15話 たんこぶと魔法の手
前回のあらすじ:
アリの考えてたコトを検証した。
メタは、もっとアリについて知ろうとしている。
なぜか、14話より先に書き上げていた、15話です。
よろしくお願いします。
「さてっと、床をささっとキレイにしなくちゃよね〜!」
厨房に散乱してた鍋などを片付けたクレアさんは、そう言って、呪文を唱えた。
「床ピカお掃除、きれいきれい」
ふわわわわーん
床に光る小さな魔法陣が二つ浮き出た。青と黄色。
魔法陣は動きだし、床の粉を吸い始めた。
通り過ぎては、壁などの障害物にあたる度に、跳ね返って、進んでる。通った場所だけ、綺麗になってるんだ。
面白いよ。
ボクは、ついつい、魔法陣を追いかけたくて、たまらなくなった。
しかし、クレアさんの正体は化物だ。
魔法陣に浮かれてる場合じゃないぞ!
いったい何時から化物だったんだろう……
生まれた時から? 冒険者をしてた頃? それとも最近??
アリのモノローグにも、クレアさんのコトがあれだけ出てきたのに、化物だった痕跡は無かった。
子供のドロシーやミカ、姪のカレンとメイにも、化物の痕跡は無い。
つまり、遺伝しないか最近のコトなんだと、推測できる。
どう? ボクのこの名探偵ぶり。ネコなのに賢さが溢れ出ちゃったね。えっへん♪
「……クレア、二つしか、出せないの?」
「掃除の魔法陣って、ゴミを吸うのと、自走するのと、ゴミの出口で分別したりと、いろんな術式を組み合わせてるから、高度でしょ〜? 無理すれば、10個くらい出せるけれど、魔力使うしね〜」
アーステラの人たちは、みんな霊核を持っているから、基本魔法は使える。
手から水を出したり、指から火を熾したり。風で換気したりと、生活魔法のレベルだけどね。
4歳から5歳くらいで、みんな、魔法に目覚めるんだ。
メイはとても早かったみたいで、3歳で使えるようになってたよ。
ただ、魔法といっても、魔法陣を組んで、高度なコトをするのは、誰でもって訳にはいかない。
それなりに、勉強して理論を学んだり、訓練しないとダメらしいよ。
塔番をする巫女さん達は、みんな、勇者の子孫だから、魔法は得意なんだ。
魔法が使えないボクからみても、クレアさんの魔法は。結構スゴいと思うんだけど、アリには、不満なのかなぁ?
「……こうするの。クレア、手をつないで……」
「はいは〜い」
アリは、ボクを抱えてた左手を放して、クレアさんの右手とつないだ。
「「床ピカお掃除、きれいきれい」」
二人でお掃除の呪文を唱えると、白く光る魔法陣が、一つだけ出現した。
アリは普段、あまり魔法を使わない。
でもね、魔法にとっても詳しいんだ。
いつも誰かに教えるように、手をつないで、一緒に唱えてたんだ。
アリはスゴい魔法を使うから、魔法が得意なんだと思ってた。
アリは、魔力が無いから、魔法が使えないって知った。
よくよく、行動を見て今までのコトも思い出してみると……
誰かに触れていれば、その人の魔力を利用して、魔法を唱えるコトが出来るみたいだ。
だから、ボクが魔法をお願いしても、いっつも、ダメって断れてたんだね。
アリの魔法については、これで解決だ!
アリ達が唱えた白い魔法陣は、動きながら壁にぶつかると、青と黄色の二つの魔法陣になった。
青の魔法陣がまた壁にぶつかると、赤と緑の魔法陣に増えた。
黄色の魔法陣も同様に。
次々に魔法陣が壁にぶつかって、どんどんカラフルな光る魔法陣が増えていく。
いくつかの魔法陣が入り口扉から出て行っちゃった。
1階のフロア全体を掃除しそう……
厨房はすでに、床が魔法陣の光で埋め尽くされてる。
色んな色の光のダンス。とっても綺麗なんだ。
ボクの手もアリの顔も、カラフルな光を反射して、キラキラしていた。
「へぇ〜、分裂の術式を反射時に組み込むのねぇ〜。魔法陣一つ分の魔力で済むし、良いわね〜、コレ」
「……魔法は、工夫、大切……」
クレアさんは、魔法陣を、一つ捕まえて、術式を確認している。
何ソレ、ボクも捕まえたい!
