犯人
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雑木林の中を走り、フードの人物が向かったであろうあの場所へと向かう。
俺が今追いつかなくてもそこには冬月がいるため、問題はないだろう。
何かあったとしても冬月なら何とかしてくれるはずだ。
そのようなことを考えているうちに冬月と対峙しているフードの人物を視界に捉えた。
「追い詰めたぞ。今回は仕留めれなかった用だな」
フードの人物にそう言うとゆっくりと冬月の隣へ歩み寄る。
そして、フードで隠されていた顔を確認すると、やはり金子白愛であった。
その表情は病院で見たあの笑顔とはかけ離れた怒りと悔しさの混ざった表情だった。
「やはり、金子さん。あなたが犯人だったんですね」
「……っ。なんでここだと……」
「昨日もこの場所に逃げてたからいざって時の緊急回避手段でもあるんだろうと思ったが、まさか本当にこっちまで逃げてくれるとはな」
金子は俺たちを睨むだけで何も話そうとしない。
俺は冬月の顔を見て、頷くのを確認しゆっくりと口を開いた。
「さて、詳しい話を聞かせてもらおうか。どのように犯行を行ったのか」
「……なんで私だと分かったんですか」
「まず最初に話をした時に言ったように態度が変わったこと。次に仙道について調べていた際にでてきた商店街に出入りしていたこと。そして社のところで見つけた母親の似顔絵だ」
似顔絵という言葉に金子は明らかな動揺を見せた。
やはりあの似顔絵には何かしらかのものがあったのだ。
そして、冬月がカバンからビニール袋を取り出したのを確認して俺は口を開いた。
「それに社の中に隠していた6つの箱と魔術によって隠された儀式のために描かれた五芒星を」
そう言った途端、金子の表情が一変する。
焦りや動揺に加え、恐怖や絶望といったものの混ざった表情に変わった。
彼女は思いもしなかっただろう。
俺たちが魔術について知っていることを。
「な、なんで魔術のことを……それに何故それを……」
「あなたが知っているんだ。他にも知ってる人がいてもおかしくない。それに初めにここまで逃げたのが間違いだったんですよ」
「か、返して! それがないと息子に……旦那に会えない!」
「やはりそういうためのものだったんですね……」
「あぁ、そのようだな。悪いが諦めてもらう。失ったものにいつまでもしがみついてては前に進めない」
「そんなの知らない! 私にとって家族は何よりも大切だった……だから……」
金子の目からは大粒の涙が溢れだしてきた。
そして、涙を流すその目は狂気の色へと変貌していく。
「だから……邪魔をするなら死んで」




