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王太子妃ですが、エルフの番に選ばれました  作者: たま


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その後のルイス3

なのに、いきなり妖精の番探しなんてイレギュラーな案件が発生した。

まるで嫌がらせのように。


そして、妖精であるビショップが来た。

イジーを見る、あの眼つき。

今思い出しても腹立たしい。

あんな不躾な視線で僕のイジーを見るなんて。

イジーは、可哀そうに怯えていた。

それは、そうだ。

この国で、僕のイジーに手を出そうという命知らずはいない。

皆、羨望の目では見ても、イジー自身をそんな熱のこもった視線で見ない。

イジーは綺麗だ。

久々に見た、人間の若い綺麗な女性に目がいったんだな、としか、あの時は思わなかった。


そして、妖精が鳥を置いていった。

鳥は、綺麗な白い鳥だった。

僕自身、そこまで鳥が好きなわけではないが、ものを食べる姿がとても可愛くて、イジーと一緒に餌をあげたりした。

妖精の番探しが落ち着いたらきちんと話して、そう、今、一緒に鳥に餌をあげてるように、僕とイジーの子供を作って、二人で可愛がろう、なんて考えていた。


そんな僕の考えをあざ笑うかのように、イジーに妖精の番の紋様があらわれた。


僕の、イジーに。


イジーの白い肌にある、番の紋様。

一瞬理性が飛んだ。

気がついたらイジーを押し倒していた。

イジーの潤んだ目に、僕は。


鳥が邪魔しなかったら、僕は。


あの時、鳥が邪魔してくれて、良かったのだ。

あのまま感情のまま動かなくて良かった。

あの時、僕が手を出していたら、イジーは余計傷付いたに違いない。

だから、良かったのだ。


そして、母から聞いた僕に関する噂。

僕がキャッサンドラに懸想をしているという噂。

お喋り雀が沢山いるこの場所で、ゴシップが生まれないはずがないのだ。

僕は、イジーと公務の際はこれ以上ない程丁寧に王太子妃として、妻として扱っていた。

イジーも、何も言わなかった。

だから、大丈夫だと思った。

大丈夫だと、思いたかったのだと思う。

結局、僕は自分の見たいものしか見ず、聞きたい事しか聞かない愚かな男だったのだ。


そして、噂を違うと否定したくても、そんなことはどうでもよい、と母は断言した。

母が決めたことに反論しても無駄だ。

僕が後に、後にと後回しにしていた事が全て裏目に出た。


イジーが僕の傍からいなくなるなんて、あるわけない。

普通に考えたら、誰だってそう思うはずだ。だって彼女は王太子妃だったのだから。

この生活に、終わりが来るなんて思っていなかった。


妖精の番だと判明したら、王宮で客人扱いという名の逃亡防止の幽閉を行う。

イジーが逃げるわけないのだから、そのまま慣れ親しんだ王太子宮で最後の日々を過ごさせたら、と提案したが、母は笑顔で特例は許さない、と却下した。

母は、イジーを可愛がっていたが、情けは一切見せなかった。


僕もイジーに会えなくなった。

母が許した人間以外、イジーとの接触は禁止になった。

イジーの本当の気持ちも聞けず、僕の本当の気持ちも伝えることが出来ず。


僕とイジーの結婚は白紙になった。

イジーは運命の番として。

そして、僕とキャッサンドラとの真実の愛を広めるのだそうだ。


母からの、いや王妃からの命令だ。唯々諾々として従う。

文句?そんなもの、飲み込むしかない。

それが王家の人間の務めだから。


母に10分だけでも良いから、二人で話をしたい、とお願いしたがすぐに却下された。

イザベラを惑わすな、と言われた。

いきなり引き裂かれ、最後の最後まで二人きりで話す事すら許されなかった。

夫婦だったというのに。


会うことが許されなかった僕は、母に細やかな抵抗をした。


僕との結婚が白紙になるという事は、王家の家系図にイザベラの名前が残らない、という事だ。

小さな頃から僕の婚約者として、そして王太子妃として一生懸命だったイザベラの名前が王家の歴史に残らないなんて、そんなの切なすぎるじゃないか。

だから、せめてこの時代にイザベラが存在していた事を残したくて。

僕はマッケンジーのミドルネームにイザベラの名前を入れた。


母は、黙認してくれた。

母も、もしかしたら、イザベラの名前を残したかったのかもしれない。


フィッツジェラルド侯爵には伝言をお願いした。

本当は伝言ではなく、会って話がしたかった。

フィッツジェラルド侯爵の僕に隠す気が全くない不機嫌そうな顔を見て、僕も諦めた。

今更だというのを、改めて思い知ったから。

だから、せめて約束を守れなくてすまなかった、と。

それだけを伝えてもらった。

それ以外の、どんな言葉も僕には陳腐に思えた。


彼女がそれを聞いて、どう思ったのかは分からない。

もう、どうやっても彼女の本音は聞けない。

彼女が僕の傍で何を考えていたのかも。

あんなにずっと一緒にいたのに。

僕は、何も知らない。

それが、苦しい。


僕は、イジーに何もしてあげられなかった。

最後まで。


キャシーの事は、嫌いではない。

どちらかというなら、好きなんだろうと思う。

だけど、イジーに対して恋焦がれる気持ちとは、違う。


目を閉じると、最後に見たイジーの笑顔が浮かぶ。

思い出の中の、幼いイジーの笑顔と重なる。

何も知らず、ただ幸せを信じていたあの頃。


イジー、今、君は幸せだろうか?

ビショップ殿の隣で、あの昔のような笑顔で笑っているだろうか?

そうだとしたら、僕は嬉しい。


幸せになって欲しい、心の底から思う。

僕が幸せに出来なかったから。


せめて 自分が王になった時。

立派に国を治めていこう。

今からでも遅くない。

僕は僕に出来ることをしていこう。


いつか、イジーに顔向け出来るように。


いつか、イジーに胸を張って会えるかもしれない、その時まで。


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