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闇夜に蠢く挑戦状  作者: 大和ラカ
第四章 悲嘆に蠢く狂願
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雑木林

 会議を終えた後俺たちは病室へと向かい、2人で院長の部屋へとやってきた。


「申し訳ありません。我々の力不足で患者さんの命を守れず」


「……とりあえず座りなさい」


 深々と頭を下げる俺たちに院長は優しい声でそう促した。

 言われた通り、院長に向かい合うように座るとゆっくりと口を開いた。


「今回の件は確かに我々としてもショックなものだった。だがそれ以上にたった一日で犯人確保の1歩手前まで行ったことを評価したい。5人も被害者が出ていることも確かだ、是非とも頼むよ」


「……はい、我々一同犯人確保に全力を尽くします」


 そう言って立ち上がると再び深く頭を下げた。

 院長が優しい方でよかったことに安心しつつも今日の捜査のことを考える。

 昨夜の一件でいくつか分かったこととやるべき事は見えてきた。


「冬月、今日は別行動にするぞ。そっちは昨日行った商店街で聞き込み、俺は犯人が逃亡して行った林の方を調べる」


「分かりました。先輩、お気をつけて下さい」


 そう言うと冬月は直ぐにこの場を後にした。

 俺も早いこと動く方がいいと思い、裏の雑木林へと向かった。

 雑木林は草木が生い茂り、誰の管理も行き届いてないようだ。

 昨晩の今だ、まだ足跡があるかもしれない。

 ペンライトで照らしてなんとか足跡を探してみるもなかなか上手くいかない。


「……そんなに簡単に見つからないか」


 それでもしばらく足跡がないか探しながら歩いていると昨日見た鳥居のある広場へと辿り着いた。


「……ここは昨日見失った場所か」


 昨日からこの場所には違和感を感じていた。

 改めて見ると鳥居は広場の北側に立っており、その奥にはけもの道のような物が続いていた。

 ……一体、この奥には何があるのか。

 俺はけもの道を進むように足を踏み入れた。


 鳥のさえずりも虫の音も聞こえない静寂な林のけもの道を歩き進んでいく。

 妙な静かさに少し不気味さまで覚えてくる。

 しばらく進んでいくと再び広い場所へと辿り着いた。


 目の前には古びた小さな社が立っており、その存在感にハッと息を飲んだ。

 こんな小さな社だというのにただならぬ気配、それでいてこの静寂な場所と調和してここにあることに違和感を感じさせないものだ。


「でもなぜこんな所に社があるんだ……?」


 1番疑問に思うのはそこだ。

 昔からあるにしては小綺麗で誰かが手入れをしているようにも見える。

 それに、ここは何の為の場所なのだろうか?

 違和感こそあるのだがそれすら考えさせない姿に俺は困惑する。


 不思議な場所という言葉でまとめるのが正しいくらいこの場所は不可解だ。

 周囲には何かないかと目を配らせていると、木に紙のような何かが貼り付けられているのを見つけた。

 近づいて見てみるとそこには、子どもが描いたであろう女の人の絵が貼り付けられていた。

 また、覚えたてなのか上手に書けていない字で『おかあさん、いつもありがとう』と書かれていた。

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