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異世界でもうちの娘が最強カワイイ!  作者: 皇 雪火
第3章:紡績街ナイングラッツ編
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第087話 『その日、新武器のお披露目をした』

 あの後、アリシアからの圧もあり、目覚めたママに平謝りした。

 決してママをイジメる為に作ったとかそういうわけじゃない事を言い訳にごめんなさいした。いや、トドメ刺すとか思ってたけど、本気じゃなかったもん。イタズラ程度だったもん。


 一度気絶を挟んだ事で冷静になったママは、出来てしまった物は仕方が無いし、良い物を作ろうと頑張ってくれた気持ちが嬉しいとナデナデしてくれた。

 だから謝る必要はないとも言ってくれた。続いて正気に戻ったアリシアからも謝られた。


「お嬢様が規格外だと言うことは知っておりましたが、覚悟していた限度を軽く超えられてしまうと、私も混乱したみたいです。お嬢様を責めてしまい申し訳ありませんでした……」


 言葉の節々からはやり過ぎてビックリしたと言ったニュアンスが聞こえる。うん、まあ、それはゴメンね?


「私も、作ってる最中に熱が入り過ぎて、色々と素材を詰め込み過ぎちゃったかも知れないわ」

「あの怪物の素材も使われたみたいですし、冷静に考えればこれほどのランクになってしまうのも当然かもしれません。……では、次から驚かない為にも、お嬢様が今までに身につけた装備品の中で、最高ランクの物はどの程度だったのでしょうか。それを改めて知っておくことで、今後の対策を練ります」

