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異世界でもうちの娘が最強カワイイ!  作者: 皇 雪火
第3章:紡績街ナイングラッツ編
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第088話 『その日、異国の女性を助けた』

「あの場所で待機している賊がいたものですから、囲っておいたのでした。アレも仕留めてきますね」

「うむ、こちらの処理は任せてくれ。頼んだよ」


 閣下は忘れていた事を咎める事なく見送ってくれた。ありがたいけどホント恥ずかしいなぁ。


 真四角の大きなブロックへと近づき、様子を見る。

 密封しているから中の音は漏れてこないけど、代わりに外の騒ぎも届いていないだろう。穴を開けられた様子もないし、『探査』で見る限り中の奴は動いていないわね。


 まあ、完全密封にしちゃったから、必死に脱出しようと動き回ると、酸欠になるのよね、コレ。

 我ながら恐ろしい魔法だわ。


『パチン』


 また指を鳴らして正面の壁部分だけ解除する。うん、カッコイイわ、私。こういうポージングは憧れていたのよね。


 中を見ると、2人共倒れていた。片方は男で、もう片方は女の子? 暗いからよくわからないから、背面以外の壁を解除しちゃおう。


『パチン』


 それにしても、こんな野蛮な事に女の子が加担するなんて珍しいわね。

 ……壁を取り除いても、それでも動かない。気絶してるのかな?


 不用意に近づくのは危ないかもしれないけど、まあ私1人ならどうとでもなるし、いっか。

 そんな軽い気持ちで近づくと、男の頭が動き、私を見た。


「今だっ、羽交い締めにしろ!」

「はい」


 その言葉に、抑揚のない声で応答した女の子は飛び上がった。そのままアクロバティックな動きで後ろに回り込まれ、背後から拘束される。そして驚く間も無く両手の自由が奪われた。


「おお?」


 うん、あまりに突然動き出した女の子が綺麗で、目を奪われてしまった。褐色のボディに、ヒラヒラ舞うスカートや、色々チラ見えする装備。

 うん、羽交い絞めにされちゃった私は悪くない。

 こんなの眺めちゃうに決まっているわ。


 それにしても素晴らしいわ。後ろから来る柔らかい感触も中々グッド。両手はまあ、多少力を込めればいつでも簡単に引き離せるけど、あまりに簡単に前座が片付いてしまったので、何をしてくるのか興味があるのよね。


「良くやった! あとでまた、たっぷり可愛がってやるぞ!」

「はい、ありがとうございます」


 男はいつの間にか立ち上がっていて、イヤらしい顔でニヤついていた。うわ、きも。

 コイツ、すでに勝ったつもりでいるみたいね。それに女の子はさっきと変わらず抑揚が無い。何だろう、この感じ……。既視感を感じるわね。

 この子の雰囲気も、表情や声次第ではもっと素晴らしいほどに魅力的に感じられそうなのに、死んだ魚の様な目と、やる気を感じられない声から妙なギャップを感じる。勿体無いわね、せっかく素材は良いのに。

