悪戦苦闘
右手の刀を前に構え、左の木刀は少し高い位置に構える。
道場で何度か二刀流の練習をしていたため動き方は分かっている。
ましてや相手は達人でないため、手数の増える二刀流の方がこの状況ならいいだろう。
「き、貴様ァ! そんなものどこで手に入れた……!」
「お前に教える理由は無い。観念しろ」
轟破の顔が歪む。
やり取りをしている最中、大男2人が拳を振り上げてくる。
左の男には木刀で一太刀入れ、右の男は刀の峰で一振する。
男2人はよろけて体勢を崩す。
これは好機と思い、左にいた男の方に駆け出す。
そして、左腕を右に折り、木刀で男の胴を振り抜いた。
「……がっ!」
攻撃により倒れた男は顔を歪ませ、1度は起き上がろうとするが再び地に伏せた。
「くっ……この野郎!」
もう1人の男が俺目掛けて殴りかかってくる。
避けようと足を後ろに下げようとするも、急に力が抜けてしまい、男の拳が腹部に直撃する。
「ぐっ……しまった……」
倒れないように何とか持ちこたえるも、上手いこと力が入らない。
昨日やられた傷が開き、血を流しすぎているからだろう。
だが、ここで倒れる訳にはいかない。
体勢を整え、構えを取り直すもすぐに轟破が接近してくる。
今度は先程と違い殴りに来ているのがわかる。
あれをモロに食らってはまずい。
俺は後方に下がり、攻撃を避ける。
轟破の拳は空を切るも、殴った勢いで軽い衝撃波が飛んできた。
「……! あれは当たったら一溜りもないな」
間合いを詰めるため駆け出し、左の木刀で轟破の胴に突きを放つ。
木刀は轟破を捉え、よろめきながら腹を抑えてこちらを睨んでくる。
もう一度駆け出そうとしたとき、後ろから誰かに組み付かれてしまう。
「な……浩太くん……!」
何とかして振りほどこうとするも、力が強すぎとてもじゃないが振り解けない。
身動きが取れないスキに大男が俺の腹部を殴りつけた。
「ぐあぁ……っ……!」
一瞬意識を持っていかれそうになったが何とか持ちこたえる。
このままではまずい。
なんとかして右手に持つ刀を浩太の足に当てようとする。
力が入る訳でもなく軽く当たる感じになり攻撃とは呼べない。
しかし刀身が触れた瞬間、浩太の腕が緩んだ。
これはチャンスと浩太を押し退け、攻撃態勢を取っていた大男の懐に潜り、右の刀の峰で腹部に一太刀入れる。
男はそのまま何も言わず崩れ落ち、地に伏せた。
「はぁ……はぁ……」
視界は少しボヤけ、刀を振るのもやっとの状況。
轟破は謎の力を身にまとっており、浩太には手を出せない。
到底勝ち目がある様に思えないが、冬月を信じて俺はこの場を守り切らなければならない。
まだ……まだやれる……!