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異世界でもうちの娘が最強カワイイ!  作者: 皇 雪火
第3章:紡績街ナイングラッツ編

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第070話 『その日、情報収集を開始した①』

 ――1日前。


 異臭がする川から少し距離を置きつつ、川に沿って街へと向かうお揃いのチュニックを着た3人の姿があった。

 猫耳フードを取ってしまえば、どうみても姉妹にしか見えないリーリエとリリの母娘。

 そして猫耳フードを目深に被り、エルフ耳を隠したアリシアだった。

 リリは後ろ髪を引かれるように振り返る。


「……お姉ちゃん、見えなくなっちゃったの」

「あの子、張り切っていたけど大丈夫かしら。寂しくて泣いちゃったりとかしないか心配だわ」

「私と出会う前は1人で行動していたようですし、問題ないと思いたいところですが」


 それぞれが泣いているシラユキの姿を思い出し、胸を痛めた。


「……やはり私も心配です。素早く任務をこなして、お嬢様の下へと戻らなければ」

「そうね。1日でも早く追いかけなきゃ」

「リリ、頑張るの!」

「お嬢様の為に頑張りましょう!」


 頷きあった彼女たちは足を速めた。

 普段は率先して様々な事象から家族を守ろうと躍起になっているリーダーが見せた衝動的な涙は、全員に衝撃を与えた。それまで抱いていた憧れも、愛情も、尊敬も、その時は強烈な庇護欲に上書きされてしまった。

 1人は不安定なその姿に忠誠心を垂れ流し、1人は無償の愛を捧げ、1人は新しくできた妹を慰めるように、家族全員が彼女を愛でた。


 困っている人を助けたい。それは家族全員の総意であるが、この時彼女たちを突き動かしていた原動力は少し異なった。

 弱さをさらけ出したあの姿を、もう1度見たいという欲求を覚えると同時に、あの姿を他人の目には触れさせたくないというある種の独占欲に似た想いが、彼女たちを掻き立てていた。


 速足で進みながら作戦を決め、街に着くと同時に行動を開始した。


「それじゃ、リリは早速ギルドに行ってくるの!」

「私達もすぐに行くわね」


 アリシアからマジックバッグを預かったリリは街の奥へと走り出す。


「さて……『探査』!」


 真っ黒な背景の地図に、街の住人と思われる人間を表す白いマーカーが大量に現れる。家族を意味する青のマーカー付近は、視界に入っていた街並みがリアルタイムで反映されていく。また、2つの青いマーカーから離れていく1つの青いマーカーの周囲も、黒い背景から段々と色と形がつき広がっていく。


「この街は来たことが無かったから真っ暗なのね。……それに、リリが見た街がこのマップに反映されていくわ。本当に便利な能力ね」

「全くですね。そしてこの白丸の人物は、リリが道を尋ねたのでしょう。友好的な青い縁が現れました」

「あの子は、初対面の人でもすぐに仲良くなれちゃうのよね。それが離れていてもわかるなんて、すごいとしか言葉が出ないわ」

「仲良くなれるのはお母様の教育のおかげかと。……む、お母様、こちらを」


 アリシアが指さした先を見て、リーリエは警戒をあらわにする。


「赤い縁が2つ……」

「白い丸ということは人間のはずですが、赤というのが解せませんね」


 自分達やリリから遠く離れた場所。しかし街中であることを表すかのように、その付近にも無数の白い丸が浮かんでいる。


「シラユキちゃんが言うには最初から敵対関係なら赤になるとは聞いていたけど、街中だものね」

「それに付近の白い丸の挙動からして、街中なのは間違いないかと。彼らが何か争いを起こしているかはわかりませんが……。今は、この連中を気にしても仕方がありません。お母様とリリは、この赤にはなるべく近づかないようにしてください。私もこの赤がいる方向と距離感は覚えました。警戒をしつつ、情報を集めてきます」

「うん、お願いね」


 リーリエは困ったような顔でアリシアの顔を見ている。言うべきか言わざるべきか、悩んでいるようだった。


「お母様、どうしましたか?」

「えっとね、こういう時シラユキちゃんなら喜んでくれるんだけど、アリシアちゃんにもした方がいいのかなって」

「お嬢様と同じ……ええ、お願いします!」

「それじゃあ少し屈んで……ちゅっ。はい、いってらっしゃいのキスよ」


 アリシアのほっぺにキスをしたリーリエは、恥ずかしそうにモジモジとしてる。


「ふふっ、ちょっと恥ずかしいけど、アリシアちゃんも家族だものね。少し前まではこんな風にしなかったのに、毎日シラユキちゃんとキスしていたら、何だかするのが当然に思えてきちゃって不思議だわ」

