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てっきり一日中振り回されると思ったのに……

「もうダメ……私、もう動けないよ……」


 間もなく夕方に差し掛かろうかという午後3時半前。

 一通りショッピングモール内を回り終え、喫茶店に入った私と下之城さん。

 私は席に座るやいなや、机に顔を突っ伏して嘆いていた。

 まさか友達とショッピングモールを回るだけでこんなに体力が要るなんて……。


「ふふっ。なごちゃん、素の喋り方に戻ってますわよ?」

「はっ!!」

「大丈夫ですわよ。周りに知り合いらしい人は誰もいないみたいだから」

「……あ、あなたの聞き間違いじゃない? 私は今日一日、ずっとこの喋り方よ? 下之城さん、すぐに耳鼻科に行くことをお勧めするわ」

「ふふっ。相変わらずなごちゃんは可愛いですわね」

「……うるさい」


 洋服屋での試着大会を終えた後も、下之城さんの勢いが衰えることはなく、一日中あちらこちらに振り回されっ放し……。

 オシャレなカフェでランチを食べたり、雑貨屋さんを見て回ったり、クレープを食べたり等々……人生初のザ・今時の女子高生ライフを経験したものの……、どうやらずっとインドアで育ってきた人間にこのスケジュールは少々詰め込み過ぎだったようで、今現在、私は無残にも体力的にも精神的にも限界を迎えていた。

 世の中のリア充と呼ばれる女子高生達って、いつもこんな休日の過ごし方をしてるの?

 だとしたら、私には一生“リア充女子高生”という肩書は無縁だ……。


 とはいえ、当初計画してた栞ちゃん達からのアドバイス無しでも会話が止まることもなかったし、気まずい空気になったりもしなかった……これは、一応今のところ今日のお出かけは成功ってことでいいんじゃないかな!?

 いやぁ~私、もしかして誰の手も借りずに“休日に友達とお出かけ”をマスターしちゃった!?

 ……まぁ、ほとんど下之城さんのおかげなんだけどね。


「今回のところは下之城さん、様様ね」

「あら、ワタクシのこと褒めてくださるんですの? 嬉しいですわ!」

「……聞き間違いよ」


 思っていたことが声に出てしまっていたらしい。

 恥ずかしさから、思わず苦しい言い訳を残し、誤魔化すように目の前にあるコーヒーに手を伸ばす。しかし……


「――苦いっ!!」


……見栄を張って下之城さんと同じブラックコーヒーを頼んだのが間違いだった。


「あらあら、なごちゃん苦い物は苦手でしたの?――ほら、こちらにミルクと砂糖がありますわよ」

「……ありがと」


 私は涙目になりながら手渡されたミルクと砂糖をたっぷり入れて口の中に含ませ、


「ふう……」


ようやく口の中の苦味を消し去ることに成功したせいか、自分でも気づかないうちに頬が緩んでいたらしく。


「ふふっ。また素に戻ってますわ。相変わらずなごちゃんは可愛らしいですわね」

「う、うるさい!」


 下之城さんにからかわれ、私は顔を隠すためそっぽを向いた。

 と、そんなやりとりをしているうちに時間はあっという間に過ぎていき……


「あら、結構ここに居たみたいね」


 ふと時計を見ると、時刻は既に17時半過ぎ。ここに来てから既に2時間が経過していた。

 今日はやけに時間が経つの早いなぁ。こんなにあっという間に感じるのなんて、奏太君以外といる時じゃ初めてかも……。

と、自分の時間感覚に少し驚きながら、


「このあとはどうするつもりなの?」


私は下之城さんに尋ねた。

 元々下之城さんが『ワタクシ、夜は何時まででも大丈夫ですのよ。なんだったらお泊りでも――』なんて言ってたから、お母さんにも『今日はもしかしたら遅くなるかも』って言ってあるし、何より今日はこんなに下之城さんに振り回されんだ。私と違って彼女はまだ元気みたいだし、どうせなら最後まで付き合おう!

 まぁ、最後の最後まで何するかは下之城さんに丸投げになっちゃったけど……いいよね?

そう思って尋ねたつもりだったのに……下之城さんから返ってきた返答は全く予想していないものだった。


「うーん…。もう17時半ですの…。やっぱりなごちゃんと一緒に居ると時間があっという間ですわ。――でも、もう割といい時間ですし…残念ですけど、今日はここまでと致しましょうか?」

「……え?」


その言葉に私は思わず呆気にとられてしまった。



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