なんたって、ボクはネコだからね。動くものは、追いかけて捕まえるのが大好きさ。
捕まえたら、アリにプレゼントしよう。
ボクは、勢い良く、ピンク色した魔法陣に狙いを定めて、前足を突き出した。違った、前足じゃなくて、手だよ!
狩りは、けっこう得意だよ。器用だからね。
運動神経だって、バツグンだもん。
捕まえた! って、思ったら、魔法陣が全て、スーって消えちゃった。時間切れ?
ボクはそのまま、ピカピカになった床を滑って、調理台の角に頭をぶつけちゃった。
たんこぶが2段になっちゃった。すごい痛い。
あははははは……
クレアさんが、大笑いしてるよ。
「ボク、かっこ悪いや。ちぇっ……」
「……メタ……」
アリが直ぐさま、ボクに近寄ってきて、たんこぶを撫でた。
やっぱり、アリは優しいね。ボク、嬉しいな。
「アリ、ありがとう。ボクの心配してくれるんだね。痛いけど、大丈夫だよ」
ぷに、ぷに、ぷに。
アリは、たんこぶを何度も押すよ。
ぷに、ぷに、ぷに。
「アリ。ボク、痛いんだけど……」
「……ん。……」
ぷに、ぷに、ぷに。
あ、これ、アリってば、たんこぶさわるの楽しんでるね。
肉球をさわるのも、好きだもんね。
でもボク、我慢できないよ。痛いんだもん。
クレアさんは、まだ笑ってる……
「ねぇ、アリ、痛いよ!」
「……ん、治す……」
そう言って、アリは、呪文を唱えた。
「いたいの、いたいの、飛んでいけ」
勇者世界では、泣いている子も、あっという間に泣き止む、痛み止めの呪文だね。
なんとなく、痛みが治まった気がする。
さすが、アリ。さすが、勇者世界の呪文だ。
ところでいったい、どこに痛みは飛んで行くんだろう。
ボクを笑ったクレアさんにでも、飛んでったらいいと思うな。
「アリ、ありがとう。もう治ったよ」
アリはまた、ボクのたんこぶを、なでてる。
やっぱ、痛いや。飛んでかなかったかも。ちょっぴり涙目。
でも、アリが触れてると、痛みが減った気がするんだ。
嬉しいな。
アリは魔法が使えないけれど、アリの手は、魔法の手なのかも知れないね。
最後まで読んで下さり有り難うございました。
今回は、ちょっとだけ、アーステラの魔法について、わかる回です。
作者にとって魔法っていうと、子供の頃に観たアニメやドラマの印象があります。
サリーちゃんやメグちゃん。サマンサ、ベルバラ。
色んな魔法使いがいました。
その頃の魔法は、いろんなコトが出来たんです。
魔法が本当に魔法だった時代です。
ドラクエやFF等のRPGゲームで、魔法が戦闘用になりました。
どちらも1からプレイしてました。ドラクエ2の主人公の名前をアリにしてましたw
セーラームーン等、女の子アニメも、戦う作品があふれて、不思議な魔法が世の中から消えてきました。
ムーンステッキ持ってますw
いつの間にか、魔法は、呪文で戦うのがメインになってしまった気がします。
個人的には、鋼の錬金術士の等価交換が、魔法を不思議からリアルにした気がします。
そして、今、沢山の人が、魔法の設定を色々と試行錯誤して、自分の作品に発表してる時代だと思います。
いくつもの作品を読んでみると、ある程度の共通認識が出来上がっていて、アレンジしたり、+αの工夫をしたりと、とっても面白いです。
自分は、もっともっと、魔法を身近にしたいなと思ってます。
科学技術が発達して、スマホとかある意味魔法端末だと思うのです。
だから、魔法技術も発達した世界なら、魔法はもっと不思議なコトができちゃう魔法になってるんだと、そう願ってます。
そして、いつになるかまだ先ですが、化学物理の発展した現実世界と、魔法のある世界との、あっと驚く違いを発表出来ればと思ってます。
設定はあるんですよ。
ちょっと熱く語っちゃいましたが、アリとメタのお話は、これからも続きます。
次回は、また、楽しい回になると思います。
もう、話の展開を速いテンポにするとか、自分には無理って思えてきたので、ゆっくり進行で、楽しさメインに切り替えようと思いましたw
アリの小説の1話が完成するのも、気長に待って下さい。
少しでも面白いと思ったら、ブックマークや評価、感想コメントをしてください。
とってもはげみになります。
魔法について、どう思ってるのかなんてことも、コメントしてくれると嬉しいです。
よろしくお願いします。
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