 何だっけなぁ、何処かで……。


「貴様が子爵に頼りにされ、あの忌まわしい壁を生み出したのを俺は見たぞ。つまりお前さえ自由に出来れば、子爵の部隊を軽く潰せるって事だ!」

「はぁ。まあ自由に出来ればの仮定の話ね?」

「はっ、随分と余裕だな。危機感あるのかお前」

「これのどこがピンチだっていうの?」

「高度な魔法使いは頭がイカレてんのか? 魔法使いが接近されて、捕まった時点でおしまいだろうが!」


 うーん、何だっけなぁ。

 女の子を改めて見る。羽交い締めなので虚な顔がすぐ真横にある。視線を飛ばしてもこちらを見ようとしない。と言うか反応すらしない。息を吹きかけても微動だにしない。

 アリシアなら飛び上がるのに……。


 うん? この悪趣味な黒いチョーカーは……。


「まあいい。この首輪さえあれば、そこの女同様、お前は俺の物になるのさ!」

「あ~、そんなのあったわね。忘れてたわ」

「あぁ?」


 完全に忘れてたわ。若干の黒歴史だから記憶が飛んでたかも。


「『浄化』『魔法解除(ディスペル)』」


 もう茶番に付き合うつもりは無かったので、すぐさま魔法を行使した。すると女の子の首輪が光り、音もなく外れて地面へと落ちる。

 人形の様だった顔に朱色が戻り、虚だった目も徐々に視点が絡み合い、ゆっくりと私を視た。


「こんにちは、お姉さん」

「こ、こんにちは……? えっ、あれ、ここどこ? あたしは一体……」

「なあ!? てめえ、何しやがった!」


 彼女は今の状況に混乱しているみたいだったけど、私を羽交い締めにしていることに気付いて慌てて解放してくれた。


「ああっ、ごめんなさい! あたしホントなにしてたの!?」

「あら、もっと感触を楽しみたかったんだけれど、残念ね?」

「え、ええー!? お嬢さん綺麗なのに、そっちの人なの?」

「あら、カワイイに性別は無いだけよ」

「えええ??」


 フフ、さっきまでと違って元気で明るい感じの女の子ね。そんな風に表情がコロコロ変わるなら、その衣装もとっても似合うわ。さっきまでと比べて、断然カワイイわね。


「くそっ、訳わかんねえ! コレでも食らえ!」

「はい『浄化』」


 背後からおぞましい気配がしたので反射で魔法を放つ。予想通り飛んできていたのは例の首輪で、黒い靄は光に包まれて掻き消えた。

 呪いの力を失ったソレは力なく地面へと落ちた。


「なっ……何だってんだ、一体!」

「あなたの問いに答える気はないわ。『アイスランス』」

「ぐぎゃあああ!!」


 氷の槍で四肢を穿ち、地面へと縫い付ける。


「この子にも、他の人達にもひどい事をしてきたんでしょう? せめて意識がある間だけでも、じっくりと痛みを感じなさい」


 地面に落ちた首輪を拾ったけれど、コイツにすぐ装着させるのは勿体無いわ。痛みを痛みとして感じられる瞬間を噛みしめさせてあげなきゃ。

 この前尋問したばかりだけど……なんだかんだ言って、ちょっと楽しかったのよね。しばらくこいつで遊んでいよっと。


 森に、男の悲鳴が木霊し続けた。



◇◇◇◇◇◇◇◇



 盗賊の男を動けなくして、痛め付けていると、身軽そうな女の子は徐々に状況を把握したみたい。

 まず私が味方である事、そしてその男は敵で、今までどんなことを強要されてきたのかを。

 怒りに震える彼女に、私は声を掛けた。


「ねえお姉さん、今までの恨みを晴らしてみない?」


 お姉さんは凄みのある笑顔で肯いた。


「お願いだ、助けてくれ……!」

「そう言った人を相手に、貴方は何をしてきたのかしら?」

「す、すまねえ。もうしねえよ。反省してる。だから許し」

「駄目よ」


 そう伝えて、右手に刺さっているアイスソードを引き抜き、治療を施してからもう一度突き刺す。

 上位のブレードを使うと全身が凍りついちゃうもの。手加減しなきゃね。


「ぐあああっ!」


 後ろからやって来たお姉さんとバトンタッチする。


「出来れば殺さないで欲しいわ。生きてさえいれば無理矢理にでも傷を治せるから、気が済んだら教えて」

「ありがとう、恩に着るわ」


 お姉さんは腰に携えた短剣を抜き放ち、男を見下ろす。


「あたし、思い出したの。アンタの命令でナニをされてきたか。ナニをして来たか……! あんたを絶対に許さない!」


 お姉さんは、急所ではないけど、とにかく痛みが走りやすい場所を滅多刺しにした。


「あがあああ!!」


 狙いも正確だし、さっきは華麗な動きに目が奪われちゃったし、この子って結構実力あるかも。失礼かもしれないけど、覗いちゃお。


*********

名前:リディエラ・アシマ

職業:踊り子

Lv:37

補正他職業:剣士、格闘家、シーフ、遊び人、武闘家、レンジャー、暗殺者、吟遊詩人

総戦闘力:3169

**********


 へぇ! アリシアと同じエクストラ職!

