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俺には平穏な夏休みなんてないんですね……

 お騒がせの勉強合宿も無事終わり、当初の予定から1週間遅れの夏休みを迎えた今日この頃。


『3回の表、ノーアウトランナー1塁2塁。一打逆転のチャンスで――』


 テレビでは40℃に迫ろうかという酷暑の中、自分と同じ高校生達が懸命に白球を追いかけている。そんな中、


「いやぁ~このクソ暑い中よくやるよな~」


 クーラーのガンガン効いたリビングで●リ●リ君を食べて、ゴロゴロしながらその映像を眺める俺。

 いくら甲子園が日本の夏の風物詩になっているとはいえ、最早40℃越えが当たり前になりつつあるこのご時世。わざわざ炎天下の中野球しなくても、せめてドームでやるとかナイタ―でやるとかいろいろ方法はあるだろうに……。

 高野連とやらもなかなかのドSだよなぁ。いや、むしろ自らの意思でこの場を目指している高校球児達がドMなのか?――などとどうでもいいことを考えながらぼんやりテレビ画面を眺めていると、


「お兄ちゃん、私美奈ちゃんと遊びに行ってくるけど、夕飯までには帰ってくるから」


 先程からバタバタと何やら忙しそうに準備していた可愛い可愛い我が妹がリビングへと入ってきた。

 白いワンピースに薄手のカーディガンを重ね着した清楚系なファッションに身を包み、


「? どうかした?」


それをまじまじと見つめる俺の視線に不思議そうに小首を傾げる栞。

 うむ、見た目は勿論のこと、普段と違う服装といい、目をぱちくりさせながら首を傾げる仕草といい……


「ああ、すまん。ちょっとお前のあまりの可愛さに見惚れちまってな」

「なっ!?」


 このすぐに顔を赤くして恥じらう姿といい……、やはり俺の妹は最高に可愛いな!! 異論は認めない!!


「も、もう! またからかって……。そ、そういうセリフはなごみちゃんに言ってあげなよ!!」


 続いて満足気に頷く俺にぷくっと頬を膨らませてむくれる栞……。くっ、これもまた可愛い!!

 さすが我が妹。全ての仕草が“可愛い”へと繋がってしまうとは……、末恐ろしい限りだぜ!! 思わず俺は、自分の妹のあまりの可愛さにごくりと唾を飲み込んだ。


「ていうか、お兄ちゃん。今日はなごみちゃんとデートしなくていいの?」

「ん? ああ、デートは明後日だからな。今日は完全オフだ! 何なら今日は栞とデートしてもいいんだぞ?」


 俺は妹の疑問に親指を立てつつ、爽やかスマイルで返して見せてやった。


「はいはい。ていうか、何で完全オフでそんなに嬉しそうなの……?」


 そんな兄に若干呆れ気味の妹。やれやれ、素っ気ない態度取っちゃって。照れ屋さんなんだからっ!


「ていうか、デートがなくてもせっかくの夏休みなんだし、お兄ちゃんも友達と遊びに行ってくればいいのに。ほら、大田先輩とかと」

「いやいや、友達と遊ぶのなんていつでもできるだろ? いいか、栞? 高校2年生の夏休みってのは一生に一度きりなんだ。どうせなら夏休みにしかできないことを優先してやらなきゃだろ? ――というわけで、俺は一人クーラーの効いた部屋でダラダラとした時間を過ごすことにするから」

「いや、それこそいつでもできるじゃん! ――お兄ちゃん、なんだか私、お兄ちゃんの将来が不安になってきたよ……」


 ふむ、俺の将来か……。試しにちょっと想像してみよう。

 とりあえず大学には進学するだろ? そして卒業後は働かずにニートまたは主夫……というのが理想だが、現実は厳しいというのは重々承知。まぁ、残念ながらどこか適当な会社に就職という形になるのだろう。(ホワイト企業希望)

 その後、このままなごみと結婚して子供は男の子と女の子一人ずつ。どちらも素直で良い子に育ってくれて、特に女の子の方はパパ大好きっ子で……。

 うん、働かなきゃいけないのはかなり憂鬱だが、まぁ悪くはない。


「妹よ、心配する必要はなさそうだ。今シュミレーションしたら、俺の将来は普通に幸せそうだったぞ」

「いや、その妙な自信も含めて不安なんだけど……」


と、心配症なところもラブリーな妹とそんなやり取りをしていると、


ブーブーブー


 テーブルの上に置きっぱなしにしてあった俺のスマホがラインの受信を知らせてきた。


「ん? なごみか陽平か、それともア●ゾンの通知、どれだ?」

「選択肢その3つだけなんだ!? 仮にも高校生のスマホだよね!?」


 まぁ、明後日はデートだし、多分なごみからだろう。そう思いながらスマホを手に取り、画面を確認してみると、送信者は予想通り。

 そういえば、まだ明後日のデートどこに行くか決めてなかったな。とりあえずこのクソ暑い中、屋外は却下だな――などと考えながら送られてきたメッセージの内容を確認してみると……


『奏太君……、たすけて……』


「なっ! はぁ!? 嘘だろ!?」


 その予想外の内容に、俺は思わず声を張り上げ飛び起きた。

 まさか、また誘拐事件とか!?

 脳裏にはつい2カ月程前に起きた、新町達による拉致事件の記憶がよみがえってきた。

 あの時はなごみの誘拐は虚言で、実際に拉致られたのは俺だけだったが、今回はもしかして……


「お、お兄ちゃん? どうしたの? 顔色悪いよ?」

「悪い、栞! ちょっと行ってくるから戸締りしといてくれ!!」


 俺は居ても立ってもいられず、栞に一方的に告げると、なごみに電話を掛けながら慌てて家の外へと飛び出した。




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