21話 ハートのサブレ
前回のあらすじ:
ふるいの魔法の謎を解いた。
今回は、謎解きは無いです。
もう、真夜中の2時近い。
お昼にオムライスを食べた後、メイたちとお昼寝してなかったら、今頃はウトウトしてたかもしれない。
でも、これからサブレの型作りだ。
とっても楽しい時間だから、眠気だってどこか遠くで冒険中だよ。
アリは、いつもと同じハート型の型抜きを生地にポンポンとスタンプしてる。大きいのと小さいの、二種類あるんだよ。
クレアさんは、細い棒状にした生地をいくつも張り合わせて、長い太巻きみたいのを作ってる。
ちなみに、アーステラには、恵方巻きの丸かぶり文化は無いよ。
ボクは、動物の型抜きで色んな動物を作ったよ。
ネコ、ニワトリ、イヌ、ブタ。ヒツジ、ウシ、ウマ、キツネ、カメ、サル、ヘビ、サカナ…… そして、ドラゴン。
ネコだけは、後ろ足を潰して伸ばして、帽子のツバにしたよ。
もちろん、ボクがモデルだよ。うん、カッコいい!
みんな、作業に熱中してるから、会話が無くて、とっても静か。
クレアさんの、うんちくも今は無い……
もくもく…… もくもく……
アリは、型を抜いた余りの生地を集めて捏ねて、棒状に伸ばしてる。
二色とも合わせて混ぜちゃってるから、色がぐちゃぐちゃだ。
棒の側面を摘んで尖らせて、反対側を凹ませて……
これも、棒の先側から見ると、ハート型になってるんだね。
クレアさんは、色々作った太巻きと、アリのハート棒を、魔法でひやしてる。
冷やしてからスライスすると、綺麗に切れるんだって。
魔法で切るなら冷やさなくても綺麗に切れそうだけれど、レシピに書いてるから、冷やすそうだよ。
ボクは、今日一番の超大作に奮闘中。
生地で、アリを作ったんだ。
ボクは器用だから、とっても可愛く出来たよ。
アリに、小さいハートの型抜きを借りて、胸の場所をハートにくりぬいて、クリーム色のハートを埋め込んだ。
ボクがモデルの方も、胸のハートを変えてみたよ。
アリとボクは、おそろいだ。
余った端切れの生地を集めて、最後は何を作ろうかな?
今日、散々だった化物クレアさんにしよう。
クレアさんは、太巻きをスライスしてる。
魔法を使うと、あっという間に綺麗に出来ちゃうんだよね。
断面の絵柄は、様々だ。
縞模様や市松模様。星や六芒星の魔法陣。蝶結びのリボン。
バラやユリの花は、凝ってるなぁ。
小さな花柄は、カレンのオムライスに似てる。つまりカレンのパンツ柄?
それに気づいちゃったら、縞模様がパパさんのパンツで、リボンはママさんのに見えてきた。
スゴく残念な想像だよ……
この中に、クレアさんのパンツの柄があるかもなんて、疑いたく無かったよ!
アリは、包丁でハートの棒を切ってるよ。
幅をしっかり計って、一刀ずつ刃を入れている。
真剣そのものなんだけれど、ナナメになっちゃって、全部サイズが揃ってない。
クレアさんがゆで卵のスライス器を出してきた。
お台所の便利グッズだね。
いくら魔法があったって、この世界の全員が空間魔法で切断なんて高等な技が使える訳じゃないんだ。
一般家庭では、魔法は本当に些細な補助レベル。
だから、道具はやっぱり必要なんだよ。
ハートの棒をスライス器に収まるサイズにカットして、セット。
レバーをおろすと、サクッと12枚に切り分けられた。
アリは、等しく揃った幅にご満悦の様子。
サクサクと、全部、切りそろえちゃった。
どうしても端っこだけは幅が揃わないので、最初に包丁で切っていた分と合わせて、失敗グループ行きだ。
たぶん、行き先はボクの胃袋だね。
クレアさんが、ドライフルーツを細かくした粒を、ワンポイントに飾りだした。
宝石みたいで、キラキラしている。
「どう〜? 素敵でしょ〜」
「スゴいよ、クレアさん。とっても高級感があるよ。ボクもやりたい!」
頭に髪留め、首にネックレス、指には指輪。
アリをゴージャスに飾るんだ。
「……クレア、それ、レシピと、違う……」
「あら〜、またそんなコト言う〜」
アリにとって、料理のレシピは重要だもんね。
アリからしたら、クレアさんがルール違反だ。
ところが、クレアさんは、ドライフルーツのかけらを、アリの作ったハートの真ん中に、ポンって置いたんだ。
「な、なんてコト、クレアさんしちゃうの?」
ほら、アリも、表情ではわからないけれど、機嫌悪くなっちゃうよ。
ボク、知らないよ……
「アリさま〜。これは、核ですよ〜。やっぱりハートには、核があった方が良いですよ〜」
アリは、ドライフルーツの載ったハートの生地を見つめてる。
「勇者世界には無かった〜、アーステラの新しいレシピです〜」
「……ん、レシピなら、仕方ない……」
アリは、ドライフルーツのかけらの入ったお椀を受け取って、ハートにかけらを1粒ずつ、置いてる。
相当、気に入ったみたいだよ。全部にするつもりだね。
「クレアさん、採用おめでとう! ボク、ハラハラしちゃったよ」
「今回は〜、自信があったからね〜」
ボクも、アリとボクの生地のハートの真ん中に、ドライフルーツを1粒置いた。
あとは、調理台に沢山並べられたサブレの生地を焼くだけだ。
仲良しのボクとアリ、化物のクレアさんは、それぞれにあげよう。
動物型は、カレンとメイと、里の子たちに配るんだ。
星や六芒星の柄は、掃除の魔法陣に似ている。
バラやユリや花柄は、光の中庭っぽい。
沢山のハートは、心を持たないアリの心。
今日の色んなコトを思い出させる。
最初は、アリの小説から始まって……
あれれ、ボク、なんか閃いたかも。
うん、そうだよ。そういうコトだよ!
「ねぇ、アリ。ボク、小説のコトで、気づいちゃったんだ!」
「……ん、なに……?」
読んでくださり有り難うございました。
サブレを楽しく作るだけの回でしたが、最後に、メタくん、何やら気づいたみたいです?
やっと、アリちゃんの小説の話が!
次回、どんな話になるのか、お楽しみに♪
まだ、冒頭しか書けてないんですけどね……
問題解答者様のイラストを1枚描きました。
作者のツイッター(@narorurs)にて、公開しています。
是非、ご覧になって下さい。
そして、参加すれば良かったなーって思っていただければ、って思います。
もう一枚、描かないと!
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