさりげなく手紙を扉の隙間に入れて、父に渡そう。
そう思いつき、さっそく紙にペンを走らせて手紙を書く。
アストロ家の危機や、屋敷に暗殺者がいるかもしれないなどの内容を書いた後、部屋を出ようとドアの取っ手に手をかけた。
『あ〜ぁ、何もしなければもう少し生きられたのにねぇ〜』
そう、聞き覚えのある声がしたのと同時に胸から刃が生える。
痛い
いたいいたいいたいいたいいたいいたいいたい
『おやすみ。来世は幸せな人生を送れるといいねぇ!』
目の前が、暗くなって、何も見えなくなった。
「…ん、カ…スく……ルロスくん!…カルロス君!」
「―――――――っ!!」
ハッと目を見開き、胸をおさえる。なにもない事に安堵し、手を撫で下ろす。
前を向くと教師が心配そうに俺の顔を見ていた。
「カルロス君、大丈夫かい?」
「だ、いじょうぶ…です……」
見覚えのある光景、聞き覚えのあるセリフ。
あぁ、また、死んだのか。
6回目の回帰。
手紙もダメだとすると、他にどうすれば、もう方法が思いつかない…いや、諦めるな。考えろ。他にも手段があるはずだ。今度こそは……!!
7回目……
8回目………
9回…………………
10回……………………
11………12………………18…………
…………n回目……………
もう、何度、死を迎えたか覚えていない。
50を超えたあたりで数えるのをやめた。
そして、諦めた。
何度も訪れる生と死に俺は疲れ切っていた。
生きる事への諦め、父と領土の未来、もう何もかもがどうでもよくなってきた。
何回目の時か、
ふいに、この時間遡行には回数制限があるかもしれないと思い自殺を図ってみた。
自分から死んだことがなかったから、もしかしたらこの地獄みたいに繰り返される世界が終わり、死ねるかもしれない、と。
だが、何回、何十回続けて死んでもあの日のあの時間のあの教室に戻ってきてしまう。
未来を変えようと足掻いても、全てを諦めて命を投げ出しても、ちゃんと死ぬこともできないし、未来に行くこともできない。
そして、今回も、
『おめでとうっ!!今日が君の誕生日だよ!!!』
身体を化け物に変えられ、首をはねられて死んだ。
「…ん、カ…スく……ルロスくん!…カルロス君!」
「ーーーーはい。」
「カルロス君、大丈夫かい?」
「…大丈夫です。続けてください。」
また、始まった。
何回目だろうか、もう100は超えただろうか。
今回も無意味な3ヶ月が始まる。
そう、思った。
「では、今日は新しい生徒を紹介します。」
いつもと同じ日に、同じ時間、同じ教室、のはずだったが、今日は何か違う。
―――新しい、生徒?――――
そんなの、今までの回帰の中ではなかった。
いつもとは違う展開に、心臓が速く動く。
「教室に入ってきて!」
そう言って、教師は扉を開けて、生徒を教室に入れる。
黒い髪に赤い吊り目の男子生徒が気怠げそうにはいってくる。
教卓の前まで移動させた後、
「それじゃ、自己紹介をしてくれるかい?」
と、その生徒に名前を言うように促す。
「はあーい。イブキ•アカイでぇす。よろしくぅ。」
「えぇ?!君、そんな名前だっけ?!」
あれ?あれぇ?!と名簿らしき紙をパラパラと見ながら動揺する教師を無視してその生徒は軽い口調で、妙に慣れた感じで自己紹介をした。
「ま…まぁ…いいか……。それじゃ、イ、イブキ?くん?君の席はあの1番後ろの…イブキ君?!」
さらに教師の言葉を無視し、誰かを探すように辺りを見回しながら教室内を歩く。
ザワザワと騒がしくなるが、その生徒、イブキは気にもせずに1人1人の顔を見て回っていた。
俺はこの回帰が始まって、初めての変化に嬉しさと驚きを隠せずに思わずイブキを凝視してしまい、
目が あった。
「お、おおお、お!!!おまえかぁあああああぁぁぁあああぁぁぁあ!!!!!!」
イブキはいきなり大声でそう叫んだ後、視線などお構いなしに俺のほうへまっすぐに向かってきた。
そして、
「俺の怒りを思い知れぇえええぇぇぇぇええぇぇ!!!」
「!!!??」
バキィッと鈍い音と共に思いっきり拳で殴られ、俺は吹き飛んだ。
あ、意識が、…………飛
読んでくださり、ありがとうございました!




