16話 貯蔵庫のオバケ
前回のあらすじ:
魔法で床掃除した。
あとがきで作者が魔法を語ってたw
今回は、書いてたら普段よりちょっと長くなちゃいました。
その分、楽しめると思います。
「ところで〜、アリさまとメタちゃんは、こんな夜中に何で厨房に来たの〜? 夜更かしさん?」
「……ん、朝飯前、だから、ね……」
「あのね、ボクら、ちょっぴり頑張っちゃってるんだ。それで休憩がてら、何かお夜食をもらえたらと思ってね」
「それじゃ、貯蔵庫に行って、何か選びましょ〜」
貯蔵庫は地下にある。
色んな食べ物が、保管されてるんだよ。
厨房の奥に、地下への階段があって、そこから降りて行くんだ。
クレアさんを先頭に、ボクとアリも階段を降りて行った。
「アリ、足もと注意して、転ばないようにね」
「……メタ、心配性……」
スルッ トスンッ ギュッ
「うわっ! ほら、言ったそばから……」
「……メタが、声、かけるから……」
アリは、軽く尻餅ついちゃった。
慌ててボクのシッポをつかんてきたから、アリのお尻より痛かったかも?
ちょうど、中間地点の踊り場だったので、甚大な被害にならずに助かった。よかったぁ……
クレアさんが、アリに手を差し伸べる。
「ほら〜、アリさま〜。お手て、繋ぎましょ〜」
「ぬぅ……ふわふわ、していい?……」
「横着は、ダメよ〜」
アリは手に持っていた本を、クレアさんに預けて、右手をつないだ。
左手は、ボクのシッポだ。
ボク、シッポより手をつなぎたかったよ。
少しひんやりした、石づくりの階段は、塔の魔法で、優しく光ってる。
降りた先が、楽しいアトラクションになっていそうな期待感さえするよ。
まぁ、到着した場所は、食べ物の貯蔵庫なんだけどね……
「二人は、何が食べたいのぁ〜? おうどんさんとか〜、おじやさんとか〜、温かいのがいい?」
「……美味しい、の……」
「ボクはね、甘いのがいいと思うんだ。考えごとする時は、甘いものがオススメらしいんだ!」
貯蔵庫には、フロアいっぱいに棚が並び、沢山の食べ物がしまってある。
食材のままのモノ。あとは焼くだけの加工品。そして、完成品。
実はこの貯蔵庫は、塔の地下というだけあって、不思議空間なんだよ。
生きている人や動物、命あるモノ以外は、時間が止まっちゃうんだ。
だから、食材を置いておくと、ずっと新鮮なまま。
ホカホカのスープなんかは、冷めない、腐らない。
いつでも美味しくいただけるんだ。
どう? 羨ましい?
こないだ、作者が冷蔵庫で、10年前の調味料を発見したらしいけれど、そこも不思議空間なのかなー?
ボクらは手分けして、自分の好きなモノを、物色することにした。
アリは、どんどん奥の方に進んで行く。
ボクは、アリについてこうっと。
ストーカーじゃないよ。仲良しなダケだよ!
ボクらは、奥の方で、離れた一角に集められた棚を発見した。
何故か、ココだけ、隔離されてるような……
マガマガした気配すら漂って来る。そんな雰囲気が……
「ねぇ、アリ、ココが気になるの?」
「……ん、ただならぬ、何かを、感じる……」
やっぱ、アリも感じるんだ。スゴいぞ、ココは。
心が無くても、感じるなんて。やっぱり何かあるのかな?
「あ〜、アリさま、メタちゃん、その棚はダメよ〜。ケイトさんの料理ばっかりなのよ〜」
「「!!!」」
アリは、後ずさった。逃げ足は、速かった。
ケイトさんは、クレアさんのお母さんのスズさんの妹。
つまり、クレアさんの叔母さんにあたる。
そして、ケイトさんは、究極の飯マズなんだ。
何故、料理があんなになってしまうのか、不思議生物なボクからしても、不思議で仕方ないんだ。
一度口にいれたら、数日間は、大変なコトになっちゃうレベル。
そんな料理が、この一帯の棚にところ狭しと、置かれてる。
だから、他と隔離してるんだね。
ただ、ケイトさんの薬は、スゴい効果があるとかで、大人気なんだ。
料理も、分量を間違わずに口に入れれば、一日中疲れずに仕事が出来るとか、食べてから数日で、魔力量が大幅に伸びるとか、そんな噂があって、毎年チャレンジャーが注文するんだとか……
都で開かれた大食い選手権に、莫大な優勝賞金がかけられてたんだけど、決勝戦の料理がケイトさんの料理で、全員ノックアウトされたとか……
結局、賞金は、ケイトさんの総取り。そういうルールらしい。
そして、神殿と孤児院に全額寄付したコトから、神の料理人って称号をもらったとか。
今では、神の料理を食べると、天国が見えるとまで言われてるよ……
絶対に、死にかけてるよね!
ボクも、慌ててアリの後を追ったよ。
さわらぬ神に祟り無し。そんな気分だね。
ボクだって、命は惜しいもん。
あれ? そうか!
心臓や核が本物じゃなくたって、魔法が使えなくたって、命はあるし、生きてもいる。
そうじゃなかったら、この貯蔵庫に入った瞬間に、時間が止まって動けないはずだもん。
そうだよ、そうなんだよ!
