3話 良いところはドコ?
前回のあらすじ
アリは小説家になった。
今回、長くなっちゃいました。
でも、分割したくないオチなので、このまま全部掲載します。
ココでボクから読んでるキミに重大な発言をするよ!
ボクってさ、すっごいメタ発言だらけだよね。名前からしてメタだし……
メタ発言って知ってる?
物語の登場人物が、読者に語りかけたりする発言とかのコトだよ。
「こんなストーリーじゃ読者がついて来れないよ!」
「作者は何も考えてないっぽいよ……」
「お手紙ちょうだいねー」
みたいなの。
ギャグ漫画なんかで見かけるよね?
実はコレ、物語の中の世界に気持ちが行ってる読者を、現実世界に引き戻しちゃったりするので、メタ発言は好きじゃないって人は沢山いるんだ。
じゃ、この物語、ダメじゃん!! ってトコなんだけども……
ボクはこのアーステラの世界の生き物じゃないって言ったよね。
アリがうっかりミスして召喚しちゃった、別世界の不思議生物だって。
だから、ボクは他にも世界があるって知ってるんだ。
そう、この物語を書いてる作者や読んでる読者がいる世界もね。
なので、ボクが読者に語りかけても何の不思議も無いってコトなんだ。
わかるようなわからないような?
えっとね、今までの登場人物をあげてみると、わかるかもしれない。
まず、アリの書いた小説に出て来る冒険者。
その小説を書いたアリ。読んでるボクことメタ。
それから、勇者世界に転生してるはずのアリのお母さん。
そして、勇者世界でボクらのコトを書いてる作者。それを読んでる君たち読者のみんな。
ほらね。ボクが読者にメタ発言するのも、登場人物に語りかけてるんだってわかったよね!
ボクのメタ発言は、現実世界に引き戻すんじゃなくて、むしろ、読者を物語の中に引き入れてるんだよ。
なるほどだー
なんて、自分のコトを正当化しようと、現実逃避してるんだけども……
「……メタ……なんで、黙ってるの? もしかして私の小説、つまらない……?」
アリはボクの顔をジーッと見つめてくる。
どどど、どうしよう……
ボク、どう答えたらいいのか分かんないよ。
アリの首がチョット右にコテンって傾げた。
何ソレ、可愛さアピール?
いや、アリがそんな自意識過剰なコトするはずは絶対に無いんだけども……
「え、えーっとねぇ……」
向けられた視線と目を合わせるのを避けたくて、ボクはもう一度、本の小説に目を落とした。
正直な感想をぶっちゃけちゃうと、コレ、小説って言うのもおこがましいレベルの作文だと思うんだよね……
でも、そんなこと、いくらボクとアリの仲だとしても、言える訳が無いじゃん。
たぶん、アリは何を言っても傷つかない。
けれど、言ったボクが嫌な気分になりたくないんだ。
じゃあ、褒める?
小説を沢山読んでいる勇者世界の読者のみんななら、アリの小説を褒めるコト出来るのかな。
ちょっと1話にページを戻して読み返してみて、ボクと一緒に考えてみて!
まずさ、何でひらがなばっかりなんだろう……
文字を覚えたてのちびっ子じゃないんだから、アリは漢字だって使えるはずなんだ。
なのに、ひらがなだけの文章だよ。すっごく幼稚な印象を受けちゃうよね。
ひらがなとか漢字とか、異世界っぽく無いって?
だよねー
異世界なんだから、ファンタジーな文字であって欲しいよね。
ルーン文字とかヒエログリフ、神代文字なんか使ってるなら良いけどさっ。
このアーステラ世界だって、精霊文字とか、魔法言語とかあるんだよ。
でもね、一般的にならなかったんだ。
だって、本が貴重で小説が無いんだもん。
そこに、勇者世界から勇者達が転生とか転移とかして来てた。
勇者達は自分達が使ってた日本語って文字を便利に使ったおかげで、このアーステラでも一番使われる文字が、日本語になったんだ。
話す言葉も日本語に近かったり、勇者達が広めた単語が沢山あったからなのか、最近来る勇者は便利だなーって言ってるとか。なんだかねー
ちなみに、栞に記憶されてるのは普通の文字じゃないよ。
読む人が読める文字で表示される魔法の文字だよ。
驚いた?
ボクらにとっては常識だけどね!
ということで、アリの小説は、日本語で書いてるのは問題無いんだけど、ひらがなばっかりは……
しかし、それを最初に指摘すると、良く無いよね。
そうだよ、褒めるところを見つけるんだった。
えっと……
「主人公が冒険者ってところが良いよね! 冒険者は人気の職業だし、小説も人気が出るかもよ」
「……かも?」
「だだだ、大人気間違い無しだよ!」
「ん……勇者世界の小説でも冒険者が主人公のお話は人気……」
「そうなんだ。ボクも今度、オススメを読んでみようかな?」
「オススメは、アリの小説、だよ……」
「あ、そうだよねー……」
ボクを見つめていたアリは、小説の方に視線を戻した。
やったよ。ボクはなんとかアリの小説を褒めることに成功したよ。
と、思ったら、またこっち見た!
