RPGを始めてみよう
「なあ、慶一郎。お前ってさ、RPGやったことあんの?」
そんな帰り道の他愛もない会話から始まった。
俺の名前は空永慶一郎。高校二年生だ。今、友達の張谷祥吾とゲームの話をしている。
「うーん、ないな。俺がやったことあるのはオセロとかチェスとかそこらへんだ」
「それはお前の得意分野だろ!ったく、世界チャンピオンが何言ってんだよ」
俺はオセロ、チェス、将棋などのアブストラクトゲームが得意だ。特にオセロでは世界チャンピオンになったこともある。要するに、相手の手を読むのが得意であり好きだ。
「それで結局何が言いたいんだ?」
「お前、この前のチェスの大会で優勝した時に賞品としてVRキット貰っただろ?あれで一緒にMMORPGやらないか?」
「まあ、今は特にやらなければいけないこともないからいいけど……なんて名前だ?」
「Derive Ability Onlineっていうゲームなんだけど知ってるか?」
「ああ、まあ一応知ってる。てか、持ってる」
「まじか!なんで持ってんだ?」
「妹たちにも誘われてな。仕方なく買ったが放置してた」
「そうだったのか。よし、じゃあいい機会だ!今日から始めよーぜ!」
「うーん……まあ、やるか」
「よし来た!なら早く帰るぞ!」
ということで俺は初めてRPGをやることになった。
◇◇◇
俺は誰もいない部屋に帰ってきた。訳あって今は親元を離れて暮らしている。よって誰にも何も言われることなく自由にゲームが出来る。まあ、一人暮らしは楽じゃないんだけどな。
「よし、始めるか」
俺はヘルメットのような形をしたVR機器を被り、ベッドに寝転ぶ。そして目を閉じる。
次に目を開けたら、そこは自分の部屋とはまるで違う、一面真っ白な空間だった。事前に祥吾から聞いた話によると、ここが初期設定を行う場所らしい。
『ようこそ、Derive Ability Onlineへ。まずはあなたのお名前をご入力ください』
どこかから機械の女性の音声が聞こえてきた。俺は目の前に現れた画面に名前を打ち込む。
『ソラ様ですね。では次に容姿を決めます。身長、体重を入力してください。なるべく現実と同じでお願いします』
身長と体重を入力する。どうせなら現実よりも身長を高くしたいが、動きにくくなるのは嫌なので同じにしておく。
『ありがとうございます。では最後にアビリティルーレットを開始します。お好きなところでストップと申しください』
来た、アビリティルーレットだ。祥吾が言うにはこれでゲーム内の方針が決まるらしい。ここで何を引けるかが重要となる。ただその種類は千を超えるとか。
画面がルーレットに変わり、目では絶対に追えない速度で回り出す。これは確実にランダムだな。
「ストップ」
ストップと言ってから動きがゆっくりになり、徐々にルーレットは動きを停止した。
『はい、ではソラ様のアビリティは空蝉となりました。今後、アビリティの変更はできませんのでご了承ください。それではいってらっしゃいませ』
初期設定が終了すると、足元が光り出した。これは転移の合図らしい。ここから最初の町へと移動する。最初の町に祥吾がいてくれるらしいので、詳しいことはそこで聞こうと思う。
あとアビリティについても説明を聞かないといけないな。俺が思ってる空蝉と同じなのか、どうなのか。同じだったらなかなか使えそうだ。
俺の姿は真っ白い空間から消えた。
新作でございます。VRものは初書きとなりますので、なかなか至らない部分もあると思いますが、どうか温かい目で見てください。評価もしていただけると嬉しいです。