闇の真相
校舎内を進んで行くと、がれきに埋もれて通れない場所があったり、扉がゆがんで入れない部屋などが多く、二階へ上がることにした。
階段を上がり一階と二階の踊り場に着いたとき、誰かの話し声が聞こえてきた。
また、その声がこちらに近づいてきていることもわかる。
ふとあたりを見ると、教室が開いていることに気が付く。
隠れながら声のする方を見ると男が二人話しているのを見つける。
こちらに向かってはいるが少々薄暗いため教室に入ってもばれることはないと思った。
「冬月、野島、二人はここで待機。俺と莉沙で教室に入って背後を取る。状況を読んでそっちからも攻撃してくれ」
「了解です」
小声で簡単に作戦を話し、俺と莉沙は男たちにばれないようこっそりと教室に入る。
聞き耳を立てていると男たちの会話が聞こえてきた。
「天条さんはいつものところにいるよ。儀式当日まで出てこないだろう」
「そうか、それよりもあいつらは見つかったのか?」
「いや、まだだと。みんな必死に探しているらしい。俺たちも行くか」
「そうだな、暇だし行くか」
そのような会話しつつ教室を通り過ぎ、今攻めればまずばれないと判断し、
「今だ!」と小声で言うと、男たちの一人に刀を振るう。
莉沙はハンマーを振りかぶり殴りかかる。
攻撃の直前に男たちはこちらに気が付いたが反応が遅れる。
鞘から抜いた瞬間水平に一太刀入れるが、踏み込みが甘くそこまでのダメージを入れられなかった。
莉沙の方は俺より遅れての攻撃だったため、男のとっさの動きで当てることができなかった。
「痛って、なんだてめぇら!」
男がとっさにふり返り、俺を見る。
「警察だ! 話を聞かせてもらおうか」と俺が言うと。
「ちっ、さっきの会話聞かれちまったのか。ならここで捕まえてあの方に謙譲してやる」
男がそういうと俺に対し殴りかかってくる。
男の動きを見切り半身になり攻撃をかわすと、その男に右下から切り上げの峰内を一撃入れる。
とてもきれいに腹部を打ち、男は後方に飛ばされ気を失う。
「な、なんだこいつ!」
もう一人の男が騒いでいると、再び莉沙のハンマーが襲い掛かってくる。
しかし、男はその攻撃をうまく避け、体勢を整える。
すると、男の後ろから冬月が現れ、突きを放つが男の胴をとらえることはできなかった。その後遅れて 野島が階段から駆け上ってくる。
「さらに湧きやがったなてめぇら!」
男の叫びを無視するように冬月がもう一度突きを放ち、男の溝をとらえる。
うめき声を上げながらその場に崩れ落ち気絶する。
「ふう、制圧完了です」
冬月は肩の力を抜くと男二人に手錠を付け、近くにある配管に固定させる。
「さて、話でも聞かせてもらいますか」といい、男二人を起こす。
「ってぇ、どうして俺らがこんな目に」
男がつぶやくと、「さて、天条ってやつはどこにいるんだ」と問い詰める。
「知らないな、お前らに言う義理はねえ」
「おとなしく白状しなさい!」
「いくら問い詰められようも何も言わねぇよ」
冬月が問い詰めるも、男たちは黙ったままで何も話す気はないようだ。
あまり時間をかけても仕方ないと考え、男たちを放置したまま校内の散策に戻った。
しばらく今いている階を歩き回るもあるのはクラスの教室だけで、オカルト研究部の部室に値する教室は見当たらない。
特に何もないと考え、三階に行くことにした。
三階に着き、廊下を歩いているとき、ふと校庭の方に目をやった。
ここに来た時に見たあの石がⅤ字に並べられている。
よく見てみると薄らと石灰で引かれたであろう白い線も見える。
この石の並びを見たとき、俺は儀式に使用するときの陣なのではないかと思った。
また、例の化け物が遠くを飛んでいるのも目についた。
「先輩、校庭に石が並べられてますよ。なんですかね、あれは」
「あ、あぁ。何だろうな」
恐らく儀式に関係するものなんだろうな。
あまり言えることではない。
一般人の莉沙や野島がいているのだ、変に不安を与えてはいけない。
三人にはひとまず黙っておく。
「それにあの化け物が飛んでますね」
「あぁ、しばらくここに来ることはないだろう。できれば戦わないほうがいいしな」
外を見終わったのち、再び探索へと戻っていく。
部屋をすべて確認したが、これといって目ぼしいものは見当たらなかった。
「この階にも特に何もないな」
「そうみたいだな。妹も見つからないし…どこにいるんだ」
野島の悔しそうな表情を見、少し焦りを感じる。
ただ、教団の人があまりいないことにも不信感を抱く。
