学校に行ってみよう2
ショウとカンナとクエストに行った四日後のこと。学校の休み時間に佳純が俺の教室に来ていた。
「ねえ、慶」
「ん?どうした?」
「あ、明日、ちょっ、ちょっと付き合ってくれない?」
佳純がそう言った途端に周りがザワザワし始める。特に俺は男子から睨まれているみたいだった。佳純は主に女子からニヤニヤされていた。
「どこか行くのか?」
「いや、奈々から聞いたんだけど、あんたさ、ゲームやってるでしょ?私も同じの買ったから、その〜、使い方教えてくれない?」
「カン……田さんに教えてもらえばいいじゃん」
「な、なんか奈々は明日忙しいとかでー、ちょっと無理なんだって。だから……」
「まあ、いいよ」
「ほんと!?…よしッ!」
佳純が何かを呟いて、ガッツポーズをした気がするが、よく聞こえなかったし、なんか怖いのでスルーしておく。
「どうする?俺が行くか、佳純が来るか」
「私が頼んだんだし、私が慶の家に行くよ」
「……自分で言っといてなんだが、俺一人暮らしだけど大丈夫か?」
俺と佳純は家が近い上に、通っていた幼稚園も同じだったので、よく互いの家に行って遊んでいた。だから互いの家族のことも知っているのだが、佳純の父親がとても佳純のことを溺愛している。よって俺は佳純の父親から目の敵にされている。
現在、佳純はこっちに住んでいる叔父の家に居候している状況なので、佳純の父親はいない。だが、この叔父は佳純の父親の弟だ。よって性格も似ている。イコール佳純を溺愛している。それこそ自分の子供と同じように。
ということで、俺はあまり佳純の叔父の家には行きたくない。だからと言って、俺が一人で住んでいる所に女子を連れてくるのも、どうかと考えた結果、佳純の意見を尊重することにした。
「私は全然いいよ?慶が嫌じゃないなら全然ね」
「じゃあ俺の家ってことで……そういえば分かる?俺の住んでるとこ」
「……分かんない」
「今日って放課後は暇か?」
「別に暇だけど……」
「よし、じゃあ今日は一緒に帰るか」
「え!?」
何をそんなに驚くことがあるのか。5、6年前は普通に帰ってたのに。なんか妙に周りもうるさくなってきてるし。え、もしかしてダメだったのか?またやってしまったのか?とても不安になってきた。
「い、嫌か?嫌なら別にいいんだが……」
「全然!全然嫌じゃないよ!ただ少し驚いただけだから……あはは……」
「そ、そうか?ならいいんだが……」
こうしてなんとも不思議な空気で佳純との話は終わっていった。
◇◇◇
翌日、午前中の内に佳純と、佳純の従兄弟の紗希が来た。紗希は佳純が居候している叔父の子供だ。昔は紗希の家も近かったのでよく遊んでいたが、こっちに引っ越してきてからはまったく遊んでいない。ちなみに紗希の年齢は俺たちの一つ下だ。
「なんだ、紗希も一緒だったのか」
「うちの親に一緒に行けって言われてね。まあ、仕方なくよ」
「紗希はやらないのか?」
「私はいい。ゲームはそこまで好きじゃないから」
「そうか。というか暇じゃないか?俺の部屋は何にもないぞ?」
「いいよ、色々持ってきたし。これで暇は潰せるから」
「てか、早く中に入らせてよ。寒いんだけど」
「あ、ごめん」
俺は二人を中に案内した。俺は学校近くのマンションに住んでいる。部屋の中は黒を基調にした、割と地味な色の家具でまとめている。
「あれ、意外と綺麗なんだね。慶のことだからもう少し汚いと思ってた」
「おい、偏見がひどいぞ。お前は俺にどういうイメージを持ってるんだ」
「それは佳純と同意見」
「紗希もかよ!」
佳純は早速準備を始める。俺も自分のものを用意しておく。紗希は勉強するみたいだ。
「はい、準備できたよ」
「よし、じゃあまずはこれを被って」
俺はヘルメット型のVR機器を佳純に渡す。佳純には俺のベッドに寝てもらう。やむを得ない。VRゲームは長時間同じ姿勢で行うため、ベッドのような柔らかい場所に寝転ぶのが一番適している。
「電源を入れたらゲームが始まるから、あとは中の音声に従って進めてくれ」
「うん、分かった」
俺が電源を入れると、佳純はそのままゲームに入っていったようだ。俺も急いでゲームを始めようとする。
「じゃあ俺もゲームを始めるから。お腹空いたら適当に何か食べてていいぞ」
「うん、分かった」
俺はソファーに寝転び、ゲームを始める。これまでは俺が教えられる立場だったが、今度は俺が教える立場となるとは……。少しワクワクするな。
◇◇◇
慶一郎がゲームを始めてすぐ、慶一郎の部屋を動く影が一つ。
「よし、二人ともゲームに入ったね」
紗希は二人がVRの世界に入ったことを確認すると、すぐに行動を起こした。
「慶兄ちゃ〜ん!」
紗希はベットに寝転ぶ慶一郎に抱きつく。このVR機器は現実世界で傷を負ったりすると起きる仕様になっている。だが、抱きつかれた程度では起きることはない。よってバレないのだ。
「もう〜、ずっと今まで我慢してたんだから〜」
紗希はずっと前から慶一郎が好きだったが、同時に佳純も慶一郎のことが好きだということに気付いたので、その気持ちは表に出さないようにしていた。
結局、そのまま引っ越してしまい、まったく慶一郎と会えない生活を送ることになる。
だが、慶一郎が家の近くの高校に通うことを知り、とても喜ぶ。とはいえ、会うことも話すこともなく、今日に至る。
「ふう、このくらいで十分かな」
しっかり慶一郎エネルギーを補充した紗希はちゃんと勉強に励むのだった。
連載16回目です。
とうとう佳純もゲームに参戦します。一体どんなゲームスタイルを見せるのでしょうか。次回は続きとなります。
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