怪しい会話
今回も冬月美夢目線のお話です。
仙道を追って行くと人で賑わって活気のある商店街、魚川商店街へと入っていくのを確認した。
ただの買い物かもしれないが、おかしな行動を取らないとも限らない。
初めの方は普通にスーパーで買い物をし、これといっておかしな点は見つからない。
その後、尾行を続けるも怪しい行動を見せることは無い。
初日から都合よく何かを掴めるはずもない。
少し肩を落とし、成果を得られないかもと考えていると事は起きた。
近くの本屋で立ち読みしながら観察していたところ、向かいの衣服店の店員と立ち話をしているのを耳にした。
最初は普通の衣類に関するやり取りだったのだが、話の内容が変わった。
「ところで仙道さん。あの件はどうなの?」
「えぇ、順調です。随分楽しみにしてるみたいですし」
「そう、それならよかったわ。これであの方も喜ぶことよ」
「そうですね。では私はこの辺で」
そう言うと仙道は元来た商店街の道を戻って行った。
一体あの件とは何なのだろうか?
それにあの方って?
尾行を忘れて考えており、気がつくと仙道の姿を見失っていた。
その後、新田の車に戻り、少し調べ事をしたかったため警察署まで送ってもらった。
時刻はすでに20時を回っており、夜番の人以外は既に帰っているはずだ。
警察署に戻り、自分のデスクに着くと隣の机にまだカバンが置かれていることに気がついた。
「先輩、まだ帰ってないのかな」
いるとすれば資料室だろう。
調べ物をしたいと言っていたため、そこにいる可能性が高い。
私も調べ物をするために戻ってきたため、資料室へと向かった。
資料室に入ると操作資料を机に広げ、難しい顔で資料を読む隼の姿が目に入った。
一生懸命仕事に取り組む彼の姿はとてもかっこよくてつい見蕩れてしまう。
だが今はそれどころでは無い。
ゆっくりと隼の近くまで歩いていき、声をかけた。
「先輩、お疲れ様です」
「ん? あぁ、冬月か。こんな時間にどうした?」
「調べたいことがあったもので、先輩こそまだいたんですか」
「あぁ、例の4人について色々調べてたんだが行き詰まっててな」
もう一度机に目を落とすとそこには魚川総合病院に関する資料や過去の新聞などひろがっており、自分が尾行していた間ずっと調べていたことを物語っている。
「そうでした。さっきまで仙道の尾行していたんですけど気になることを言ってるのを耳にしました」
「……一体何を言ってたんだ?」
「はい、魚川商店街の衣類店での店員との会話なんですけど……」
さっき聞いたことを隼に伝えた。
言い終えると隼は難しい顔をして視線を落とした。
そして、少しの沈黙の後に隼は私の方を見て真剣な表情を見せる。
「冬月、今から少し仮眠を取っておけ。3時間後に出るぞ」
「え、出るってまさか……」
「あぁ、魚川総合病院に向かう」
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