ハルに任せてみよう
フォースドガゼルはその発達した脚が特徴的なモンスターだ。当然、移動も速いものだとは分かっていた。だが、しかしあまりにも速すぎやしないか?
「あいつ、瞬間移動したか?」
ショウは近くにいたため、移動の瞬間をちゃんと見れなかったらしく、とても困惑していた。だが、さすがに瞬間移動は無いだろ……。
「んなわけあるか。ただただ速く移動しただけだ」
「んー……俄には信じがたいが、まあ、そうなんだろうな」
「本当に分からなかったのか?」
「ああ、絶対攻撃を当てたと思ったのに、いつの間にか消えていた。俺もそこそここのゲームをプレイしてるけど、こんな体験したのは初めてだ」
ショウはまだ困惑が残りつつも、その目を光らせていた。未知の敵にワクワクしていることが見て取れる。
ひとまず俺たちは作戦会議に入った。相手が逃げに徹すると、カンナのアビリティ『茨の盾』も使えない。ショウのアビリティはなんだか分からないが、本人曰く、今回には向いてないらしい。ちなみに俺の『空蝉』も相手が避けに徹するとあまり有効打にはならない。
みんなでどうしようかと唸りを上げていた。その時、名乗りを上げたのがハルだ。
「私が行ってみていい?」
「1人で行くのか?」
「うん。ちょっと考えがあるの」
「俺はいいが……」
俺はチラッと2人の方を見る。ショウとカンナもハルの意見に賛成するように笑っている。
「俺も全然いいぜ!!」
「カンナもです!」
「満場一致だな。じゃあまずフォースドガゼルを探して、見つけたらハルに任せるよ」
「うん!」
ということなので、俺たちはまずフォースドガゼルを探しに向かった。それにしてもハルの考えとは一体何なのだろうか。気になる気になる……。
◇
「いた……。しかも2匹だ」
山の急斜面にフォースドガゼルが2匹。ハルは既に短剣を2本構えている。
「じゃあ行ってくるね」
「ああ、任せた」
ハルはすーっと息を吸うと、とても速いスピードで走っていった。前までの動きとは段違いだ。まさかコソ練したのか?
ハルがフォースドガゼルとの距離を詰めていく途中に、向こうもハルの存在に気付いたようだ。まずいな……このままではさっきと同じ展開だ。
その時、ハルが何かを呟いた。距離があるので聞き取れなかったが、薄らと口元が動くのが見えたのだ。
すると、ハルが残像を出しながら、さらに速いスピードでフォースドガゼルに斬撃を入れた。今度はフォースドガゼルにしっかり当たっているようだ。
フォースドガゼルは後ろに飛び退くと、少し前屈みになり、その脚に力を入れ始めた。また逃げようとしているのかもしれない。
しかし、ハルは冷静に一度短剣を振った。すると、そこに風の斬撃が生まれ、フォースドガゼルめがけて飛んでいった。
その斬撃がフォースドガゼルに当たると、内部から弾けたように細かい斬撃が飛び出した。その全てがフォースドガゼルに当たり少し怯む。
ハルはその隙を見逃さず、またフォースドガゼルに近付き、今度は短剣を深々と突き刺した。それにより、フォースドガゼルは動かなくなり、ついには光となって消えた。どうやら見事倒せたようだ。
だが、まだハルの猛攻は終わらない。今度はもう1匹の方に駆けていき、短剣2本をクロスさせるように振った。
すると、フォースドガゼルの足元から竜巻が巻き起こり、フォースドガゼルは上空へと飛んでいった。それを見て、俺はなるほどと思った。空中ならばあの脚も使えない。よって逃げられる心配もない。
ハルは空中のフォースドガゼルの元に飛び上がり、空中ではあり得ないほど斬った。それはもう本当あり得ないほど。
フォースドガゼルはそのまま息絶えて、光となり消えた。どうやらハルの作戦はうまくいったようだ。
俺たちはハルの元に駆け寄った。もちろんハルの勝利を祝うために。
「すごいな、ハル!!まさかあんなに強くなってるとは思ってなかったぞ!」
そう言って俺はハルの肩にポンと手を置いた。すると、ハルはスッとこちらを向き、真顔のまま俺の手を払った。
「ボクに気安く触らないでくれるかな」
「「「……え?」」」
連載31回目です。
今回は割とハルがメインの回になりました。ひとまず彼女の成長を書きたかったので。多分次回もハルをメインにした展開になると思います。
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