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異世界でもうちの娘が最強カワイイ!  作者: 皇 雪火
第3章:紡績街ナイングラッツ編
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第082話 『その日、エルフのお手伝いをした』

『おかえりなさいませ、シラユキ様!!』

「はい、ただいまー」


 エルフの住人たちが待ち構えていたので、気楽に手を振って挨拶を返す。うんまぁ、森に到着するなりキース君が「連絡してきます!」と言って先んじて集落に向かっていったから、多分こうなるんだろうなとは予想出来てたけど。

 うん。


 その歓迎ムードに、ママ達やイングリットちゃんは仰天していた。アリシアは誇らしげに頷いている。


 というか彼ら、信者化というか、アリシア化が進んでない?

 私彼らに何したっけ?


 えっと毒竜を倒して、川をきれいにして、病人を治療して、土魔法の応用を教えて、交易品を見つけて、忌み子を無くして、精霊を進化させて、世界樹の実を貰って……?

 うん。アリシア化しても仕方ないわ、うん。諦めた。


 というか彼らにはまだ、邪竜を倒したこと伝えてなかったような?

 ……まあいいかな、知らないっぽいし。


「シラユキ様、何件か報告したいことがあるのですが……」


 長老が深刻そうな顔をしている。なに? もう問題が起きたの?


「集落からは離れておりますが、森の外れに草木が異常に枯れていた場所があったのです。何か大きな存在がまっすぐこちらに向かって這いずったような跡がありまして。途中でその痕跡が途絶えているのですが、その存在がいつ現れいつ消えたのか、全くわからない状況なのです」

「あー……」


 地面を這いずるように進んで周囲を枯らせる存在? そんなの1体しか思い浮かばないじゃないの。

 そんな目立つ状況、普通なら警邏を欠かさない守人達が見逃さないだろうけど、毒竜騒ぎで発見が遅れたのね。


 正史なら、毒竜で後手に回ってる最中に邪竜が攻めてきて、病人は置き去りにして放棄する流れになったとか、そんな感じなのかしら。

 そしてその住民たちを、待ち構えている人狩りの連中が捕縛する、と。

 エルフは闇取引で高く売れるそうだものね。あいつらが吐いてくれたわ。


 ママに手を出したあの連中は、ナイングラッツの街や、森の集落を滅ぼすついでに、金稼ぎをするつもりだったと供述していた。水の高売りもそのためでしょうね。

 滅んでからお金や金品を盗みに行くのは、あまりにもリスキーだからね。


 何故なら、毒と瘴気に汚染された土地に生身で侵入する事になるから。それは命がいくらあっても足りないから、先に絞れるだけ絞るつもりだったんでしょう。


 毒竜を呼んだことの確証は得られたけど、邪竜に関しては存在は知っていても、どういう経緯でそこに向かっていたのかは知らないみたいだった。

 それでも明確に邪竜が居ることを知っていたし、操っていた奴がいるとも言っていたわね。


 私はストーリーで先んじて知っていたから冷静でいられたけれど、その話を聞いたアリシアがどう動くか心配だった。けど、アリシアは連中に危害を加えないよう必死に耐えてくれていたわね。

 その時は優しく抱きしめて落ち着かせたけれど、アリシアは我慢強いのね。私は最近、色んなことが我慢出来ていないけど……。

 反省しなきゃ。


「……大丈夫よ。その正体は邪竜だけど、私がその、前もって……倒しておいたから。ね?」

「なんと!?」


 その言葉を聞いて騒めきが広がるも、すぐさまエルフ達は我に返り、跪いた。


「シラユキ様、1度ならず2度までも我らをお救い下さり、ありがとうございます!!」


 うわ、信じちゃったよ。証拠ないのに。

 ああでも、長老はその正体が邪竜だと気付いていたから辛そうな顔をしていたのかもしれないわね。それで可能なら、私に何とかしてもらえないかと思ってたらもう倒しちゃってたと返答を得られてしまったと。そんな感じかしら。

 でも一応念のために、証拠は見せておかないとね。


「邪竜の素材、マジックバッグに入れてるけど、見る?」

「お気遣い感謝いたします。では拝見して……間違いないようですね。シラユキ様、我ら一同、この恩に報いるため、どのような願いでも叶えてみせましょう!」

「あー……いや、そこまでしなくてもいいかな」

「そんな!」


 だって、正直もう貰えそうな物が何にも残ってないし。

 でも長老含め、エルフ達がすごくショックを受けてるわね。これじゃあ、あなたの集落には価値があるものがないと突っぱねてるみたいじゃない?