「お母様、順応性が高すぎませんか? もう少し、変化には戸惑うものだと思いますが……」

「うーん、シラユキちゃんと出会ってからの毎日は、戸惑いの連続だもの。何度も常識を壊されてきたら、このくらいどうってことないわ。アリシアちゃんもそうでしょう?」

「……それもそうですね」


 常識クラッシャーの家族を思い出し、2人はくすりと笑った。


「それじゃ、リリが心配だからそろそろ行くわ。調査も浄化もとなると大変だと思うけど、全部一度にする必要はないからね。もし必要なら、ママ達も手伝うから。無茶をしちゃダメよ」

「はい、お母様」


 それぞれが出来る事をするために、リーリエはリリの後を追う。そしてアリシアは、街に流れる川の様子を見に行くのだった。



◇◇◇◇◇◇◇◇



 街の人から場所を聞き、目的地に到着した。見上げた建物は、ポルトでも見た冒険者ギルドの看板。でもポルトで常に感じた熱気とは程遠く、まるでシェルリックスに到着した直後のような静けさを感じた。


 あの時はお姉ちゃんが、皆を元気にしていったけど、今度はリリ達の番! ギルドの中へと入り、息を吸い込む。


「こんにちは!」


 挨拶は元気良く。ママが大事だって言ってるし、お姉ちゃん達も褒めてくれる。中にいた人たちが驚いてこっちを見た。


「はい、こんにちは~」


 受付にいたお姉さんが笑顔になって挨拶をしてくれた。入った瞬間、疲れた顔をしてたけど、元気出たかな?


 お薬の買取は受付の人がしてくれるって、ママが言ってたの。真っ直ぐにそちらへと向かっていると、身体の大きな人が視界を遮った。


「おい嬢ちゃん、冒険者ギルドに何のようだ? 街の人間なら知ってるだろうが、俺達は今すげぇ忙しい。今は遊んでる暇は無いんだ。帰って母ちゃんの手伝いでもしてな」


 何だかガボルさんを思い出しちゃった。顔付きはコワモテさんだし、身体も大きい。でも、声は優しそうだし気を使ってくれてる感じもする。お姉ちゃんがガボルさんを『デカイ犬だと思いなさい』と言うのも、何となくわかる気がするの。


「リリは冒険者なの。遊びにきたんじゃないよ、お仕事しにきたの!」

「……ほぉ、そうかい」

「ディック! 子供好きなのは知ってるが毎回率先して行くんじゃないよ! あとその笑顔は凶悪だからするなって言ったろ! また前みたいに泣かせちまうよ」

「おま! 俺は別に子供好きって訳じゃ……」

「はいはい、そうですねー」


 冒険者の人達が、ディックっておじさんを揶揄い始める。お姉ちゃんが言ってたの。本当に危ない時は笑うことすら出来ないって。だからこの人たちは大丈夫なの!


「この嬢ちゃんは大丈夫だって! 見てみろよ、泣いてねえから!」

「ホントだ、すっごいニコニコして……可愛いわね」

「えへへ」


 冒険者のお姉さんが頭を撫でてくる。撫でられるのは好きなの。でも、家族に撫でられるのが一番好き。


「それで、冒険者の嬢ちゃんはどんなお仕事をしにきたんだい?」

「お姉ちゃん達が作ったお薬を売りに来たの。皆困ってるだろうから、全部売ってきてって言われたの」

「!! 嬢ちゃんの姉ちゃんは錬金術師なのかい?」

「お姉ちゃんは何でも出来るスゴウデなの!」

「有り難え……ユーフィ、査定頼むぜ!」

「はいはーい。リリちゃん、こっちへいらっしゃい」


 受付のお姉さんが手招きしてくれてるの。ディックのおじさんが椅子を持ってきてくれたの。やっぱりガボルさんにそっくりなの。


「それじゃあ、まずお薬は冒険者からじゃないと買い取れないの。ギルドカードを出してもらえる?」

「はいなの。あとお薬はここに入ってるの」


 ギルドカードとマジックバッグを差し出す。

 お薬はシェルリックスで魔法の練習をしていた時にママと一緒に採取してきたものを、お姉ちゃん達が沢山ポーションにしていたの。

 リリは錬金術の事はよくわからないけど、魔法を使うなら覚えて損は無いってお姉ちゃんが言ってたから、学園が始まったら教えてくれるみたい。楽しみなの!


