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第十二話

城に着くと、すぐに王の間に通された。

玉座の間ではなく、王の間で謁見するのか。

王と妖精、どっちが玉座に座るのか、分からないものね。

王の間では、王や王妃、ルイス、そしてもう一人、妖精がソファに座り歓談していた。

王の後ろには宰相と護衛が3人ほど控えていた。


イザベラが入室しソファにちかづいてくるのに気が付くと、妖精が席を立った。

銀髪碧眼の、色素の薄い肌をした耳の尖った白い衣装をきた背の高い妖精が、そこにいた。

思わず息を呑むほどの、顔の整った妖精だった。

泉のようなきれいなブルーの瞳。

まるで人形の様だ。

イザベラも一瞬すぐには挨拶が出来なかった。

すぐに我に返り、慌てて挨拶をする。


「お初にお目にかかります、ルイス・オスカー・トワイゼルが妻

イザベラ・メアリー・トワイゼルと申します。」


綺麗にカーテシーを決める。


ジロジロと不躾な視線を感じる。

頭を上げると、妖精と目が合った。


「…随分と、手回しが良いのだな」


中性的な容姿だが、声はしっかりとした低音だった。

彼はしっかりとイザベラの瞳をとらえ、見つめている。

王が首をひねる。

イザベラも、その視線に違和感を感じ、困惑した表情を浮かべる。


「…?

手回しとは、何を?ビショップ殿」


王がビショップに問いかけるが、その前に彼はイザベラに向かい動き出した。


「我が名は、ビショップだ。

イザベラ、と名乗ったな?良い名だ。」


ビショップと名乗った妖精はイザベラの手を取り、腰を抱いた。


「え?え?」


いきなりの事で避けることも出来ずに驚愕してビショップの顔を見る。

混乱のあまり、イザベラは思わず顔をキョロキョロとする。

ルイス以外の男性とこんな至近距離で抱かれたのは、ダンス以外初めてだ。


「ビショップ殿、冗談が過ぎまする、イザベラは私の妻で、王太子妃です」


全員が呆然とした顔をして二人を注視していた。

ルイスがようやく我に返り、イザベラの傍にきた。

ビショップからイザベラを離そうと、イザベラの肩に手を置く。

ビショップはチラとルイスの顔を見てからイザベラの顔を見た。


「そちの、夫か?」


念を押すようにイザベラの瞳を見つめる。


「は、はい、先ほども申し上げた通り、ルイス・オスカー・トワイゼルが妻

イザベラ・メアリー・トワイゼルです。

あ、あの…?」


イザベラは腰に回された手から逃れようと腰を捻る。

それを止めるように腰に回された手に力が入る。


「そちの匂いではなく、他の女の匂いがするぞ。本当にそちの夫なのか?」


全員が息を呑んだ。


「そ、それは…」


ルイスが戸惑う声を出すが、すぐに毅然とした表情を見せる。


「そんなことは、今はいいでしょう。ビショップ殿、お手を外して頂きたい。

我が妻が困惑している」


半ば無理やり引きはがすような感じでイザベラを引っ張ると、イザベラを自分の背後に隠すようにしてルイスはビショップと向き合った。


ビショップは平坦な目をしてルイスを見た。


「…ほう、面白いな、人間とは」


そして薄い唇が弧をかく

その微笑みは、あまりにも綺麗で現実的ではなかった。

その無機質な笑みにイザベラの背中がブルリと震えた。


「まぁ、よい。

いずれ分かることだ」


そうして、元の場に戻り、ゆっくりとソファに座った。

イザベラもルイスに腰を抱かれ席に座る。

ルイスは、イザベラを労わるように、守るように座った。

ぎこちないまま、歓談が始まる。

その間中、イザベラはビショップの視線をずっと感じる。


怖い。


それは紛れもない、恐怖の感情だった。


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