22話 言葉の魔法
前回のあらすじ:
みんなでサブレを作った。
更新が遅くなりました。すみません。
書きたいことは決まってるけれど、言葉に悩んでました。
「ねぇ、アリ。ボク、小説のコトで、気づいちゃったんだ!」
「……ん、なに……?」
アリはまだ、ボクの方を振り向きもせず、ハートに核を載せる作業に夢中だった。
終わるまで、後回しだね。
「ねぇ、クレアさん。スゴく大量に作っちゃったけれど、オーブンに入り切らないんじゃない?」
「そうね〜、このまま結界で囲って焼くわ〜」
結界魔法、万能説!
あ、時空魔法だっけ……
「……できた……」
「おつかれさま〜。それじゃ、焼きましょう〜」
「……クレア、手、つなぐ……」
どうやら、アリも一緒に唱えるみたい。
「「あつあつ、ほかほか、おいしくな〜れ」」
……ほわわわわ〜ん……
調理台の上に大きな結界が現れた。
境界がわかるように、うすーくオレンジ色をしてる。
ボクらの作った生地が、フワッと浮いて、どんどん結界に入って行く。
一番上の真ん中にドラゴン。
その周りで、ボクとアリとクレアさんが踊ってる。
下では動物たちがダンスを始めたよ。
アリのハートは、クルクルと舞ってる。
クレアさんの魔法陣や花が回転しながら周りを囲んでる。
「みんな、賑やかで楽しそうだよ。ボク、ウキウキしてきた!」
「触っちゃダメよ〜、結界の中は、熱々だからね〜」
「……おさわり、禁止……」
結界の側面には、赤い数字で180、青い数字で19:32って書かれてる。
赤い数字は温度だね。
結界に手を突っ込んでたら、火傷しちゃうところだった。
みんなも気をつけてね!
青い数字は、焼き上がりまでの時間みたいだ。
少しずつ、減ってる。今、19:11になった。
動物の胸には、アリの作った小さなハートがくっついてた。
ボクが横着して、ハートにしなかったのを、アリは気になってたのかも知れない。
次からは、ちゃんとしよう。
「焼くのは、時間を速めたりしないの?」
「出来るけど〜、何か味気なくなっちゃうのよ〜。不思議なの〜」
「……解明すれば、ノンベール賞……」
賞だって。スゴそうだよ。
「私も〜、受賞したコト、あるのよ〜。虚数結界に魔力を循環させるコトによって、恒久的に動作させる術式の基本理念の構築で〜」
「スゴいね、クレアさん。アリも、受賞してるの?」
「……アリは、審査員……」
「そうなんだ。ボクも受賞したいな」
「……ノンベール帽子賞、あげる……」
どうやら、親戚だけの身内の賞だったみたいだ。
「焼き上がるまで〜、お茶にしましょ〜」
「ボク、ホットミルクがいい。ぬるめのヤツ」
「……ブラック、で……」
ブラックは、コーヒーのコトだよ。
砂糖やミルクを入れないコーヒーのコトをブラックっていうんだよね。
とっても苦い大人の味だ。ボクは苦手だよ。
アリは大人ぶって、ブラックを注文したんだよ。
♪〜今夜の夜食はサブレだよ〜 美味しく焼けるかお楽しみ〜♪
クレアさんが即興で歌いながら、カップにミルクを注いでる。
今夜の夜食って、夜が重なってるから微妙だよね。
今日の夜食とか、今晩の夜食とか。今夜のおやつ、夜更けのおやつみたいな言い回しのほうが良い気がする。
まぁ、楽しんでるところに水を差すのは、野暮だけども。
「魔法で、チン」
……ポフン……
クレアさんは、ミルクを魔法で温めたよ。
グルメ派のパパさんと違って、効率派だね。
ボクのカップは肉球のマーク入り。もちろん、お気に入り。
アリのカップはハートマークだよ。アリって名前も入ってる。
クレアさんのカップは、湯のみだ。魚偏の漢字が沢山書いてある。
アリとクレアさんのカップには、インスタントコーヒーを1匙。
アリには砂糖もたっぷり入れてるよ。
「は〜い。飲み物できました〜」
「ありがとう」
ボクは、カップを受け取ったよ。
ボクはネコだけれど器用だから、お皿をペロペロしなくてもカップを持って飲めるんだ。
「……ブラック、おいしい……」
どうみても、砂糖たっぷりのコーヒー牛乳なんだけれど、アリにとっては、ブラックらしい。
つっこまないのが大人のたしなみってヤツだね。
クレアさんも、普通に出してるし、身内だけの常識ってあるよね。
ところ変われば、ルールも変わる。そういうもんだ。
ボクは、ミルクを一口飲んで、本題に入るコトにした。
「ねぇ、アリ。小説のコトなんだけれど、ボクの話、聞いてくれる?」
「……メタ、さっきも、言ってた、ね……」