「あまり時間がないかもしれません。まだいけてない一階の奥に行ってみましょう」
冬月の提案に乗り、さっきとは別の階段から一階へと降りていく。
一階まで降り、少し探索していると、鍵がかかっている扉があることに気が付く。
よく考えてみると、ここがオカルト研究部の部室に値するところだ。
ふと聞き耳を立てると、すすり泣くような声や「お父さん……お母さん……」と読んでいる声が聞こえる。
これはもしや、行方不明事件で行方不明になった人たちなのではないかと思った。
「人の声……行方不明者がここで監禁されているのか……」
「てことはここに妹が……! 麻子、そこにいるのか!?」
野島が声を上げしばらくすると返事が聞こえてくる。
「お兄ちゃん……? お兄ちゃんいるの?」
「あぁ、そうだ、お兄ちゃんが来たぞ!」
「やはりそうだったか、野島さん行こうか。莉沙と冬月はそこで待機しててくれ。もしかしたら誰か来てしまうかもしれない」
莉沙と冬月は静かにうなずく。
しかし、ドアに手をかけると分かるが鍵がかかっているようで中に入ることができない。
「でも鍵がかかってるのか……」
こうなったら仕方ない……
腰の刀に手をかけ、その刹那刀を抜き右上に振り切り、跳ね返りをつけてドアをたたき切り見事にドアを粉砕させる。
中は薄暗いが何とか見え、本が並べられた棚や机が置かれている。
その部屋の隅に手足を縛られた人たちがいる。ざっと見たところ十四人だ。
よく見ると、その人たちは行方不明事件で行方不明になった人物であることがわかる。また、縛られている人の中に津村由香もいることが確認できる。
「……! 麻子!」
野島が声を上げると一人の女性に近づき抱きしめた。
「お兄ちゃん……怖かったよ……」
そうか、探していた妹なのだな。
見つかってよかった。
「さて、おーい、冬月。ちょっと手伝ってくれ」
冬月を呼び、二人で縛られている人たちの縄をほどいていく。
全員の縄をほどき終え、部屋の中を見渡していると一冊の本を見つける。
本のタイトルはこすれて読める状態ではなかったが、何となくだがこの本がオカ研に見せた本であるような気がした。
とりあえず、俺と冬月の目的は果たせた。
しかし、莉沙の友人の和田はどこにもいない。
また、儀式についても何も解決していない。
まだ終わってない、そんな気がする。
そのようなことを考えていると、廊下のほうから足音が聞こえてきた。
部屋越しに廊下の様子を見ると男が一人立っており、「なんだ、これは……!」と声を上げている。
そこにいた人物に見覚えはないが莉沙の様子が急変した。
「和田さん……!」
莉沙が声をかけ、この人物が和田なのだと認識する。
しかし、和田は莉沙の呼びかけを無視し教室の中を覗き込む。
「なんなんだよ、なんでお前ら邪魔をするんだよ!」
和田は教室の様子を見ながらつぶやき立ち尽くしている。
「この人たちは行方不明になった人たちですよ! 見つけたんですよ!」
「うるさい! 俺たちの邪魔をすんじゃない! もう少しで……もう少しで幸せになれるというのに……」
これはもう正気の沙汰じゃない。
冬月が横で拳銃を抜き、臨戦態勢を取る。
俺も刀に手をかける。
様子を見ていると、もう一人、階段から誰かが下りてくる。
「慌てることはないよ、和田君」
と、一人の男性が和田に声をかける。
その声はどこか紳士的だ。
その男は俺たちに向かって話し始める。
「初めまして、私は天条霧矢。当教団の教祖を務めています」
「ほう、あなたが天条か」
にらみを利かせながら天条を見るがそれを気にせず天条は話し続ける。
「我々はこの地にもう一度、われらが神を降臨させたいのです。それが私のあこがれる西前教祖の願いであり、われらの幸せなのです。あなた方も私たちとともに幸せを味わいませんか?」
天条が俺たちに対し勧誘を進める。
「あぁ、あの怪物か……一つ質問させてもらっていいか」
「ええ、いいでしょう。何でしょうか?」
「西宗吉という人物を知っているのか?」
「ええもちろん。この教団の前教祖であり私が最も尊敬する人物の一人です」
「その人は以前にこの地で儀式をしたという解釈であっているか?」
「その通りです。あの方はこの地でわれらが神を降臨させたのですから」
やはり……なのか。
本当にそんなことがありえるのか。
天条と対峙している俺の前にいる莉沙は何のことだという状況らしく、頭の上にはてな浮かべている。
「えっと、そういう宗教的なあれはちょっと……」
え、莉沙そこなの!?