「……言いたくないわね」


 だって、5とか6とかで一喜一憂して……まあ私が作ったからってのもあるだろうけど、10で天変地異みたいな扱いをされる価値観なら、言わぬが花ってものよ。

 私の反応を見たアリシアは、声を細めて耳元で囁いた。


「……でしたら、まずは私にだけ教えてください。今後お嬢様と共に歩む中で、その域に触れる可能性が一番高いのは私でしょうし」


 あら、分かってるじゃない。


「その覚悟はあるのね?」

「はい!」


 ……でも10で仰天しちゃった貴女では、まだその域の話を聞くには早いと思うのよね。

 顔を窺う限り、15とか、20とか、最大でもその辺りだと考えている感じがするわね。なんとなくだけど。


「貴女が今予想しているその数値を2倍にしてもまだ足りないくらいよ」

「……えっ?」

「頑張ってついていらっしゃい、私のアリシア」

「……は、はい、お嬢様」


 思考の海にダイブする中、何とか返事だけ出来たアリシアの頬に軽くキスをして、新しい弓を恐る恐る触るママに甘えに行った。



◇◇◇◇◇◇◇◇



 しばらくして、アリシアもママも復帰したくらいで馬車が止まった。ちなみにリリちゃんは特別変わった様子はない。いつも通りな感じで、杖に魔力を流す練習をしていたわ。

 リリちゃんは大物だなぁ。


 外から馬車の入り口がノックされ、御者さんが声を掛けてきた。


「皆さま、休憩地点に着きました。小一時間ほどここで小休止する予定です」

「分かりました、子爵閣下にお伝えください」

「はい、失礼します」


 御者さんが離れる気配が……うん、マジックテントは空間が歪んでるから、扉のそばから先の、外の気配はわかんないや。『探査』の情報から離れた事を確認した。


「『時刻表示機能』」


『999年3月3日11時44分56秒』


「お昼頃か。多分昼食を取るのね」

「そのようですね。子爵閣下は平民と食事を共にする方でしょうし、恐らく護衛の領兵や騎士達も一緒になって食事をするのでしょう」

「なら、新鮮な肉類はいくらあっても足りないわね。ママ、リリちゃん。新装備のテストも兼ねて行ってきたら?」

「はいなの!」

「そ、そうね、試さないわけにもいかないわよね」


 いまだに戦々恐々なママの背を押しながら外へと出る。

 そこは森の中、野営地用に切り開かれた場所だった。


 恐らく王都へ続く道には、いくつかこういったポイントがあるのだろう。

 人狩りの連中さえ居なければ、今頃ここでは他の商隊や観光客で賑わっていたのかもしれないわね。今は私達の団体しか居ないけれど。


「ママ、一応獲物へ撃つ前に威力テストをしておきましょうか。ここに立って、あの辺りの樹をぶち抜いてくれる?」

「わ、わかったわ。あのウロが2つある樹で良いかしら」

「……ええ、それで良いわ」


 ママが指し示した樹との距離は80メートルほどはある。

 流石戦闘モードのママね、あの距離にある対象を正確に視れているわ。リリちゃんは目を細めているけど見えていないみたい。アリシアはちゃんと見えているみたいだ。

 昼食の用意をしていた領兵やメイドさん達が何事かとこちらの様子を伺っている。うちのママをただのカワイイメイドさんだと思ったら大間違いよ! そこんとこよろしく!


「行くわ。……ふっ!」


 ママは魔力を弓に籠めたようで、弓全体が青く輝く。

 そこから放たれた青い閃光は、音もなく対象を撃ち抜いた。


 その衝撃に真っ先に驚いたのは、周囲の木々に留まっていた小鳥達だった。彼らは一斉に空へと飛び立つ。


「『ウィンドランス』」


 すかさずアリシアは細めの『ウィンドランス』を複数生成し、飛び立つ彼らを射抜いた。何本か外れたみたいだけど、3羽ほどは仕留めたみたいね。

 さすがアリシア。見事な手際ね。


「こうなるだろうなという予想をしておりましたので、準備してました」


 ドヤ顔するアリシアを撫で回す。カワイイなぁもう。


「あ、あの、シラユキちゃん……」

「うん?」

「なんなの、あの威力……」


 ママが指差した先。先程ママが指定した樹の残骸があった。ママの射った矢は無慈悲な衝撃を撒き散らしながら樹々を打ち抜いていた。()()()()()()()()()