 しかもこの若さで……人族なのよね。なら遺伝もあるだろうけど、使い熟しているところを見るに当人もかなり研鑽を積み重ねているみたい。アリシアは装備抜きでも3876だったはず。今は装備で4000超えてるけど、それに迫る強さね。

 それがこんな、首輪というチートアイテムを得て調子に乗った奴に、いいようにされていたなんて。酷い話ね。


「あ、あの、お嬢さん。ちょっと刺しすぎちゃったんだけど、治せるかな」


 慌てたリディエラに呼ばれて我に帰ると、そこには全身血塗れで息も絶え絶えな男がいた。こんなのでもまだ生きてるんだ。凄いわね。


「あら、大惨事ね。でも平気よ。『ハイリカバリー』」


 四肢を『アイスソード』で穿ったまま治療する。すると治った先から凍傷が広がり、呻き声が上がる。


「凄い……。あの、この度は助けてくれて本当にありがとう。あたしはリディエラ。リディって呼んで」

「私はシラユキよ。宜しくねリディ」


 さっきからお姉さん扱いしてるけど、リディの方が年上よね? 大人っぽいし。


「シラユキ……。貴女はあたしの恩人よ。何かお礼がしたい所だけど、こいつらのせいで今のあたしには何も残っていないの。あるとすれば、今まで培って来た踊りの技術だけ……」

「じゃあ、私は貴女の全力の踊りが見てみたいわ。さっきの戦闘中の舞は見事だったし、見惚れちゃったもの」

「本当? 嬉しい! なら、落ち着いたらとっておきの踊りを披露するわ。勿論、1回だけじゃなくて、貴女になら何度だって踊って見せるわ」


 リディは素敵な笑顔で微笑む。先ほどまでの無表情でもなく、屈託の無い笑顔がまた、彼女の魅力を引き上げていた。

 血溜まりの中でにこやかに話をしていると、片付けが終わったのか子爵閣下や家族がやって来た。


「お嬢様、こちらは片付きました。そちらの方は?」

「ああ、アリシアには以前話したわね。私が多少なりとも操られた首輪の話。リディは、この男にそれを装着させられていた被害者よ」


 アリシアの視線が地面に転がる首輪と、私が手に持つ首輪を見て、リディ、私、血溜まりに沈む男の順に見る。

 あー、あの顔は色々察したわね。


「お嬢様を奴隷にしようなど……万死に値します。お嬢様、殺害の許可を」

「駄目よ、利用価値があるんだから。抑えなさい」

「……はい」


 アリシアが残念そうにしょげる。ん? はぁもう。


「リリちゃんとママも。武器に魔力を込めないの」

「「……はい」」


 怒ってくれるのは嬉しいけど、そんなに殺意ギラギラにされたら、攻撃する許可は出せないわ。


「シラユキは皆に好かれているのね。その気持ちは分かる気がするわ」

「ありがとうリディ。子爵閣下、この首輪はご存知ですか?」


 空気を読んで押し黙っていた閣下を呼ぶ。


「……いや、見たことがないな。形状からして奴隷の首輪だと思うが、特殊なものなのかね?」

「ええ。この首輪を着けられた人間は、自我を封じられ、痛みを感じなくなり、主人に対して絶対服従を促すものです。出どころは不明ですが、ロクでもないものなのは間違い無いでしょう。今から証明しますね」


