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王太子妃ですが、エルフの番に選ばれました  作者: たま


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第三十七話

部屋の扉をそっと開くと、すぐにリビングスペースだった。

こちらは同じく漆喰だけどイザベラがいた部屋と違い、白というよりかは全体的にオフホワイトで落ち着いた感じになっている。

部屋はそこまで大きな作りではないが、暖炉があり、その上には鍋が置いてある。どうやら良い匂いの元はこの鍋らしい。

コトコトと音を立てて蓋から蒸気が逃げていく。

なんとも食欲をそそる良い匂いだ。


「あの…」


声をかけてみるが、返事はない。

ソファにテーブルが置いてあり、日が当たっていて気持ちよさそうだ。

そこで座って待っていた方が良さそうだ、と思い、足音を立てないようにソファに向かうと、そこにはビショップが横になっていた。

スースーと規則正しい寝息を立てている。


…寝ている…

そうよね、妖精も寝るわよね、えぇ。


安心しているのか、とても無防備な寝顔だった。

陽射しがビショップの顔にかかっており、まぶしいかと思い、顔を陰にするようにイザベラは移動した。

目を伏せているので、まつげが長いのが良く分かる。

もしかしたら、イザベラよりも長いまつげをもっているかもしれない。

肌も白く、肌理もが細かそうだ。


ルイス様も、綺麗なお顔だとは思っていたけれど。

妖精、だからかしらね、少しばかり、綺麗のタイプが違うみたいだわ…


行儀が悪いのは分かっていたが、つい好奇心にかられイザベラは凝視してしまう。

やがて、ジロジロとあまりにも見過ぎていたからか、ビショップが目を開けた。

一瞬だけ、目の前のイザベラに驚いた顔をしたが、体を起こすとすぐに優し気に微笑んだ。


「起きたのか、イザベラ、体の調子はどうだ?」


「あ、ありがとうございます。大丈夫です。

あの、すみません、起こしてしまいましたか?

私、寝てしまったみたいで…荷物まで整理されていて…」


イザベラは口籠る。

何となく気恥ずかしく、着替えさせてくれたのはビショップなのかは問いかけられず、口籠る。


「気にするな。移動したので、疲れたのだろう。食事を用意しておいたから、食べると良い。あぁ、まずは、家の説明をしよう。その後、食事をとればよい」


イザベラは素直に頷くと、家の案内をお願いした。

家は、寝室が2部屋、小さな台所が一つ、リビング、家の裏手に厠と湯浴みスペースがある。全体的に落ち着いた雰囲気の、可愛らしい作りだった。

そして、この辺りにはビショップとカークウッドしか住んでいない事も知った。


「そういえば、カークウッドはどこにいるのかしら…?」


イザベラがキョロキョロと周囲を見回してもカークウッドはいない。


「あぁ、今、外でフルーツをとっているのだろう。食後に分けてもらえばよい。

やつの食べ頃のフルーツを見る目は確かだから、きっとそちも気に入るだろう」


今日のビショップの口数は多い。

沈黙が落ちても、何かしら話題を出してくれる。それは、まぁ家のことなど生活の話になるのだが。

部屋の案内が終わると、暖炉の上にある鍋からスープを取り出し、台所にあった窯からはパンを取り出した。

給仕をするビショップを見て、イザベラも手伝おうと腰を上げるが、疲れてるだろうから気にするなと言われ大人しく席で待つ。

サーブされたのは、スープとパン。

パンも出来たてなのか、ホコホコと暖かい。

スープはジャガイモや玉ねぎ、ニンジンが入っていてとても美味しかった。

パンには蜂蜜を少しつけて食べる。

ビショップも同じものを食べていたのに気が付いて、顔を上げると目が合った。


「口に合わぬか?」


「いいえ、とても美味しいです。

蜂蜜もとても甘くて…

あの…同じものを召し上がるのだな、と思って」


ビショップがフ、と笑った。


「食べなくとも大丈夫だが、一緒に食べぬとそちが不安だろう」


ビショップが何気なく言った発言に、イザベラは不意に涙が溢れそうになった。

あぁ、自分がこんなに不安だったのだ、と気が付く。

一人で知らない所に来て。

緊張して、気が張っていた。

食べなくても済む食事に、自分が不安だろうからという理由で付き合ってくれている。

ビショップの心違いが、イザベラの胸に染みる。


「ありがとうございます、とても嬉しいです」


少しずつ、少しずつ自分で出来ることを増やしていこう。

料理をしたことがないが、教えてもらおう。

掃除の仕方も、色々と。

そして。

少しずつ、ビショップ様の事を知っていこう。

私は、何も知らないのだから。

少しずつ、ビショップ様に私の事を知ってもらおう。

彼も、私を知らないのだから。


イザベラが微笑むと、さっきより嬉しそうな顔をしてビショップが微笑んだ。

イザベラは気恥ずかしくなり、残りの食事を片付けることに専念した。

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