ボクもアリも、命があるんだ。生きてるんだ。
昨日まで、疑問に思わなかったコトだけど、さっきのアリの過去の所為で、すっごくモヤモヤになってた。
アリは、お人形さんみたいに可愛いけれど、人形じゃない。
ボクは、半分帽子だけど、帽子じゃなくて、ネコだよ!
コレだけは、絶対に大切なコトだから、見失わないようにしなくっちゃ!
「アリー、アリー!」
ボクは何だか嬉しくて、アリの腕に抱きついて、スリスリしちゃった。
「……どうした、の……寒い?」
「ううん、ちょっと、ポカポカな気分」
「……お熱……?」
アリは、ボクのおでこをさわってくれる。
うん。ボクはアリにお熱だね!
全て解決した訳じゃないけれど、一つずつ、解決していくぞ。
ボクは決意をあらたにしたんだ。
「そういえば、クレアさんは、いつから化物になったの?」
アリにそっと、聞いてみた。
「……小麦粉、被ると、おばけ、なる……」
なっ! なんだって!?
サラッと、スゴい真実を聞いちゃったよ。
月を見ると狼になる人狼とか、水をかぶると女の子になっちゃう男の子とか、聞いたことある。
クレアさんは、ソレなのか!
そうだ。この貯蔵庫で化けの皮をはいでやれば、時間が止まって動けなくなるかもしれない。
今がチャンスだ! こんな機会は、次にいつ来るかわかんない。
クレアさんは、丁度いいことに、小麦粉の棚で、物色している。
よーし、小麦粉をぶっかけてやる!
そーっと、そーっと。後ろから近づいて……
「えーい!」 ドンっ!
ボクは、クレアさんの背中に体当たりをしたんだ。
正義の鉄槌だ!
クレアさんは、ビックリして手に持ってた小麦粉をぶちまけて、頭から被った。
「やったー! 化物の正体、あばいたり!!」
粉を被ったクレアさんが、ボクのコトを睨んでる。
今までで、一番怖い、化物に変身していた……
「メ〜タ〜ちゃ〜ん……」
「ぼ、ボクはアリを守るんだ。ば、化物なんかに負けないぞ!」
強気の言葉を絞り出すけれど、怖くて仕方ない。
なんで、クレアさんは化物になっても動けるの?
「お前も化物にしてやる〜!」
ギャーーー……
クレアさんの手から、白い粉が飛んで来た。
コレ、小麦粉だ。
は、はくしょん! くしょん!
ボクは、小麦粉を頭から被っちゃって、ついでに、くしゃみもしちゃって、隙だらけ……
大ピンチ! ボク、化物になっちゃうの?
あはははは……
化物のクレアさんが、大笑いし始めた。
「メタちゃん、白猫オバケになっちゃった〜」
「えええ! ボク、もうオバケになっちゃったの?」
あははははは……
クレアさんは、勝利の高笑いだろうか。
く、悔しい。無念だよ……
「ごめんね〜、メタちゃん。私が化物っての、アレは冗談よ。嘘なの〜」
「な、なんだってー!」
「メタちゃんが、あまりにも信じちゃうもんだから、ついついね〜」
そういえば……
アリも言ってた。クレアさんは嘘が上手になったって……
「だ、だまされた……」
あはははははは……
クレアさんは、また笑ってる。
よくよく見てみると、粉だらけのクレアさんは、とっても変だった。
ぷぷっ、ぷぷぷっ。 あは、あはははは……
ボクもついに、クレアさんにつられて、笑い出しちゃった。
笑い出すと、それがまたおかしくて、笑いがとまらなくなる。
ボクとクレアさんは、お互いを見合って、笑いっぱなし……
「……ぬー……」
ボクらが、あまりにも笑ってるから、アリがこっちをみてる?
べ、べつに、アリを無視した訳じゃないんだけれど……
そしたらね、アリってば、自分で小麦粉の袋を持ち上げて、ザバーって被っちゃったんだ。
それから、両手を前に突き出して……
「……おなか、空いた、ぞ〜……食べちゃう、ぞ〜……」
ボクとクレアさんは、面白くって、おかしくって、一緒にアリに抱きついて、大笑いした。
アリは、何となく、満足そうだった。
最後まで読んで下さり有り難うございます。
前回の話を書き始めるまで、貯蔵庫に行くなんて、全く考えてませんでしたw
なんで、書けたんだろう?
やっぱり、誰かに作者は書かされてるんだと思います。
今のところ、登場人物がみんな親戚なので、出てきてない人の名前が沢山ありますが、メタが指摘してるように、読者さんが混乱しちゃいそうだと心配ですw
また、登場する時は、わかりやすいように、メタが頑張って紹介すると思うので、頭の片隅になげちゃってください。
オバケが歌にあわせて踊るのは、マイケルジャクソンのスリラーを思い出す人が多いと思いますが、作者には、ムテキングだったりします。
タツノコアニメは、大好きなのです。
だから、メタ発言も大好きなんですw
好きな作品の話をすると、ネタバレになりそうなので、あぶない、あぶない……
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とってもはげみになります。
作者の好きなアニメやドラマが何か予想もお待ちしてます。
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