影崎聖
「おい、山川」
「……なんだ影崎。何か用事か?」
「お前、今回の事件のこと知ってたんか」
「たまたまな。被害者の見舞いに行った際聞いたんだよ」
そう言うと影崎は舌打ちし、睨みつける。
「随分余裕そうだな。そんなだと捜査でミスするんじゃないのか?」
「……余裕な捜査なんかあるか。人が亡くなってるんだ。真剣に取り組むだけだ」
「ならなんで黙ってたんだよ。事件が起きたこと知ってたくせに」
確かに疑問に思いはした。
だが確証がなかったため、今日独自で捜査しようと思っていたのだ。
「昨日の段階では偶然起きた線もあった。それに捜査に入るとしても向こうから何かないと動けないのはお前も知ってるだろ」
「チッ。おい新田、着いてこい」
影崎は舌打ちをすると新田を連れて捜査へ向かった。
普段は優秀なはずなんだが俺が関わるとどうもな。
「何ですかねあれ。毎度先輩に突っかかってきて」
横に立っていた冬月が腹を立てた様子で言った。
いつも隣で見てるから余計に苛立つのだろう。
「放っておけ。いちいち気にしても仕方ない。俺たちも現場に向かうぞ」
そう言って俺は駐車場に歩いていこうとした時、桂木が声をかけてきた。
「あ、ごめんなさい大和くん。ちょっといい?」
「桂木か。どうかしたか?」
「影崎くんのことだけど、ちょっと気をつけた方がいいかもしれないよ」
「どういう事だ?」
「彼、恐らく貴方を潰そうとしてるわ」
俺を潰す?
どういう事なんだ?
「意味がわかんないですね。先輩を潰すって……」
冬月は先程以上に苛立ちを見せ、余計に腹を立てている様子だ。
「彼が騒いでるところをたまたま見た事があってね。目障りらしいのよ」
「俺が何をしたって言うんだよ。普通にしてるだけなはずなのに」
「多分だけど、あなたがどんどん成果を上げていくからそれに嫉妬してるんじゃないかしら。私の勝手な推測だけど」
「それが本当なら勝手すぎるだろ」
「そうなよね。だから貴方には注意しておいて欲しいと思ったのよ」
「そうか。ありがとな桂木」
そう言って俺は冬月を連れて駐車場に向かった。
駐車場まで向かう道、冬月はずっと不機嫌な様子だった。
「……冬月、気持ちはありがたいんだがいい加減機嫌直してくれないか?」
「だって、あんなの聞いたら腹立ちますよ! 先輩の苦労も知らないでそんなの!」
「影崎だって苦労はあるだろう。それに今は一緒に事件を解決させていくチームの1人だ。協力していかないといけない」
それでも納得していないのか冬月はムッとした表情で俺の事を見上げている。
ただ、影崎は俺と同じくらい優秀な成果を上げているというのになぜ執着するのだろうか?
疑問を抱くもそれ以上に悩む必要がこれからあるのだ。
気にしないようにし、今は事件解決を最優先させないといけない。