泡のようなもの
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金子の一言に身の毛がよだった。
明確な怒りと殺意を向けられ、また狂気に満ちたその眼光に思わず1歩後ろに引く。
冬月も額に汗を垂らし、険しい表情を浮かべているのことからやはりこの状況が悪いと思っているのだろう。
「私たち家族の幸せを邪魔しないで!」
そう言った後、金子の後ろに何かが浮かび上がってきた。
それは実態が定まってなく、どこか消えそうにも見えるほど透けている泡のようなもので、虚空を浮遊している。
得体の知れないそれを見た俺は酷い恐怖を感じた。
お化けのようなそれらとは別のもののそれは俺たちの心を惑わすのに十分な存在だった。
それでもこの場で逃げ出す訳には行かない。
気を強く持ち、なんとか奮い立たせる。
冬月はというと顔面蒼白で目には涙が浮かび上がっている。
あの泡のようなものに酷く恐怖しているようだ。
1歩後退した時に上手く足を動かせなかったのかその場に座り込んでしまう。
「あ……あ……」
「冬月、しっかりしろ!」
冬月に声をかけるも恐怖からか声も上手く出せないようだ。
そのようなことをしていると泡のようなものは俺たち目掛けて飛びかかってきた。
触れるのはよくないと判断し、冬月を抱き抱えてなんとか泡のようなものの攻撃を避ける。
「……何なんだこいつ」
泡のようなものを凝視しつつ俺はゆっくりと立ち上がり、腰に付けてる警棒を手に持つ。
これが通用するのか分からないが無抵抗なまま何かされる訳にもいかない。
再び飛びかかってくるのを警棒を振って止められないか試みる。
手応えこそ感じず、ただ虚空に警棒を振っているような感覚だが泡のようなものは飛ばされたような動作で俺から離れていく。
「……」
金子の目は相変わらず狂気に満ちたものであり、現状に不満を持っているようにも感じる。
泡のようなものにこの場を任せて自分はどこかに行くということも出来るはずなのだが何故かどこにも行こうとしない。
それだけ俺たちを殺すことに執着しているのだろうか。
そんなことを考えているとまたしても泡のようなものが接近してくる。
何度振り払っても攻撃が止むことはなく、俺の体力だけが消耗されていく。
こんなことを続けていては埒が明かない。
俺が保管している九十九島で貰った『魔刃』でもあれば簡単に斬れるとは思うが無いものを強請っても仕方ない。
とにかく今の状態でこの得体の知れない泡のようなものをどうするかを考えなければならない。
一体どうすれば……