「拝見するわね……えっ、Cランク!?」

「Cだって!? 俺より上だと……」

「なるほどね、そりゃあディックの顔でもビビらない訳だ。……え? 冗談でなくマジでCなの?」

「リリ、この前Cになったの!」


 騒めきが広がる。皆の顔色が変わった気がするの。


「早速査定に入りますね!」

「お願いしますなの。このマジックバッグには売っていいお薬しかないから、このまま渡すの」

「確かに預かりました!」


 受付のお姉さんが奥へと走っていったの。お仕事熱心なの。


「よし嬢ちゃん、待ってる間暇だろ? ジュースくらい奢ってやるよ」

「ありがとなの。でも、川の水が汚染されてるみたいだけど、平気なのか心配なの」

「お! さすがに知ってるか。でも安心しな、このジュースは近くにあるエルフの里から貰った果実を搾っただけの物で、水で割ったりしてねえんだ」


 こういう時は遠慮しちゃダメって、ガボルさんから聞いたことがあるの。


「いただきます!」

「おう!」


 今回のお薬は、全部解毒のポーションなの。確か全部で50個くらいあったの。お姉ちゃん達がスキル上げ? をするのに沢山作ったみたい。でも、王都からはまた別の物を作るみたいで、しばらくは自重するみたいなの。

 けど、素材の方はいつか必ず必要になるからというのと、土魔法の練習になるからって、見つけ次第採取するようにしてるの。でも今朝、その分も全部お薬にしたから1本も材料が残ってないの。あのお薬で足りればいいなぁ……。


 テーブルについてジュースがくるまで、お姉さん達に挟まれて可愛がられる事になったの。見た目的に、シーフのお姉さんと戦士のお姉さんなの? どっちも軽装備なの。

 特に戦士のお姉さんは色々と際どいの。でもアリシアお姉ちゃんのあの服よりはマシなの。

 でもでも、お姉ちゃんに見つかったらきっとただでは済まないの。今のうちにお悔やみ申し上げるの。


「? どうしたの?」

「ううん、なんでもないの」


 心の中でお祈りをしていたら、お姉さん達が不思議そうな顔をしてたの。するとディックのおじさんが真剣な顔をして聞いてきたの。


「なあ嬢ちゃん、俺よりランクが上ってことは嬢ちゃんは強い魔物を倒したことがあるんだろ? なら嬢ちゃんが倒したやつの中で、一番強かった相手を教えてくれないか」

「お、それはアタシも気になるね」

「んと……マンイーターなの。あれは怖かったし、痛かったの……」


 あの時の事は、まだ夢で見るの。暗闇の中、たくさんの怪物に囲まれて食べられちゃう夢。逃げても逃げても、あの叫び声が追いかけて来て、怖くて身がすくむと、途端に食べられる。

 目を覚ませば、お姉ちゃん達やママが抱きしめてくれてるの。撫でられながら眠れば、その日はもう夢を見ないの。

 王国のダンジョンには、洞窟型が多いってお姉ちゃんが言ってたの。今でも洞窟を思い出すと怖くて仕方ないけど、いつか大丈夫になる日が来るのかなぁ……。


「マンイーターってーと、あの御伽噺に出てくる化け物か。最近シェルリックスに出たって話を聞いたな」

「なんでも山みたいな化け物が倒されたって与太話だっけ? あれは流石に作り話だと思ったけど、マンイーターそのものは本当だったみたいだね。リリちゃんは嘘をつくような子じゃないわ」

「そうね。マンイーターと比べれば、確かにディックは可愛く見えるわね」

「うるせえよ」


 お姉さん達に撫でられていると、少し落ち着いたの。


「お待たせしましたー。森の恵みだよー」


 ウェイトレスのお姉さんが紫色のジュースを持ってきてくれたの。このウェイトレスさんも可愛い格好なの。お姉ちゃんが気に入りそうなの。


「いただきます」


 1口飲むと、ルミラムネとは比べられないくらい甘くて美味しいの。もう1口飲むの。お姉ちゃんが魔法で出した水くらい、するすると体に入っていくの。気付いたら半分くらい飲んじゃったの。これはすごいの。ママ達にも飲んでほしいの!


