9話 ついたちめ症候群
前回のあらすじ:
メタは次からオムライスには、パンツを描くことにした。
日にちが空いてしまいました。
続きを楽しみにしていたみなさん、すみません。お待たせしました。
もっともっと、入れたいエピソードが有ったのですが、アリが小説を書くってコトからズレて、物語が進まないので、とりあえず、アリの小説が完成する方向にしました。
入らなかったエピソードは、あとでのお楽しみにします。
とはいえ、活字にしてないのですけどね。
では続きをお楽しみ下さい。
「アリ、もう寝ようよ。半分お月さまも、森の向こうに隠れちゃったよ」
「……ん、もうちょっと……」
半分の月が沈むのは、深夜、日付が変わったぐらいだよ。
窓辺で夜空を確認してたボクは、ふわふわとアリの側に飛んでった。
書斎には、本棚があり、沢山の本がある。
本に挟んでない栞も、束にして、そこかしこに積まれてる。
アリの両親がダンジョンで手に入れたモノと、大賢者さまが持っていたのを合わせて、すごい量になってる。
パパさんが、皇都の図書館でもお目にかかれないコレクションだって驚いてたよ。
ボクは、小説の栞が無いか探してたんだけど、ちょっと飽きちゃった。
書斎の中央に置かれている安楽椅子は、アリのお気に入りの場所だ。
昔はアリのお父さんのお気に入りの場所だったらしい。
ボクは、背もたれを後ろから引っぱって、椅子をグラグラ揺すったよ。
サイドテーブルに置かれた、明かり台の魔道具の光を受けて、ボクとアリの影も大きく揺れる。
「……よ〜み〜づ〜ら〜い〜〜……」
普段はグラグラすると、ボクと一緒に遊んでくれるんだけど、本を読んでる時は別なんだよね。
アリは、今朝の小説を直してたはずなんだけど、いつの間にか、本に夢中だった。
多分、何か調べようと思って、ページをめくっていたら、そっちに集中しちゃったんだ。
アリってばね、すぐに脱線するんだよ。
「アリ、1人で悩んでると、なかなか答えが出ないモノでも、相談すれば解決するコトもあるよ」
「……ん、作者も、一週間、更新してない……小説は、悩むモノ……」
そうだよ、作者さん、早く続きを書き上げてよ!
いくらなんでも、一週間は悩み過ぎだよ。
多分、細かい何かが気になりだして、ずっとそこから動けないんだと思うけど……
完璧を求めたところで、完璧なモノなんて出来る訳無いんだし、誰にも見せなければ、それは、どこまで書いていようと、作品が無いのと変わらないんだよ。
とりあえず、人に見せて、直したくなった時に直せばいいんだよ。
ボクらも読者も、待ってるんだからね!
「ねぇ、どこでアリが悩んでるか、教えてよ」
「……ん……恥ずかしい、けど、見て……」
ボクは、肘掛けの上に移動して、ブランケットに包まったアリの、膝の上の本を覗き込んだ。
『『『『『『『『『『
ぼうけんしゃのぼうけん
ついたちめ。
あさおきた。
あさごはんをたべた。
ぼうけんしゃになった。
やくそうをとった。
ばんごはんをたべた。
よるねた。
ふつかめ。
あさおきた。
あさごはんをたべた。
やくそうをとった。
ばんごはんをたべた。
よるねた。
みっかめ。
あさおきた。
……………
』』』』』』』』』』
「…………」
「……どう? なんか、変なの……」
一日の始まりに、何日目なのか分かるようにって、したんだね。
たったこれだけで随分悩んでるなと、思ってたんだけれど、確かに……
「ついたちめ?」
「ん。ついたち、め……」
「ついたちめって、何だか変な気がするよね。勇者世界では使うのかな?」
「……そこ、なの。悩むの……」
「いちにちめ、じゃ、ダメなの?」
「……いちにち、め、も、考えた……けど……」
アリには、何かこだわりがあるんだろうか?
普通なら、いちにちめって言うと思うんだけど、そうしたくないっぽいんだ。
「……いちにち、めの、つぎの日は、なんにち、め? ……」
「ふつかめか、ににちめ、だと思うよ」
「……どっち?」
「どっ…………」
ボクは、どっちでも良いって言いそうになって、言葉が詰まった。
それじゃ、アリの悩んでるコトを、突き放した様になっちゃう。
アリは、真剣なんだ。ボクも真剣にならないと。
「ふつかめ、の方が、表現としては、こだわっていて、カッコいい気がするね。大人な文章だよ」
「ん、そうなの……」
どっちにしても、ひらがなばっかりじゃ、大人じゃ無いと思うんだけども……
「……ついたち、の、次から、数えて、みて……」
「え、ついたち、ふつか、みっか、よっか、でしょ」
「……いちにち、の、次から、数えて、みて……」
「いちにち、ににち、さんにち、よんにち、だよ」
「……ににちめ、の、前は?」
「いちにちめ、でしょ」
「……ふつかめ、の、前は?」
「ついたちめ? あれ? ホントだ! コレ、なんか変だ!!」
「……メタでも、気づいた……」
勇者言葉は、表現が多彩だから、小説を楽しむ人が多いんだと思う。
だけど、ホント、難しいよね。
個数を数える時に、いっこ、にこ、さんこって数え方と、ひとつ、ふたつ、みっつって数え方がある。
いっこめ、にこめ、さんこめと、ひとつめ、ふたつめ、みっつめは、しっくりくるけれど……
いっこめ、ふたつめ、みっつめとは言わない。
それなのに、日にちを数えるときは、いちにちめ、ふつかめ、みっかめになる。
これは、すっごく変な気がする。
「アリ、良く気づいたね。これはすごいよ。難しいよ」
「……作家、だから、当然……」
「これは、困ったよ。ボクじゃ、解決策が思い浮かばないよ」
「……だから、考えてる、の……」
「ボクは今、作家のこだわりと悩みを知ったよ!」
さっきまで、作者に、早く書け! なんて言ってたけど、作者もきっと、アリと同じなんだ。
よし、ボクはこのこだわりと悩みで原稿が進まないスパイラルを『ついたちめ症候群』って名付けよう。
読者のみんなの中にも、小説を書いてて、途中で悩んでる人は、ついたちめ症候群かもしれない。
頑張れ! みんな。きっと、答えは見つかるよ。
「アリ、さすがにこの難問は、ボクには無理だ。アリでも難しいんだから、もうこれは、大賢者さまに教えを請うしかないと思うよ」
「じいじ、里でヴェルくんと飲んで、酔っぱらって寝てる」
「そっか、じゃ、ボクらも、もう寝ようよ」
「……小説、書くの、朝飯前、なのに、終わらない……徹夜、やむなし……」
「朝飯前に、こだわってたんだ……」
アリは、まだまだ寝そうにないや。
ボクは、ネコだから、夜は得意なんだけどね。
「ボク、何かお夜食もらってくるよ。甘いもの食べると頭が働くらしいよ……」
「……アリも、行く……」
ボクらは、一息つくために、1階の厨房に行くことにした。
たった、日にちを付け加えるだけなのに、こんなに悩むアリ。
ちなみに、なんで、ついたちめって言わないかは、ネットで検索しました。
そうなんだーって思ったり、日本語は、奥が深いなーって感心したり。
果たして、朝飯前に小説は完成するのでしょうか?
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とってもはげみになります。
また、誤字脱字、文章の書き方が変だ等ありましたら、ご教示ください。
よろしくお願いします。
な