18話 大泥棒と賢者の石
前回のあらすじ:
イラストが可愛かった。
だんだんと、空想魔法小説になりつつありますね……
ボクらは、厨房に戻ってきた。まだ、真夜中だよ。
ボクは夜って、ワクワクしちゃうんだけれど、キミはどう?
特別な時間って気がしない?
アリは、ブランケットと勇者の本を作業台の横の椅子に置いて、クレアさんに作業服とエプロンを着せられてる。
ブランケットは、まだちょっと粉っぽい。あとでお洗濯行きだね。ブランケットくん、洗濯地獄行き御愁傷様……
クレアさんは、巫女服の袖をタスキでたくし上げて、割烹着を羽織ってる。お料理の臨戦態勢だね。
ボクも、帽子部分が汚れないように作ってもらった、作業着を着たよ。手袋もはめて、準備万端。
ボクもアリもクレアさんも、お揃いの三角巾をしたので、チームみたいだ。
アリは、とっても似合ってる。
可愛すぎて、どんな感じか、表現しずらいよ。
例えるならば、キミの大好きなお嫁さんが三角巾をつけてる姿を想像してね。
しかも、そのお嫁さんは、二次元の嫁に限るよ!
どう? おわかりいただけただろうか。
ボクは、忍者の頭巾みたいにかっこ良く被ってみたんだけれど……
「なにそれ〜。メタちゃん、面白い〜」
「……メタ、泥棒、みたい……」
大失敗だった。
アリが、お嫁さんなのに、ボクは、泥棒猫。とほほだよ……
クレアさんの笑いが落ち着いたところで、直してもらった。
「はい、これでイイ感じよ〜」
「ありがとう、クレアさん。泥棒から忍者にジョブチェンジだよ!
だけど、アリは、なんで、泥棒になってるの?!」
「……大泥棒、姫の、心、盗む……」
せっかくのお嫁さんが、泥棒に転職しちゃった。
どんだけ家庭が火の車なのさ……
あと、クレアさんは「私が姫?」とか思わなくていいよ!
着替えが終わったので、クレアさんは、収納魔法の魔法陣から食材を出して、調理台に並べてる。
小麦粉、バター、砂糖、玉子、バニラエッセンス、レモネの実、ドライフルーツ、カカオパウダー、ミルク。
結構な量になった。
「収納魔法って、便利だよね。ボク、羨ましいよ」
「あら〜、メタちゃんは、ドロシーがあげたポーチがお気に入りだったんじゃ〜?」
「こないだ、釣りに行った時、エサを入れっぱなしにしちゃってて、腐って臭いが大変なコトになったんだ」
「……メタの、臭い、の……」
「洗っても、洗っても落ちなくて、クレアさん、何とか出来る?」
3年前に、クレアさんの娘のドロシーが、肉球柄のポーチを作ってくれたんだ。
ポーチの中を広くして重さも感じなくさせる効果の魔法を付与してある、マジックポーチなんだ。
色々入れられるし軽いし、しかも、アリとお揃いだったから、ボク、とってもお気に入りだったんだけれど……
マジックポーチは、収納魔法と違って、空間を広げてるだけで、中の時間は止まらないんだ。
だから、中味が腐っちゃったんだよ。大失敗だよ!
ちなみに、武器や道具等のアイテムに魔法効果を付与するコトを、エンチャントっていうんだよ。覚えておいてね! あ、知ってたの? キミ、詳しいね……
空間魔法のエンチャントは、当時14歳のドロシーにはとっても難しく、クレアさんに教わりながらだったらしい。
「そうね〜。腐ったポーチじゃ、娘もガッカリしちゃうものね〜」
「腐ってないよ! 臭いだけだよ。ただ、お弁当入れると、大惨事になるんだよ!」
「……ケイトの、料理、レベル……」
「それは、何とかしなくちゃだわね〜」
「とっても助かるよ。ありがとう」
ボクは、大切なポーチが臭くなくなる展望を得て、ホッとした。
「それじゃ〜、早速、生地作りから〜」
「おー!」「……おー……」
「と、思ったんだけれど〜、ふるいが見つからないのよね〜」
ずこー
「……サーチ、した……?」
サーチは、探し物に便利な魔法だよ。
「厨房では、ひっかからないの〜」
「誰か、持ってっちゃって返してないのかも、だね」
「全く、メタちゃんってば、返さないとダメよ〜」
「えー! ボクが犯人なの?」
「……ぬー、泥棒は、アリ、なの……」
大泥棒は、ふるいなんて盗まないと思うんだけれど……
「ふるい、しないとダメなの?」
「……レシピに、ある……」
「ふるいにかけるとね〜、空気を沢山含んで、ふわふわサクサクになるのよ〜」
「サクサクは重要だね。こういう時こそ、魔法で出来ないの?
