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闇夜に蠢く挑戦状  作者: 大和ラカ
第三章 離島に蠢く怪虫
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心からのお礼

 気がつくと見覚えのある天井が視界に入ってきた。

 そう、健介の診療所だ。

 俺はあの戦いのあとすぐ気を失ってしまったのだ。


「あ、先輩気がついたんですね!」


「冬月か、すまないな。心配かけて」


 そう言いながらゆっくりと起き上がる。

 やはり肩の傷がまだ痛む。


「まだ安静にしてた方がいいですよ」


「大丈夫だ。それよりも轟破たちはどうなった?」


「轟破たちならあの後拘束しましたよ。浩太くんは先程目を覚まし、元通りに戻りましたよ」


「そうか、それは良かった」


 あの魔術を成功させても元に戻る保証はなかったため一安心し、安堵の息を漏らした。


「そうだ、弓月はどうしてる?」


「弓月ちゃんなら外にいますよ。呼んできましょうか?」


「いや、俺が行くよ。ずっと寝てても退屈だしな」


 そう言ってゆっくりとベッドを降り、診療所の外へと向かった。

 冬月は無事そうだが、初めてこのような怪奇事件に遭遇した弓月はショックを受けていてもおかしくない。

 外へ出ると、近くのベンチに座って海を眺める弓月の姿を見つけた。

 ゆっくりとベンチへ向かい、そっと隣に座った。


「……兄さん、もう大丈夫なの?」


「まぁ、まだ少し傷が痛むが」


 普段の明るく陽気な弓月とは違い、暗く沈んでしまっている。


「ごめんね、ワガママ言って着いてきたのに何も出来なくて……邪魔しかしてなかったよね」


「そんなことないぞ。色々と助かったとこもある」


「でも……」


「お前はよくやったよ。あんなおぞましいもの見たのに狂うことも無く俺たちに着いてこれた。何より無事で居てくれてよかった」


 そう言うと、弓月は肩を震わせ嗚咽を漏らした。

 怖く恐ろしかっただろう。

 今までこのような経験をしたことがあるはずない。

 俺は黙って弓月の頭を撫でる。

 ただ静かに泣く妹を落ち着かせるために。




 それから俺たちは2日間ゆっくり休んだ。

 その間、本土から応援を呼び被害者の保護と轟破を連行した。

 そのタイミングで戻ってもよかったのだが、俺の怪我を少しでも治してからと、今回の疲れを取るという名目で2日の余暇を貰え、ゆっくりと過ごした。


 そして、俺たちは帰る日となった。

 船に乗る前に香織と浩太、健介が俺たちの元にやってきた。


「皆さん、この度は本当にありがとうございました。おかげで弟が助かりました」


「それに、君たちのおかげで正人の無念も晴らせただろう。感謝してもしきれない」


 香織と健介が深々とお礼を言う。


「いえ、俺たちはたまたま事件の捜査で来ていただけで、それと今回の件が重なっただけですよ」


「それでも皆さんは恩人です。いくらお礼をしてもしきれません」


「いいんですよ。それより健介さん、あの本などは本当に持って行っても大丈夫なのでしょうか?」


 

「構わないよ。むしろこの島に置いてていいものでは無い。山川さんたちが保管しておいてください。あんな本も刀もこの島には必要ありません」


 魔術が書かれていた本は健介の希望で俺たちに預けたいということだった。

 俺たちはまたこのような事が起きた時のために取っておく方がいいと言ったが断られた。

 刀も置いてて悪用されたら困ると預けられたのだ。


「先輩、そろそろ時間ですよ」


「あぁ。それではお世話になりました」


 そう言って船に乗ろうとした時後ろから呼び止められた。


「待ってください!」


 振り向くと香織と健介の前に浩太が立っていた。


「どうかしたかい?」


「あの、助けていただき本当にありがとうございました! それと迷惑かけてごめんなさい」


 そう言って浩太は深く頭を下げた。

 俺はゆっくりと浩太の方へ歩み寄り、頭を撫でた。


「君はあくまで被害者だ。迷惑かけたなんて言う必要は無い。無事に元通りの浩太くんに戻ったことが何よりだ」


「……はいっ!」




 俺たちの九十九島での事件は無事解決した。

 事件解明の大変さを思い出しながら九十九島と別れる。

 港では香織と浩太が手を振って笑顔で見送ってくれている。


 しかし、この時の俺たちはまだ気がついていない。

 今回の事件により強大な何かが闇夜に蠢いていることに、今はまだ……

おはようございます、大和ラカです。

今回で九十九島編完結と致します!

最近は閲覧数も増え投稿のモチベも上がっており、読んでいただいてる皆さんに感謝してもしきれません(*´ω`*)

また、第4章の方はまだ企画途中のため少し期間を開けることとなります。

その点、ご了承ください。

これからも闇夜に蠢く挑戦状をお願いします!

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