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異世界でもうちの娘が最強カワイイ!  作者: 皇 雪火
第4章:魔法学園 入学準備編

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第093話 『その日、ようやく入国した』

 『ウィンドソード』などの風属性魔法は、対象を斬る事に特化している。そして『アイスソード』などの氷属性魔法は、拘束することに長けている。

 対して『ファイアソード』などの炎属性魔法は、相手の身体を焼き、痛め付けるのに向いていると言える。

 ちなみに1段階上のブレードは威力や効果が爆上がりするんだけど、魔法抵抗もない普通の人間には致命的だから使えないわ。


 私は勢いよく『ファイアソード』でシガンナス少尉の肩を貫く。すると肉が焼ける音と臭いがした。お世辞にもいい匂いとは言えないわね。


「―――!!」


 シガンナス少尉があまりの痛みに、声にならない声を発する。でもまだ始まったばかりだ、そのままとっておきの魔法を行使する。


「『ブラッドペイン』!」

「ぐああっ!!」


 ()()()()()()()20に属する、痛覚を操作する魔法だ。

 無傷の相手には効果はないが、生傷に使えば痛みを増幅させる。この魔法の良いところは、使いすぎてもHPは削られない所ね。ひたすら相手の精神を痛め付ける。


 暗黒魔法は、0から魔法を行使することは出来ないので、最低でも1以上にする必要がある。今まで使うことは出来なかったのは、0から上げる機会がなかったから。

 0から上げる方法はただ一つ。()()()()()()を大量に浴びること。


 そんな行動を家族の前でするわけにはいかなかったから、()()()()()()()()は思うところはあるにせよ、結果的にファインプレーだったような気がしないでもないわ。


 シガンナス少尉は、のた打ち回りたくても肩に突き刺さった『ファイアーソード』が邪魔をして動けないみたい。翅をもがれた虫のようにジタバタしているわね。


 そうしてる内に、シガンナス少尉は息も絶え絶えになり、痛みに対する反応が鈍くなってきた。

 なので私は、痛覚を操作しもう1段階痛みを強くする。


「ああっ!!」


 再び大きく反応したシガンナス少尉は、脂汗と苦痛により酷い顔になっていた。

 そんな彼を見下ろしながら私は告げる。


「気を失えば楽になれるかもと思ってる? 悪いけど逃がすつもりはないわ。気を失っても、今のように痛みを増幅して無理やり叩き起こす。だからあなたは逃げられない。そして悲しい事に、この痛みで死ぬ事はないわ。あなたが折れない限り、この痛みは永遠に続くと思いなさい」