それこそ、材料を魔法でポンってお菓子にしちゃうとか」
「……魔法で、作ると、味気、ない……」
「そうなのよ〜、作業の簡略化には便利なんだけれど、手間を省くとイマイチなのよ〜」
なるほど、パパさんのコーヒーみたいなモノなのかな?
魔法って万能なようで、そうでもないのかもね。
機械で握った寿司と、職人さんの握った寿司が、似てても別次元みたいな感じ?
「時空魔法で、ふるいの細かい編み目を再現するのは大変だし〜、創造魔法で、ふるいを作るなんて、やりたくないわ〜」
「……クレアは、既存の、創造魔法、だけ……魔法陣、無いと、無理……」
どうやら、創造魔法ってのは、格段に難しいみたいだ。
創造魔法は、何も無いところから、物質を作り出す魔法。
無から有を生み出すのだから、神の領域かもしれない。
「アリは、創造魔法を使えるの?」
「……ん。……賢者の石、作った。一週間、寝込んだ……」
「もしかして、私が子供の頃〜、アリさまが一週間寝込んだのって、それ〜? てことは、あの、キラキラ石が〜」
どうやら、アリは、神の領域に達していたようだ……
「どうして、作ったの? 何か、目的があったの?」
「……作って、みたかった……」
ああ、そういうもんだよね。
山があったから、登っちゃう。みたいな人、いるよね。
「いま、どこに有るの? ボクも見てみたい!」
「あら〜? メタちゃん、もしかして、賢者の石が欲しいの〜?」
「ボクの胸の鈴、鳴らないから、賢者の石のブローチに変えたら、カッコいいと思わない?」
キミがもし、賢者の石を持ってたら、どうする?
錬金術で、金塊を沢山作って、大金持ちになる?
それとも、死んだ人を生き返らせる?
大好きな人と両思いになれるなんてコトも、出来るかも知れないよ!
でも、ボクみたいに、オシャレに使うのが一番だと思うんだ。
ボクは、魔法が使えないしね。
「ブローチなんかにして、見せびらかしちゃったら〜、泥棒や殺し屋に狙われちゃうわよ〜」
「そそそ、それは、ゴメンだね……やっぱ、いらないや。見るだけにしよう」
「……石、じいじに、渡した……泥棒、しに行く……」
「あら〜、一番安全なところに、行っちゃったのね〜」
「もしかして、クレアさんも、賢者の石を狙ってたの?」
「ふふふ、もう少し若返れたら素敵でしょ〜」
「17歳だ。クレアさん、17歳になる気でしょ!」
「あらら? 私は元々、17歳よ〜」
クレアさんの魂胆は、見え見えだよね。
女の人は、みんな若くなりたいのかな?
キミもそうだったりする?
カレンは、早く大きくなりたいって言ってたけれどね。
「……若返り、魔法なら、石、いらない……スズ、使える、よ……」
「え〜! お母さんが? 早速、教わらなくっちゃ〜」
里の女の子は、15歳になると都の学園に留学する。
戻って来るのは、大体、18歳で卒業してから、冒険者などを数年して、結婚した頃になる。
これからは、里で17歳の女学生を見かけたら、クレアさん達を疑おう。
ボクは、ダマされないぞ! みんなも、気をつけてね……
最後まで読んで下さり有り難うございます。
ささっと、夜食を食べちゃうつもりだったのに〜
でも、アリが可愛くなったので、良しとしてくださいw
普通、マジックポーチやマジックバッグのエンチャントは、子供には出来ません。
大人でも、出来る人は、相当限られていることでしょう。
つまり、里の人たちがおかしいのですが、メタは里以外よく知らないので、この世界の普通だと勘違いしているかもしれません。
もちろん、賢者の石の創造なんて、以ての外です。
アーステラでも、賢者の石は、希少素材と数万人規模の命をかけた魔力が必要なハズです。
アリは、大賢者さまの魔力を根こそぎ使って、完成させたようです。
次回は、まだ、お菓子作りと魔法のお話になりそうです。
ほんと、物語の展開がゆっくりにどんどんなっていますが、頑張ってついてきてください!
アリの小説の完成が、どんどん遠のく……
しばらくは、この世界の魔法を堪能していただければ嬉しいです。
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