 ううん、何かあったっけなぁ……。お酒?

 でも私お酒飲め……いや、この体になって飲んだことはないけど、どうなるかわかんないし。目覚めて地形変わってたら笑えないもの。

 でも何か言わなきゃ……。ううーん。


「お嬢様、ここは……」


 アリシアが耳打ちしてくれる。なるほど、さすが私のアリシア。


「それじゃ、今日は家族と友人を連れてきてるの。だから精一杯もてなしてくれたら嬉しいわ」

『はい、必ず!!』


 おお、大合唱。うーん、綺麗にまとまってくれてよかったわ。

 ああ、邪竜討伐の事、ギルドに漏れたりするかなぁ。でも彼らは人族の国とは縁がないし、伝わるとしてもだいぶ先になるわよね。うん、口止めするのも野暮だし、もう放っておきましょうか。


「あの、シラユキ様、私も歓待を受けて良いのでしょうか」

「良いのよ、友達なんだから遠慮しないの」

「は、はい。ありがとうございます。それから邪竜というのは本当なのでしょうか……!」

「そうよー。それがどうし……」


 ん? ……あっ!?


「イングリットちゃん、その話は内緒ね!!」

「えええっ、どうしてですか? 邪竜をどのように討伐されたのか、是非ともその逸話をお聞きしたいです!」


 うっ、そんなキラキラした目で見られても困る……!

 と、そこにアリシアが割って入ってきた。


「イングリット様、少しあちらでお話をしましょうか」

「えっと、アリシア様? お顔が怖いですよ……?」


 イングリットちゃんはアリシアに連れられてどこかに行っちゃった。説得してくれるのかな?



◇◇◇◇◇◇◇◇



 それから皆で少し遅めの昼食を取った。移動やら尋問やらで、そこそこ時間使っちゃってたのよね。


 採れたての瑞々しい果実から得られるジュースは、時間が経ってから搾られたモノとは濃度も味も段違いだそうで、リリちゃんもママも目を丸くしていた。

 ああ、そう言えばドタバタしてたせいで、お土産の果実は渡せたけどジュースには出来てなかったわね。


 イングリットちゃんも過度な贅沢は禁物だからと遠慮しようとしていたが、この果実はエルフ達にとっては贅沢ではなく普通の主食だと納得させ、食べさせた。濃厚な味に頭がクラッと来たみたいだけど、大丈夫かな?

 普段から清貧を心がけてるとか、立派な神官じゃない。この子の育ての親は、きっと信頼に足り得る人物ね。


 アリシアは、お世話隊に仕事を取られ少ししょげてたりしたけど、果実を頬張り昔を懐かしんでいるように感じられた。アリシアはどこの集落出身なんだろ。一度も聞いてないけど、里帰りとか考えたことないのかな……。

 まあそれも、私の地盤が落ち着いてから考えるべきことね。


 お世話隊を揉みくちゃにしたりされたりしながら、宴は進む。


「そうだわ、カープ君。宿題はどうなったかな?」


 リーズちゃんのほっぺをムニムニしていたら思い出した。お世話隊にも魔法を教えてあげたいし、進捗を聞いておこう。


「はい。水魔法ですが、今朝10になりました」

「はっや!?」


 いやいや、この子にはまだ『ウォーターボール』の魔法書すら渡していない。それすら無しで、たった2日でこれほどの成長速度は驚きだわ。プレイヤーならいざ知らず。流石に魔力操作の勉強だけをひたむきに訓練し続けてきただけの事はあるわね。