 そう告げて、喚く男の首に首輪の1つを取り付ける。なんか吠えてたけど、聞く耳はないわね。


 取り付けた瞬間、先ほどまでの喧しさは露と消え、感情が抜け落ちた男がそこにいた。

 私もあの時こんな顔だったのかしら。カワイくないわね。

 リディは仕返しが出来たことを喜んでる部分と、先ほどまでの自分を思い出して悔しい気持ちとで、感情が混ざり合った顔をしているわね。

 閣下も、男の変貌に驚いているようだった。


「貴方の目的は」

「にんげんのほかく」

「貴方の集団名は」

「よるのおおかみ」

「頭領は誰」

「おれ」

「この地域にいる集団の総数は」

「45」

「指示を出した人間は」

「ろぐなーとはくしゃく」

「指示書はどこ」

「あじとに」

「場所は」

「あちらに」


 男は右の方を見た。本当はアジトの場所は既に割れている。『探査』の範囲内だったからね。

 でもそれは子爵閣下は存じ上げないし、リディも知らないか覚えていない可能性がある。なのであえて聞いてみた。


「捕まえた人間はどうしてるの」

「あじとにはこんで、おおくなったらおうとにもっていく」

「そこでどうするの」

「やみしょうにんにうる」

「闇商人の名は」

「ずーる」


 ふむ……。まあこんな所かしら。ああ、そうだわ。


「その首輪は誰から貰ったの」

「ろぐなーとはくしゃく」


 さっきも出たわね。アブタクデとは別の貴族かぁ。でもたしか、そいつもストーリーで出てきたような……いや、あんまり覚えていないわ。


「いくつ貰ったの」

「2つ」


 ふむ、もっとあるかと思ったけど、量産の難しい貴重品なのね。強い人間を捕まえて戦力にする為とかかしら。コイツは欲望の為に使用した節もあるけど。


「指示があるまで立っていなさい」

「はい」


『ブチブチッ』


 アイスソードに縫い付けられたままだったが、男は意に介さず無理やり立ち上がった。結果色々と引き裂けたが、まるで気にも止めていない。ゼルバの時と一緒ね。

 このままだと気持ち悪いし、閣下へのお披露目としてはもう十分でしょう。


「『ハイリカバリー』……ふぅ。さて、閣下。こんな感じです」

「……何というアイテムだ。ここまで人の意思を無視した物が存在するなど。ログナートめ……!」

「閣下。お怒りの中恐縮ですが、元凶はアブタクデ伯爵の可能性があります。お嬢様はそう睨んでいるようです」

「……そうか。今回の件、奴の私兵も混じっていたようだし、その可能性も考えられるな。早急に王都へ行き、ランベルト様に話をしなくては」

「その件は私たちも同席します。ですがその前に、連中のアジトを強襲しなければ。兵達の準備をお願いできますか」

「ああ、任されよ。この男を連れて行っても構わぬか? 色々と聞いておきたい」

「ええ。……このお方、グラッツマン子爵閣下の命令に従いなさい」

「はい」


 子爵閣下の後ろをノソノソと盗賊の男がついて行った。


「リディはこっちについて来て。事情を聴きたいところだけど、その前にお風呂に入りましょ。長い間入れていないでしょう?」


 さっき抱き着かれたとき、なかなか野性っぽい香りがしたし。


「お風呂!? 助かるわ、捕まってから水浴びくらいしかさせて貰えてないのよ」

「皆も戦闘してちょっと土埃が付いたでしょうし、一緒に入りましょ」

「そうですね、隅から隅まで洗わせて頂きます」

「お昼から野外でお風呂なんて贅沢だわ」

「お風呂なの!」


 全員でキャンプ場所まで戻り、土魔法で囲いと岩風呂を作り、水魔法を熱してお湯にする。

 昨日も夜中に、男女交代のお風呂を作ったので慣れたものだ。子爵閣下や身の回りのお世話をするメイドさんからはすごく感謝された。領主だし、身嗜みには人一倍気を使うよね。

 リディもこんな精度の魔法は初めて見たみたいで感動していたわ。服は脱ぎ捨てて皆で洗いっこする中、リディを重点的に洗う。


「リディって、スタイルも良くて、お肌が綺麗ね」


 まじまじと見つめたが、褐色お肌に泡のコントラストが美しい。出るところは出ていて、くびれもまた綺麗。筋肉も付いてるし、私が体作りで参考にした人達より、リディの方が上だわ。