 目標の樹は根元から折れ、そこを起点に津波が通り過ぎたかのような惨状が放物線状に広がっていた。


「うん、まあ、こうなるでしょうね」


 ランク10だしコレくらいの結果は出して貰わないと、ランクが泣くわ。


「ママ、こんな危ないの使えないわ……」

「安心してママ。さっき魔力を込めて撃ったでしょう?」

「ええ、なんとなく魔力を込めた方が良い気がしたから……」

「そうよ、だから威力を抑えるなら魔力を込めなければ良いのよ。だからもう一度やって見て」

「わ、分かったわ」


 ママはそう言って、先程射抜いた真横にある樹へと矢を撃ち込む。

 矢はまたしても正確に樹のど真ん中にぶち当たる。矢が当たった樹は悲鳴を上げ、深く抉られて貫通するも、へし折るまでには至らなかった。

 まあママのレベルとステータスならコレが限界ね。私が撃てば結果は違うけど、差を見せつける意味は無いし。


「どうママ、今までより強いけど、さっきのに比べたら全然マシでしょ?」

「そ、そうね。そうかもしれないわね」

「それにこれから私とは、一緒に行動出来る機会が減るわ。だからリリちゃんを守れるのはママだけなの。受け取ってほしいわ」

「シラユキちゃん……。そうね、ママ、魔法だけじゃなくこの弓もたくさん練習するね」

「うん、頑張ってね」


 ママとハグし合い、いっぱい甘える。騒ぎをずっと見ていた子爵閣下から説明を求められたので、ランクははぐらかして説明した。

 その間アリシアは仕留めた鳥の血抜きをし、リリちゃんは雷魔法をその辺にぶっ放していた。うーん2人共、こういった騒ぎには慣れて来てるわね。

 いえ、リリちゃんはママの一矢に影響を受けて自分も頑張ろうと火がついたのかも。うん、家族の成長度合いを再確認出来たし、人狩りの連中が襲って来ても怖くないわ。

 正直今のママなら、精鋭オークどころか、マンイーターの幼生体くらいは何とか出来るんじゃ無いかな。



◇◇◇◇◇◇◇◇



 そう思った翌日、別の野営地にて昼食の準備をしていると、馬車の周辺は大量の赤丸に囲まれていた。


「お嬢様、予想通り休憩地点で襲撃されるようですね」

「そ、そうね」


 フラグ回収はっや! いや、まあ予想通り来てくれて助かったわ。あと精鋭オーククラスの魔物とかではなく、ちゃんと人間でよかった。

 そもそも休憩地点に着く前から、『探査』で反応は掴んでいたし、彼らが姿を現さないようなら、こっちから直接襲いに行く必要が出ていたわ。


 子爵閣下にはもう合図を出した。閣下も襲撃を理解したようで迎撃準備をしてくれている。

 でもそれは、けが人が出ないように守りの態勢に入って貰う為の物。仕留めるのは私たちで十分よ。


 さて、早速この子の出番かな。

 マジックバッグから1本の杖を取り出す。これは昨日、ママを困らせた会心の出来の武器。それを作れてしまったことで火が付き、自重とか倫理観をかなぐり捨てて、全力を出して作り上げた現環境で作れる最高峰の魔力増幅器。

 と言う扱いの、見た目はハート多数のキューティクルにカワイイ、私専用の両手杖だ。


********

名前:先駆者の杖[至高]

説明:相反する神樹と邪竜の爪をベースに、数多の素材を魔力で無理やり結合させ、解けそうになる反発を圧倒的な力で押さえ込んだ常理に反する逸品。茨の道の先にあるのは、栄光か、破滅か。

装備可能職業:後衛職

必要ステータス:総戦闘力6000以上

攻撃力:798

武器ランク:16

効果:全ステータス+8%。特殊効果:範囲魔法のレンジ上昇・特大、MP自動回復、指導者としての補正にボーナス。

製作者:シラユキ

付与:打撃強化・魔力強化

********


 日緋色金(ヒヒイロカネ)の粉末を魔鋼鉄に混ぜ込み、更に霊銀とアダマンタイトを3:4:3の割合で合成。それを粘土の様に伸ばして神樹と結合させる。

 その時点で能力の強さに弾け飛びそうな素材同士を、魔力で無理やり押さえつけ、更に邪竜素材や余った魔物素材を融合させることで三竦みに持ち込ませる。

 あとは連結が崩れる前に、付与と魔力コーティングで分離を力ずくで防いだ。


 これは危険物だ。

 ママが言っていた危険物を遥かに超える劇薬だ。

 正直出来た瞬間、夢中になっていた意識は冴え、シラユキ状態なのに『素』で「やっべ」と言っちゃう程度には、衝撃的な出来だった。幸いアリシア達には聴こえなかったみたい。セーフ。


 この魔杖は扱いを誤れば、術者すらダメージを負いかねない。器が器として機能していないのに、魔力で無理やり抑え込んだため、これを安全に装備出来て行使が可能なのは、邪竜を余裕で調伏出来る域の人間でないといけないわね。その結果が装備条件にも含まれているわ。

 神樹と邪竜。光と闇が備わり最強に見えるわね。実際この世界では最強の逸品だと思う。


 この能力は流石にリリちゃんやママには見せられない。世界観が壊れかねない。

 ただ、使えなければ危険はないから、触る分には全然有りかな。装備条件はアリシアですら満たせていないし。


 覚悟を決めたばかりのアリシアには、内訳の説明をしてもいいけれど……。どうするかは本人に決めてもらう事にした。とりあえずヤバいとだけ伝えてある。

 そう伝えたアリシアは、昨日からずっと杖を見ている。

 多分、聞きたいけど、知りたいけど、知るのが怖い。そんな顔だわ。


 性能については紙には書き起こしていない。彼女が改めて知る覚悟が出来たら、直接教えてあげよう。

 まあ皆、この武器から感じるプレッシャーというか雰囲気で、どれだけヤバいかは理解出来てるみたいだけど。


「さあ皆、準備は良い?」

「いつでも構いません」

「ママも大丈夫」

「リリもいけるよ!」


 よし。それじゃ、あっちはどうかな。


「ご機嫌麗しゅう、グラッツマン子爵殿。何やら大変な目にあわれたようですね!」


 声がした方を見ると、早速ニタニタした顔の男が何人か引き連れて姿を現した。

 そして閣下の返事を待たず、男が合図を送ると、隠れていた連中が森から出てくる。囲んでいる連中の総数は……24人ね。


「お急ぎのようですが、俺達と少し話し合いをしませんか?」


 連中は私達のキャラバンから10メートルほど離れた状態で、3つの集団に分かれて囲んできている。

 対してこちらの戦える者は、護衛の騎士が4人に、領兵が8人。こちらの数が少ないから姿を現したんでしょうね。毒で疲弊している事も加味して。


 2倍の戦力がいると過信して姿を見せたのね。閣下には可能な限り兵士を少なくするよう伝えていたから、その効果が出たのかな?

