隠すもの
社の戸を開くとそこには6つの木箱が入っていた。
木箱には紙が巻かれており、赤い紐で括られている。
ただ1つを除いて。
「先輩、社の中にこんなものが……」
「木箱か……一つだけ何もされてないのがあるな」
「そうですね。これが最後の1人を指してるのでしょうか?」
「どうなんだろうな。だが今の状況だとそう思うに他ないだろうな」
俺は何もされていない木箱を手に取り、その蓋を開けてみると中には何も入っていない。
冬月はというと紙にくるまった木箱を開けようとするも開く様子がない。
「どうしたんだ? そんなに固く結ばれてるんか?」
「い、いえ。普通の結び方だと思うんですけど……どうも解けなくて……」
「どれ、貸してみろ」
そう言って冬月から紙にくるまった木箱を受け取り、紐を解こうとするも解けることは無い。
一体どういうことなんだ?
残りの4つも試してみるも決して中を見ることは出来なかった。
「……こんなに厳重にしてるなんて、何が入ってるんですかね」
「さぁな。というよりかはあまり考えたくもないといった方が正しいか」
「どういうことですか?」
「ここまでのことを考えれば恐らく儀式を実行するのだろう。そこで必要になるのが中身の入ったこの木箱。そのために魔術でも使ってこの辺りを見られないようにたんだろう」
逃げる方向に関しては恐らく上手く巻けたらという浅はかな考えだろう。
ここを見つけられたのも恐らく偶然だろう。
この場所を知らなければ仙道を疑い続け、捜査が無駄になっていただろう。
「でも先輩、魔術を使える人なんてそんなにいるんですかね……? 私たちはその、少ししか知らないにしてもこれすらも分かるものなんですかね?」
「魔術に関しては何とも言えない。分からない事しか書かれてないからな。今回の犯人も魔術を使えるんだろう。心してかからないと不味いことになるぞ」
「……はい、九十九島で先輩危なかったですもんね」
「得体の知れない力だからこそ十分に警戒しないといけないからな。他に気になることあるか?」
俺がそう聞くと冬月は再び辺りを見渡した。
するとふと、上を見上げ何かを考え始めた。
そして、何か思いついたような表情を浮かべる。
「先輩、上から見た時あの広場見えなかったじゃないですか。もしかしたら同じようなことをこの辺りにもしてたりするのでは……?」
「……なるほど。それは思いつかなかったな。だがどこに何を隠すと言うんだ?」
「そ、それは……」
隠すにしても何を隠すか。
ただこの辺りにあるものといえば社と木々くらいだ。
しばらくの間、俺と冬月はその場で頭を抱えていた。