 私が驚いたことに対して、カープ君は嬉しそうな顔をするんだけど、それがまたカワイイ。

 そして私だけじゃなく、お姉ちゃん達やリーズちゃんも驚いていた。きっと内緒で頑張ったのね。


 疲労困憊でフラフラしてたら叱ってあげなきゃいけないところだったけれど、そんな様子は微塵もない。

 うーん、凄い子ね。


「それじゃ、これを読んで」


 いつもの()を2枚渡す。1枚燃え尽き、すぐに理解したカープ君は2枚目も読み込んだ。

 2枚目が燃え尽きたところでカープ君は頭を下げた。


「ありがとうございます、シラユキ様!」


 顔を上げたカープ君は満面の笑み。ぐうカワ。

 我慢出来ずに抱きしめ、ほっぺにキスをした。


「ついでにコレとコレもあげるわ。これからも頑張ってね」

「は、はい!」


 追加で()を2枚渡す。この調子だと数日で20まで行ってしまいそうだけど、今はこれしか渡せないのよね。

 今手持ちの紙とインクはほとんどが最低ランクの物しかない。素材のランクが低いと、作れる魔法の質も20までなのだ。

 一応、質の良い羊皮紙は何枚かは手元に有る。しかし、皆に配り回ってしまえるほどの余裕はないのだ。家族の分、ですらちょっと心もとないくらいだもの。

 王都に着いたら、なるべく沢山用意しなきゃね。


 紡績業と羊皮紙は関係ないみたいだから、ナイングラッツには売ってなさそうなのよね。いや、インクの方はどうかな? 実際にお店に入ったわけではないし、帰ったら調べてみよう。


 勿論、この前ピシャーチャ討伐直後にリリちゃんの為に作ってあげた『ハイサンダー』の魔法書は、とってもめでたい事だったから、数少ない高品質な羊皮紙を使って書き上げた。

 でも残念ながらリリちゃんは、まだ覚えられるスキルまで上がっていなかったのよね。

 現在その魔法書はリリちゃんのカバンに収納されている。最近は土を覚えさせたし、そっちの鍛錬もあるから成長速度は鈍化している。まあでも熱心なリリちゃんのことだから、そのうち覚えてくれそうだけどね。


 『ハイサンダー』はリリちゃんと初めて会った時に、目の前で使ったことがある。その時から、リリちゃんにとっての目標の1つでもあるみたい。


閑話休題(妹の成長は眩しい)


「お嬢様、この子に魔法を教えていたのですか?」

「そうよ、とっても良い子で将来有望な子なの。あ、そうだ。カープ君はあれから精霊にご飯あげた?」

「はい、お食事は1日1回で満足されているようです。昨日と今朝に1度ずつ奉納をしました。それから頻繁に集落の中を散歩されているようでして、その度皆、作業を止めて精霊様とシラユキ様のことをお祈りしています」

「そ、そう……。良かったわね」

「はい!」


 カープ君の頭を撫で回す。

 なんで私までお祈りの対象に加わってるの? いえ、アリシア化が進んでいるなら神格化もわからないでも……。

 ううん、喜んで良いやら悪いやら。


 うん? アリシアが難しい顔をしてる。どうしたんだろう……。

 あ、男の子をカワイがってるから妬いてくれてるとか?

 それとも神格化が進んでいることに何か問題が?


「お嬢様、今……精霊と仰いましたか?」

「え、ああ、そっち? なあんだ」

「え?」

「ううん、こっちの話よ。そうね、精霊で間違い無いわ。あの神樹に下級精霊が住んでたから、魔力をプレゼントして中位精霊に進化してもらったの」

「なんと……お嬢様はそんなことまで出来るのですか!?」


 あ、アリシアのビックリ顔が久々に見れたかも。と言っても数日に1回は見てるけど。


「前に話したでしょ、水魔法の精度で味が変わるって。それは精霊にとっても同じなの。だから美味しくて高濃度の魔力を取り込めば、あの子達は成長するのよ。魔力をあげ続ければ、その内上位精霊にだってなれるわ」


 上位精霊に進化すると喋るようになるし、扱える魔法も大幅に強化される。『精霊使い』や魔物を使役するような職業は、一緒に戦う仲間の成長が一番面白いところよね。

 勿論、強くなった『人』の仲間との協力プレイも捨てがたいけれど。


 そう言えば、私はそっち系統の職業アビリティも使えるはずだから、魔物を使役出来るのよね。

 別段めぼしい魔物がいなかったから考えもしなかったけど、何かを飼ってみてもいいかなぁ。お金ならたんまり有るし、それにバトルホースのような一定のステータスが条件の魔物も、この強さなら割となんとかなると思うし。