 でもやり過ぎると廃人待ったなしだし、やり過ぎないよう気を付けましょうか。


「さて、少尉殿? まず私に、何か言うことがあるんじゃないかしら?」

「ひっ……も、もうし、わけ、ありま……せっ」


 途切れ途切れになりながらもなんとか言葉を紡いだようだった。ふむ、まあ少しくらい許してあげよう。私はゆっくりと『ファイアーソード』を引っこ抜き、魔力へと戻す。


「ぐぎっ!」


 新たな痛みに悲鳴を上げたシガンナス少尉は、ゆっくりと呼吸を整え、弱々しく私を見上げた。


「お、お前は、一体何者なのだ。ただの貴族令嬢では、なかったのか……」

「それはなんだって良いでしょう? 今大事なことは、私次第で貴方の今後の人生が決まると言う事よ。言葉選びは慎重になさい」


 床に落ちた首輪を拾い上げ、シガンナス少尉の前でチラつかせる。


「ぐぅっ……」

「立場は理解出来たようね。さて少尉、いくつか確認したいことがあります。正直に答えない場合、この首輪をつけてしまう事も吝かではありません。宜しくて?」


 少尉は小刻みに首を縦に振ったのを見届けて、私は席に戻った。そのついでに誓約書を回収して、兵達の拘束を終えたアリシアを隣に座らせた。

 うんうん、アリシアが隣にいないと落ち着かないわ。


 アリシアの腕を抱きながら、閣下を見る。閣下は頷いて返してくれるので、ここから先も私に任せて貰えるみたいね。


「ではまず第一に、貴方の直属の上司は誰? 軍属としての上司ではないわ。首輪を用意し、壮大な反逆計画を遂行する中での、貴方の上司よ」

「ロ、ログナート伯爵だ」

「あら、あの豚ではないのね」

「! ……あ、ああ。ログナート伯爵のさらに上に君臨するのがアブタクデ伯爵なのだ」


 やっぱり豚で通じちゃうんだ。影では色々と言われていそうね。


「それでさっきのポルトの事だけど、どこまでが事実なの?」

「……?」

「闇ギルドが計画を実行に移す予定という連絡が来ていたと言うことは知っているわ。それから先、結果は届いたのかと言うことよ」

「そ、それは……なぜそれを!」


 首輪をちらつかせる。


「連絡は、来ていない……」

「そう。つまりは予測で答えたのね?」

「そうだ……」


 ふむ、やっぱりね。両隣からも安堵した空気を感じる。


「なら最後に、ログナート伯爵に遠隔で報告する術、持っているわね」

「っ!?」

「至急それを準備して、グラッツマン子爵一行を問題なく処理できたと報告しなさい。勿論、緊急時の暗号などは使用禁止よ。もし暴れたりそういった素振りを見せたら、先程味合わせた苦痛を三日三晩味合わせてあげる」


 先程の苦痛を思い出したシガンナス少尉は小さく震えた。


「そのままじゃ痛いだろうし、治療してあげるわ。『リカバリー』」


 少尉の肩が輝き、傷は完全に消え去る。


「なっ!?」

「これでわかったかしら? 貴方は逃げられない。死ぬ事も許されない。助けを呼ぶ事も叶わない。当然お仕置きの最中に死なせてしまうこともないから、安心しなさい。フフフ」


 シガンナス少尉が俯き、怯えたように震え始めた。

 うーん、やり過ぎたかな? 用事が終わったら最後に首輪をゆっくりとつけて絶望する様を見つめて溜飲を下げようと思っていたけど……。

 そこでアリシアを見る。流石にちょっと哀れみを感じているようだ。アリシアが許しているなら、私が許さない道理はない。


「す、すぐに準備します」

「一応打ち合わせをしておこうかしら。閣下、宜しいですか?」

「うむ、構わんよ」


 シガンナス少尉には準備をしてもらいつつ、応答内容を詰めて行くことにした。



◇◇◇◇◇◇◇◇



『ザザ、ザザザッ』


『……私だ』


 若干のノイズが混じるも、少尉の手元にある水晶玉から男の声が聞こえる。シガンナス少尉が用意したのは短距離式の魔石電話だった。簡単に言うと電池が魔石になった携帯電話だ。

 まあ、携帯というには見た目はゴツいし、持ち運びには向かないけど。


 メリットはコストが安い事。デメリットは作成時に作る(つがい)同士でないとやり取りができないという点。そして通信距離が短いということ。

 ゲーム時代でも簡単に作れて複数回こなせば住民の知名度を上げられるクエストとして、()()()お世話になったアイテムだ。


 短距離があると言うことは長距離タイプや複数の子機がある特殊型もあるのだが、そこは割愛。

 

「こちら西方警備隊、シガンナス少尉であります。至急お伝えしたいことがあったため、連絡させて頂きました」

『ほう、ネズミが掛かったか?』

「はい、例の毒で逃げ出して来たグラッツマン子爵一行を捕らえ、首輪で無力化しました」

『あやつを捕らえたか! しかし道中は犬が網を張っていたはずだ。奴らはどうなった』

「どうやら同伴した冒険者達がかなりの手練れだったらしく、奇襲部隊は全滅したようです。ですがご安心下さい。ここは安全と気を抜いた奴らの隙を突き、冒険者も含めて主要な者達全員に首輪を装着しました」

『そうか、良くやった! 犬の補填は考えておこう。さて、私も落ちぶれたグラッツマンの様子が見たい。あの方の報告の前に、私の下へと連れて来こい』


 そこでシガンナス少尉がこちらを見やる。話し合った通りの展開だったので、頷いて続きを促した。


「それが、例の毒の影響で奴等の馬車は腐敗臭が酷く、街に入れられないのです。それを理由に、この門で足止めをさせて頂きました」

『……続けろ』

「それは装備や衣服だけでなく、グラッツマン子爵も同様のそれで……潔癖な伯爵様では見るも絶えないどころか、近寄ることすら難しいかと。この臭いを落とすには2日は掛かると思いますので、3日後、改めて連絡致します」