「……他には?」
えー! なんか、おかわり来ちゃったよ!
考えろボク……メタはやれば出来る子だよ……
「そうだ! 一日の間に、行間が空いてるの良いよね。すごい読みやすいよ!」
「ん……」
「そ、それからね。一日が五行でまとめてあるの、すっごいテンポ速くてサクサク読めるよね。ボク、あっという間に読めたモン!」
アリは驚いた仕草をした。
うん。とってもわざとらしい。
「……そこに気づく、とは、タダの帽子じゃ無かったのね……」
表情も声も全然驚いてないんですけど。演技ヘタなんですけど。
それとね、ボクとしては帽子より猫で認識してて欲しかったなぁ……
「……他には?」
「え……他??」
ま、まだあるの? ちょっとアリってば、欲張り過ぎじゃない?
もう、良いところなんて見つけられないよ……
「……降参、する?」
えっ、いつの間にか、難問クイズみたいになってた。
でもコレって、チャンスだよね。良いところ見つからなくてアリを傷つけちゃうって思ったけど、アリの出題したクイズなら、解答できなくても、アリが得意になるだけだもん。
「うん。もう、降参だよ。ボクはアリほど小説に詳しくないから、見つけられないや。ザンネンダナー」
「……そう……メタは、編集者としては、まだまだ新人レベル、ね……」
「ボク、いつの間に編集者になったの?」
「アリが、作家だもの」
答えになってない気がするけど、理屈を求めちゃダメな場面だね。
「でさ、アリ先生、残りはドコなのか答えをおしえてよ!」
「……そうね、新人編集者を育てるのは、作家の役目よね……」
どうやら、アリはベテラン作家らしい……
「ほら、ココよ……」
アリが指差したところは、真ん中の改行が多い空間の次の部分。
『『『『『『『『『『
ふろにはいってわすれた。
あさねぼうした。
みずをのんだ。
やくそうをとった。
ばんごはんをたべた。
よるねた。
』』』』』』』』』』
「4日目に、お風呂に入ってサッパリして、日記を忘れてるのよ。しかも次の日は、朝寝坊してご飯も食べれなかったの……」
「あぁ、そうだねー」
「この主人公、意外とオッチョコチョイでしょ……」
「なるほど! ボク、気づかなかったよ。これだけで主人公の性格を表現してるなんて、全然思わなかった!」
アリはまた、得意のポーズをとってるよ。
でも、ボクのセリフ、実は褒め言葉になってないよね。アリは気づかなかったみたい。
「……ココ、とっても悩んだところなの……」
「へー」
「ヒントになったのはね……作者の小学五年生の時の日記……」
「え? 作者の日記?!」
「お母さんの本に、作者の栞が挟んであったの……」
すごいぞ! 勇者の書。
これで、ボクらに作者の恥ずかしいコトが、全部バレバレだ。
「……作者の日記の4日目に書かれてたのが……『今日は、よるにふろに入ってわすれてしまった。』……なの……」
「そのままじゃん! 何ソレ、作者ってば、三日坊主だったの!?」
「……他にも知ってしまった、作者情報が、ある、の……」
「知りたくないよ!」
「……アリって名前。元々は作者が昔使ってたペンネームなのよ……ショック……」
アリは、ショックのポーズをとった。
感情はやっぱりわからないけれど、ボクには本当にショックなんだと思えたんだ……
「……それから、作者はロリコン……生まれ変わったら、エルフの幼女になるつもり……」
「それ、全然知りたくなかった情報だよ! もしも、エルフの幼女に出会ったら、作者なのか疑うレベルだよ!」
ボクの頭の中から、アリの小説の内容とか全部吹っ飛んだ。
明日は4日目だけれど、作者が風呂に入って投稿するの忘れるんじゃないかって、心配になってる……
ボクらの物語も、三日坊主になりそうなフラグ……
そこに、アリが言った。
「……この小説。どうすれば、もっと良くなると思う?」
アリは、良いところを褒めるだけじゃ満足してくれなかったみたいだよ……
ねぇ、みんなならどうする?
読んでくれてありがとうございます。
フラグが立ってますが、明日、更新するつもりです。
はたして……
少しでも面白かった、メタ頑張れ! 自分もエルフの幼女に生まれ変わるつもりです。などありましたら、ブックマークや評価、コメントしてください。
とってもはげみになります。
また、誤字脱字、文章の書き方が変だなどありましたら、ご教示ください。
よろしくお願いします。
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