「ボク、いろいろ考えたんだけれど、ついたちめ、で、良いんじゃないかなって、思ったんだ」
「……どうして……?」
アリは、カップを両手で抱えながら、ボクの方を見つめている。
ボクの考えを、上手に伝えるコトが出来るだろうか。
「ボクらがいる、この世界は、勇者世界じゃなくて、アーステラなんだ。だから、勇者世界に全て合わせる必要ないんだよ」
「……ん……」
「光の中庭をアリと通った時、勇者世界には無い素敵な場所だって、思ったんだ。アーステラだからこその魅力なんだよ。
掃除や料理の魔法もそうだよ。そもそも、魔法は勇者世界には無いんだもん。一緒じゃない。アーステラは魔法が発達した。勇者世界は科学が発達した。同じになるわけがないよ。
アリの小説は、アーステラの小説だ。だから、勇者世界の小説に合わせる必要ないんだよ!」
「……ん〜……」
アリは、考え込んでる。
クレアさんは、何の話? って顔で、こっちを見てる。
会話に混ざりたそうな、混ざって良いのか戸惑ってる感じなのかな。
ボクは、あと一押しで、アリも納得する気がしたんだ。
「ボクね。掃除の魔法をみて、アリが独自の術式を追加することで、今までよりスゴく良くなるんだって知ったんだ。
小説だって、独自の言葉を使って、どんどん良くしちゃおうよ。
魔法と一緒で、アイデアと工夫だよ!」
これが、ボクの結論だ。
今夜の出来事が、ボクに教えてくれたんだ。
どう? 寄り道ばっかりで、早く本筋の小説書く話に戻せなんて、思ってなかった?
全部、意味があったんだ。伏線だったんだよ。
ボクは、その隠れた伏線に気づいたから、この結論にたどり着けたんだ。やったね!
経験に裏付けされた言葉は、説得力を増すんだよ。
アリだって、気づいたはずさ。
「……でも、レシピ、大切……」
え? レシピ? どゆこと?
アリは、何にひっかかってるの?
そもそも、アリの小説はレシピ通りなの?
「ねぇ、アリ。小説にレシピなんてあるの? ボク、初めて聞いたよ。
料理はさ、同じメニュー、同じ食材、同じ調理法、同じ味。そういうの、大切だからレシピがあるんだと思う。
でも、小説は料理とは違うんだよ。全部同じに作られたら、味気ないよ。面白くないよ。」
そうだよ、もしも、小説にレシピなんてあって、その通りに書けば良いなら、誰だって小説家になれる。
でも、実際は違うでしょ?
誰かと似てる話を書いたら、二番煎じって言われちゃう。
誰かの真似をしたら、盗作って罵られる。
誰にでもわかる、魅力的で新しいアイデアと工夫が必要なんだよ。
そんなの、レシピには載ってない。
作者が自分で考えるしか無いんだ。
「小説は、料理じゃなくて、魔法だと思うんだ。
新しいアイデアと工夫を沢山詰め込んだ、新作の魔法。
魔法の呪文のように、魔法陣に書かれた文字のように。沢山の言葉を紡いで、読み手に伝えるコトが出来る魔法。
小説は『言葉の魔法』なんだよ!」
ボクは間違ってないはず。
読者のみんなには、ボクの言ってる意味が伝わると信じてる。
だって、作者が一週間も悩んだ末のセリフだもん。
ただ、アリにボクの気持ちを伝えるのは難しいんだ。
とっても頑固なんだ。
小学校の頃、手相占いで、こんなに頑固な子は初めてって言われた作者なみに、頑固なんだよね……
「……最初、だから……」
アリは、カップに唇をつけながら、つぶやいた。
湯気が踊ってる。
アリは、ボクの方を見ていない。
あれ? ボク、アリを困らせちゃったのかな?
そのとき、我慢できなくなった、クレアさんが話に入って来たんだ。
「ね〜、何の話をしてるの〜? 小説って、な〜に?」
読んで下さり、有り難うございました。
今回は、メタくんが、小説論を語っちゃってますね!
読者に共感してもらえる言葉と演出探しで、時間かかっちゃいました。
メタのセリフで引くか、アリのセリフで引くか、って悩んだ末、クレアさんのセリフまで入れちゃいました。
どこで切るのが、一番効果的なのか、全く印象が変わるので悩みます。
次、ちゃんと書けるかなー?
少しでも面白かった、作者頑張れー、メタくん頑張れー、アリちゃん可愛い〜、と思っていただけたら、感想下さい。
ブックマークや評価がまだの人は、是非よろしくお願いします。
作者のモチベーションになります。
また、誤字脱字、文章の書き方が変だ等ありましたら、ご教示ください。
誤字報告して戴いて、とっても助かってます。有り難うございます。
これかも、よろしくお願いします。