6話 編集長のおっしゃる通りです……
朝寝坊しちゃったので、お昼に投稿です。
前回のあらすじ:
メイに、小説を教えてあげたよ。
メイは4歳だけど、文字は読めるよ。
なんたって、賢者の塔の子供だからね。
英才教育ってやつ?
しかも、アリの小説は、ひらがなばっかりだしね。
「ほうけんしゃのほうけん」
「ほ、じゃなくて、ぼ。点々ついてるから、ぼって濁るの……」
「あ、ほんとだ。すごい。あ、ココにも、ごってある。ばとべもあった!」
「……ちっちゃい、や、もあるよ……」
「すごい、すごい!」
小説を読むと思ったら、濁点探しゲームになっちゃった。
でも、アリはなんだか得意になってる気がするよ。
さすがにコレは、ボクには出来ない褒め方だよ。
子供ってすごいね!
しばらくしたら、やっと冒頭から読み始めた。
「あ、さ、お、き、た。 ふー
あ、さ、ご、は、ん、を、た、べ、た。 ふー
………」
とってもゆっくりと、一文字ずつ読み上げてるよ。一行ずつ深呼吸してるしね。
そんな読み方で、内容が頭に入るのかなぁ……
「ば、ん、ご、は、ん、を、た、べ、た。 ふー
よ、る、ね、た。 ふー」
どうだろう。なんか、メイは真剣に読んでるけれど、面白いのかな?
すっごく不安だよ……
「ねぇ、気になるんだけど……」
「……ん、なに?」
えっ? 気になるところ、見つけちゃったの? ど、どこだろう……
ボクのほうが、気になってるよね。
「このぼうけんしゃ、おひるごはん、たべないの?」
そ、そこー??
「メイ、すごい! そこに気づくとは…… メタより賢い…… 編集長にする……」
「えええっ!」
ボクはこれから、メイの下で編集者になっちゃうの?
「へんしゅうちょう?」
「……編集長は、偉い……」
「えらいの? じいじよりえらい?」
じいじってのは、賢者の塔の大賢者さまのコトだよ。
「そこまでは偉く無い…… アリの次、くらい…… メタよりは、偉い……」
「そうなんだ。あのね、おねえちゃんが、ニワトリのおせわかかりになったの。それでね、メイもかかりなりたいって言ったら、アリのおせわかかりになったんだよ! だから、へんしゅうちょうはできないの」
「……なるほど、アリのお世話係なら、編集長より重要ポスト……」
ボクの編集者の立場が守られたよ。
でもって、アリ、要介護認定されちゃってるんだけど……
「あ、さ、お、き、た。 ふー
…………
よ、る、ね、た。 ふー」
メイは続きを読み始めたよ。
「冒険者はね、過酷な仕事なの……始めたばかりは、お金も無いし、お昼ご飯は抜き……」
「へー かっこいいね!」
「うん……」
「あ、さ、お、き、た。 ふー
…………」
お昼ご飯抜きだと、かっこいいの? 謎感覚だよ…… でも、つっこんだらダメだよね……
「ここ、なんにちめ?」
「……そこまでで、みっかめ……」
「つぎは?」
「……よっかめ……」
「ふ、ろ、に、は、いっ、て、わ、す、れ、た。 ふー」
メイは、一日毎に何日目か聞いてる。気になるのかな?
「おふろはいって、なにをわすれたの? いつもは、おふろ、はいってないの?」
「……冒険者は、過酷。毎日、お風呂に、入れるわけじゃ、ない……」
「かっこいいね!」
「あ、さ、ね、ぼ、う、を、し、た。 ふー
み、ず、を、の、ん、だ。 ふー
えっと、ここ、なんにちめだっけ?」
「……むいかめ……」
「あさねぼうするとか、メタみたい。かっこわるいね!」
ボク、おならも寝坊もしてないんだけどなぁ……
「あ、でも、あさごはんまで、たべてないよ。すごい!」
「……過酷だからね……冒険者にとっては、朝飯前……」
「かっこいいね!」
ボク、そろそろお腹が空いてきたよ。もう、かっこ悪くて良いから、お昼たべたいな……
「…………
よ、る、ね、た。 ひっひっふー」
やっと、読み終わったみたい。
最後はついに、赤ちゃんが産まれたね。 おめでとう!
「おもしろかったぁ。いち、に、さん、し、ご、ろく、なな。ぜんぶで、ななにちだね!」
「……うん、なのか……」
あれ? ボク、ちょっとわかっちゃったかも。
「つづき、よみたい」
「……続きは、これから、書くから……」
「えっと、はちにちめから、だね」
「ん、そう……」
つ、続くんだ?! ビックリだよ……
じゃ、なくて、アリの小説の改善点。見つけたよ!
「ねぇ、アリ。小説をもっと良くする方法を、ボク、見つけたよ!」
たぶん、みんなも気づいたよね? キミの思ってる通りだよ。
「メイね、日にちがあったら、かぞえなくてもすぐわかるから、うれしい」
「……ん、わかった。そうする……」
い、言われちゃった。メイちゃんに先に……
「……メタも、教えて……」
「う、うん…… 編集長のおっしゃる通りです……」
ボクは、なんか恥ずかしくて、また空を見上げたんだ。
とっても青くて広くって…… さっきのパンの雲は、もうどこか行っちゃってた。
やっぱ、ボクなんて、ちっぽけだね。
うん。それでいいや!
ぐうぅぅ〜〜
あ、アリのお腹が鳴った。やっぱりぺこぺこなんだ。
「……いま。メタのお腹、鳴ったでしょ……」
「そ、そうだね。もう、ぺこぺこだよ」
「おならのつぎは、おなかだぁ!」
ボクの所為にされちゃった。
でもまぁ、お腹空いてるのは本当だし、良いコトにしておくよ。
「そうだった。おひるは、ママのオムライスなの!」
「やったー ボク、オムライス大好きだよ」
「……ケチャップで、名前、書こう……」
アリは本を閉じて、メイと手を繋いだ。
ボクは、ふわっと浮かんで、アリの頭の上に着地だよ。
「おうちまで、ふわふわしてこう……」
「わーい。ふわふわすき」
アリはそういうと、足下に魔方陣が現れて、ふたりの体がふわりと浮かんだ。
そのまま、小道に沿って、ボクらは森の中へと消えていく。
静けさを取り戻した賢者の塔を訪れるのは、若草の香りを運んで来る春の風だけになった。
読んでくれて、ありがとうございます。
なんか、イイ感じに終わってますが、続きます。
書き始めた時に、メタ視点で書いてみたんです。
そしたら、メタ発言だらけになってた。
この作風で良いのか不安なのですが、作者は気に入ってるみたいで、楽しいです。
企画段階では、マンガのネーム前の文字シナリオ程度の、セリフと情景描写だけの、原作っぽいのを書いて、将来的に、マンガにするためのネタをストックしていこうと……
ふたをあけてみれば、すっごく、マンガにしずらそうな物語になってます。
小説にしか、出来ないことをしている気がします。
これはこれで、新鮮で、面白いんです。
自分では思っても無い話が、書いていると湧いてきてるので、小説を書く作者の物語を書いている誰かがいて、動かされてる気がします。
ありがとう! 誰かさん!!
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とってもはげみになります。
また、誤字脱字、文章の書き方が変だ等ありましたら、ご教示ください。
よろしくお願いします。
れ