 要検討ね。

 ……でも最初の使役対象が、馬はないわね。うん。


 気付けば、アリシアが忙しなく周りに視線を飛ばしている。


「アリシア、精霊が見たいの?」

「は、はい……」


 まあアリシアはある意味都会っ子だものね。久しくエルフの森にも寄ってないってことなら、精霊に会いたくもなるか。呼んであげても良いけど……。


「今日はここに泊まるし、その内会えると思うわ。基本的に自由な子達だし、呼んでも来なかったら許してあげてね」

「勿論です。精霊様は何者にも縛られないと聞きます。もし会えなくても、それはタイミングが悪かったのだと諦めます」


 あ、コレ本音は会いたいやつだ。アリシアが会いたがってるなら会わせてあげたいわ。

 今日現れなかったら、大樹の前で『生命の蒼玉』で釣りだそうっと。


 そう胸に誓い、宴も終わった頃に長老から状況を確認する。どうやら果物の用意は出来たけど、翠鉛鉱の用意にはまだ少し時間がかかりそうと言うことだ。

 それなら暇だしと言うことで、私達も手伝うことを告げた。

 遠慮されたが、自分で好きな物を掘りたいことを熱弁したり、家族のスキル上げに使いたいことを伝えて納得してもらった。


 リリちゃんやママの土魔法、ある程度上がったあとはちょっと停滞しているのよね。魔法は他の物質に作用させることで上がりやすい特性を持つ。けど土って、他に混ぜられる事はあっても、混ぜることは少ない。

 だから穴を開けたり地面に埋まっている物を掘り出したりとか、スキル上げはそういう土で完結するものが多い。けどその方法は、対象となる鉱石や薬草なんかの素材がないと、出番が来ないのよね。


 一応スキル40で修得する『アースウォール』を先んじて使って、魔法攻撃を防いだりとかも鍛錬には使えるんだけど、それは広い場所ならどこでだって出来る事なのだ。

 始めるのは学園についてからでも遅くはない。


 ダンジョンもそうだ。フィールド型ダンジョンなら埋まってる素材も多いけど、洞窟型ダンジョンはそういった素材は滅多にない。稀に壁の中に鉱石が混ざる事はあるけども、鉱山ほどまとまった数もないわ。

 王国にある学園ダンジョンは洞窟型だから、素材回収で可能なスキル上げは、やれる時にやっておかなきゃ。


 というわけで、やってまいりました採掘場。もとい子供たちの遊び場でもある岩場。

 カープ君曰く、1人でこっそりと魔法の修業をするときに使っていた場所みたい。夜遅くに涙ぐましく修業をしていた時に、月の光を浴びた石から、緑色の光が見えたとか。

 それを持ち帰ったのが、最初に見せてもらった翠鉛鉱らしいわね。あのままなりゆき上私が持ってるままになってるけど、あとで返してあげよう。

 今までの流れから見て、そのままじゃ確実に遠慮されそうだし、多少の加工をしてあげようかな。


 早速リリちゃんとママには翠鉛鉱の掘り出し作業を魔法のみで行ってもらう。あまりに深くて難しい場合だけ、つるはしを使う事を許可した。


 そしてアリシアには勉強の一環として、2人よりもちょっと難しめの課題を出した。『私達4人に、それぞれ見合う綺麗な翠鉛鉱を持ってくる』『不要になった翠鉛鉱の数も査定に入れる』期日は日が沈むまで。先日の汚名を返上するためにも燃え上がったアリシアは、早速岩場へと飛び込み、真剣な表情で岩場を確認し始めた。

 正直アリシアが持ってきてくれたものなら、なんだって嬉しいと思うし、小さくても大きくても、探してくれるだけで嬉しいわ。


 結果は問わないと言ってもアリシアの事だし時間ギリギリまで吟味するでしょうし、私はその結果を信じるわ。

 私があの子に怒るのは、家族と自分の命を大事にしなかったときだけだと決めたもの。

 自分勝手な理由で怒るのはダメだって、自分にも誓ったし、内なる欲望(シラユキ)にも誓わされた。


 ……で、手持ち無沙汰になった私はというと、以前約束した通り、お世話隊に魔法を教える事にした。私からの直接の手ほどきという事もあり、皆やる気十分みたいね。

 リーズちゃん、それにカーサちゃんとマーサちゃん姉妹は、先日散々抱きしめたりキスしたりしたので魔力の波長は覚えてる。それともう1人男の子がいたわね。ヤンチャそうだけど、カープ君と楽し気に話してる姿も見てるし、この子も良い子なんだろう。()()()面倒を見てあげることにした。