儀式とかそっちのやばい方じゃなくて!?
「私も遠慮させてもらいます! ここであなたたちを逮捕します!」
冬月はにらみを利かせながら天条の誘いを断る。
「……そういう怪しい宗教はお母さんに止られていて」
俺も冬月もそうじゃないといった顔をして莉沙を見る。
「俺もその誘いには乗りません。あなた方をここでとらえます」
俺たちの回答に天条は残念そうな表情を浮かべ、
「それは残念です。では、せめてあなた方には生贄になっていただきましょう」
すると、壁の一部が崩落する。
そして、例のコウモリの化け物が姿を現す。
「ここで化け物が来るのか……冬月、一般人を守りつつ迎撃するぞ!」
「了解です、先輩!」
俺と冬月は化け物に対峙していると、莉沙は和田と対峙しているのを確認する。
「刑事さん方、俺も手を貸すよ」
と野島は拳を構えて化け物に対峙する。
「行きます!」
と冬月が声を上げると同時に腰に下げていた拳銃を抜き取り、瞬時に化け物めがけて打ち抜く。
化け物の一匹は後方へ飛翔したが、冬月は別のもう一匹に銃弾を放っていた。
狙撃された化け物は、頭と胴を撃ち抜かれ、異様な化け物と言えどその攻撃は耐えることなくもう動くことはなかった。
「一体撃破です!」
俺はすかさずもう一匹の化け物に向かって走り出し、抜刀すると同時に刀を振るう。
水平に斬りかかった斬撃は化け物の胴を捉えられなかったが、振り切った際に刀を跳ね返らせ化け物の胴を斜めに斬りつける。
少々入りが浅かったからか化け物はまだ倒れない。
「くっ、野島さん、お願いします……!」
化け物との距離感を詰めながら野島が駆け出す。
「あぁ、食らいやがれ!」
と声を上げ、側頭目掛けて上段蹴りを放つ。
しかし、掠っただけで有効打にはならなかった。
「クソ……なんであんたらはそんなにできるんだよ!」
野島がわめいている。
今度は化け物が野島目掛けて足の爪で切り裂こうとする。
近くにいた俺は瞬時に化け物の間に入り、刀で爪を受け止める。
「冬月! 撃て!」
「了解です!」
続けて銃弾を放つも化け物は俺を踏み台にして銃弾をかわす。
そこにすかさず化け物に接近し、左から刀を振りぬき胴体を斬りつける。
悲鳴のような声を上げるもまだ倒れる様子がない。
そしてそのまま俺に爪を向け襲い掛かってくる。
俺は持っていた刀で受け流そうとしたが化け物の力が強く、刀が和田の近くまで飛んで行ってします。
「くっ、しまった……!」
すかさず冬月は拳銃を化け物に撃ち放つ。
しかし、化け物はその銃弾を避けると野島目がけて飛んでいく。
野島が狙われていることを察したが、さっきの反動のせいで体勢を崩しており野島を庇いに行くことができなかった。
そして化け物は野島の左肩から爪で切り裂く。
「ぐあああ!」
野島は血しぶきとともに悲痛の声を上げ、後ずさりすると痛みで意識を失いその場に倒れてしまう。
「野島さん!」
俺は野島の方に駆け寄り無事を確認しに行く。
しかしそんなことお構いなく化け物は追い打ちをかけるよう野島に向かって追撃してくる。
これ以上野島に傷を負わせるわけにはいかないと野島を庇いにはいる。
その時、少し離れたところにいた冬月が化け物目がけて射撃する。
銃弾が化け物の胴を貫くとかすれた悲鳴のような声を上げ、地に落ちそのまま動かなくなる。
「はぁ、はぁ……やったのか……?」
「隼、早く刀取りに来なさい!」
莉沙の声が聞こえ、すかさずそっちに駆け出す。
莉沙は俺の貸した脇差を抜くと和田目がけて斬りかかる。
しかし、友人を斬ることに躊躇いがあるのか、刀は和田の体をとらえず空を切る。
「そんな攻撃当たんねぇ!」
と和田は声をあげ、莉沙に殴りかかる。
しかし和田の拳は届かず、莉沙は流れのまま組み付こうとする。
普段慣れていない行動だからか、和田をとらえることはできなかった。
「おっと、隙だらけだぞ!」
と和田が声をあげ、再度殴りかかるも莉沙はとっさに身をひるがえして回避する。
すると、俺の刀が莉沙と和田の近くに飛んでくる。
莉沙はぱっと俺のことを見ると状況を理解したらしく、素早く刀を拾おうとする。
和田も刀を奪おうと拾いに行くも、莉沙の方が早く拾うことができない。
「くそっ、この邪魔しやがってぇ!」
和田は莉沙の左肩を殴る。
しかし、莉沙にはあまり効いていない様子だ。