「気に入ったか?」

「すごく美味しいの!」

「そりゃあ良かった!」


 にこやかにお話をしていたら、受付のお姉さんが慌てた様子でパタパタ走ってきたの。


「リ、リリちゃん! お薬の査定が終わったのだけど……」

「はいなの」

「解毒のポーションの高品質が31個、さ、最高品質が17個もあったわ。ほ、本当にあれを全部売ってくれるの?」


 ユーフィさんの言葉に、皆が驚いてるの。最高品質ってどれくらいすごいのか、この前アリシアお姉ちゃんに聞いたの。

 ほとんどがダンジョンの中で見つかった物で、人の手で作られるのは稀だって言ってたの。でもお姉ちゃんは当たり前のように作るし、最近はアリシアお姉ちゃんも作れたって、嬉しそうに話してたの。


「うん、お姉ちゃんが苦しんでる人たちに使ってほしいって言ってたの。あと、最高品質は値段がつけられないなら言い値で構わないといってたの」

『て、天使!!』


 お姉さんたちにむぎゅっとされるの。苦しいの……。


「おいおい放してやれ、嬢ちゃんが苦しそうだ」

「あっ、ごめんねリリちゃん」

「リリちゃんがあまりに良い子だったから、嬉しくなっちゃったわ」

「そうね。リリちゃん、ジュースのお替わりは要るかしら? お姉さんが奢ってあげるわよ」

「ありがとうなの! ……えっとえっと、これからお姉ちゃんやママも来るの。美味しかったから、飲ませてあげたいの」

『勿論よ!』


 お姉さんたちがハモるの。楽しそうなの。

 受付のお姉さんが走って戻っていったので、冒険者の人達とお話をするの。リリは、ここに情報収集をしにきたの。その街でお仕事をする冒険者の人は、大体の事は知ってるものなの。じゃないとおまんまにありつけないってガボルさんが言ってたの。


「そうだなぁ、まず川の毒もそうだが、どちらかというと井戸の方がヤバイ。もう半分くらいは汚染されたんじゃねえか?」

「そうね、もう残ってるのは領主様の井戸と、織物工場の井戸、あとは宿屋の井戸くらいかしら」

「いや、宿の水も今朝の時点で異臭がしたらしい。あれはもう使えそうにないな」

「あそこもやられちまったか……。いよいよ不味くなってきたな」


 おかしいの。聞いてた話と違うの。


「えっと、井戸と川の水は、一緒なの?」

「うん? いいや、直接のつながりはないはずだ。まあ、確かに川に異変が起きるまでは井戸も問題はなかったんだけどな」

「この街に流れる川の水は上質でね、昔からその恩恵にあやかって町全体で生活の基盤になっていたんだ。あの川が使えなくなったときはそりゃあもう大混乱だった訳よ。それで急遽井戸を使い始めたら、今度はそこでも汚染騒ぎ。井戸とは完全に別だと思い込んでいたから、安心して使った結果、病人が爆発的に増加したのさ」

「でも実際、あの川と井戸は繋がりはないはずなんだよな」

「そこが不思議なのよね」


 ……ふむふむ、とっても怪しいの。


「街の人間だけでなく、旅人や商人、俺達冒険者もその被害にあってな。解毒用の素材を採りに行くにもベテランは軒並み倒れてるし、作り手も倒れちまってる。毒が流れて来ているエルフの森も、きっとヤバイ事になってるだろし、贔屓にしてくれてる商人も倒れて、他所からの物資も見込めねえ。完全にこの街は手詰まりだったんだ」

「それで、まだ症状が発生してない連中でシェルリックスか王都に救援を願い出る手順を話し合っていたところなの。だからリリちゃんが持ってきてくれた最高品質の薬は渡りに船だわ。全員は助からないかもしれないけど、それでも死者はぐっと減らせるはずよ!」


 お薬を作っただけで、こんなに喜んでもらえているの。こんな風に皆を幸せに出来るのもそうだし、そんなお薬の作り方や、リリでも正しく素材を採取できるように教えられるお姉ちゃんはすごいの。鼻高々なの。アリシアお姉ちゃんが時々そうなってるのもよくわかるの。

 あっ、お姉ちゃんが川の毒を対処しに向かったこと、言った方がいいのかなぁ? ママやアリシアお姉ちゃんに相談した方がいいかな? お姉ちゃんが向かって解決出来ない事はないと思うけど、どうなんだろう……。

 うーん、うーん。


 冒険者たちがリリ達の事を褒めたたえる中、リリは別の事で頭を悩ませていた。

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[良い点] リリちゃん尊い\(^o^)/☆5
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