 元々彼女たちは魔法がそこそこ、リーズちゃんは子供たちの中で一番魔法の行使が上手かったらしく、スキルもそれなりにあったみたい。それでもカープ君の急成長ぶりにはびっくりしたようで、その成長ぶりは水魔法をメインではなく予備に覚えていた子達を何人も追い抜いたらしい。

 それを知った大人たちは、手のひらを反す様に彼を褒め讃えていた。それを聞いた時、若干モヤッとしたりしたけど、カープ君が喜んでるなら、それでいいかな。


 お世話隊の魔力の認識を改めている最中、カープ君には覚えたての『ウォーターボール』を出してもらい、よーく吟味した。

 ……文句なしの出来だわ。大きさも魔力の濃度も、申し分なし。カープ君にはご褒美をあげたばかりだが、すごく頑張っているみたいだし、追加のご褒美を出すことにした。


「ねえカープ君。水も結構使えるようになったみたいだし、他に覚えたい属性、なあい?」

「よ、宜しいのですか? シラユキ様の魔法を参考にさせて頂いて」


 もうカープ君は、どの属性も()()()()()()()()魔法を使う事が出来ると知っている。

 だからこそ自身の目標とする魔法を、集落の仲間の魔法に定めるのではなく、私の魔法を参考にすることがどれだけ自分の力になるのかも、解っているみたいね。

 本当に、将来が楽しみな子だわ。


「ええ、頑張ったご褒美だもの。遠慮しないで良いわ」

「それなら炎と、雷が知りたいです」

「……へぇ、どうしてその2つなのかしら?」


 カープ君は即答で答えてくれた。しかもこの2つとはね。……連れて行きたくなるじゃない。


「はい、その2つの説明を始める前にまだ覚えていないエルフの3大魔法である風と土ですが、これらは自然にどこにでも溢れている物です。あえてシラユキ様の高等魔法を参考にせず、自力で身につけたいと思いますし、色々試すことが成長に繋がるのだと感覚的に理解しました」

「……続けて」

「そして炎ですが、まず便利な事です。エルフは元々炎に対して一定の忌避感を持つものとされていますが、それは神樹様に傷を負わせる可能性があるからです。しかし生きていく上では、無くてはならないものでもあります。そしてその攻撃性能です。土や風も使い方次第では千差万別の武器になりますが、炎はその威力からして異なります。次に雷に関しては、今まではどういった効果を及ぼすのかいまいちわかりませんでした。しかし、シラユキ様のご家族様に伺う事で理解しました。この属性も、僕に必要となるものだと」


 カープ君はチラリと、私の後ろを見る。そこには魔力を感じられて楽し気にする、カープ君の大事な人たちがいる。


「僕は今回の経験を経て、強くなりたいと思いました。自分自身だけでなく、僕を心配してくれる家族や友人たちを守る力が……いえ、一緒に戦える力が欲しいんです。ですから、炎魔法と雷魔法、どうか教えてください!」

「あなたの気持ちは分かったわ。勿論教えてあげるし、丁寧に教えてあげたいけれど……でも残念ながらそんなに時間の余裕がないの。だから、スパルタで行くわよ。覚悟は良い?」

「はい!」


 魔力の認識を正確に出来るようになったお世話隊から魔力を抜き、参考用に風版圧縮魔法。『烈風の翠玉』を見せる。

 炎や水と違い、効果を高めた『ウィンドボール』は、内部に暴れ狂う風のエネルギーを秘めている。風というのは本来目に見えないものだけれど、魔法で作り出した風の刃は術者の意思次第で視せることが出来る。

 小さなボールの中に、荒れ狂う竜巻や風刃が入り乱れつつも、その一切を外へと漏らさない。この制御力を持ってして、ピシャーチャ戦を越えた私は、スキルを一気に130にまで引き上げたのだ。


 流石にコレを真似するのはアリシアですら難しいだろう。けれどこういったこともいずれは出来るようになると知ることは、とても意味のあるものだと思っている。

 『烈風の翠玉』を維持したままその場を離れ、彼女達には自主練するよう伝える。そしてカープ君の修業を始めるのだった。


「さあ、行くわよ」

「はい、シラユキ様!」


『これが青春ってやつね!』

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