『ちっ、あの毒は臭うからな……。シガンナスよ、しっかり磨いておくのだぞ!』

「はっ、お任せ下さい!」


 『ブツッ』という音ともに通話が切れたようだった。

 うーん、予想通りに事が進んで、ちょっと拍子抜けしちゃったわ。


「ふぅ。3日もあれば伯爵2匹くらい何とかなるわね」

「そんな大それたことを言えるのはお嬢様だけですね」

「はははっ、確かにそうだな」

「……」


 気が緩んだのか、皆空気を和らげようとするが、いまいち笑えていないのが1人。そこは空気読んで笑って見せなさいよ。

 でも笑われるとムカつくから殴ってたかも。


「……シガンナス少尉、最後に確認がしたい」

「……何でしょうか」

「いつからだ? いつからこのような事を……!」

「子爵や男爵家が保有する領地を、破壊する計画の事ですか? それなら、5年ほど前からですよ。そして去年の定例会、アブタクデ伯爵から声をかけて頂いたにも関わらず、話の詳細を聞く事すらせずに蹴った者達。全員が攻撃対象です」

「あの時か! 伯爵の周りで良くない噂が流れ始めていた時期だったからな。関わり合いになりたくなかったのだが……。それ以前にはもう、敵視されていたのだな」


 少なくとも、今までに助けてきた3つの街の領主は豚の誘いは断っていたと。つまるところ派閥としては公爵派ということね。そしてあの豚についた者が何人かいる、と。

 まぁそこはどうでもいいわ。処理は偉い人に任せて、私は楽しく学園生活を送れるように、ゴミ掃除だけをしておけば良いのよ。


「それで、私はどうなる」


 シガンナス少尉は私に怯えた視線を見せた。いじめ過ぎたかしら?


「最後に首輪でもつけてやろうかと思ったけど、貴方自身、ここで悪さを働いた様には見えないから、やめておくわ。これ以上不用意に痛めつける予定はないから安心なさい。ただし、変な行動を起こさなければの話ね」

「これから冒険者ギルドに向かい、そのままランベルト公爵様にご挨拶をする。君の処分は公爵閣下や陛下に委ねるとしよう」

「……わかった」


 さっきから私に向かっての言葉だけ雑ね。まあ私、ただの冒険者だし、仕方ないんだろうけど。


「とりあえず金庫はどこかしら」


 指示書とか大事な書類とかを探すためではあるけど、この言葉だけを見ると、まるで私、強盗みたいだわ。



◇◇◇◇◇◇◇◇



 シガンナス少尉の金庫から私財やら素材やら、ついでに書類やらを頂戴した。意外にも良質な魔石とかが置いてあったのでありがたく頂戴した。勿論閣下の承諾は得ている。


 それと、シガンナス少尉が持っていた通信用の魔道具はそのまま閣下にお任せした。連絡が来たらシガンナス少尉がアドリブで乗り切ってくれるみたい。

 金庫からシガンナス少尉の余罪が出てくるかと思ったけど、別にそんなことはなく、ただ長いものに巻かれただけみたいだわ。別段ここで行った悪さも、盗賊団の出入りを黙認していた程度で、直接的な何かをしていた訳では無いみたい。


 そして別室で待っていた家族や仲間を迎えに行くと、案の定のんびりしていた。部屋の端では兵士達が落ちていたけど。

 アリシアが撃退していたタイミングで、こちらの赤い縁の兵士たちも薄らとしていたから、連動して捕らえようとしたみたいね。

 ここの4人はイングリットちゃんを除けば、複数の兵士達が相手でも1人で圧倒出来る面子だし、何の心配もなかったけど。


 赤いシンボルの兵士は、気絶者も起きている奴もまとめて束縛し、馬車に盗賊たちと一緒にまとめて詰め込んだ。ただでさえ狭い馬車がさらに過密状態になったみたいね。むさくるしそうだけど、知ったことではないわ。

 シガンナス少尉だけは一応待遇面も考えて、閣下と一緒に居てもらう事になった。危険物は全部私が預かっているし、魔法も使えないみたいなので、暴れられる心配もなさそう。というか、私が脅した以上、もう彼は逆らう気力がないようだった。


 ついでに馬車に描かれているグラッツマン家の家紋についてだが、相談の上でここからは隠していく事にした。

 本来は貴族として隠してはいけないらしいんだけど、事情が事情だという事で、あとで陛下に詫びる事で許してもらうらしい。駄目そうなら私からもお願いしてあげよう。


「はぁ、ようやく王都に入れたわ。アリシア、膝枕してー」

「はい、お嬢様」


 王都は今までの街とは比べ物にならないほど広く、冒険者ギルドもその都合上、街の中心部付近にある。その為門からかなり進まないといけないので、馬車でもそれなりに時間がかかるようだった。

