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闇夜に蠢く挑戦状  作者: 大和ラカ
第四章 悲嘆に蠢く狂願
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気がかり

 荒巻警部と話を終え、俺たちの部署へと戻った。

 今回の報告書に関しては簡潔にまとめたものでいいとの事だったので直ぐに仕上げた。

 その後は普段通り仕事をこなし、帰宅時間となった。


「それじゃお先失礼するよ」


「今日は早いんですね」


「あぁ、寄るとこがあるもんでな。また明日頼むよ」


 そう冬月に告げて俺は森原総合病院へと車を走らせた。

 ここへの用事というのは以前の事件で被害を受けた絵里たちが入院しているということで、その見舞いに来たのだ。


「失礼します。絵里ちゃん久しぶり」


 そう言って病室に入ると、そこには顔色も良くなり健康的な様子の絵里とその兄護だ。


「あ、隼さん。お久しぶりです」


「隼も来たのか。もうすぐ明日香も来るはずだから全員揃うな」


「なんだ、明日香も来るのか」


 俺は壁に立てかけられていたパイプ椅子を護が座っているとこの横に用意して座った。

 後に分かったのだがあの時絵里ちゃんが切られたナイフには毒性のものが塗られていたため、入院することとなったのだ。

 他の3人も同じで別の部屋にいる。


「ごめんよ。あの後また事件やらで忙しくてこっちに顔出せなくて」


「いいんですよ。お仕事頑張ってるんですから」


 絵里の言葉に笑顔で返した。

 すると後ろの方から扉の開く音が聞こえ、見ると明日香がやってきたようだった。


「絵里ちゃん来たよ……って、隼くんも来てたの?」


「まぁな。少し落ち着いたからそろそろと思ってな」


「そうだったんだね」


 そう言って明日香も俺の隣にパイプ椅子を置き、そこに座った。


「……それで事件のとこなんだが、犯人は立花このはで通ったんだが彼女には事件前後の記憶がないみたいなんだ」


 真剣な表情で絵里のことを見て話した。

 これを伝えるのは俺の義務であり、やらなければいけないことだ。

 絵里を見ると少し驚いたような、でも疑問を持つような表情をしていた。


「話を聞いた限りでは絵里ちゃんがいじめで悩んでたこと、それをどうしたら解決できるか悩んでいたそうだ。ある時学校の近くでその事を悩んでた時を境に記憶が無いらしいんだ」


「そう……なんですか……」


 絵里の表情からは不安や心配ということが見受けられる。

 1番仲良かった子が犯人だったのだ。

 心配ないはずがない。


「今は警察が管理してる病院で入院してる。精神的に異常があるかもしれないってことでね。今のところは大丈夫そうだけどね」


「そうですか。それならよかった……」


 絵里の表情が少し安堵の表情になった。

 余程心配だったのだろう。

 その表情を見たところで俺は席を立った。


「それじゃあ俺は他の子たちの様子を見てくるから」


「そうか。今夜空いてるならどっか食べに行かないか?」


「悪いな、今少し立て込んでてさ。また今度行こう」


「そうか、ならまた今度行こうな」


「隼くんまたね」


 俺が病室を出ようとすると護たちが手を振って見送ってくれた。

 他の子たちの病室に向かっている最中、看護師たちの気になる会話を耳にした。


「そうそう、あっちの方大丈夫だったの?」


「それがダメだったらしいのよ。昨日に続いて不思議ね」


「ホントよね。あの患者さんはまだ重くなかったのに」


「あの、すみません。少しよろしいでしょうか?」


 俺は思わず看護師たちに声をかけていた。


「はい。どうかされました?」


「先程の話のこと詳しく聞かせていただけませんか?」


 俺がそう問いかけると看護師たちは怪しげに俺の事を見てきた。


「失礼、私はこういうものでして」


 そう言って警察手帳を看護師たちに見せた。

 すると驚いた様子で2人顔を見合っていた。


「早とちりでしたらすみません。ですがどうも気になってしまったもので」


「いえ、病院で勤務してたらよくあることなのですが患者さんが立て続けに亡くなってしまったんですよ」


「なるほど。もう少し詳しく教えて貰えないでしょうか?」


 看護師の1人は少し考え、ゆっくりと口を開いた。


「そうですね……1人目の方は少し重い病気を持っていたんですが、今朝亡くなった方は病状が重かったわけでもなかったんですよね」


 症状の急変……それによる突然の死。

 まさかとは思ったがさすがに深く考えすぎか?


「すみませんが死因の方は?」


「確か御二方とも心臓麻痺ですね。どちらも心臓が悪いわけでもなかったんですがおかしな話ですよ」


「そうですか……お時間取らせてもらってすみません」


 そう言ってお辞儀をすると他生徒の病室に向かった。

 それにしても心臓麻痺か……

 調べてみる価値はあるかもしれない。

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