2話 アーステラの本と栞
前回のあらすじ
あさおきた。
あさごはんをたべた。
やくそうをとった。
ばんごはんをたべた。
よるねた。
1話で切らずに2話を読みに来てくれてありがとうございます。
「何コレ?」
「……小説、だよ?」
「へ、へぇ〜 コレ、小説なんだ。小説ってこういうのを言うんだ……」
「……先生…って、よんで……」
「はい?」
ボクの名前は、メタ。
魔女帽子のてっぺんにネコの顔。首もとに赤いリボンと鈴。前足とシッポもある。
ボクは猫なのか帽子なのか、猫帽子? この世界でも不思議生物なんだ。
言葉も話せるし、文字だって読める。これでも結構、賢いんだよ。
「アリは……小説家に成りました……
メタはアリのことを……アリキタ先生と呼んで下さい……」
ボクと話してる女の子は、アリ。
肩にかかるくらいでボサボサのおかっぱな黒髪に、感情の読み取れない整った顔はお人形さんみたいなんだけど、大きな黒縁メガネは似合ってるのかなぁ? 黒いローブから下ろし立てのようなえんじ色のブーツが生えている。背丈は120シンチあるらしい。
11歳くらいに見えるけれど、実は……
「もしかして、コレ、アリが書いたの?
ホントに小説なの?
色んな意味でビックリだよ!」
「……ん、処女作にして、大傑作です……」
深い森の奥。小高い丘に聳えたつ大きな塔は、賢者の塔。春先の木漏れ日の差す、まだ午前中。
入り口の石段に座ったアリの膝に広げた本を、アリの頭の上から見てたんだけど、驚いてフワッと石段に降りて、隣から覗き込んじゃった。
「最近ずっと書斎に籠ってたのは、コレを書いてたんだ?」
「ううん。読んでた。ずっと小説を読みあさってたの……」
「釣りとかピクニックとか、全部断ってたのはソレでかぁ。そんなに小説が面白かったの?」
「面白い? わかんない……から、読んでた。」
「そっか。小説って面白くないんだね。だから、この世界には無いんだよ。」
ボクらの居るこの世界は、アーステラって言うんだ。
そして、アーステラには、小説が無い。
なんで小説が無いんだろうね。ボクにも分からないよ。
ボクが小説の存在を知ってるのは、不思議生物だからだよ。
ボクは、10年以上前に、アリが使った召喚魔道具の失敗でこの世界に来ちゃったんだ。
だから、他の世界の知識もあるんだ。小説だって知ってるんだよ。
それはそうと、小説が無い世界なんて、娯楽が少ないつまらない世界じゃないかって?
うーん。どうだろう?
アーステラには、魔法があるし、神様もいるよ。ダンジョンもあるしモンスターも居るし。
現実で冒険が沢山できるから、フィクションは必要ないのかも知れない。
娯楽だらけの世界だね!
それなのに、アリは小説を読んでたんだって。
「ねぇ、アリ。小説なんてドコで見つけたの? この世界で見たこと無かったんだけど…」
「お母さんの本に、勇者の栞が挟んであった……」
「あ、良く見たらこの本、勇者の本じゃん! 勝手に持ち出していいの?」
「問題無い。お母さんが生まれ変わるまで、預かる約束だから……」
「うわー、汚しちゃダメだよ、アリ。」
「大丈夫、すでに結構汚れてる。お母さん、いつも冒険で持ち歩いてたって……」
確かに表紙とか、よく見ると汚いかもしれない。
ページをめくると、剣と盾をモチーフにしたデザイン画の青い金属製のカッコいい栞が挟んであった。少し淡く光ってるよ。
実は、アリのお母さんは、とっても有名な転生勇者だったんだ。
何度もアーステラと勇者の世界とで生まれ変わっているんだって。なんかスゴいよね。チートだよね!
もう、亡くなってから40年以上経つんだけど、まだこっちの世界に戻ってないみたい。
勇者世界を満喫してるのかな?
もしかすると、ボク達のこの小説も読んでたりしてね。
みてますかー? コメントと評価してねー!
えっと、それで、アーステラでは、紙や本はとっても貴重なんだ。
アーステラの本と勇者世界の本は似てるようで別物かもしれない。
本は基本的にダンジョンで宝箱から手に入れたりするんだよ。
だから、魔法使いが魔道書にするのが一般的な使い方らしい。
同じくダンジョン等で手に入る『栞』ってアイテムがあるんだけれど、これを本のページに挟むと、栞に記憶されている文字や絵など様々なモノが表示される。
魔法の呪文だったり、料理のレシピだったり。アーステラの歴史。生物、植物、モンスターについて。神様や精霊のコトが記された栞も存在している。
それらは、とても高価に取引されて、コレクションしてる貴族も多いらしい。
本にはページ数があって、栞を一度に挟める数が本によって様々なんだ。
ページが多い本は、魔法の呪文の栞を沢山挟めるので、魔法使いなら手に入れたい一品。
と、そこで、アリは勇者の書を持ってる。
勇者の書は、アーティファクトって言われてて、この世界に一冊しか無い貴重な本なんだ。
数えたコトは無いけれど、ページ数が無限なんだって。つまり栞を挟み放題。
他のアーティファクトな本は、神の書、精霊の書、賢者の書、冒険者の書、魔の書などが存在するらしい。
そしてこの勇者の書には、勇者の栞が挟まってるんだ。
その勇者の栞に記憶されているのは、勇者世界の本なんだって。
全てなのかどうなのかわからないけれど、とにかく膨大な量の本が詰まってる。
つまり、アリはそこから小説を見つけて読んでいたんだね。なるほど納得!
爽やかな風がイタズラをして、本のページがめくれる。
先ほどの、アリの書いたという小説のページを開いた。
あ、指でおさえてたんだ。だからこのページが開いたんだね。
アリは本に目を落とし、次にボクの方をみて言った。
「ねぇ、メタ。アリの小説……面白かったでしょ?」
ねぇ、みんな。ボクはどう答えたらいいんだろう?
読んでくれてありがとうございます。
少しでも興味が出たとか、ちょっとだけ面白かったとか、微妙に気になるとか、応援してみようかな? なんて思ったり思わなかったりしたら、ブックマークやコメントしてください。
とっても励みになります。
アリのお母さんの生まれ変わりかもって人も、是非、コメントしてください。
また、初めての小説作品なので、句読点の位置や、改行など、よくわからずに読みやすくなれーって程度でしてます。
誤字などもあるかもしれません。
ぜひ、指摘してください。
良い作品にしていきたいです。
よろしくお願いします。
書くのに5時間かかった。
他の作家さん達はどのくらいのペースで書いてるのか気になる……
り