 あと、多分だけどあちらさんは私たちを戦力に数えていないと思うわ。だって2人は高価な服を着ているし、もう2人はメイド服だし。

 どこぞの令嬢か何かだと思われてるんでしょう。さっきから舐めるような視線を感じるわ。


 油断している連中なら簡単に蹴散らせるし、リリちゃんやママがケガする可能性も下がるでしょう。

 アリシアは私が舐められている事が気に食わないみたいだけど。


 そして『探査』でないとわからないけど、2人ほど森の中で待機しているみたいね。司令塔か、はたまた隠し玉か。


 護衛に囲まれた閣下に向け、人狩りの連中がなおも何か語りかけていた。正直内容はどうでもいいわ。どうせ命が惜しくばとか定型文だろうし、聞くまでも無い。閣下の受け答えもありふれたものになるだろう。

 閣下が話をつける間に、作戦を決めておきましょう。


「さて、私は閣下から見て正面の連中をやるわ。アリシアは左方面、リリちゃんとママは右方面の連中を。手際良く行きましょう」

「畏まりました」

「やっちゃうの」

「了解よ」


 簡単な作戦を決め終えても、男と閣下との話は続いていた。

 することもなかったので、しばらくボンヤリとする。始まる前から動くと注目浴びちゃうだろうし。

 馬車2台で収まるかなーとか、そんなことを考えていた。


「後悔しやがれ!」

「その言葉そっくり返そう。大人しく投降しなかったことをな」


 案の定ぶつかる事になったみたい。人狩りの奴が武器を掲げて、囲んでいる連中が雄叫びを上げた。

 閣下から声がかかる。


「シラユキ君、頼む!」

「お任せ下さいな」


 さあて、この杖の晴れ舞台だし、格好良く魅せるためにも、私の凄さを見せびらかすためにも、思いっきり目立ちましょうか。

 広場の中心にある馬車の上へと飛び乗り、『先駆者の杖』を大きく掲げた。


「大地よ、我らの敵の退路を阻め! 『ストーンウォール』『アースルーム』!」


 『アースウォール』の強化版、スキル90の『ストーンウォール』でまずは3つの集団の背後を、連なる巨大な石の壁で塞ぐ。森の一部を破壊しながら、巨大な壁が盗賊たちの背後を囲うように現れた。

 オークの集落で使ったような小さな壁ではなく、大群を囲む広域魔法だ。これはスキルがきちんと育っていないと使用出来ない。あの時のなんちゃって魔法とは規模が違う。


 これで奴らは逃げ果せることが出来なくなったはず。私の魔力で作られた壁はそう簡単には破壊できない。今この場で出来るとすれば、私自身か、ママの弓くらいしかない。


 そして森の中で待機している連中はスキルレベル45の『アースルーム』で土の部屋に閉じ込める。

 これも私の魔力で作った部屋だ。私とママ、あとは例の特製ピッケルでもないと壊せないだろう。


「総員、攻撃開始!」


『おおおお!!!』


 私の魔法に浮足立つ敵を前に、領兵や騎士が雄叫びを上げて迎え撃つ。だけど、私の担当エリアの味方に出番はないの。ごめんなさいね。


「薙ぎ払え。『サンダーロード』」


 ロード系魔法は、術者が定めたルートを『魔法の通り道』と捉え、手元から魔法をひたすらに()()()()()()()()だ。

 つまり、言い方を変えればビームになる。カッコ良く言えば属性付きのレーザーソード。それが術者の魔力とスキルによって、長さと太さと軌道、更には貫通力なんかも決められる。流石に貫通してしまうと殺しちゃうので加減はする。

 手元からレーザーの終点まで伸びる速度は、練度次第。つまり私が使えば、10メートル程度など瞬きする暇もなく、一瞬で到達できてしまう。


 あとはそれを横に振り抜いてしまえば……。


『あぎゃあああ!!』

『があああ!!』


 全員麻痺に出来る。通り過ぎるのもまた一瞬だが、効果はすぐに発揮された。


 ただ、麻痺だけだと味気ないので、殺さないよう加減はしたけど()()()痛くしてある。こんな事をしてる連中だもの。死ぬ一歩か二歩手前の痛みくらいは、感じておくべきよね?