 感動ついでにとりあえず揉んでみた。柔らかい。


「きゃん。んもう、シラユキだって、すごく綺麗だわ。触れるのを躊躇うほどよ」

「んっ。そう言って触ってるじゃない。あっ、ふふっ、くすぐったいわ」


 やっぱりこの身体の感度には慣れないわ。誰かに撫でられるとすぐ声が出ちゃうのよね。


「そんな声上げないでよ、変な気持ちになっちゃうじゃない」

「変な気持ち? こうかしら!」

「あっ、んんっ! ……もう、やったわね、お返しよ!」


 洗いっこのはずがリディとのくすぐり合いに発展してしまった。

 リリちゃんとママに洗われながらそれを眺めていたアリシアは、恍惚とした表情で口元を押さえる。


「……」

「アリシアちゃん、鼻血出てるわよ」

「ああ、お嬢様……」

「アリシアお姉ちゃん、流すよー」


『ザバー』


「……」


 アリシアは頭からお湯をかけられたが、微動だにしなかった。


「効果ないの」

「このまま湯船に運びましょ」

「運ぶのー」


 アリシアはズルズルと引きずられて行った。

 その後、リディとの洗いっこが済んだ後で湯船に浸かった時、お湯がほんのりと濁っていたけれど、その時の私は微塵も気付かないのであった。



◇◇◇◇◇◇◇◇



「えっ、嘘!? シラユキがあの騒動の解決者なの!?」

「そうよ。リディも強いとは思ってたけど、同じBランクだったのね」


 件のアジトに向かう途中、マジックテントにリディを招き入れて、彼女の身の上話を聞くことにした。するとどうやら彼女が、シェルリックスから王都に向けて出発した冒険者だったらしい。

 普段はソロで活動しているらしいんだけど、今回に限っては内容が内容と言うこともあり、臨時のパーティーでこのクエストを受けたみたい。

 でもこの連中を相手取った時に、その高い実力を見抜かれて首輪を使われたらしいわ。他のメンバーはアジトで捕まっているんだとか。


「いやいや、シラユキがBランクってところが違和感しかないんだけど」

「そこは複雑な事情がありますので」


 アリシアもリリちゃんもママも、沈痛な顔をしている。いや、そんな深刻な内容じゃ……。え? ないと思ってるの私だけ?


「そうなんだ……シラユキも苦労しているのね」


 リディもつられて悲しそうな顔をした。いやいやいや。


「別にそんな複雑で深い理由があるわけじゃ……まあいいわ。それで、リディの持ち物は連中のアジトにあるのね?」

「ええ、間違い無いわ。一緒に行動した子達もまだそこにいるはず。必ず助けに行かなきゃ」


 決意に目をギラつかせた。うん、やる気十分みたいね。


「リディは十分強いみたいだし、心配はないと思うけど……無茶はしないでね?」

「任せて。ただ、武器がちょっと心許無いのよね。本来の武器を奴らに奪われちゃってさ、この短剣も安物だし……」

「操っておいて武器は格下げさせるとか、そいつらアホなのね」


 使い慣れた武器じゃないと実力は発揮されないことが多いのに。いや、やっぱり実力云々以前に見た目で囚われたのでは? あり得る。

 もしくはその武器が余程の値打ち物だったとか、宝石が散りばめられてるとか、そんな感じかしらね。

 踊り子の武器だもの。地味な武器なんて考えられないわ。


「それでリディの獲物はどう言うタイプのものなの?」

「あ、貸してくれるとかそういう? 気持ちはありがたいけど、流石にないと思うわ。この辺りには無い珍しいものだと思うし」


 マジックバッグに手を突っ込みながら聞くと、リディは察してくれたみたい。勘の良い子は好きよ。

 でも甘く見て貰っては困るわ!


 アリシアは諦めた顔をしている。この後の流れを把握しているアリシアはもっと好き。


「ふぅん……曲刀とか? 薄め? 分厚め?」

「分厚めのだけど……あるの!?」


 となるとシミターかな。曲刀なら、刀作りの練習になるし、ちゃちゃっと作ってしまいましょうか。


「無いから作るわ」

「え?」


 素材は……霊鉄は在庫切れかけてるし、ミスリルから加工する時間もない。余ってる魔鋼鉄で良いかな。それでも十分な火力は出せるでしょ。

 ぐにぐに形状を整えて……印字も彫り込んで、魔力コーティングして、はい完成。


「はい」

「あ、うん……。って何これ!?」

「何って魔鋼鉄のシミターよ。無骨だけど性能としては十分だと思うけど」

「……」


 リディがアリシア達を見る。アリシアは慰めるようにリディの肩を叩き頷いた。ママは懐かしむような顔をしているし、リリちゃんは……話を聞きながらも水魔法の練習をしていた。


 リリちゃんは自由ね。


『きっとマスターに似たのね』

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― 新着の感想 ―
[一言] やはり、抵抗する術はあれど一度装着されてしまえばどうしようもないものはもしもがあるから嫌な気持ちになりますね。特にこの作品はクソ男多いし。読書としては一度は引っかかってもそれ以降は警戒でどう…
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