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闇夜に蠢く挑戦状  作者: 大和ラカ
第四章 悲嘆に蠢く狂願
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金子白愛

 次の面談の準備をしつつ、さっきの話を少し考える。

 どうしても魔術の存在が脳裏にチラつく。

 少し覚悟を改め、金子白愛の面談を始めた。

 第一印象はとにかく笑顔であることだ。

 それでいて顔立ちも整っており、まるで作り物に思えるくらいだ。


「お時間頂きありがとうございます。まず今回の事件について何か心当たりのようなものはありませんか?」


 ここまではさっきと同じように聞く。

 笑顔を浮かべている金子は首を横に振る。


「いいえ、何も知りません。患者さんが次々亡くなっているのは物騒ですが、私は皆さんを笑顔にしないといけませんし笑顔を絶やすことないようにしないといけないと思っています」


 そのように言う金子の様子にどこか違和感を感じた。

 具体的には表面上の言葉のような薄さを感じた。


「そうですか。話を変えます。最近とても明るくなったと伺っているのですが何か理由があるのですか?」


「最近知人のおかげで毎日が凄い楽しくなったんですよ。面白いことを沢山聞かせていただけたりしまして」


 俺がそう聞くも動揺も困惑も見せずニコニコとした表情で淡々と話す。

 ただ、明確に何がどう楽しいかまでは話に出てこないが、とにかく楽しいということを永遠と話している。


「あの、金子さん。具体的に何をなさってるんでしょうか?」


 痺れを切らしたのか冬月が問いかけた。

 実際のところ俺も気になっていたため目線を金子に向けた。

 しかし、それを意に返さす様子もなくニコニコしたままだ。


「少し聞くのを変えます。金子さん、あなた半年前に事故で旦那さんと息子さんを亡くしてますよね? その知人のおかげで立ち直れたということでしょうか?」


 俺がそう問いかけたとき空気が少し変わった気がした。

 にこやかにしていた金子だったが急に真顔に変わり、フリーズした。

 かと思えば黙って涙が流れ始めた。


 急な事に慌ててしまうも、金子を宥め一先ず退室して貰うことにした。

 少し落ち着いたところで俺は深く溜息をついた。


「……どうしたんです?」


「いや、なに、妙に引っかかったんだ」


「まぁ話が通じない感じではありましたね」


「そこじゃなくて。事故の話をした途端、空気感が変わらなかったか?」


 少し考えてから冬月はそう言えばと呟いた。

 あの時、確かにどこか違う雰囲気を感じた。


「あんな反応をしているんだ。ショックを取り除けてないんだろ。それを隠すために無理やり笑顔を振りまいてる……とも考えられる」


「それが知人のおかげでってことでしょうか?」


「恐らくそうなる。だが楽しいばかりでどういったことをしているのかまでは話そうとしなかったのが不可解だ」


 おもむろに触れるなということなのだろうか?

 それとも知られたら不味い何かがあるのだろうか?

 疑問は増すばかりで糸口が見つけられない。

 そう考えていると冬月が深刻そうな表情を浮かべているのが目に入った。


「どうかしたのか?」


「い、いえ。ふと思ったのですが、さっきの異様な空気感、前にも感じたものに似てたような気がしたんですよ」


「前にも?」


「はい、ですけどいつだったかまでは……」


 うーんと腕を組んで考え込む冬月だが、どうも思い出せないようだ。

 俺は軽く鼻で笑い、冬月の肩を叩いた。


「何、金子のことはまた別の方法で調べるのでもいいだろう。時間はあまりかけられない、とにかく次の吉木からも話を聞いてから考えよう」


「そ、そうですね……あ、わ、私、飲み物買ってきます」


 そう言ってバタバタと部屋を出ていく冬月の表情はどこか赤みを帯びているように見えた。

 気のせいかもしれないがどこか慌てているようにも見えたが何故だろうか?

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