「そんなの痛くもないね! 隼、早く刀取りに来なさい!」
声を聞き莉沙の方へと駆けていく。
近くに来たことを確認した莉沙は刀を俺に渡した。
刀を受け取った俺は、鞘へとしまい、居合ができる体制を取った。
そして和田と再び対峙すると、
「さっきはよくも殴ったわね!」
と声を上げ、和田に対して脇差を振る。
「いい加減にしろよクソあまがぁ!」
叫びとともに莉沙を殴ろうとするも莉沙は半身になってよけその拳は空を切る。
こちらの様子を気にしたのか冬月も気にし、
「先輩、私も加勢します!」
「まて冬月! お前はそこで待機だ! 野島を見といてくれ!」
「……わかりました!」
冬月に指示したのち、和田と対峙し鞘にしまった刀に手をかける。
その刹那、地面をけり和田目がけて駆け出す。
そして刀を瞬時に抜き、和田の腹部を水平に一太刀入れる。
峰で攻撃をしたが痛烈な一撃を食らった和田は、衝撃で後ろに倒れて気を失う。
その一連の光景を一部始終見ていた天条は驚愕の表情を浮かべ膝をつき、
「なぜだ……なぜあの日のように邪魔が入るんだ! なぜ、我々の祈願を邪魔するのだ……!」
さっきまでの落ち着いた様子は一切なく、とても荒れている。
そののち、天条に手錠をかけ、手錠が足りなくなったので和田にはロープで腕を縛り二人を拘束する。
天条はずっと何かをぶつぶつ呟いているだけで、何も答えられる様子じゃない。
そして、戦闘で受けた傷を治療していると、気を失っていた和田が目を覚ます。
「がはっ、げほっ…」
意識が戻ったことを確認すると、俺は和田の前まで歩み寄り、
「さっきの化け物はあの2体ですべてか?」と問いかける。
しかし、和田は応える気がないようで黙秘している。
よく様子をうかがうと魂が抜けたように一点だけを見つめていた。
少ししたのち、和田が一言呟く。
「……すべてが……終わったのか……」
すると、莉沙が俺の隣までやってき、
「どうして私をここまで誘ったの?」と和田に質問した。
和田はやはり答える様子がなかった。
だが恐らく莉沙を誘ったのは、儀式の生贄にするためだと考えていたのだと思う。
そのようなやり取りをしていると、冬月が声をかけてきた。
「先輩! 野島さんが息を戻しました!」
「おっ、よかった。だが傷は深いだろう、まだ休ませておいてくれ」
「わかりました。妹さんが見ていますしおそらく大丈夫だと思います」
冬月はそう告げると野島のもとへ戻っていった。
「莉沙、この2人を見張っててくれ。野島さんを見てくる」
「わかった。任せておいて」
莉沙にこの場を任せ、俺も野島のもとへ行く。
「冬月、こっちは俺に任せて莉沙の方を頼む」
「はい、わかりました」
冬月がこの場を離れたのち俺を見た野島は、痛みで顔をゆがませながら
「もう……戦いは終わったのか……?」と聞いてくる。
「はい……俺たちは勝ちました……!」
「そうか……ほんとに済まない、何も役に立てなくて……」
「いいんですよ、野島さんには怪我を負わせてしまったのは我々の失態ですし……無事に生きててよかったです……! そして、すみません……」
「刑事さん……」
野島の隣で介護をしていた妹に対し、
「この度は我々の力不足により、お兄さんをこのような目に合わせてしまい、申し訳ありません」と深々と頭を下げる。
「いえ、刑事さんのせいじゃないです……むしろ刑事さんたちが来ていただけなければ、私は兄に再会できなかったかもしれませんし、私も無事でいられなかったかもしれません。ありがとうございました」
野島の妹も俺に対して頭を下げる。
「……俺からも礼を言わせてくれ……ありがとう、おかげで妹を救えた。全部刑事さんたちのおかげだ……」
野島は涙を流しながら俺に対して頭を下げるのだった。
その後、本部に連絡を取り応援を要請した。
町から少し離れたところに出てようやく電波がつながったのだ。
しばらくして応援が駆けつけ、教団員たちを連行し監禁されていた被害者たちも無事に家へと送り届けるのだった。
そして、野島との別れ際、妹とともに声をかけてきた。
「今回は本当にありがとう。子の恩は一生忘れない。またどこかで会えるのを楽しみにしてるよ」
二人はそう俺に告げると仲良さそうに帰っていくのであった。
行方不明になった人たち、また二十年前の変死事件、この二つの事件の裏には大きな闇が蠢いていたのだった。