 なのでその間は、アリシアに癒されることにする。


「耳かきー」

「はい」

「むにゅ……」


 至福すぎて寝そうになる。あー、小一時間くらい寝ちゃおうかな。

 うつらうつらとして来たところで、アリシアが優しく頭を撫でて来た。


「お嬢様、先程の件なのですが」

「んぅ?」

「私との誓約書の件です。壊れないよう大事にして下さっていたのですね。ありがとうございます」

「ん。当然のことをしたまでよ。アリシアとの絆は、誰にも傷つけさせないんだから……」

「お嬢様……」


 ゆったりとしたイチャイチャ空間を展開していると、リリちゃんが不思議そうに聞いて来た。


「お姉ちゃん、誓約書ってなあに?」

「うん? アリシアが特殊奴隷って言うのは知っているわよね。その時にアリシアと交わした未来永劫一緒にいるって約束をした紙の事よ。正直これが無くてもアリシアとは一緒にいるから、この紙は私にとっては関係を補強する為と言うよりかは、思い出と言うか、記念品に近いわね。後は私達の関係を知らない人に、アリシアは奴隷ではない事を証明する為の物でもあるわ」

「あの男はそんなお嬢様との大事な物を、あろうことか壊そうとして来たのです。ですが、お嬢様がしっかりと保護して下さっていました。形ある物はいずれ崩れ行くものですが、お嬢様の気持ちがとても嬉しかったです」


 誓約書を取り出してリリちゃんに見せると、皆気になっていたのか集まって来た。


「わっ、スゴイ。持っても形が変わらないよ!」

「本当ね、鉄板みたいにずっと真っ直ぐだわ」

「……ねえシラユキ、ここに誓約書の内容とは関係の無さそうな文字が書かれてるけど、これがシラユキの施したモノってこと?」


 皆の視線が、紙の端っこ。『付与士』として記入した『保存』の文字に吸い込まれて行く。


「そうよー」

「シラユキがくれたこの武器もそうだし、こんな文字を書けば強化されて行くの?」

「お嬢様、私も気になっていました。教えて頂けますか?」

「リリもリリも!」

「弓も杖もそうだし、目には見えないけど服にもつけてくれていたのよね? どんな物なのかママも知りたいわ」

「シラユキ様、お聞かせ願えますか?」


 皆、今まで聞いてこなかったけれど、実のところ気になっていたみたいね。しょうがない、この状況でお預けして眠りこける訳にも行かないし、久々に授業しましょうか。


「そうね、まずこの技術は、ただ書けば良いって物じゃないわ。ダンジョンの宝箱から入手出来る『ワード』を手に入れる必要があるの。そしてそれを入手した上で『付与士』という職業に就いて、初めて使用が可能になるわ」

「『ワード』……聞いたことがあります。ダンジョンで入手出来る物の中でハズレ扱いされているアイテムですね。理由は使い方が分からないからのだそうですが」

「あたし、見たことある! 透明な筒の中に和国の文字が浮かんでるって奴でしょ?」

「私も司祭様から聞かせて頂いたことがあります。和国由来の品なのではないかと、一度正式に問い合わせたことがあったとか……」


 へえ、そうなのね。まあ、浮かんでいる文字は漢字1文字だし、『付与士』の存在を知らないと訳わかんないわよね。


「それで答えは得られたの?」

「いいえ、明確な答えをいただけなかったようですが、一部の方々は、知識の独占をしているのではないかと噂されていました」

「それって貴族が言ってたの?」

「はい」

「魔法の知識を独占してる奴が何言ってるのって話よね」

「ふふ、そうですね」


 この話でクスクスと笑っているのはアリシアとリディ。ママとイングリットちゃんは困り顔で、リリちゃんはボヤッとしてる。


「貴族の悪口はいつ聞いても冷や汗が出るわ」

「だって技術の隠匿をしてて、更にはそのせいで技術が発達せず、いつまでもまともな魔法が使えていないんだもの。間抜けも良いとこだわ」

「そんな世の中をシラユキは革命を起こすのよね。応援しているわ」

「ありがと!」

「私も貴族様の悪口にはドキドキしてしまいますが、シラユキ様はそのお力で、沢山の人々を救って下さいました。私も微力ながらお手伝いさせて下さい」

「イングリットちゃんもありがと!」


 寝転がりを解除し、2人を抱き締める。というかリディ、また着ぐるみ付けてるのね。抱きしめるまで気付かなかったわ。

 部屋着として気に入ってくれたのかな?


『モコモコ服がクセになるのかしら?』

この作品が面白いと感じたら、ページ下部にて評価していただけると嬉しいです!

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[一言] 豚は遠赤外線でこんがりの刑にしよう( ˘ω˘ )
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