 倒すべき敵が突如悲鳴を上げ、体をガクガク震わせ、泡を拭いて倒れてしまった。意欲高めに相対した味方は困惑しちゃったみたい。

 うん、ゴメンね、出鼻挫いちゃって。でも怪我させちゃうわけにはいかなかったし。


「捕縛は宜しくね?」

「は、はいっ!」

「承知致しました!」


 さてお隣はと。

 アリシアは華麗な短剣捌きで縦横無尽に駆け回り、敵を斬り付けていた。アリシアの職業は、また変更をして出会った頃と同じ『ローグ』レベル45だ。基本職のレベル10から20前後の小物が8人固まった程度じゃ、全然相手にならないわね。

 見ているうちに1人また1人と倒れていき、見惚れている間に終わってしまった。風に靡く金の髪に、鋭い視線が美しい。

 あー、もっと長く活躍を見たいところだけど……、それは今後に期待ね。


 そして味方の背後に隠れている親娘は、と。


「『賢人流・水の章、ティアレイン』!」


 水の魔力を纏った矢が敵の上空まで飛んで行き、水を撒き散らしながら弾け飛ぶ。水を撒く時間は10秒程度の短い時間だが、体を濡らすには十分な技だ。

 賢人流はプレイヤーが考えた弓の流派の1つで、()()()()()()()


 魔法を魔法書に書き込んで人に教えることが出来るのが『紡ぎ手』だが、同じように武器スキルを奥義書に書き込んで人に教えることが出来る職業がある。それが『導き手』だ。

 水属性の弓をママが装備したので、属性弓専用の技をいくつか伝授した。


「全員濡れたわ!」

 

 突如降り出した人工の雨に敵は二の足を踏むが、ただの水だと分かり安堵した様だ。各々が小馬鹿にした様に煽りを入れてくる。

 いやぁ、定番の一網打尽技なんだけど、この辺りの知識がまるで無いから、警戒心がまるでないのね。実に滑稽で、間抜けだわ。


「行くよ、『サンダーランス』!!」


 超高速の槍が、敵陣の中央へと突き刺さる。

 雷が落ちたかのような重い音と共に電流が地面を走り、濡れた大地を這って範囲内の敵を一網打尽にする。罵倒してた連中は何が起きたのかも分からず倒れて行った。


 飛翔速度は、中々良い速度ね。痺れ具合も上々。

 練習していたのは知っていたけど、頑張ってるじゃないの。この速度ならしばらくは回避出来る相手が現れないでしょうね。

 正面、両翼ともに死傷者ゼロ。損害もなし。うん、上出来ね。


『パチン』


 動ける盗賊が居ない事を確認し、指を鳴らす。

 すると『ストーンウォール』が解除され『ガラガラ』と大きな音を立てて壁は崩れ落ち、そこには小さな砂利が残るだけとなった。

 鳴らす必要はないけど、カッコイイからしたかっただけだ。意味はない。


 あ、でも残った砂利は馬車が通るには邪魔になるでしょうし、そこはあとで領兵さん達にでも片付けてもらいますか。杖をマジックバッグに収納して、忙しなく指示をする閣下に駆け寄る。


「子爵閣下、終わりました」

「うむ、ご苦労であった。毒竜を見た時から、もう驚くまいと決めたつもりだったが……。ふっ、世界は広いものだ。しかしあそこに残り続けている壁は一体?」

「え? ……あっ。あはは」


 閣下が指差した先には土で出来たキューブ状の箱、もとい部屋があった。

 うん、完全に存在を忘れてたわ。終わったつもりになっていたけど、閣下のにこやかな視線が刺さる。うう、恥ずい……。


『この装備があれば、家族の安全は確保出来たわね』

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