トッププレイヤーと戦ってみよう
「ソラさん!後ろ!!」
カンナの声を聞いて、すぐに後ろを振り返る。そこには既に剣を振っている女性がいた。
「遅いッ!エレメントブレード!!」
俺は左肩から斜めに大きく斬られる。HPが大きく削られるが、かろうじてまだ生きていた。
俺はすぐに後ろに跳び、ポーションを使って回復した。対して彼女は不思議そうに俺を見つめる。
「今の攻撃で確実に仕留めたと思ったが……装備に秘密があるのか?一度効果を見てみたいが……」
ブツブツと独り言を話しているようだ。少し怖いので体制を立て直して、放置しておく。
だが、今のは正直危なかった。速すぎて空蝉を使うことができなかったくらいだ。これは本気を出すしかないかな。
「まぁ、いっか。倒せばいいだけだし」
「倒す前提か……。ちょっとムカつくな〜」
「なら、精々耐えることだな」
「はいはい、頑張りますよッ!!」
俺は話終わると同時に一気に距離を詰める。そしてスキル:スラッシュを使って攻撃する。だが、余裕で防がれてしまう。この感じだとレベル差も相当ありそうだ。
「ほう、逃げないのか」
「は?何で逃げるんだ?戦うだろ」
「……いや、すまない。それはそうだな」
俺は再びスキルを発動する。しかし今度はスラッシュではない。この前獲得した新スキルだ。
さらに空蝉を使う。
これは前々から考えていたのだが、空蝉は別に回避専用ではない思っていた。なので試しに特に何もない時に使ってみたら普通に使えた。
このことから空蝉は攻撃できないだけで、距離を詰めたりするのには使えるということだ。
そして俺が回避(移動)したのは彼女の目の前。これで一気に決める!
「クロスフラッシュ!!」
スキル:クロスフラッシュ…光属性の二連続物理攻撃。
ダンジョンでのアンデッドドラゴン戦を終えた時に獲得したスキルだ。取得条件は光属性の武器を使ってアンデッド系のモンスターを倒すことだ。
「な!?速い……ッ!」
俺の攻撃は彼女に完全に決まった。だが、倒すことはできない。レベルと装備の差が開いているからだろう。
「ふふッ、いい、いいぞ!私相手にここまでやるとは……。そういやまだ名前を聞いてなかったな。教えてくれるか?」
「ソラだ。あんたは?」
「私はサクヤだ。ソラ、私はお前に興味が湧いてきた。戦いの続きを……と思ったが、邪魔者がいるな。少し待っててくれ」
サクヤはそう言うと、ものすごい速さでどこかへ消えた。その間にカンナが俺の元に走ってきた。
「ソラさん、あの人やばい人です……。逃げましょう!」
「何か知ってるのか?」
「知ってるも何も、銀髪で名前がサクヤと言ったら一人しかいませんよ!神速のサクヤと呼ばれてるすごい人です。このゲームではトッププレイヤーに数えられるような人ですよ!」
それを聞いて思った。あの時のサクヤの一言『逃げないのか?』は彼女がトッププレイヤーだから戦わず逃げる人が多いからそう言ったんだろうな。まあ、あの速さから逃げられる人なんて早々いないだろうけどな。
と、サクヤがまたものすごい速さで戻ってきた。邪魔者というのは周りにいたプレイヤーのことだろうか。全然気付かなかった。
「待たせたな。さあ、続きを始めようか」
「ああ、いくぞ」
それから俺は隙の多いスキルでの攻撃はあまりせずに、防御に専念した。理由は彼女の動きの癖を知るためだ。
彼女の動きの癖が分かれば、空蝉でどんな攻撃でも躱すことができる。そうなれば俺は無敵だ。
「どうした!攻めてこないのか!」
「あんたが速すぎるんだよ!もう少し遅くならないのか?」
「もう少し速くなら出来るが?」
「聞いた俺がバカだったよ」
「ふふッ、ヴァリアブルスラスト!!」
サクヤがスキルで攻撃してくる。俺は彼女が振った剣を止めるが、斬撃が枝分かれし、俺を襲った。俺は素早く後ろに跳び、追撃を逃れる。
「あと二撃くらいかな?」
「ポーションがあればまだ戦えるぞ」
実際、ポーションはもう無い。イベント開始時には二本しか持っていなかったのを少し前に一本、さっき一本使ったのでストックはゼロだ。
「とか言って、もう無いんじゃないのか?」
「どうだろうな」
「その反応は図星かな」
なんで分かるんだよ。そういうスキルは無いはずだが、まさか会ったりするのか?もしそうなら是非欲しい。
とはいえ今は本当にまずい状況にある。ギリギリ耐えれてるが、サクヤが何回か見せている目に見えない速さでの攻撃が来たら確実にやられる。
「じゃあそろそろ終わらせようか」
まずい……!来るか?
そう考えているとサクヤが消えた。俺は注意深く周りを確認する。だが、その甲斐虚しく背中に一撃をくらってしまう。あと一撃入れられたら終わりだ。
「ソラさん!こっちへ!!」
そこにカンナがやってきた。俺はカンナを信じてカンナの後ろに回る。と、すぐに俺の真左からキンッという音が聞こえた。
「ふむ、カウンター付きの盾……か。茨の盾だな?」
「茨の盾?」
「私のアビリティですよ。ソラさんが言ってた通り、カウンターが付いた絶対防御の盾です。私の周りにいれば、ひとまずは安全ですよ」
アビリティ茨の盾か。俺の予想通りの性能のようだ。
「というかよく知ってますね。私、あなたにアビリティのこと話してませんよね」
「知り合いに同じアビリティを持つ奴がいるからな。そいつに一杯食わされた思い出もある。だから攻略法も知ってるぞ」
サクヤが何かのスキルを発動する。カンナはそれを見てとても驚いているようだった。
「ま、まずいです……。ソラさん!逃げて!」
「シールドブレイク」
俺は言われた通り、空蝉で回避する。その直後に俺の目に映ったのはサクヤの斬撃を左肩からモロにくらっているカンナだった。
「カンナッッ!!!」
カンナはまだ生きている。だがそばにはサクヤがいる。このままでは俺がカンナを助ける前に、サクヤがカンナを倒してしまう。
だが意外にもサクヤはカンナではなく俺の方を向いた。狙いはあくまで俺らしい。
「ソラ、君に一ついいことを教えてあげるよ。私が持つこの剣は見た目の通り、炎を司っている。燃え盛るような紅蓮の赤。この剣の最大の特徴は瞬間火力の高さだ。一撃に全てを込めて、敵を殲滅する。さあ、終わりにしよう」
悔しいが、今回ばかりは俺の負けだ。このまま続けても必ずどこかでサクヤの攻撃が当たる。負ける。空蝉は万能じゃない。俺は斬られる。負ける。
だけど!あと、あと10秒!10秒耐えれば、引き分けには持ち込める!!
「10、9、8、」
「ん?カウントダウン?……まさか!!」
俺は彼女の動きをまだ読めていない。まだ情報が足りない。だが一つだけ分かったことがある。彼女は勝負を決めようとする時、必ず左肩から斬ろうとするということだ。
だから俺が取るべき行動は……
「チェックメイトだ、サクヤ」
俺はサクヤの斬撃を彼女の左脇の方から回避する。そしてそのままカンナの近くに寄り添う。カンナはまだ立てないみたいだった。サクヤの攻撃のせいだろう。
「3、2、1」
「はぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「ゼロ」
サクヤの攻撃が俺に当たる。だがHPは減らない。そしてどこからか軽快な音楽が聞こえてきた。
『これにてイベントは終了です。転送を開始いたします』
ここに来た時と同じように周りが光に包まれる。そこにサクヤが近づいてくる。
「やられたよ、ソラ。もしかして君は最初からこれが狙いだったのか?」
「いや、途中までは勝とうとしてたさ。でもカンナがやられた時から俺の負けは確定した。だから負けない選択肢を選んだまでだ。引き分けに持ち込めただけ、まだマシさ」
「つくづく面白い奴だ。また会おう、ソラ」
「ああ、またな」
俺は眩しいほどの光で目を閉じる。目を開けるとそこはビギンだった。
これで俺の初イベントは終わった。ただ一つ、胸に残ったのはこれまで感じたことがないほどの悔しさだった。
連載10回目です。
ようやくイベントが終わりました。サクヤに負けて悔しい思いをしたソラ。次回はクエストをこなしていきます。
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